魔法先生ネギま、心の力(物理)   作:オズワルド

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はい、二ヶ月ぶりですかね?

一応書いては居たんですが一万字数を超えると何やら急にやる気が、はい言い訳です

そも俺はおバカなラブコメやらカッコイイ戦闘が書きたかったんだよ、それを伏線ばっかり、紅き翼(アラ・ルブラ)編はまだか!?

おバカなラブコメ、実は今回赤松健先生のラブコメみたくしてみたりした所があります、なんか皆戦闘戦闘言ってるけど一度原点に戻るのも良いかなと、ドキドキする平和なラブコメとドキドキする危険な戦闘、この二つを使いこなせてこそ原作の『ネギま!』に近付けるんじゃないかなと……

てな訳でラッキースケベを入れてみた、何だか気の抜ける悲鳴もしっかり入れてみた

赤松健世界における主人公のラッキースケベ度数はハンパないと思うんだ、何処ぞの女子寮管理人しかり子供先生しかり、だからこの物語の主人公もラッキースケベ度数を挙げてみようと思う

そんなこんなでどうぞ……


俺が知ってるのは知ってる事だけ

暖かい陽気と共に日が登り朝がやってくる、ふらりふらりとハッキリしない頭で部屋の隅を見やる……何にもない部屋の隅には常日頃室内を整理して居るからか埃一つ見受けられない、そんな部屋の隅をジーっと眺めているのも飽きてきた、と言うか俺は何で部屋の隅なんか見つめてんだろうか、いかんな目を覚まさないと

 

掠れた視界に映ったクローゼットから師匠(マスター)が用意した執事服の様な物を取り出して着込む、始めてコレをもらった時は執事の真似事でもしろと言うのかと聞きたかったが今ではさしたる疑問も抱かずに着続けている、師匠(マスター)もどうやら旅格好が汚くて気に食わなかっただけらしく特に執事らしい事をしろなどとは言われない

 

しかし、言われないとは言っても自然と自主的に執事的な事をする事が此処に来てからは多い、修行の余った時間で出来る範囲での掃除や師匠(マスター)に教え込まれた紅茶の用意など、それにコレからする事も含まれる

 

着替え終わった俺がするのは室内を出てすぐ近くにある階段を下った所に有る調理室での朝食の用意だ、俺が来る前は適当な街から仕入れたパンなどの…言っては何だが質素な食事をとっていたらしい、此処に来た当初もそんな事が続いて良い加減我慢の限界が来た俺が現代知識、否……未来知識を存分に使った料理で師匠(マスター)の口を黙らせて料理係をもぎ取った、文字通り余りの美味さに黙らせて

 

そうこう考えている内にも簡易な朝食が出来上がった、調理に使った物を杖の一振りで元に戻し料理を浮かべて調理室を後にする、自分と師匠(マスター)の料理を持って行くのは調理室から少しだけ歩いた先に有る師匠(マスター)の部屋だ

 

師匠(マスター)から魔法を教わり出してもうすぐ一年が経とうとしてる、まだ一年だと言うのに俺の師匠(マスター)はまるで鬼の如く魔法について詰め込めるだけ詰め込んでくれた、と言うのは言い方が悪いか、なんせ詰め込めるだけ詰め込んで欲しいと言ったのは俺だし、寝る間も惜しんで杖を振るう俺の近くで見ていてアドバイスしてくれたのも師匠(マスター)

 

一年の月日で俺と師匠(マスター)との間柄もそれとなく気兼ね無い間柄になってきた、今ではこうして師匠(マスター)を起こす事が日課になってる、朝が弱い師匠(マスター)は放っておけばそれこそ夜まで眠り続けるから朝の内に起こさないと授業が夜中になってしまう

 

だがしかし今日と言う日にはそれは当てはならない、昨日師匠(マスター)から基礎知識を叩き込まれ終わり、今までの練習用始動キーである『プラクテ・ビギ・ナル』では無く自分専用の始動キーの設定が終わり、今日一日は体と頭を休める日になった……

 

まぁ、休みだからと言って師匠(マスター)の怠け癖を放置する理由にはならないんだが

 

朝日が等間隔で並ぶ窓から差してくる廊下をどれほど進んだろうか、他の扉より少しだけ豪華な師匠(マスター)の部屋の前に辿り着いた

 

