如月の誕生日   作:キシト。

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前半です。


如月の誕生日 前編

春が過ぎ去り暑さが本格的に酷くなり始める6月。

今日も今日とて執務室で書類に目を通し、印鑑を押す提督。

疲れたのか筆を置き、軽く伸びをしながらカレンダーを確認すると6月5日と書かれていた。

 

「ああ、もうそんな時期か」

 

「そんな時期?」

提督が呟くと隣で作業をしていた如月が疑問符を出しながら顔を傾ける。

提督はそんな愛らしい仕草に微笑みながらこう言った。

「如月は俺が高校2年生の夏休み中に提督に成ったのは知っているな?」

「ええ。その前は普通の高校生だったんでしょう?」

「ああ、今日はその通っていた高校では丁度校外学習が実施されていたんだ」

「へぇ、そうだったの・・・」

「ああ、場所は上野公園から浅草の雷門まで、六人班だったんだが・・・良くも悪くもオタクの集まりだったからね。

上野近くの博物館の零戦以外ではこれと言ってはしゃぐ事も無かったかな?」

まあ、食べ歩きは煩かったけどっと笑いながら言う。

如月もそれにつられてクスクスと笑う。

「俺の場合は校外学習中と言うよりも終わった後がメインだったよ」

「終わった後?」

「ああ、浅草の奥に川が合ってね、その奥に行くと山田記念病院が在るんだ」

「病院?怪我でもしていたの?」

「違う違う、その病院には駆逐艦初霜の錨が置いてあるんだよ」

「まあ、初霜ちゃんの錨が?」

「そうそう、解散後は一人で行って写真を撮らせて貰ったよ」

そう言うと提督は机の引き出しから一枚の写真を取り出す。

「ほら、これだよ」

「・・・たしかに初霜ちゃんの錨ね」

そうやって時間を潰していると卯月が執務室のドアをノックしてから入ってきた。

「交代に来たぴょん!」

「ああ、もうそんな時間か。

如月、お疲れ様」

「司令官もお疲れ様。あまり無理しないでね?」

「ああ」

提督は如月が退出するのを見て、卯月に話を振る。

「 卯月・・・今日がなんの日か勿論分かっているよな?」

「勿論だぴょん!司令官こそ忘れてないぴょんよね~?」

「勿論だ、今日は・・・・・・・・・」

 

 

「「・・・・・・・・・如月の進水式だ(ぴょん)!!」」

 

 

二人は満足したように頷く。

「ちゃんと間宮さんと鳳祥さんには言っておいたぴょん」

「回りにはちゃんと根回ししたな?」

「勿論だぴょん」

「うむ、後はケーキとプレゼントか」

「そうぴょんね。プレゼントは用意できてるぴょん?」

「当然だ。その為にわざわざ如月の練度を99にしたんだからな」

提督は卯月に誕生パーティの予定が進んでいるか聞き、その答えに満足した。

「さて、そろそろ俺はケーキを作りに行ってくる」

「場所は大丈夫ぴょん?」

「ああ、問題ない。知り合いの飲食店で作るからな」

「わかったぴょん」

提督はそう言うと隣の部屋に入る。

それから十分位して私服に着替えた提督が部屋から出てくる。

「それじゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃいぴょん!」

卯月の見送りを受けながら執務室を出ていく提督。

「さてと、取り合えず掃除でもするぴょん」

そう言った卯月はピンクの兎柄のエプロンを付け頭に同じく兎柄の三角巾を付け掃除の準備をする。

「隅から隅まで綺麗にするぴょん♪」

ニヤリと笑いながら掃除を開始する卯月。

提督が帰ってくる頃には終わるだろう(我らが聖典共々)。

 

 

一方如月は食堂に来ていた。

昼食である焼き魚定食を運び、席に座る。

「隣良いですか?」

「あら?初霜ちゃん?」

如月に話しかけたのは提督の校外学習で話題に出てきた初霜だった。

「ええ、どうぞ」

「ありがとうございます」

初霜は如月に礼を言って隣に座る。

どうやら初霜は唐揚げ定食のようだ。

「あ、如月さんは焼き魚定食ですか」

「ええ、初霜ちゃんは唐揚げ定食なのね」

「はい!あ、良かったら少し交換しません?」

「うふふ、良いわよ」

如月は初霜の提案を微笑みながら受け取る。

「どうぞ」

「ありがとう。・・・・・・はい」

「ありがとうございます」

初霜は唐揚げを三個、如月は魚の身を1/4を交換した。

「美味しいですね、焼き魚!」

「ええ、唐揚げも美味しいわぁ」

互いに交換した魚と唐揚げに舌づつみを打ちつつ二人は食事を終える。

 

 

食事を終わらせた如月は初霜と別れ、図書室に来ていた。

提督の趣味のせいか、図書室と言うより何処かのアニメのような図書館みたいになっている。

如月は此処にある恋愛小説や少女漫画を読むためにやって来た。

だが、何時ものコーナーには先客がいた。

「弥生ちゃんもこの本読むの?」

「?如月?・・・・・・たまに」

如月の妹の弥生だった。

弥生は如月が良く読む小説の最新刊を読んでいた。

その小説はどこか自分と提督の関係に近いものを感じて共感しやすかったのだ。

「如月は何かあるの?」

「そうねぇ、これかしら?」

そう言って選んだのはバスケ部のエースと文学少女の恋愛漫画だった。

「意外」

「ありきたりっぽいけどこう言う暑い展開も面白いのよね~」

「そうなんだ」

「ええ、この明日香ちゃんが弥生ちゃんに似ててね~」

「似てる、かな?」

「ええ、内気だけど言うことはちゃんと言う所とか、ね?」

如月がそう言うと弥生が気恥ずかしいように頬を赤くする。

「弥生~?終わった~?」

弥生と話し込んでいると如月の後ろから間の抜けた聞き覚えのある声が聞こえる。

「あっれ~?如月じゃん。ち~っす」

「あらあら、望月ちゃん」

後ろを振り返ると、もう一人の妹望月が立っていた。

「望月も本を読みに?」

「あ~、昼寝と弥生の付き添いだよ」

「そうなの?」

「うん」

弥生が望月の言葉を肯定する。

「終わったなら行こうぜぇ~」

「あ、待って・・・」

弥生が慌てて本を棚に戻し、望月を追いかける。

如月はそれを微笑みながら見送り、姿が見えなくなると本を一冊取り出してカウンターに向かう。

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