やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。 作:武田ひんげん
翌日
俺はショッピングモールに向かって歩いている。昨日、俺は勉強を教えてもらったお礼に何かをしたいと言って、ならばということでお買い物についていくことになった。その帰りがけに雪ノ下から、
「じゃ、明日の10時に幕張のエオンのメインゲートにきてね♪」
なので徒歩で向かっているんだが、今更ながら遠いな…。最寄駅からバスが出ていたんだがそれを無視して歩いたのが間違いだった。
ちらりと時計を見ると9時45分。少し余裕を持って出て正解だったな。
と、目的地がみえて…きたけど…。
デカっ!とにかくデカッ。少し離れていてもその大きさがわかってしまう位大きな建物だった。聞いてみれば日本最大級らしいのだが、想像以上だった。
さすが千葉だ…。素晴らしいよ千葉…。
――――――
「はぁ、ついた…」
建物が見えてから10分後ようやくメインゲートに到着。時刻を見ると9時55分を回っていた。ギリギリか。
メインゲートはでっかくエオンの看板がついていて周りにはちょっとした植物や、ベンチが並んでいた。エコを考えてるだけあって力が入っているな。
そしてメインゲートの入口の横に、圧倒的な存在感を放っている女性がいた。
道行くひとがチラチラと見てしまうような見事な美貌を持った雪ノ下陽乃は、俺の方を見ると
「あ、比企谷くーん、おそいよおーー!」
大声をあげるなよ、目立つだろ…。ぼっちは密かに生きていたいのに…。
「もー比企谷くん、遅刻だよー」
「え?まだ9時56分ですけど?」
時計を確認しながらいうと、雪ノ下はむくれて、
「女の子と遊びに行く時はかならず30分前には来ておくべきなんだよ〜」
えそうなの?そんな早く出なきゃいけないの?
俺的にはまず時間ギリギリまでまって、本当に約束した場所に来ているか確認するのが普通かと…。
「なにかいうことはー?」
「え?あ、そ、その…悪かった」
「んー。まぁ、よろしい。じゃ、早速行こっか」
ということで、出発…。
俺はとっとと建物に入ろうとすると、グイッとすごい力で腕を引かれた。え?なんかまずったか?
「もぉー、先にとっとと入っていかないの。こういう時は横に並んで歩くのー」
と、雪ノ下は横に並んできた。しかも腕も組んできた。
ちょ、ちょちょっと待ってよお兄ちゃん。腕を組んで来ることはないんじゃないですか??しかも柔らかくて大きい物も当たってますし…。
あ、お兄さんじゃなくてお姉さんか。そんなことどうでもいいわ!
「ちょっと?腕を組んで来ることはないんじゃね?」
できるだけ平静を装って言った。
「そっかー、比企谷くんはまだそこまでできないかー。じゃ、仕方ないねー」
腕は解除してくれたけど、横並びは継続なのね。
――――――
ショッピングモールの中に入ると、土曜日なだけあって若者や家族連れがたくさんいた。…学校のやつに会いませんように…。
その中で雪ノ下はものすごく目立っていた。雪ノ下の振りまいているオーラ、容赦端麗な姿をみた人々は振り帰る。そいつらは俺の方を見ると、冷たい視線をおくってくる。…つらいわー。
「あ、あそこにいこーよー」
と言ってやってきたのは洋服の専門店。ただし、女性物をあつかっている専門店の。
「お、おい、こんなところに俺が入っていいのか?」
「ん?あー大丈夫大丈夫♪」
雪ノ下は俺がキョドってるところをからかうように笑っている。だけどここはやばい。と、俺が店から出ていこうとしたらものすごい力で腕を掴まれた。やばいって、助けてよぉー…。
といっても助けてくれる人などいるはずもなかった…。
…ふええー回りからの視線が痛いよ…。そんな中ギャル風の店員がやってきた。
「いらっしゃいませー。どの服をお探しですかー?」
「んーちょっと夏に向けてのを探してるんだけどー」
「なるほど、それからそちらの男性は彼氏さんですかぁー?」
「んーまあそんなところ?(ニヤ」
「違います。全くそんなのではありません。誤解しないでください」
「比企谷くんたら照れ屋さんなんだからー」
「うっせ」
雪ノ下がからかってきて俺が全力で否定する、そんなやりとりをしていると店員が、