 

 

師匠(マスター)、聞こえてますか師匠(マスター)、起こしに来ましたよ」

 

「…………」

 

「まぁいつもの如く起きてる訳が無い、と」

 

 

 

失礼しますと扉を開けて室内に入り込む、師匠(マスター)の部屋には様々なドール、人形が置いて有り西洋人形が少しだけ怖い俺に恐怖を与えている、のは昔の話で今では良い加減慣れて来た、人形に見つめられる中足音立てずに師匠(マスター)が眠る天蓋付きベッドの前に立つ

 

ベッドの枕元付近に居るはずのチャチャゼロがいつの間にやら頭に乗っていたので払い落としてやる

 

 

 

「チャチャゼロ、毎度毎度飽きもせずに言ってやるがなぁ、テメェこの野郎人の頭にポンポン乗ってくんじゃねぇーよ重いわこのボケ」

 

「ケケケッ、ソウ言ナヨ乗リ心地ハ抜群ナンダ、何ナラ俺専用の椅子二ナルカ?」

 

「カッ、抜かせってんだ、そんな事より速く師匠(マスター)を起こしてくれよ朝食が冷める」

 

「アイヨー」

 

 

 

そう言って天蓋の中に入って行くチャチャゼロを尻目に室内の机に朝食を並べる、食べやすい位置関係に料理を乗せて椅子に座る、俺が執事なら師匠(マスター)が座る前に座るのは礼儀として可笑しいと言うか同席する事が既に可笑しいが俺は執事じゃないし気にしない

 

ベッドでは師匠(マスター)を起こすのに苦戦して居るのかチャチャゼロの声が聞こえる、自分自身で起こしにいけないのが少しだけ寂しく感じる

 

ベッドの中から魔力反応を感じると師匠(マスター)の影が起き上がった、毎朝の光景で有る、なぜ俺に天蓋の中の寝ている師匠(マスター)を見せてくれないのか、なぜ毎朝師匠(マスター)が何かの魔法を使って居るのか、寂しく思うが教えてくれないのだから無理に聞き出す事でも無いだろう

 

椅子に座った師匠(マスター)と朝の挨拶を交わし朝食を取る、師匠(マスター)はそのまま、俺はキリスト信者の様に手と手を合わせ指を絡ませて祈る

 

 

 

「……なぁコウ、私は前から気になっていたんだがな」

 

「ん、なんだい師匠(マスター)俺のスリーサイズ?」

 

「違うわバカ弟子、お前のその祈りだよ祈り、コウはキリスト信者だったか?」

 

「あん?

前にも言ったと思うけど俺はキリスト信者じゃないぜ」

 

「じゃあなんなんだその祈りは、キリスト信者じゃないなら止めろ、腹が立つからな

 

と言うよりコウは何でそんな事をしてるんだ?」

 

 

 

そう言って不機嫌そうに鼻を鳴らす師匠(マスター)、魔女狩りのせいだろうとは思うが師匠(マスター)はキリスト教が嫌いだ、それでもコレについて文句を言われたのは初めてだ、一年間も我慢させるとは弟子失格か

 

すぐさま祈りを止めて食事に取り掛かる、師匠(マスター)にはしっかりと俺がキリスト教じゃないと教えないといけないな

 

 

 

「何でこんな事をするかって言うと、まぁ『神様』に対して感謝してるんだよ、どうもありがとうございます貴方のお陰でこうして今日も生きていけますってな具合でね

 

言っとくけど俺が感謝してる神様はイエスキリストじゃない所か、多分俺以外誰も感謝も祈りもしてないだろうね、まぁオリジナル神様的な……」

 

「別にお前が生まれて来たのは神様のお陰じゃないだろうに、ふんっ」

 

 

 

そう言ってソッポを向く師匠(マスター)に苦笑だけ浮かべて食事に手を付ける、流石に『神様』のお陰で生まれて来たんですとは言わないし言いたくない、未来の事を話したとしてそれを俺がどうこう出来るのは趣味で知識がそこそこ有る魔法世界とこの世界の戦争が始まる切っ掛けを潰す位、第一次世界大戦も第二次世界大戦もその他の災害やら戦争やらも残念ながらどうこう出来る気がしないのはなぜだろうか

 

よくよく考えれば世界大戦を止めようとしてるんだよな俺って、それってバタフライうんちゃらとかは大丈夫なんだろうか、多分大丈夫じゃないかなぁと無責任な考えを持ってみる

 

何て考えても考えなくてもどちらでも同じ事を考えている間にも食事は進んでゆく、結局どうこう考えても魔力枯渇を止める方法を探るのを辞める気はないし、世界大戦だろうが相手が人なら負ける気も死ぬ気もかけら程もしないから逃げれば良いが、『神様』にもう一回ほど感謝の祈りでも捧げようか?

