やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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一章
比企谷八幡は徐々に日常を受け入れていく。


季節は五月中旬。五月は暦の上では春になる。春というと出会いやなんやで有名な季節。

今までボッチでやってきた俺にもついに出会いがやってきた。

…暴君との出会いが…。

あの時、平塚先生に職員室に呼び出されなければ、暴君と出会う事などなかった。

しかし時は残酷だ。俺は出会ってしまったんだ…。雪ノ下陽乃に…。

 

「比企谷くん、お話しよっか♪」

 

…悪魔の囁きだった。

 

 

――――――

 

 

あの日以来、俺は放課後毎日逃げ出さずにこの空き教室にやって来ている。まるで部活生みたいだ。なぜ来ているのかの理由はひとつ。雪ノ下陽乃とお話をするためだ。

 

…と思っていたらやはり単にお話だけではなくて、ほぼ毎日平塚先生に頼まれて雑用をやったりなんかしている。その雑用というのも結構あって、簡単な仕事から、生徒が触れてもいいの?という書類の整理までさせられる。まるで便利屋だ。しかも雪ノ下はよく雑用の途中で逃げ出したりするし…。

結局、俺が一人でやってることの方が多い。…まあいいけどさ。

それでも平塚先生と雪ノ下はなんだか普通の先生と生徒の関係ではない気がする。雑用を押し付けれるような関係だし、二人がよく話しているところをみる。

 

しかし今日は、雑用を押し付けられることもなかった。まあ、それもそのはず実は来週には中間考査が控えている。

ということなので平塚先生からテストまでは試験勉強をしていいから雑用は与えないと言われた。まあ、三年生だから進路の方もあるしな。

ということで今、俺たちはガリガリと自主勉強をしている。

 

…カリカリ…。

シャーペンの音が響く。ちらりと見ると雪ノ下は数学の課題のドリルをしていた。それにすごくスラスラ解いている。しかもサボりたいやつがついやってしまう答えを見ながら書いているわけではなく自力で…。

しかもチラリとやってるところが見えたけど、数Bのベクトルのところだぞ。俺全く解けないのに…。ハイスペックすぎだろ…。

とおもっていると、

 

「ん?どうかした?」

「ん?あ、いや別に…」

「なにか言いたげな目をしているけどなぁー。……あ、分かった!私にイジメられたいとか??」

「んなわけねーだろ。俺はMじゃない」

 

…毎日こんな会話があるんです。しかもそういうことを聞いてくるときの雪ノ下の顔は、イタズラを仕掛けた子供のような顔をしている。ホント、コイツはなんというか、こうやって毎日絡み出してわかったことなんだが、雪ノ下はとにかく俺をいじってくるんだ。だけどその一方でいつも向けてくる完璧な笑顔の裏にはなにかがあるというか。俺は雪ノ下みたいな人間を見ると、そいつの裏を探りたいんだ。だけど正直裏が読み取れないんだ。ここ1ヶ月ほど絡んでいるんだが、まったく隙を見せない…。そこが俺は気になって仕方ないんだ。…雪ノ下の本当の姿とはなんなのだろう…と。

それからもう一つ、雪ノ下に聞きたいことがあった。

 

「お前ってさ、数学すごいできるのか?」

「ん?なんでそう思ったの?」

「え?だって今やってるそれって数Bのベクトルのところだろ?しかもそれをスラスラ解いてたし」

「え?比企谷くんは数学とかできないの?」

 

わざとらしくニヤニヤした顔で雪ノ下はそう聞いてきた。…ちくしょう悔しい!でもできない!

