やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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歴史のある街でも、平塚静は変わらない。

「八幡、おきなさい」

「う、うーん…」

 

うっすらと目を開けると、陽乃の顔がドアップで迫っていた。

 

「…なんだ?」

「もうつくよ、京都に」

「え?あ、ああ。ん?京都?京都でなにをするんだ?」

「静ちゃんの思い出の場所だって。もう京都だからおきなさい!」

 

まだ寝たいと言う思いがあったが、ほかの乗客も手荷物を片付けだしたので、俺も降りる準備を始めた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

京都駅に降り立つと、さすがに人が多かった。

人に押しつぶされそうになりながら、なんとかロータリーまで出てきた俺達一行。

 

「うーん、久しぶりだなー京都は」

「で、なにがあるんですか京都には?」

 

あまりにももったいぶるので、俺はまだ聞いてなかった真意を聞くことにした。

 

「ここは私が大学4年間をすごした地でな。思い出に残ってるのだよ」

「え?それだけですか?」

「まあ最後まで聞け。ここには君達にすごく関係のある場所があるんだよ」

「わたし達の?」

「うむ。だから君達をそこに連れていく。だが、今日はもう遅いから一泊する。駅前のホテルを予約してあるんだ」

ホテルまで、俺たちは徒歩で移動することになった。

京都の街はなんだか歴史風情を損なわないようにということで、茶色の建物がおおかった。ローソンも茶色ってのは本当なんだな。

 

歩いて五分ほどでホテルについた。

周りにもたくさんホテルがある中の一つの白いホテルに俺たちははいっていった。

「予約していた平塚だ」

「少々お待ちください。……はい、確認が取れております。三名様でよろしかったでしょうか?」

「うむ」

「わかりました。ではお部屋の方は503号室が平塚様。504号室が雪ノ下様。505号室が比企谷様でよろしいでしょうか?」

「うむ」

「ではお部屋までホテルマンの方が御案内いたします」

 

受付の綺麗な女の人を見ていると、陽乃からものすごい笑顔で横腹を抓られたので、すっと、目を逸らした。

だって怖いもん笑顔が…

 

「お荷物、お持ちいたします」

 

そのホテルマンは男の人だったので、陽乃は元通りの表情に戻った。よかったー。

 

部屋の中に入ると、ベッドが一つあり、あとはテレビとシャワールーム、それから小さな備え付きの冷蔵庫があった。

少し疲れたのでのんびりとベッドで寝そべりながらテレビを見ることにした。

でも、面白いテレビがなかったからスマホをいじろうと開くと、小町からメールが来ていた。そのメールは、

 

「「お兄ちゃんがんばってね!陽乃さんとの仲が深まるように遠くから応援してるからねっ!」」

 

…寝るか。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「うーん…」

 

目を覚ました俺はスマホを見たら三十分ほど寝ていた。

もう七時になっていたのでそろそろお腹が空いたのでなにか食べようと部屋の外に出たら、

 

「あら八幡、ちょうどよかった。今呼びに行こうとしてたのよ」

「そうか。俺もちょうど腹減ってたんだ」

「外で静ちゃんが待ってるわ」

 

陽乃は自然と腕を絡ませてきた。

そのまま外に出たら、

 

「…ふうむ、イチャイチャするのは構わんが、なるべく慎めよ」

「はぁーい!」

「…すみません先生げほっ!」

「…さあいこうか」

 

ごめんなさい先生。そういう意味で言ったんじゃ…いや、そういう意味でいいましたごめんなさい。

 

 

連れてこられたのは和食の店だった。

 

「ここは有名なところでな、一度連れてきたかったんだ」

「へえー」

 

店の壁とかには、有名なサスペンス女優や、サスペンス帝王とかのサインが貼ってあった。

 

一つ一つのテーブルが個室になっていて、中に入るとお座敷になっていた。

俺と陽乃が並んで座って先生が俺の前に座った。

 

「メニューは勝手に運ばれてくるからな。この店で一番美味しいやつだから安心しろ」

「はい」

 

素っ気なく対応したけど、心の中ではすごく楽しみにしていた。京都の本場の和を楽しんでみたいからだ。

 

「お待たせいたしました。前菜にございます」

 

まず、前菜が運ばれてきた。今回はフルコースなのかな?

 

「あ、生ビールを一杯たのむ。メインと一緒に持ってきてくれ」

「かしこまりました」

 

ビール飲む気かよ。そのままどんどんすすんでいって愚痴大会とかにならないといいけど…

 

ちょうど前菜を食べ終わった頃、再びガラリとドアがひらいた。まるでタイミングを見計らったかのようにきたので、俺は驚いていた。これぞおもてなし!

メインの料理が運ばれてきた。メインはお刺身からお肉まで豪勢なものだった。これ相当高いんじゃ…

 

「それではごゆっくりお楽しみくださいまし」

 

店員が出ていったタイミングで俺は平塚先生に、

 

「あの、これ相当高いんじゃ?」

「まあ気にするな。それより食べようじゃないか!美味しいぞここは」

 

ぷはーっと、一緒に運ばれた生ビールを美味しそうに飲みながら言っていた。ほんとに愚痴大会になりそうな予感…

 

「ねえ、あんまり飲ませないようにしないとね…」

 

ここで、陽乃がこそっと耳打ちしてきた。陽乃も感じているようだな。今日は飲むと。

 

 

 

一時間後。

 

 

「まぁーったく!なんでどいつもこいつも結婚、結婚、結婚っ!」

「まあまあ先生。あまり騒がないように…」

「うるさいっ!あんたたちもイチャイチャとっ!」

 

平塚先生の愚痴大会が始まったのは言うまでもない。

 

 

続く

 




次回投稿は8月5日19時頃です。

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