やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

23 / 43
体育祭でも雪ノ下陽乃はリーダーになる

文化祭も終わって時間に余裕ができるのかと思いきや、陽乃は今度は体育祭実行委員長に抜擢されてしまった。そしてその流れで俺も委員入りすることとなった。

そして今は文実の時と同じ会議室に他の体育祭実行委員と共に集まっていた。

文実の時より少し人が少ない気がした。しかし会議室に集まったメンツを見ると、文実メンバーしかいなかった。

それだけ今回の文化祭の評価が高かったようだ。実際のところ、生徒をはじめ、一般客にもかなり受けが良かったようだ。

そして、顧問の先生はこちらも引き続き平塚先生。

なんだか文実がそのまま引き継がれたような感じで、アットホームな感じで集まっていた。

 

「えー、皆さん初めまして、じゃなくてお久しぶりです!今回も私が委員長を務めることになりました。文化祭の時に比べて時間はないけど、みんな体育祭も成功させていこう!」

 

ニッコリと陽乃は笑った。俺は久しぶりにその仮面笑顔を見た気がする。最近は仮面をかぶっていないであろう笑顔を見ていたから。

陽乃のその笑顔で委員たちのやる気が入ってきているようだ。

 

「みんな、生徒会長である私も精一杯お手伝いさせていただきますねー。じゃ、みんな頑張ろう、おー!」

 

ゆるふわ生徒会長もいたのか。もうこれでほぼ文実だな。

 

 

――――――

 

 

体育祭の準備期間は文化祭の時より準備期間は少し短い。まあ文化祭に比べたらマイナーイベントではあるが。

 

「競技についてなんだけど、とりあえずリレーとかは自動的に入るけど、それ以外は生徒たちで決めるということになります。なので、どんどん手を挙げて意見を言ってください」

 

「はい!私は借り物競走はどうでしょうか。みんな盛り上がると思います」

「うん、すごくいいと思うねー。みんなが楽しめると思うよ。ではほかの意見はありませんか?」

「はい!僕は演舞をしたいです!演舞はすごくかっこよくて、皆が盛り上がると思います」

「うんうん、確かに男の子達のそういう姿ってかっこいいよねー」

 

後ろでは城廻生徒会長がせっせとホワイトボードに意見を書いていた。

その後もどんどん意見が上がってくる。みんな二回目ということで変な緊張とかはないようだ。そんな中まだ意見を言っていないどころか一言も喋っていないやつがいた。

それはお察しの通り俺です!心ではこんなに喋ってるのに口には全く出していません!あいかわらずの絶好調ボッチである。

 

すると、タイミングを見計らったかのように陽乃がこっちを向いて、

 

「色んな意見が出てきたけど、八幡はどの意見がいいと思う?」

「…え、俺に振るか?」

「もちろんだよー。八幡の意見を聞かないと」

 

そういうと皆が一斉にこっちを向いてきた。やめろそんなに見るんじゃない。

 

「比企谷、予算のことも頭に入れて言ってくれよ」

 

平塚先生も俺にしゃべるように促してくる。…仕方ないな、ようやく口を開くか。

 

「…借り物競争とかいいんじゃないか?練習期間もほとんどいらないしな。借り物については文化祭の時に意外と使えそうな道具があったからな。それから棒倒しもいいと思う。棒なら倉庫にあるし、これも盛り上がるしな。逆に厳しいと思うのは演舞だ。衣装の問題もそうだし、最大の問題は時間にある。あれはおそらく時間がかかるはずだ。はたして期間内で完成できるかが疑問だ。チアリーディングも同じ問題だ。俺が思ったことはこれくらいだ」

 

長々と話してしまったが、メンバーはびっくりした顔をしているものがたくさんいた。それよりも恐らく皆が気にしているのは、俺が陽乃に意見を求められたことと、陽乃が俺のことを下の名前で呼んだことだ。視線が痛いよ。

 

「詳細にありがとう。さすが八幡だね!」

「どうも」

 

ニコッと笑ったけど、その笑顔はいつものやつじゃないよね?俺といる時の笑顔だよね?まあ幸いみんなは違いに気づいていないだろうが。

 

「まあ、八幡の意見も参考にしながら後の詰めの作業をこれからしていこうと思います。みんなもどんどん賛否両意見言っていいからねー。それから明日スローガンを決めようと思うんだけど皆明日までにスローガンを一人一人考えてきてくれるかなー。よろしくねー。それじゃ今日はここまで。お疲れ様でした」

 

そういうとぞろぞろと陽乃をはじめとして会議室から人が出ていく。おれも出ていこうとしたら、平塚先生から止められた。

 

「私があの時言ったこと、わかったか?」

「…ええ。なんとなくですが」

「変わっているだろうあいつは」

「そうでしょう」

 

「なあ比企谷、君も変わってきているんだよ」

「そうですかね?」

「自覚をしているのではないのか?正直にいっていいんだ」

「…少しはしています」

 

実際は少しではないのだが。でも自分でも疑問に思うことがあるからな。ほんとに変わってるのか。

 

「まあ、君は陽乃と一緒で手がかかるからな」

「先生はどうして俺たちに構うんですか?」

「どうしてだろうな。まあ、一つ言えるのは君たちを見ていると楽しんだよ」

「…楽しいですか?」

「そうだ。おっといかん、私は仕事が残っていたのだった。それじゃひきがや、気をつけて帰りなさい」

「うっす」

 

平塚先生は恐らく俺たちを見捨てることはないんだろうな。ホントいい人だと思う。それだけに未だに未婚というのがね…

 

 

続く

 

 

 




次回投稿は7月18日の22時です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。