 

災害にしたって救助位なら出来るだろうが、俺が知ってる災害何て阪神淡路大震災だもんな、まだ先だし、自分の魔法ですらろくに出来ないのに他の事に気を使う余裕は無いか……

 

 

 

「あーもう、俺は小難しい事を考えるのは嫌いなんだっつうのにチクショウ」

 

「それが物思いに耽って居る奴の言う事か、今度は何を考えて居たのかなど知らんがな、私の部屋で私を無視してボーっとするんじゃない」

 

「ん、申し訳ない、お詫びと言っては何だがこのチャチャゼロ人形をば――」

 

「――チャチャゼロを詫びの品として渡すな!

 

それに元々チャチャゼロは私のだ!」

 

「お腹のボタンを押すと喋り出す機能付き」

 

「クッ、ヤメロバカ擽ッテェ、アハハハハ仕返シダコノ!」

 

「うわ何をする止めッ」

 

「楽しそうだな貴様等」

 

「……師匠(マスター)も混ざる?」

 

「だッ、誰が混ざるか!」

 

 

 

師匠(マスター)が不機嫌な為に取り敢えずチャチャゼロとのじゃれ合いを中止して懐からカードを取り出してシャッフルする、師匠(マスター)は妖艶な出来る女性みたいな格好しててその実結構な寂しがり屋だから放置する訳にもいかん、放置は出来るけど一回やったらちょっと可哀想な位落ち込んでしまったし……

 

シャッフルしたカードを師匠(マスター)とチャチャゼロに配って行く、暇を潰すにしたって俺はチェスなどの板状ゲームは得意じゃないと言うか駒の動きを忘れたりするからろくに進まない、それにチェスは二人しか出来ないからな

 

配ったカードから7の数字を並べる、簡単な七並べだ

 

 

 

「コウもついに始動キーを手にいれたか、コレでようやっとスタートラインに立ったと言う所だが、しかし始動キーは本当にあれで良かったのか?

 

何だかとんでもない物を呼び出しそうな怖気立つ寒さを感じたんだが……」

 

「始動キー何て結局なんだって良いんだろ?

 

それこそサイン コサイン タンジェントとか震えるぞハート 燃え尽きる程ヒート 刻むぞ血液のビートでも体は剣で出来てるうんちゃらかんちゃらでも、意味の無い言葉でも良いんだろ、俺の始動キー何てほんのちょっとした遊びで文字通り意味は無いよ、とんでもない召喚何て夢物語だ」

 

「随分言いにくいような気もするがな、コウがそれで満足してるならどうこう言うつもりは無いがな」

 

「もしも実際に召喚なんてされたら召喚した俺がただ事じゃ済まないよ」

 

 

 

カードを着々と置いて行きながらも口を動かす、自分の始動キーが思い浮かばず半ばヤケクソで決めた物だけど別段気に食わない訳でも無いし変える必要も無い

 

その内にこの始動キーにも愛着が湧いて来るんだろうか、何かそれはそれで嫌だ

 

コレからずっと使い続ける始動キーにもしかして早まったかもしれないと思いつつもカードを置いていく、警戒すべきはやはりチャチャゼロか、言っちゃ何だが師匠(マスター)は残念ながら戦力外だ

 

 

 

「クソッ!

