やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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二章
こうして比企谷八幡は雪ノ下陽乃を受け入れていく。


電気もつけていない暗い教室。

月明かりだけが頼りのその教室で、俺は陽乃だけを見ていた。

 

…。

ただお互いを見つめ合うだけの時間。

 

「比企谷…八幡君」

「なんだ?」

「私でいいの?」

「…いいみたいだ」

「ふふっ、何その答え」

「この状況を飲み込めてないんだよ…」

 

やばい。陽乃に告白してOKをもらった後に何回かキスをしたってところから、すごい現実離れした状況に脳が追いついていない。あまりにも俺にとってありえない所まで来ている。

 

「ねえ、あの告白ってホントの気持ちだよね?」

「…そうだ」

「じゃ、もう一回キスしよ…」

「…いいぞ」

 

俺達はもう一度キスをした。今日何回目かって言われたらもう覚えてないけど、それでも今日一番の濃厚さのキスだった…

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

俺達が学校を出ようとして時間を見たら夜の10時を回っていた。まだ職員室には灯りがついていたので、見つからないようにこっそりと出た。

ちらりと陽乃をみると目が合った。

 

……。

お互い気まずくなった。なんだか恥ずかしいな。改めてなんか恥ずかしいな。言葉のボキャブラリーすくねーな俺。

 

「ねえ、さっきさ、どさくさに紛れて八幡て言ったけど、これからも八幡でいいのかな?」

「いいんじゃねーの。お、俺も陽乃って呼んでたからな…」

「じゃ、ほんとに私たちって彼氏彼女の関係になったんだね…」

 

そうなんだな。なんだかんだあって結局そういう関係になったんだな。

最初にあった時にはまさかこうなるとは思わなかった。

こんな捻くれボッチに本来訪れるハズの無かった事が起こっているんだな。人生なにがあるかわからない。

 

「八幡」

「なんだ?」

「私ね、八幡といるとなんか自分が分からなくなるんだ」

「…そうなのか?」

 

「私は今まで自分を作ってきたの。いろんな人が求めている自分を、雪ノ下陽乃という人間を自分で演じて来たんだよ。でもね、最近八幡といるとそんな自分が分からなくなってきたの。私も初めての経験だからよくわからなくて…」

 

「…陽乃、それは本当の自分をみせてるんじゃないのか?俺になら素の自分を見せれるってことなんじゃないのか?」

「…そう、なのかな?…いや、そうなんだと思う。私は八幡の前でなら演じた自分じゃなくて、素の雪ノ下陽乃で居ることが出来るんだね」

「そうだ。だから、俺の前では…素の陽乃でいてくれ」

 

我ながら恥ずかしいセリフだと思う。前までならここで捻くれたセリフしか言えなかった。俺も変わってきているってことなんだろう。

 

「…八幡、キスして」

 

陽乃は泣きそうな顔をしていた。こんな表情も今まで見たことのない顔だった。

陽乃は今まできっと辛い思いをしていたんだと思う。

みんなの憧れの雪ノ下陽乃を演じているというのは、すごく大変なんだと思う。

俺も出会うまではそれが雪ノ下陽乃だと思っていた。だけど、今目の前にいる雪ノ下陽乃はか弱い一人の女の子だった。

 

目の前に目をつぶった陽乃の顔が迫っている。

その目からは涙が流れていた。

 

「陽乃」

「なに?」

「安心しろ、これからは、その、俺がお前のことをわかってるから。俺が守ってやるから安心しろ」

「…そんなこと言われたら、もう頼りまくっちゃうよおぉ…」

 

俺達は、路上のど真ん中で再びキスをした。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

sign陽乃

 

家に帰った私は、すぐさま部屋に戻った。

私は今とても幸せな気持ちだった。比企谷…八幡くんのことが好きだって気持ちでいっぱいだった。

そして彼は私の素を受け入れてくれた。それはとても嬉しいことだった。

でも、私自身なにが素の姿なのかは完全にわかっていなかった。今まで何十年と演じてきた雪ノ下陽乃は自分でも外れない仮面のようだった。

でも、八幡といるとその仮面が剥がれるかもしれない。そして、わたし自身も自分の素を知れるかもしれない。

そう考えると、なんだか、顔がにやけてくる。

 

コンコン

 

「陽乃、いるか?」

「…お父さん」

「ちょっと来なさい」

 

そういうと父は部屋から出ていった。

まあ、今回の文化祭のことだろう。私は仕方なく体を起こして父の部屋に向かった。

 

 

父の部屋に入ると、

 

「陽乃、文化祭のことだが聞いたぞ」

「うん」

「大成功だったそうだな。お母さんもよろこんでいる」

「ありがとう」

「今日は疲れただろう、部屋に帰ってやすめ。詳しい話は明日しよう」

「わかりました。じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

 

父は私を気遣ってくれたのかすぐに話を終わらけてくれた。

 

私は部屋に帰るなり、どさりとベッドに倒れた。

疲れたけど、私は幸せを噛み締めながら眠りについた。

 

 

続く

 

 

 




今日は忙しかったので、文が少ないです。すみません。

次回投稿は7月6日の20時です。
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