 

「顔ができませんっていってるみたいだけどー??」

「うるせ」

「あっはははー。怒った怒ったー♪」

 

心の中まで読まれた。俺の心は簡単に読まれるのにな…。雪ノ下のほうを見るとまだニヤニヤしている。そうですよ、俺は数学は苦手ですよ。おかげで俺は文系だと学年2位だが、理系分野となると下の方だ。

 

「比企谷くんの数学はどの位の点数なのかな?」

「…この前の学年末は学年で下から十番目」

「…え?ほんとに?」

 

うわー引いてるわー。ドン引きしてるわー。ま、そらそうでしょうね。数学が出来る人からすれば数学なんて公式覚えてそこに数字当てはめるだけじゃん、とかいってるけど、その公式が覚えられねーんだよ!。しかも当てはめても違う答えになるんだよっ。

すると雪ノ下は何かを決断したように指をパチンとならすと、

 

「よーし!私が数学教えてあげよう!」

「…はい?」

「言った通りだよ。私が数学教えてあげるの♪」

「いや、いいから。覚える気もないしそもそも数学できる気しないし、やる気もない。数学できなくても生きて行ける」

「また変な屁理屈こねてる。ほんと君は面白いなー♪でも、そこまで言われると逆に教えたくなるなぁー。…いいのかい?数学学年一位の私が直々に教えて上げるっていってるのに?」

 

雪ノ下は完璧な小悪魔的笑顔を浮かべて誘ってくる。小悪魔的笑顔って何だよ。あ、あれかまるで小町が俺になにか物を買ってほしいってオネダリしている時のあの笑顔みたいか。並の男ならその笑顔に即オッケーしてしまうんだろうが、俺は家に小町がいて鍛えられているので惑わされない。

…しかし、学年一位はきになる。まじか、学年一位に教えられたら…。

 

「あれー?どーするのかなー?一位だよー?」

「……ぐ、わかった。教えてくれ」

 

俺は誘いを受けることにした。まあ学年一位だからな。

 

「人にものを頼むときは言い方ってのがあるんじゃないー??」

 

また意地悪な笑顔をうかべて…。く、だがボッチな俺にはなんの苦痛もない。

 

「お願いします。俺に数学を教えてください」

「心の奥底からいいなさい。(ニコッ」

「…」

 

こえーよその完璧な笑顔。…こえーよ。

 

「…こんな数学ができない卑しい私目にどうか数学を教えてください」

「…はい、よくできましたー♪」

 

パチパチと拍手してたたえてくれた。どうだ、これがぼっちの底力だ…。

すると雪ノ下は手をパンとたたいて、

 

「じゃ、早速はじめよっか。どこがわからないの?」

「え?あ、えーと…」

 

と、俺はテスト範囲でわからないところを聞いていく。といっても、たくさんあるけどな。たくさんどころかほぼ全部か。

 

「…。比企谷くん、おおすぎない?」

 

それもそのはず、テスト範囲ほぼ全部がわからなかったのだ。さすがの雪ノ下も引いている。

 

「でも、できるようにしてあげる。私が教えるんだから90は目指さないとね(ニコッ」

「は、はい」

 

だからその完璧な笑顔やめてよ、何考えてるかわからないよ…。

 

――――――

 

 

雪ノ下は完全下校のチャイムがなるまでみっちり教えてくれた。

しかも意外にも教え方が上手い。教えてくれたところが今日一日でかなりわかった。まぁ、家に帰って復習もしないとな。

と、テキストをカバンに片付けてると、

 

「比企谷くんて理系全般苦手だよね?」

「ああ。理系はまじでわかんね」

「じゃ、物理とかも?」

「…ああ」

 

と、雪ノ下はしばらく顎に人差し指を当てて少し間をあけると、

 

「よしわかった。明日からテストまで教えてあげる!」

「え?」

「え?じゃないよ。理系教科を教えてあげるの。比企谷くんこのままじゃ落第するし、それに比企谷くんは意外に飲み込みが速いから楽しいし♪」

「当たり前だ。学習能力は鍛えてるからな」

「いいよー。飲み込みが早い子はえらいぞー」

 

というわけで俺は雪ノ下に勉強の世話をしてもらうことになった。

 

 

