IS~制御不能の黒皇帝~   作:暴風圏0294

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 まーたもや前回との投稿ペースが開いてしまいました。
 これといって自分の中で投稿ペースを定めているわけではありませんがやっぱ遅いなぁ、と思います。思うだけです早くはなりません(笑)

 ではどうぞー


第9話 あなたとわたし

 

 

 ラウラが編入してきた日の夜のことだった。

「んー……」

 深夜。消灯時間を過ぎた今、学園の生徒は皆寝静まっている。起きている者と言えば大きく欠伸をして、しまった、と監視カメラに背を向けた警備員ぐらいであろう。

 一夏とシャルルの部屋でも暗闇の中で時計の秒針の音だけが静かに動いている。

「(ふん、間抜けな寝顔だな)」

 しかしながら現在一夏の寝顔を忌々しげに睨む者が居る。

「(軍人たるもの睡眠中でも意識を張り巡らしておくべきであろうが)」

 視線は天井に空いた小さな穴から、ちょうど一夏の真上だ。

 もちろん一夏は軍人ではない。だが彼女の考えとしてISを学ぶ者は例外なく軍人としての心意気を持つべき、となっているのだから仕方がないのかもしれない。(正論といえば正論だが)

「(本当は今この瞬間にでも夜襲をかけたいところだが……。ここで騒ぎを起こせば教官に負担をかけてしまうかもしれん。今日は引くか……)」

 負担どころか千冬の逆鱗に触れることになるだろう。

「命拾いしたな。織斑一夏」

 吐き捨てるように言い残し、軍人ラウラ・ボーデヴィッヒは天井の穴を塞いだ。

 

 

〇〇〇〇〇〇

 

 

翌朝

 

「ふぅ」

 早朝、円は学園内に流れる川の畔に生えた木にぶら下がっていた。

 先程まで敷地内を走って回り、今は木の枝に足を引っ掛けて腹筋運動をしている。

「早朝からトレーニングとは感心だな」

 背後から声をかけられ、円は腹筋を使って一気に起き上がる。そのまま枝の上に座った。

「先生こそ朝から精が出ますね」

 見ると千冬が下から見上げている。動きやすそいうなジャージ姿で首にはタオルが掛けられていた。

「私を見下ろすとは随分偉くなったな」

「失礼しましたー」

 言うと円はふっ、と後ろ向きに倒れ込んだ。そして引っ掛けていた足をほどくと頭を支点に振り子のように足を降り下ろして着地した。

「よろしい」

 満足そうに笑い千冬は円の横を通って川辺に立った。それに習い円も千冬の横に並ぶ。

「毎朝トレーニングしているのか?」

「ま、そうですね。やっぱり強くなるためには走らなきゃなぁって」

 ここで円からのワンポイントアドバイス。走り込むと言ってもべつに全力疾走である必要はなく、軽いジョギング程度で構わない。コツは疲れないように走ること。(疲れると筋肉は硬直を始めてしまう。柔らかく良質な筋肉を着けるなら適度に走る事が望まれる)

