博麗神社。1人になると結構広いんだね。
「…にしても、ちょっとだけ買い物をしてくる、ねぇ。まぁ、霊夢にしか分からないのだろうけどさ」
久遠はそう言いながら鈴奈庵、と霊夢の字で書かれた紙きれを手にしてみる。
そんなに心配するような場所なのか、と思う。
「霊夢がそう言うんならそうなんだろうなー…」
紙きれを手にしたまま、その和室の一角でゆっくりと、仰向けになる。
実は鈴奈庵のことを知らないわけではない。むしろ知っている方で、常連。
なにせ、そこからでしか本を借りたり返したり、買ったりすることができないのだから。
本当なら、香霖堂でもいいのだが…。
「いくらもう定着した外来人だからって、安全じゃあないんだよなー」
他の例―――守矢神社一同、紅魔館一同―――があるとは言え、自分は完全な外の世界から来た人間。
なんらかのはずみで様々な能力を持っているだけの。
気配に気づいたのか、上半身を起こし、縁側の方へと目をやる。
するといつからいたのか分からないが、萃香がいた。
「なんだ、いつものメンツの1人か。霊夢ならまだ買い物してるんじゃないの?」
わりとあっさり、そう言い放ち、持っている紙きれを自分が見やすいように動かして再度見始める。
「霊夢も目的なんだけどね。あんたも会う目的なんだよ?久遠。いつか酒を飲みあいたいね」
ニコニコ、と社交的な笑みを浮かべている。
紙きれを近くにあった机におき、萃香の方を向き、苦笑いを浮かべる。
「私、萃香に好かれるようなことをした覚えはないんだけどな。あと鬼とお酒だなんて、私に死ねと言っているようなものだよ?」
「幻想郷に慣れたせいで、鈍ったようだね。いつの間にかしているんだよ。恐縮しているのか?」
「いや、飲む量に差が……」
楽しそうに笑いながら話す萃香に対し、さすがに引きつった笑みを浮かべる久遠。
ちょうどよく、霊夢が里から帰ってきたらしく、久遠がいち早く反応する。
「っと…お帰りみたいだね、霊夢が」
助け舟がきた、と思った。本当に。
買った物を片付けてから今私と萃香(縁側に膝たちしている)のいる和室の方にきた。
「あんた…久遠(こいつ)に変な誘いをしてないでしょうね。特に飲み会の」
呆れ顔を萃香に向けながら間に座る。
「一度は飲んでみたいんだよね。霊夢、駄目なの?」
「駄目ったら駄目よ。ろくな目にあわないわ」
どこか拗ねそうな表情に、ジト目でそうすぐさま返す霊夢。
「少しなら平気なんだろうけど…さすが幻想郷だよね。無法地」
クスッ、と思わず笑ってそんなことを言う。
「それに適応しきったあんたもおかしいけどもね。んで、萃香…なに用よ」
萃香は困ったように笑った。
「ちょっとからかいにきただけだよ。2人をね。面白そうだろう?」
「ったく…。呆れる奴ね。魔理沙以上だわ」
やっぱり今日も平和だと思った。
雑談をしている最中、私を鍛えたいというので相手になった。
…完敗して、萃香に笑われた。
「久遠。あんた、いい加減手を抜くのやめてくれないかしら?」
「いやだよ、断るね。あと私は霊夢と大体同じぐらいにしているだけだしー」
今にも怒りそうな表情の霊夢。その巫女服は無傷。
対して久遠は弾幕ごっこかなにかで遊んだのか、服がある程度ぼろぼろになっている。
「あっははは、霊夢。さすがに躊躇いがあるんだろうね」
「魔理沙と大違いだわ」
その子と比べられたら困る、と思いながら久遠は立ち上がる。
余力があるのか、立ち上がるなり軽い運動をする。
「魔理沙はライバルでもあるからそうするんであって、私は違うの。だから弾幕ごっこも本気出したくな~い」
外の世界で言う準備運動を終えるなり、面倒くさそうに呟いた。
「本当あんたって奴は…」
萃香は微笑みながらその様子をみていた。
日常系なんですよ。ギャグはそんなにいれれないと思いますが。