誰だスペードのクイーンを止めてる奴は!?」

 

「誰でしょうねー?」

 

「誰ダロウナー?」

 

「クッ、お前等しかいないだろ白々しいッ、パスだパス!」

 

 

 

いやはや勝負とは非常な物何だぜ師匠(マスター)、手の中のスペードのクイーンを弄びながらその隣のクローバーのエースを捨てる、しかし七並べ何て二人でやるもんじゃないけどな

 

始動キーを手に入れるのに一年もかかった、だけれど俺からしてみればそれこそ『たったの一年』だ、俺にはもはや寿命なんて存在しない訳だから百年近く使った研究さえ出来る、そう考えると一年と言うのは驚く程に速いペースだ、このまま行けば…、いや流石にそう簡単にはいかないか……

 

軽く頭を振って緩い考えを追い出す、自分が賢い方だとかこのままで大丈夫だろうだとかそんな甘っちょろい事を考えてちゃダメだ、話にならんよそんな簡単に行くなら完全なる世界(コズモエンテレケイア)がやってる筈だろうに、必死にならにゃダメだな

 

着々と減っていく手札からまた一枚減っていく、流石にチャチャゼロそう簡単に勝たせてはくれないか

 

 

 

「へい師匠(マスター)師匠(マスター)の番だぜ」

 

「むぐ、んんんッ!

誰だ私のハートのキングを止めてるのはぁ!?」

 

「誰ダロウナー」

 

「まったくだ」

 

 

 

少なくとも俺じゃない事は確かだが

 

怒る師匠(マスター)の顔をみて微笑ましい気持ちになって居るとチャチャゼロと目が合った、コイツ良い笑顔をしてやがる、コイツは将来いい殺戮人形(キリングドール)になりそうだ

 

紅茶を飲もうとしていつの間にやら中身が無くなって居る事に気付いた、テーブルのスペースが少ない為に空中に浮かばせて居たポットから紅茶を注ぎ入れる、取り敢えずのご機嫌取りとして師匠(マスター)の紅茶にも入れようとした時に師匠(マスター)が動いた

 

 

 

「えぇぇええい!

パスだ、パスったらパスだぁ!?

ふざけるなよ貴様等毎度毎度ぉおーーー!」

 

「カッカッ、そんな事言われてもなぁ、師匠(マスター)コレはそう言うゲームだぜ?」

 

「こんな私を馬鹿にするゲームなぞ認めん、チェスだ、チェスをするぞ!」

 

「ケケケッ、パスガモウ四回目ダゼ御主人」

 

「知らんッ、チェスの用意をしろーーッ!!!」

 

「あ、あーあぁ」

 

 

 

師匠(マスター)の手によって泥棒に入られた家みたいな事になってしまったテーブルの上を少し残念に思いながら紅茶を注ぐ、手札は既に他のカードと混ざり合って掘り出すのに苦労しそうだし、何よりそんな空気じゃない、師匠(マスター)が既にテーブルの上を片付けてしまったしチェス盤まで出して来た、ここは俺が贄になるしかなさそうだ

 

チャチャゼロもカードを片付けて観戦モードになるが、その顔に張り付いた笑みはどちらかと言うとどんな接戦が繰り広げられるんだろうと言うワクワクとした物じゃない、と言っても仕方が無いだろうな、師匠(マスター)とチェスを指すが結果は考えるまでもない

 

敗北

 

敗北

 

また敗北

 

まったくもって勝てる気がしない

 

 

 

「ハァーハッハッハッハッ!

どうした貴様の力はこんな物かシシド コウ、こんな物では幼子ですら倒せんぞ!」

 

「ゴ機嫌ダナ御主人」

 

「いや、別に、そんなねぇ、たかだかチェスに必死になったってなぁ」

 

「オイ、顔ガ引キ攣ッテルゼ」

 

「いや全然、折角の休みをわざわざ室内でやる意味も無いしちょっと外行ってくるわ」

 

「まぁ待て、そう逃げなくてもいいじゃないか」

 

「逃げてない、外で魔法の練習して――」

 

 

 

そこまで言って椅子から立ち上がろうとした時に、丁度師匠(マスター)が俺を引き止めようとしたのか服を掴んで来た、立ち上がろうとした時に起きた不自然な力にバランスを崩す

 

言い訳に聞こえるかもしれないがこう思わずにはいられない、引き止める為に掴むにしたって力加減とかそんな物があってしかるべきだろう、そもそも無闇矢鱈と服を掴むのもどうなんだろうか、師匠(マスター)から貰った物とは言え、いやだからこそ大事に使いたい物だしシワとかを残したくない訳だ、それをあんな風に掴んで引っ張ったりしたらシワが付くのは当然だし、もう少しこう掴む以外の方法ってのは無かったんだろうか?