「一夏にも同じ事を言えるがおまえに敬語で話されるとなんだか落ち着かんな」

「だってタメ口だとちーちゃん怒るじゃん」

「……まぁ今ぐらいは許してやろう」

 口を尖らせる円に苦笑し千冬は腕組みをした。システムで管理されている川の流れ星をぼんやりと眺めながら再び口を開く。

「師匠(せんせい)は達者にされているか?」

 円の祖父の事だ。彼女は彼を「師匠(せんせい)」と呼び、慕っていた。

「達者も達者。ありゃまだまだ長生きするね」

 カラカラと笑いながら円が答える。同じく川を見る視線の先で魚が跳ねた。

「それもそうだな」

 安心したように息をつくと広がる波紋から視線を外し今度は空を見上げた。

 薄く夜の色が残った空は星の残照と起き抜けの太陽の光とで鮮やかに彩られている。

「学園での生活はどうだ。慣れてきたか?」

「中学の時に少し勉強したけどやっぱり難しいかな。まぁでも一夏やシャルル達がいろいろ教えてくれるし楽しいよ」

 欠伸を一つ円が目を擦る。ちなみに昨晩から同室のラウラはまだ寝ているようだったので起こさぬように静かに出てきた。

「……すまんな」

「? なんでちーちゃんが謝るのさ」

「いや、気にしないでくれ」

「……わかった」

 不思議そうに千冬の顔を横目で見た。バツが悪そうに咳払いをして千冬は円へ向き直る。

「ところで円……」

「んー?」

「久しぶりにやらんか?」

 円も千冬へ向く。握った拳を見せて不敵に笑っていた。

 一瞬呆気にとられたがすぐに察した円は同じく拳を作り笑いながら

「良いね。やろうか」

 千冬と拳を合わせた。

 

 

 所変わってここは円の自室だ。

「ん……ん~?」 

 ブラインドの隙間から差し込む朝日にあてられてラウラが顔をしかめる。傍らにはドイツ製の大型拳銃H&K USPが置かれており、あどけない少女の寝顔と無骨や拳銃というなんともミスマッチな絵面となっていた。

「朝か……」

 寝返りを打って円の方へ向く、が彼の姿が見えない。寝ぼけ眼のラウラは何度か目をしぱたかせるとやはり寝起きの緩い声音で

「あれ、円は?」

 起き上がら部屋を見渡すが円はどこにもいない。トイレか? モゾモゾとベッドから抜け出しラウラは部屋ごとについているトイレを覗いた。

「いない……」

 トイレにもいない。再び部屋の中心へ戻るとラウラは壁にハンガーで掛けられていた円のジャージが無いことに気がついた。

「あぁ、そういえば毎朝トレーニングをしていると言っていたな」

 昨晩に食堂でそんなことを言っていたのを思い出してラウラは一人頷く。

「よし、私も合流するか」

 思い立ったら即行動。脳内ブリーフィングをすることなくラウラは動きやすい服装へと着替え始めた。

 

 

 そして場所は戻り川の畔である。

 円と千冬は少し距離を開けて正面で向き合っていた。

「ホント久しぶりだね。ちーちゃん腕鈍ってないよね?」

「さぁな。だがおまえに負けるほど衰えてはいないさ」

 言いながら千冬は右足を後ろに引き、手を開いて構える。

「それじゃ……お手並み拝見!」

 一歩踏み込んだ円は千冬の左膝へ直突きを放つ。シュートボクシングでも使われる中下段への突きである。

 しかし千冬は足を持ち上げ、腕を下ろしてその拳を鋏んで止めた。鋏殺しだ。

「ほう、随分と突きが速くなったな」

 拘束を解き円を突き飛ばす。円が踏みとどまったのを確認すると前に出した左手をチョイチョイと屈伸させた。

 どこからでも打ってこい。ということだろう。

「ッ!」

 挑発を受け、円は即座に左のハイキックを繰り出す。円の最も得意とする技であり本人いわく「俺の必殺技 」だそうだ。

 空手で言うところの「蹴り」ではない。にムエタイなどで見られる垂直立ちからほぼ初動を見せずに打ち出すキックが千冬の顔へと襲いかかる。

「あまいぞっ!」

 恐らく今のハイキックは近接戦闘に慣れている鈴音でも避けるのは容易ではなかっただろう。それに威力もかなりあったので受け止めるのも逆に危険だったと思われる。

 だがしかし千冬はそれを難なく避け、そのうえ蹴り足のくるぶしを掴んで止めてのけた。

 そのまま掬い上げるように円を投げ飛ばし、地面へ叩きつける。

「けほっ」

 受け身はとったもののやはり落下のダメージは消し切れず円の口からは小さく咳が出た。

 千冬が足を掴んでいた手を離す。

「受け身が上手くなったな」

 拳を作り、腰で構えた。反対の手はまるで狙いを絞るように仰向けになっている円の顔面へ向けられている。

「(ヤバッ!)」

 危険を察知した円はすぐさま横に転がってネックスプリングで起き上がった。

 ズドン!

