やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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いざ、決戦の舞台へ。前編

キャリーバッグの中に筆記用具や辞書などの必需品も詰めて、何日分の衣服も詰めて重くなったキャリーバッグを持って成田空港で飛行機を待っている俺と陽乃。

俺のポケットの中には小町の作ってくれたお守りが入っている。小町だって自分の受験で忙しい筈なのにな…。お兄ちゃんは世界で一番幸せだよ。

現在時刻7時で、飛行機の出発時間が9時40分だからそろそろ搭乗手続きをしないとな。

パスポートとかもちゃんと持ってきて…あったあった。

俺たちはいよいよ出国ロビーへと向かっていった。

 

 

 

 

 

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めんどくさい出国手続きを終えて、機内に乗り込んだ俺達は、ファーストクラスに搭乗していた。お金の心配はないとはいえ、なんだか気が弾けるぞ。

うおっ!座った感触がやばい!ふわふわで、すごい気持ちいいー。こりゃ移動時間12時間半でも耐えきれるわー。

 

「きもちいぃー」

「ファーストクラスだからねー」

 

ああー、やばい、朝早かったから眠気が…。

 

「お客様、毛布の方をお持ち致しましょうか?」

「え?あ、はい」

 

キャビンアテンダントの人、気が利くなー。これがファーストクラスなのか??

 

「寝る気満々だね」

「いいだろ?朝早かったんだから…ふあーぁー」

「…しかたないわね。あと、時差に気を付けないといけないよ」

 

そうだった。日本とロンドンは8時間の時差があるんだった。てことは、俺たちの到着時刻はロンドン時間で土曜日14時10分か。試験日は明日だからあんまりリズムは乱さないようにしないと。

まあすこしくらいなら、ということで寝ることにした。

 

「じゃ、寝るわ」

「わかったわ」

 

てことで、俺は目を閉じた。

 

 

 

 

 

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結局3時間ほど寝ていた。陽乃も少し寝たらしい。また寝てしまうとリズムが乱れてしまうからもう寝ないどこう。

そういえば、ファーストクラスのサービスっていろんなのがあるんだな。ちょっと頼んでみようか。

そういえばお昼時だな。お腹もすいてきたしなにか昼食がてら食べようか。

 

「陽乃、なんか頼んでみる?」

「ん?ああ、じゃなんにしようかな」

 

俺が見ている料理のメニュー表を横からのぞき込んでくる陽乃。どんどん陽乃の顔が近づいてきて…。は、はずかしいなこれだけ近づかれると…。

 

「なんにしよっかなー♪」

 

といいながらグイグイと体を押し付けてくる陽乃。くそう、絶対わざとだろこいつ。

俺がドキドキしているあいだに、陽乃はメニューを決め終わっていたので、俺も慌ててメニューを決めた。えーと…コーヒーとパンでいっか。

 

 

 

 

 

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すごい美味しかったな。さすがファーストクラスだ。予想を超える美味しさだった。パンもきっと厳選物なんだろうな。

 

腹ごしらえもして俺たちは入試対策をしていた。

時間もたっぷりあるし、最後の詰めをしとかないとな。

 

カリカリカリカリ

 

ファーストクラスに響くペンを走らせる音は、なかなか不格好な物だった。ファーストクラスで勉強するやつって居ないよな。大体俺のイメージだったら小説とかを足を組んで読んでるイメージがあるけど…。

 

カリカリカリカリ

 

もう目前に迫っているから二人共集中して勉強できている。…よし、完璧だ。必死に詰め込んだ甲斐あったよ。さて、次はこの教科を…。

 

 

カリカリカリカリ

 

陽乃も相当集中してるな。俺も負けないようにしないと…。

 

カリカリカリカリ

 

…。静かだ。ここには俺たち以外にも何人か人がいるけどみんな寝ているようだ。

 

カリカリカリカリ

 

よし、こっちも完璧だ。

 

カリカリカリカリ

 

うん、こっちも完璧だ。ふう、さすがに疲れたな。何時間してるんだ?…うわ、4時間もしてる。ロンドンまであと4時間くらいか。

 

「お客様、コーヒーのおかわりはどうでしょうか?」

「あ、あはい、お願いします」

 

すごいタイミングだな。ちょうどいいタイミングで来るあたり、さすがファーストクラスと言えるな。

隣をチラリとみると、陽乃はまだカリカリカリカリと勉強していた。

でも、その表情は真剣というよりも、追い込まれているような…なんというか、ちょっとやばい表情をしていた。

 

「おい、陽乃」

「…」

「おい、そろそろ休憩した方がいいぞ」

「…そうね、もうそんな時間だしね。うん、休憩しようかな」

 