 

なんて、そんな事を言っても意味はない、今の問題はそんな事じゃない、問題なのは俺の倒れた先と言うかなんつーか……

 

バランスを崩し倒れこむ中で咄嗟に手を出した俺は何とか硬い地面に倒れずに済んだ、大したダメージでも無いだろうが痛い事に違いはない、何処かを打ち付けたとか擦りむいて血が出たって事もない、問題が有るとすれば『倒れた先と手を付いた場所』だろうか

 

 

 

「あー、ぇえ、何と言うか……」

 

「う、ぁ…あ、ぁあ――」

 

「わ、わざとじゃないんだコレは!

いや、ちょま、待ってくれ師匠(マスター)せめて話を――」

 

「い、ぃぃ、いつまで触ってるつもりだこぉの馬鹿弟子がぁあああああああああああ!!!」

 

「ぷろんっ!?」

 

「ぅ、わぁあああああああ氷瀑! 氷瀑! 氷瀑! 氷瀑! 氷瀑! 氷瀑!」

 

「じゃんっ! めぽっ! げふっ! どふっ! てふっ! メメタァ!?」

 

「リク・ラク ラ・ラック ライラック!

来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)!!

闇を従え(クム・オブスクラティオーニ)――」

 

「マジに止めて下さい師匠(マスター)ァアアアアアアアアア!」

 

 

 

抉りこむような右ストレートからの流れるような無詠唱魔法六連の上にトドメに闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)を持って来やがった慈悲も情けも容赦も無い鬼が居る

 

怒りのあまり怒髪天を衝く師匠(マスター)に必死になって謝り倒す、なんやかんや言い訳をしても俺が悪いのは変わらないし、何より触っちゃったし師匠(マスター)がこんなに怒るのも無理はない、なんせ『こんな事』が初めてでは無いんだから……

 

最初は何だったろう、師匠(マスター)に師事を求めてそんなに時間がたってない時だったか、人形を作る工房らしき場所で足下の素材を踏んづけた結果たまたま通りかかった師匠(マスター)に抱きついたのが一番古い記憶か、その日から何度も何度も続いていくコレ

 

注意をしてもまるで意味が無く、何か見えない力が働いているんじゃと疑った事数十度、結局どうしようもないと諦めたのは記憶に新しい

 

師匠(マスター)も有る程度怒りが収まったのか氷るような目線を向けるだけに留めてくれた、乱れた髪を整えて、乱れた服装も整えて、乱れた呼吸と心を整えてイスに座り直した、師匠(マスター)は何故かイスでは無くベッドの上だが

 

 

 

「お前は、アレだ…実はわざとやってるんだろう?」

 

「今のは師匠(マスター)が急に引っ張るから……」

 

「知らん、そんな事より今日はこの後どうするんだ、何かやる事は有るのか?」

 

「いやー、無いね真っ白皆無だね、魔法でも教えてくれるんです?」

 

「アホウが、ほら」

 

 

 

とだけ言ってベッドの上をポンポンと叩いて主張を始める、ハッキリ言って意味が分からないがチャチャゼロが急かすので流れに身を任せればベッドの上まで誘導された、ちょっと女性が普段使ってるベッドの上に乗る事に躊躇したが師匠(マスター)も特に文句を言わないと見て勇気を出して乗ってみる

 

あ、いい匂い――

 

そのまま師匠(マスター)が寝起きのまま放置したと思われる乱れたベッドに誘導されると師匠(マスター)の隣に座らされる、突然の事に戸惑う俺など毛ほども気にかけていないのか、俺を置き去りにして事態が進展してゆく

 

 

 

師匠(マスター)、……何やってんですか?」

 

「む、ちょっと頭が痛いな、もっと私の事を考えた座り方は無いのか」

 

「ぇ、それじゃ正座で……」

 

 

 

胡座をかいて座って居たのだが正座に変える、正座をした膝の上に師匠(マスター)が頭を乗せると、師匠(マスター)の顔には笑顔が浮かんで、楽しそうにチャチャゼロも俺の頭に乗って来た

 

 

 

「なに、暇そうなんでな、この私に本を読む権利をくれてやろうと言うんだ、有難く受け取れよコウ?」

 

「ぁー、本つったって魔法の教本くらいしか無いしそれで良い?」

 

「構わん、私にお前の成果を見せてみろ」

 

「分かった分かった、て言うか良い加減に降りろ首が痛いぞチャチャゼロ」

 

「チッ、コンナニ可愛イ女ノ子二ソンナ言イ草カヨ、チッ」

 

「可愛い女の子…?