 それとほぼ同じに千冬の下段突きが放たれた。轟音が響き、円がぶら下がっていた木が揺らされる。

 数枚の葉がヒラヒラと枝から落ち、川へと着水し流されていった。

 先程まで円の顔があった辺りには千冬の拳が突き刺さっており、引き抜くと土がパラパラと落ちた。

「相変わらずすげぇパワー……」

「拳で殴るのはあまり好きではないがな」

「そうなの?」

 意外そうに円が首を傾げる。いつもは出席簿でバシバシ殴るクセに、と言いたげな視線を送りつつ。

「そもそも人間の手は拳を作るような構造になっていない。掌で打つ方が理に敵っているのさ」

 手についた土を払いながら千冬が立ち上がる。

「だがまぁ……。おまえが多少は成長しているのが見れた事は素直に嬉しいよ」

「俺も。ちーちゃんが昔と変わってなくて安心した」

 服の乱れを直した円はしっかりと背筋を伸ばして立礼をした。

「ありがとうござい……あてっ」

 頭を下げると脳天に千冬の手刀が落とされた。少し小突くようなものだが。

「練習とはいえ隙が多いな。そういう甘いところは昔のままだ」

「ほんっとちーちゃんのそういうとこは昔のまんまだよね」

 いたずらっぽく笑う千冬を円は非難がましく見る。恐らく昔にもこういったやり取りがあったのだろう。

「教官!」

「ん?」

 学生寮の方向からラウラが駆けてきた。黒のタンクトップに迷彩柄のズボン、踵とつま先を鋼で補強したブーツ。髪は後ろで一つに結んでいる。

 どこから見てもキャンプ中の軍人のような出で立ちのラウラは千冬の姿を見つけた途端に猛スピードで近づいてきた。

「おはようございます。教官」

「ああ、おはよう。おまえもトレーニングか?」

「はい、円も毎朝やっていると聞いたので」

 千冬と話すラウラの表情はとても明るく、まるで大好きなアイドルにでも会ったような年相応の可愛らしさがあった。

 普段からそうしてれば良いのに。

 口には出さないが円はそう感じた。

 

「では私は戻る。おまえ達も適当なところで切り上げろよ」

「はい!」

「はーい」

 そう言って千冬は戻っていった。それを見送った後ラウラが口を開く。

「ところでこの後はどうするのだ?」

「時間も時間だしな。寮まで軽く走りながら戻るよ」

 言って円は走りだす。ラウラもそれに続いた。

「そういえば二人で何をしていたんだ? なにやら地面に穴があいていたが……」

「ちょっとした格闘訓練ってとこかな」

 その答えにラウラはハッ、とした表情となり。

「なんだと!? 私も参加したかったぞ!」

 ズルいぞ、と声を張り上げた。そんなラウラを宥めるように円は「また今度な」と答えるのであった。

 

 





 というわけで第9話でした(早いもんだなぁ)
 単に一つ結びラウラ(あくまで「ポニーテール」ではなく「適当に結んだ一つ結び」というのがミソ)が書きたかっただけでもあるのですが(笑)

 さて、ここでなんとなく聞いてみたいのですがこの作品の文って見やすいでしょうか?
 私的には読むのも書くのもつめつめなのが好きなのですが調べてみるといわゆるけWEB小説は台詞と地の文に行間を空けた方が見やすくて良い、とのこと。

 できれば感想や一言などで答えてもらえればてっとり早いのですがそれだと規約違反や他の読者さん達に迷惑がかかるやもしれぬので答えていただける場合は是非、メッセージなどでおねがいします。

 では読了ありがとうございました。次回もまたノシ
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