やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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高い所から見る花火はとても綺麗。

俺は小町と祭りに来たはずだったのだが、その小町が雪ノ下陽乃とつながっていて、そのおかげで雪ノ下と平塚先生も加えて祭りを回ることになった。

祭りはとても人が多くて楽しめるようなものではなかったが、その途中後ろから人波が起きてしまった。

その後いろいろな経緯を経て現在に至る。

 

「さ、屋台をまわっていこうかー」

「…おう」

 

雪ノ下と二人きりになってしまった。まあ、小町や平塚先生は無事みたいだし、その二人が見つかればいいのだが…

 

しかしそう上手くはいかなかった。祭りは人だらけで、探そうにしても誰が誰だかもわからないし、会場が広いので探そうにしてもなかなか上手く探せない。

 

「こりゃ、あの二人を探すのはむずかしいな」

「うん、そうだねー」

 

あの二人(特に小町)が心配だ。平塚先生は大人だから大丈夫だとしても小町はまだ中学生だ。流石に心配になる。ということで、小町にどこにいるのかとメールを送ると、

 

「「小町は先に帰るねー。いまモノレールだから。じゃお兄ちゃん、後はがんばってね☆」」

 

あいつ帰りやがった。…ま、そっちの方が人も少ないし、安全でいっか。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

雪ノ下はどこに行っても注目される。ここでもそうだった。

紫色の浴衣に水仙の模様が入った浴衣はどこか大人の色香を醸し抱いていた。

 

「ねえねえ、あそこのたこ焼き食べたーい!」

 

そんなこというもんだから、周りの目は俺を睨む目に変わる。…ボッチはつらいよ…

 

俺らは雪ノ下のリクエスト通りたこ焼きを買うために屋台に並んだが、既に結構並んでいて買えるまでに時間がかかりそうだった。

 

「結構並んでるねー…」

「ああ、しばらくかかりそうだな」

 

たこ焼きはソース掛けたりかつお節掛けたりするから前には進んでいるがスピードは遅かった。

結局俺たちは並び始めてから10分後に買うことができた。

俺はちらりと時計を見ると時刻は20時20分だった。ここに来たのが18時位だから軽く2時間は回っていた。

 

「もうすぐ8時半だな」

「え?もう?花火始まっちゃうじゃんー」

 

たしか小町が言ってたが花火の時間が20時45分だったからあと15分か。

 

「なあ、花火見ないで帰りたいんだけど」

「え?なんでー?」

「いやだって、花火まで見たら帰りのモノレールが混雑するだろ?それがいやなんだよ」

「…花火見るよ」

「いや、俺の言ったこ――――――」

 

言い切る前に雪ノ下は強引に俺の腕を引いて歩き出した。…おいちょっと、二つの柔らかいものが当たってますよ…

 

「おいどこ行くんだ??」

「ひ・み・つ♪」

 

なにちょっと小悪魔っぽい笑顔って見せてくるんだよ。ほんといろんな表情もってるなー…

 

 

 

 

――――――

 

 

 

「さ、ここでみよう!」

「え、ここ入っていいのか?」

 

連れてこられたのは、関係者以外立ち入り禁止と書かれた高層ビルのだった。その入口の所にたっていた警備員のごついおじさんからこちらを睨まれたが、雪ノ下がそのおじさんと少し話すと、今までの強面から一転ニッコリとした表情で俺たちを通してくれた。…雪ノ下って何者だよ。

俺たちはビルの屋上へとむかった。

 

「なあさっき通してくれたけど、お前ってなにかの関係者なのか?」

「まあ、ちょっとねー。それよりも、ここ良くない?すごい見晴らしいいよ!」

「あ、ああ、すごいなここ…」

 

一転景色を見るとそれはすごいものだった。ビルの屋上にあるせいか周りに障害物はなく、夜景も綺麗だった。

そしてちょうどいいタイミングで花火が打ち上がり始めた。

 

高いところから見る花火はとても綺麗だった。今まで地上から見ていたが、ビルの屋上、正確には50階から見る景色は凄かった。

 

…ふいに、ちらりと横の雪ノ下を見ると、花火の光と雪ノ下のシルエットが見事にマッチしてすごく美しい雰囲気を醸し出していた。花火が光る度に雪ノ下の表情が見えるが、その表情はなんだか切ないものだった。

 

と、雪ノ下がこっちを見る。俺と目が合う。

俺はなんだかドキドキしている。決して階段を上った時のドキドキではないことは分かっていた。

しかし、花火が光る度に見える雪ノ下の顔を見ているとすごくドキドキしてしまった…

 

「…なんでこっちを見ているの?」

「あ、え、えーと、た、たまたまだよ」

「ふふふ、キョドってるよー?」

 

その時の雪ノ下の表情は暗くて良く見えないが、花火が光る度に見える僅かな表情はいつものからかうような完璧な笑顔ではなく、やさしい微笑みだった。

 

「…お前、そんな顔できるんだな」

「…え?そう?どんな顔してた?」

「なんかこう、いつもと違う笑顔だったぞ」

 

はっ!ここで俺は我に帰った。何恥ずかしいセリフ言ってるんだよ。

 

「…そうか、いつもと違うか…そうか、そうなんだね…」

 

雪ノ下の表情は暗くて見えなかったが、声色にいつもの勢いはなかった。

 

その後はなんだか気まずくなって話すことはなかった。

そして花火が終わった。時計を見たら9時だった。三十分しかたってないのに1時間くらいたっている気分だった。

 

そして、俺たちは無言のままエレベーターで一階まで降りていった。

 

一階まで降りたら雪ノ下がこっちを振り返って、いつもの完璧な笑顔を見せて

 

「今日は楽しかったねー!花火も綺麗だったし」

「お、おうそうだな」

「…じゃ、また二学期ね。夏休みのうちは私にも用事があるから電話とかかけないから安心しなさい。じゃ、またね比企谷くん!」

 

そういうと雪ノ下は帰っていった。

今日はなんだか変な気分だ。帰って寝よ…

 

 

 

続く

 

 

 




次回投稿は6月20日の17時です。
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