 

いや可愛い女の子は舌打ちとかしねぇーから、二回もしねぇーから」

 

「ナンダ、パンツ履イテナイノニ可愛イ女ノ子ジャネェノカ?」

 

「それはただの痴女だ!

 

 

――て言うかテメェ今何つった、人の頭の上で何つったぁ!?」

 

「私を無視するな!」

 

「かにみそっ!?」

 

 

 

師匠(マスター)の頭突きが腹にめり込んで痛い、不機嫌そうにジトッとした目を向けられたがそれどころじゃない、鍛えられて少し割れている腹筋がまるで意味を成さない、腹を抑えて転がろうかと思ったが今は膝の上に師匠(マスター)が居るからそんな事は出来ない、新しい拷問か何かだろうか

 

師匠(マスター)のジト目がツリ目に変わって来た、これ以上師匠(マスター)に構わないのは賢いとは言えない判断だ、仕方なく影から本を取り出して師匠(マスター)に読み聞かせる、とは言ってもただ書いて有る事を淡々と読み続ける訳じゃない、教本に使われている文に自分の考察やこうなのではと思ったこと抔をツラツラと述べる

 

教本と言っても何もかもが乗っている訳でもない、だからこそそこに突っ込んだ疑問を持つ事から始めれば結構穴が見つかる物だ、そも魔力とは何なのか?、魔力とは大気に満ちる自然エネルギー、そもそも自然エネルギーってなんだ、自然から生まれてくるエネルギー、酸素(H2O)だろうか、それともまた違う物だろうか、そんな問答を延々繰り返して行く

 

その思考の先にきっと答えが有ると思って、願って

 

そんな風に師匠(マスター)に読み聞かせて居るとあっという間に読み終わってしまった、もともと中身が厚い訳でも無く必要最低限しか書いてないような本だ、そりゃすぐに読み終わるだろうな

 

 

 

「ふん、まぁそんな考えも有るか」

 

「何ですか師匠(マスター)またイチャモンですか、前回それで言い合った結果朝までかかったんじゃないですか、乗っかりませんよ?」

 

「なんだつまらん、またあの時のように虐めてやろうかと思っていたんだがな、クックックッ」

 

「何言ってんのさあの時負けたのは師匠(マスター)だろうに」

 

「そうだな、面白い話を聞かせてもらったことだし、今度は私が読んでやろう」

 

 

 

露骨に話題を変えやがった、いくら師匠(マスター)でもそう言うのは良くないと思う

 

その事について指摘しようと、ついでに言葉巧みに遊ぼうとしたその時、膝の上に居る師匠(マスター)が腕を伸ばして俺の体を掴んで来た、そのまま抱き寄せるようにして引き寄せられて訳も分からぬ内にガサゴソと色々動いたと思ったら

 

師匠(マスター)に膝枕をされていた

 

何と言うか物凄くビックリした、まさか俺がするならまだしも師匠(マスター)が膝枕をするとは思わなかった、貴重な経験と言えるだろう

 

貴重な経験を生かすために後頭部の柔らかく暖かい太腿に意識を飛ばす、そうでもしないと目の前の大きなモノに意識を掻っ攫われるから仕方ない、流石に目の前でそちらに意識を飛ばしていたら気付かれる筈だ、つまり気付かれないように現場をそれとなく楽しむ為にはふとももさんしか無い訳だ

 

 

 

「……何処を見てるコウ」

 

「ち、違うんだ、何か勘違いしてるみたいだから教えてやるが俺は別にそんな代物に興味なん――」

 

「ふん」

 

「ぞんッ!?」

 

 

 

師匠(マスター)が頭に手を添えて前へと強制的に首を駆動させる、人体だと思ってはいないんじゃないかと思う程の強制力、そして決して人体から聞こえてくる筈がない音が耳のすぐ下から響いて来た、空気の振動で聞こえたんじゃなくて首の肉と骨を伝って直に来た

 

どうしよう、大丈夫かな俺の首、どうなってるの俺の首、少しも動かすのが怖いんだけど俺の首、ヤバイよどうしよう何か熱を持ち始めて来たんだけど本当に大丈夫か!?