――――――

 

 

それから俺は毎日雪ノ下に勉強を教えてもらった。もちろん文系の勉強もしながら、理系はわからないところを聞いた。

雪ノ下の教え方は相変わらず丁寧でわかり易かった。やっぱりコミュニケーションが取れるやつってそういうのも得意なのか?…いや、単に雪ノ下のスペックが高いだけだろう。

 

そして迎えた試験日。一週間のうち中間テストは月曜から水曜まであって、テストの答案が残りの2日間で帰って来るというシステム。

俺は文系のみならず、雪ノ下に教えてもらった理系科目にはいっても、筆の勢いはとまらなかった。

 

…そして、テストが帰ってくると

 

数学96点

物理98点

 

特に教えてもらった2教科がかつてない高得点をたたき出した。ちなみにほかの教科も軒並み80以上連発。

それをみた雪ノ下も

 

「お、ノルマ達成できてるねー。えらいえらい」

「おう、お前のおかけだ。……その、あ、ありがと…な」

「どういたしまして(ニコッ」

 

と、完璧笑みをうかべるが。でも、いつもより柔らかい印象を受けた。

ちなみに雪ノ下のテストは全て95以上だった。理系に関しては数学も物理も100だった。…ありえなくね?

 

「なあ、雪ノ下」

「ん?なあに?」

「…、ほ、放課後ってあ、あいてるか?」

 

俺にしてはがんばって言えたと思う。こう人を誘うというのはトラウマがあるから…。あれは中学の時、勇気をだして友達を遊びにさそったら、まるで無かった事のようにスルーされた。黒歴史おもいだしちゃったよ。でもあれはこたえたなー…。無視って怖い。

でも、俺はずっと教えられてばかりだったからお礼がしたかった。

 

「ん?あいてるけどなんで?」

「いや、お礼がしたくて…」

「ふーん…」

 

と、雪ノ下は出会った時のような査定するような目で俺の方をみた。

 

「…いいよ、なにしてくれるの?」

 

真顔でそんなことを言ってきた。笑顔を絶やさない人が急に真顔になると怖いよねー。

でも、こんなとこで怖気付いていたらだてにこの1ヶ月雪ノ下と絡んでいない。

 

「いや、そっちがなにかなにか要求してきたらそれでいいけど」

「…ふーん」

 

……。

しばし沈黙が流れる。

 

と、

 

「…わかった。じゃ、お買い物に付き合って」

「わかった」

「あ、ただし」

「ん?なんだ?」

「今日の放課後じゃなくて、明日でいい?」

「…え?」

「ふふっデートみたいだねぇー。たのしみかな??」

 

うりうりと俺を肘で小突きながら、ニヤニヤして雪ノ下がこっちを向いてきた。だが甘いな、だてにボッチやってきてないんだ、こんなの本気で捉える訳が…

 

「そ、しょんなことないじょ?」

 

…はい、思いっきりキョドりました!しかも噛んじゃいました☆

なんかめっちゃ楽しみにしてるみたいになったじゃないか…。

すると雪ノ下は、

 

「うんうん、君はおもしろいなぁー。明日が楽しみだねー♪」

 

子供がイタズラしているような笑顔で言ってきた。

てか明日が楽しみってよくあるフラグじゃね?…おっといかんいかん、そんなわけあるわけ無い。あんなのは出来過ぎたラノベに過ぎない。ボッチなめんなよー。

とにもかくにも明日が思いやられる…。

 

 

 

続く

 

 

 




さて4話目ですね。
なかなか書くの大変ですしエピソードとか考えるのも大変ですねー。でも、そこが楽しい!
でも、今作書いてると日本語力がたりないなー…とおもってしまうことがしばしば。頑張らねば

さて、次回からはお買い物編ですね。一体どんなことが起こるのか楽しみにしておいてください。

感想などどんどんお待ちしております!

次回投稿は6月10日の17時です。

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