陽乃が受ける科は俺よりも少しむすがしいからな。陽乃にしては余裕がないところが少し不安だけど。

 

「お待たせしました。そちらのお客様はどうされますか?」

「私もコーヒーを」

 

俺はすずっとコーヒーをすすった。…うん、うまい。砂糖もミルクもシロップもたっぷりの甘甘コーヒーは俺の心を落ち着かせてくれるぜ。きっと陽乃もリラックスしてくれるはずだ。

 

 

 

 

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ロンドン到着までの時間は、リラックスがてらに雑談をすることにした。

といっても、ロンドンのことについてだけど。

陽乃の入学が決まったら住む予定のマンションから、街の様子まで。

すごくリラックスができたと思う。陽乃も笑顔だったしな。

 

そうこうしているうちに、ロンドンに到着した。

入国手続きを終えて、ロンドンの地に足を踏み入れたのは3時だった。

 

「ここがロンドンか…」

「そうだねー。あ、あっちだよ、地下鉄は」

 

街を堪能してる場合じゃなかった。とりあえず地下鉄にのって、大学近くのホテルまで移動しないと。

 

地下鉄の駅に移動すると、さすがに人がおおいな。

俺ははぐれないように陽乃の手を握った。

あまりにも自然な振る舞い、クールだぜ…。

と、心の中で自画自賛していると、

 

「いっとくけど、全然かっこよくないよ。手震えてるし」

「あ…うん」

 

全然かっこよくなかった。

 

 

 

 

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車内は人がなかなか多いな。なんとか二人共座れたけど、周りの会話が英語ってのはすごい違和感があるなー。ほんとに海外に来たんだなと嫌でも実感させられるな。

横の人なんかすごい何か熱く語ってるし。英語は完璧に勉強してきたから会話の内容が分かるな。

どこかのサッカーチームのユニフォームを着ていて…あ、このチームって、ロンドンにあるアーセナルのユニフォームだ!

てか内容なんかアーセナルのことについて熱く語ってるし…。横のやつ勢いで引いてるじゃん。ここでも海外っていう感じがするな。車内で普通はこんな大声で熱く語らねーよな。

 

「目的の駅につくよ」

「おう」

 

やっとこのうるさいおっさんから離れられるよ…。

 

 

 

 

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まあまあ立派なホテルに到着して、今はチェックインを済ませているところだ。

ちなみに今からイギリスの人との会話は英語で喋っているけど、諸事情によりこちらでは日本語で書かせて頂きます。よろしくおねがいします。

…これ、誰に行ってるんだろうな。

 

「…確認が取れました。ではごゆっくりお楽しみください」

 

チェックインが終わると、ホテルマンの男の人が荷物を運んでくれた。

 

「お客様方はチャイニーズかい?」

「いえ、ジャパニーズよ」

「ああー、それは失礼した」

 

ホテルマンもこんなにフランクってさすが海外だな。でも、イギリス人といったらもっと紳士なのかと思ったけど…。時代は変わるんだな。

と、今度は俺に話しかけてきた。

 

「ジャパニーズといえば、岡崎がいいね!」

「岡崎?ああ、サッカーのフォワードの」

 

サッカー関連の会話って、さすがイギリス、サッカーの国だな。

 

「あと、麻也もがんばってるよね!」

「麻也?ああ、ディフェンダーの」

 

このおっさん、なかなか手ごわいな。

その後もサッカーの話ばかりしてきた。うーん…さすがイギリスだな…。

 

俺の部屋に到着したら、またいつかサッカーの話をしようと誘ってきたから、まあいつか適当にと返しておいた。この返しは最高だ。いつかまた適当は、一生話さないよ、という意味が込められているのだ。

 

「じゃ、また後でね八幡」

「ああ」

 

陽乃の部屋はとなりだった。

とりあえず、夜まで時間があるから勉強でもしようかな…。

 

 

 

 

 

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夕食はホテル外に有名なレストランがあるらしいのでそこにいった。

すこし値段は高めだったけど、すごい美味しかった。

でも、表情は硬い。やっぱり明日だからな本番は。

こういうのを楽しむのはまた今度ゆっくりと回った時に。

今は、明日に向けてのパワーを付けるという意味合いもこめて、食べておこう。

 

食べ終わって、部屋の前まで帰ってきたところで、

 

「八幡、明日頑張ろうね」

「もちろんだ」

「寝坊しないようにね」

「時差もあるし、気をつけるよ」

「うん。じゃ、おやすみ」

 

陽乃は部屋に戻っていった。さて、明日は9時起きだ。

 

 

 

続く




お知らせ

Charlotteと、もう一作品とのコラボ作品を作ろうと思っています。
それからガイル関連でも一作品作ろうと思っています。


次回投稿は8月21日の19時頃です。

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