 

内心首の事しか頭にないんだがそんな事は師匠(マスター)に分かる訳もなく、前を向いた俺に満足したのか本を読み始めた、その本の内容としては吸血鬼と人間が戦い人間が負けるという物だが……そんな本を読む流れだったか?

 

 

 

「と、まぁ今手元に有るのがこれくらいでな、特に本の内容は決めていなかったし構わんだろ

 

そういえばコウは吸血鬼の事をどう思ってる?」

 

「どう、とは?」

 

「いやなに、たまたま手元に有ったのがこの本で、たまたま本の内容が吸血鬼に関しての物で、たまたまお前が近くで聞いていた

 

まぁ暇つぶしだ、たまたま何と無く気になっただけで意味は無いさ、でどうなんだ?」

 

「どうだと言われても、吸血鬼ツエーとしか……

 

そもそも俺って吸血鬼にあんまり良い印象が無いしなぁ」

 

「ぇ…ぁ、うん、そうか、そうだな……」

 

「いやーだって『青ざめたなぁ』とか言いながらナイフを投げるし『最高にハイって奴だぁー!』とか言いながら頭に指突っ込んでグリグリするし『貧弱貧弱ゥウウウ!』とか『パーフェクトだウォルター』だとか、しっちゃかめっちゃかなHAIKUを読み始めるしでちょっと近付き難いよね」

 

「誰だっ!?」

 

「誰だ、って俺の知ってる基本的吸血鬼だが」

 

「違うだろう吸血鬼だぞ!?

 

もっとこう、なんか有るだろう!」

 

「吸血鬼ってそもそも本当に居んの?」

 

「そこからか!?」

 

 

 

本を隅に投げつけて吸血鬼について説明を始めた、そも吸血鬼何て未だ会った事がないがエヴァはたしか吸血鬼に『された』んじゃなかったろうか、そうすると吸血鬼について気になってくる物だ、吸血鬼の成り方やその歴史、そうして探して行けばもしかしたらこれから先に現れるであろう『師匠(マスター)を殺す奴』の事も……

 

見付けてどうすると言うのか、止めるなどと無責任な事を言うつもりは無い、俺にはエヴァを救った後にできる穴を埋められる自信が無い、ただビビってるだけかもしれない、でももしかしたら意識すらしていない所で何か吐き気を催すような気持ち悪い考えが有るかも知れない

 

もし、もしも自分が無意識の内に『エヴァンジェリンを助けてその心の隙を突ついて恋仲にでも何にでもなってやろう』だなんて、考えてい、たとしたら……

 

それはもう、この腹を裂いて臓物を引き摺り出し心の臓を毟り取り握り潰したとしても途方も無く足りないのだ、人の心と生きている物に対する圧倒的侮辱なんだそれは

 

しかし、自分の事だからこそ分からない、これだから『転生者』なんて物は嫌なんだ、『転生者』なんてどう頑張っても絶望じゃないか、もしも好きな人が出来てもそれが『原作』に出てきた人ならば、俺は自信を持ってその人が好きなんだとは言えない

 

転生者なんて絶望じゃないか、少し考える時間があれば気付く筈だ、『原作』なんて有ろうが無かろうが『過去の世界』に来たなら絶対に、だってどう頑張っても自分の知ってる不幸を全て消すなんて出来ないし、この場合は『エヴァの吸血鬼化』だが……

 

不幸を消した先には絶対に別の不幸が待ってる筈なんだ、ルービックキューブで一面の色を揃えようとすると他の色がバラバラになってしまうみたいに、何かをすれば何かが起こるんだ、それが幸せな事や些細な不幸ならまだ構わない、が、だが、もしもその結果が人の死であったりしてみろ、俺は到底耐えきれる気がしない

 

では、その知ってる不幸を消さなければ?