「ふふふ、仲がよろしいんですねー。ではごゆっくりとー」
といってその場から立ち去っていった。…絶対誤解してるよなあの感じ。それもこれもすべて雪ノ下のせいだ…。
ちらりと雪ノ下のほうを見ると、近所の悪ガキがいたずらをしているような笑みを浮かべていた。
…ちくしょう、またコイツの思い通りにからかわれて
しまった…。
そのあと、雪ノ下は真面目に服を選んでいた。俺は外に
出よう(逃げよう)としたが、その度に腕をガッチリと掴まれてしまって逃げれなかった。…ボッチにはつらいよぉー…。
「ねえねえー、この服似合うかなー」
雪ノ下は薄手の黄緑のカーディガンと長めの白のスカートを見せてきた。正直似合うと思った。だけど、俺にはファッションなんてのは良く分からないので詳細には理由は言えないので、
「あー似合う似合う」
「ねえこのスカートどうかな?」
「おう、にあってるよ」
こう言うしかなかった。こういう時ってあるよなー。小町とかも「お兄ちゃん似合ってるかなー?」なんて聞いてくることがあるけど、俺からしたらどう答えていいのかわからないんだよな。なのでここは適当に似合うよーとか言っとけば大丈夫。
「もぉー!そんな適当に言わないでしっかり感想いってよー!ほらほらー」
「ていわれても、俺はよくわかんねーから」
「比企谷くんはファッションについても勉強しなさい。ポイント減点だよー」
いつからポイント制になったんですかね?
雪ノ下は膨れっ面をしたが、不覚にもその顔を可愛いと思ってしまった。…はっ、いかんいかん、なんて邪なことを考えているんだ!煩悩を捨て去れーぇい。
とか、一人で葛藤していると、いつの間にかさっき選んでいた服を購入していた。しかも、見てないあいだにも何着かいつの間にか買っていた。
さて、さっさとこの店を出ようかね、とおもっていたら、雪ノ下は俺の目の前に紙袋を突き出してきた。
…なるほどね、俺にもてと…。
「おー、わかってるねー。今のはポイント高いよぉー♪」
「そらどーも」
なんだかお付きみたいになってますけどね。もしかして今日一日これで行くのか?ま、勉強みてくれたお礼だしな。
――――――
時刻は11時を少し回ったところだった。すると雪の下は、
「ちょっとはやいけど、お昼にしよっかー。…あ、あそこのスタボに入ろうよー」
と指さしたのは女神のマークのついた某カフェチェーン店だった。あそこって日本全国にあるんだよな?そういえばつい最近にようやく鳥取に一号店ができてこれで日本でスタボがない県がなくなったんだよなー。鳥取県民におめでとう。
中に入るとお昼前なのでそこまで客がいなかった。俺たちは外に面している窓側の席に座った。たったの数時間しか経っていないのに無駄に疲れた俺は座ると同時に、ふぃーとおっさん臭い声がでてしまった。
「比企谷くんおっさんみたいー」
「うっせ、つかれたんだよ」
「へえー、それって誰のせいかな?」
「お前のせいだよ…。あんな所に連れていきやがって」
「いやー、あそこに行ったら比企谷くんがどんな反応するかとおもってさー♪」
こいつめ、楽しんでやがったな…。
まあ、小腹がすいていたのでそれは水に流す。頼んだメニューは俺はコーヒーとホットドックを、雪ノ下はコーヒーと卵サンドを頼んだ。
俺はコーヒーがくると、いつものように大量のシロップとミルクと砂糖を掛ける。俺はMAXコーヒーという甘さの塊のようなコーヒーを愛飲していて、自宅にケースがあるくらい甘党なんだ。
それを見た雪ノ下は、
「うわーそんなにかけちゃうの…」
「わるいか?」
「正直ひくなー」
「俺はこれが好きなんだよ。家にはまっ缶がケースである」
「ふーん…」
なんで含みのある笑いをするんだよ、こえーよ。ちなみに雪ノ下はブラックで飲んでいた。…なんか似合う。イッタラ殺されるけどね!
うん、やっぱりうまいな甘いのは。
そこでふと、疑問に思ったことを聞いてみた。
「なあ、このあとどうするんだ?」
「んーとね、映画みにいくよ」
はい?
続く
さて、のんびりですね。
のんびりすぎかも…。
日本語力のなさを嘆く今日この頃。
それからエオンとスタボは実名で書くとまずいかなとおもって一文字ずつ変えました。
これから平日は17時更新でいきます。
よろしくおねがいします。