 

そんな物考えるまでも無い文字通りの問答無用だ、それはつまり助けられた者を助けなかったんだから、仕方が無いと取り繕っても罪悪感が生まれるし、もしまかり間違ってその不幸を受けた張本人に自分の真実を知られでもしてみろ、どうしてと……、そう言われるのは自明の理では無いか

 

では何故自分が未来の不幸である魔法世界消失を止めようとしてるのかの辺りを考えようとした所で師匠(マスター)が吸血鬼についての説明を話し終えた、そこでもう一度師匠(マスター)が下を向いて金色のカーテンの中から顔を覗かせて問うて来た

 

 

 

「で、実際に吸血鬼が居ると知ってからのこの本の感想はどうだ?」

 

「うーん、そんな事言われてもなぁ……

それって実際に有った話を元にしてるの?」

 

「……そうだな、実際の話だ」

 

「何つーかその死んじゃった人類さんには御愁傷様としか言えないよね、しかしそんなに強い吸血鬼が居るのか、数百人を相手に勝っちゃうんだもんなぁ、会いたくねぇなぁ瞬殺されそうだし

 

感想を簡潔に言うと太陽でも死なないのは驚いたぜ」

 

「それだけか?

私が聞きたいのは……まぁ良い」

 

「吸血鬼関連の本って他にもあんのか?

 

有ったら読んで見たいんだけど」

 

「ん、なら一冊吸血鬼関連の本を貸してやる」

 

 

 

どうやら他にも吸血鬼の本はあったようで少し厚めの本をくれた、手渡されたソレを顔の前に持って来てタイトルを確認した所何やら吸血鬼と人間の恋愛モノらしいが師匠(マスター)がこんな本を持ってるとはちょっと予想外だ

 

取り敢えず本を影の中にしまい込むと師匠(マスター)が髪の毛を弄ってきた、俺の髪を束ねて集めて三つ編みにしたりポニーテールにしたりと随分楽しそうだ、もしやられてるのが俺じゃなかったら是非ともやってみたい、しかし今回やられてるのは俺なので仕方なくチャチャゼロで遊ぶ事にした

 

頭部がベッドに吸い込まれた、何事かと思ったらベッドに寝ている俺の身体の上に柔らかいものが乗っかってきた、ものと言うか師匠(マスター)が覆いかぶさるように乗ってる、金の髪を耳にかけると何やら妖艶な笑みを浮かべた

 

 

 

「そういえばだが、まだ今日の分の血を貰ってなかったな?」

 

「いや、ちょいと待て、今日は修行をしていないし――」

 

「――それで?」

 

「貧血って実は思ったより辛い物でね――」

 

「――それがどうした」

 

「一日位休んだって罰は当たら――」

 

「――ね・む・れ」

 

 

 

急激にやって来た眠気に抵抗出来ない、これでまた貧血が進む訳だ、正直言って一日毎に血液を提供するという事を甘く見ていた、思った以上に辛く苦しい貧血は自然と避けたくなるが、自分でした約束の所為で逃げる事が叶わない

 

どうしてあんな約束してしまったのかと悔やみながら、眠気に逆らわずゆっくりと意識を手放して行く、目覚めたら明日になってるなんて事も有るから、覚悟だけは決めておかないと

 

スルリと何の違和感も無く眠りについた、その後の事は分からない、どんな風に血液をとってるのかも、血液を何に使っているのかも、意識を失う直前で師匠(マスター)から魔力反応がした理由も、師匠(マスター)の体が光りながら『軽く』なった気がした理由も……

 

俺は何も知らない、いろんな事を知ってる癖に目の前の師匠(マスター)である女性の事を何も、何にも……




『転生者』については作者の考えも少し入ってます、ぶっちゃけ説明不足の所もありますが、ここは作者の考えを書く所じゃないので

ようするに主人公は自分の転生者という物に嫌悪感を少なからず持って居て原作キャラ達との恋愛に軽く否定的になってしまっているって事を書きたかったんだ

はっきり言えば諦めて開き直るぐらいしか無いんですけどね、他人の命とか見捨てたとか原作だとか知るかー、って感じで


さて、今回も誤字脱字の報告を頂きました、有難い物ですね、僕にもコメントをくれる人がいる、こんなに嬉しい事は無い

次回のいつ来るか分からない更新をお楽しみにー
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