IS~制御不能の黒皇帝~   作:暴風圏0294

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というわけで新年一発目でございます。やったね
相変わらず遅い更新でいつになったら完結するのやら、皆目見当もつきませんね(笑)

こんな作者と作品ですが今年もよろしくお願いいたします




第12話 葡萄to武道

「ここまでが武道の基本『礼節』だ。よく覚えておけ」

 帯が結べないだの一夏が平常運行だの武道なんか嫌いだーだのと問題はいろいろとあったが一先ず『礼』に関しての説明が終わった。

 相手への敬意を忘れぬように、と言っていたが立礼の最後に「腰の角度は四十五度、目線はやや上目遣いで相手の手元からずらすなよ。敬意と警戒を忘れるな」と説明する辺りやはり強かである。

「ではこれから君たちに『武』というものを実際に見てもらおうと思う。紅波と篠ノ之、前に出ろ」

 呼ばれた二人が皆の前に出る。他の生徒は横座り、胡座、正座のどれかで座っているよう指示されたのでそのようにしていた。

 基本的に道場では膝を立てて座ってはならない。体育座りなどは以ての他である。体育座りなど膝を立てる座りかたをしていると万が一に人が吹っ飛んできてぶつかった時に骨折など怪我の元になるからだ。

「二人は格闘経験においてお前達より頭一つ抜けている。きっと参考になるだろう、目に焼きつけておけ」

 促され、二人は畳を数枚挟んで向き合う。そして立礼。片時も油断は許さない。

 礼を終えて互いが数歩踏み込んだところで千冬が腕を大きく挙げた。

「はじめッッ!」

 構えを取り、静止。お互いに動かず打ち込まずの状態が暫く続く。 自然と道場は静寂に包まれた。

 誰かが痺れた足をほぐしているのだろう。畳の擦れる音がハッキリと聞こえてきた。

 一夏も含めて見守る生徒達の感想はただ一つ。

「(これが達人の戦いなんだぁ)」

 きっとお互いに隙を待ち、攻めこむタイミングを探っているのだろう。大体このような事を考えていた。

 普段武道に触れない者がこういった試合を見ればそう思うのも無理はない。それほどまでにメディアの力が強いのだ。

 もちろんそういった意味をもって止まっている場合もあるが今回に関しては

「(どう攻めようかなぁ)」

 二人してこの調子である。

 千冬は他の生徒達に武道というものを見せるべく二人を前に立たせた。しかしながら二人が全力で(悪く言えば真面目に)技術を行使するとどうなるか。

 どちらかが瞬殺されるだろう。

 わかりやすく手本を見せろ、千冬はそう意味で自分達を挙げた。それなのに一瞬で勝負をつけてしまうのはよくない。

 ようするにだ。いかに戦いに華を持たせられるか、彼女達に興味をもって貰えるかが重要なのだ。

 そんな時に円が動きだした。

「シッ!」

 考えが纏まったのか或いは面倒臭くなったのか踏み込みと同時に右足の中段蹴りを放つ。素人目でも捉えられる程度の速さでだ。

 対して箒は一歩引いてそれを避ける。ちらりと横目で生徒達を見ると歓声こそ上げないもののは口はOの字に開かれていた。

 次に円が繰り出したのは右拳での直突き。正拳突きと違い握った拳を縦に打ち込

事から縦拳とも呼ばれる日本拳法の突き技である。

 これもまたそこそこの速度で打ち出されたので箒は難なくその腕を捕まえた。

 左手で掴んだ円の腕を捻り上げそのまま投げ飛ばす。

「おおおっ」

 小手返し。合気道において使用される技術である。腕の筋と間接を捻り上げて投げるというシンプルな物だがそれ故の絶対性がある。

 一つは確実なダメージの発生。

 筋肉と骨が存在する以上この痛みからは決して逃れることはできない。当然円にも同じことが言える。

 そして二つ目。相手の脳に直接信号を送ることができるということだ。

 小手返しは下手をすれば骨折や筋繊維の断裂などの怪我に繋がる場合があるため、変に痛みを我慢するとよくこういう事が起きてしまう。

 それを避けるために人間の脳は人体にある行動をさせる。

 自ら体を投げ飛ばさせる、ということだ。

 痛みからの逃避。その後の怪我の予防。敢えて投げさせることによりダメージを最低限に抑える為の行動を起こさせる。これが小手返しの原理である。

 円が肩口から畳へ投げ飛ばされた。恐らく普段の彼ならぱ空中で一回転して着地する、ぐらいの事はしただろう。しかし先程述べた通りこの戦いの目的は興味を抱かせること。

 非力な女でも大の男を倒せる事実を伝える上で円の敗北が必要な事なのだ。

「篠ノ之さんスゴイ!」

「カッコいい!」

「わ、わたしあんなのできないよ……」

 拍手を送りながら生徒達は思い思いの感想を呟く。ラウラも黙って拍手をしていた。

「確かに始めてすぐには無理だ。だが今二人がやったことは初歩を極めた物、おまえ達が出来ない道理は無い」 

 千冬の言葉に生徒達は元気に返事をする。ただ一人、セシリアだけはつまらなそうな表情をしていた。

 

 

 

 

 その後、千冬は勿論として円と箒による受け身や足運びの指導が行われた。

 流派によって異なってはくるが基本的には受け身とは高等技術である。四年間受け身のみを練習し続けてやっと一人前か、といった感じだ。(かといってそればっかりをやらせれば良いということでもないが)

 そんなわけで今度は一人ずつのペアを組み投げ込み練習をすることになった。要はお互いに投げ合う練習だ。

「円、私と組んでくれ。いわゆる『先生コース』というやつらしい」

「先生コース?」

 ラウラが円をペアに誘う。他の生徒もペアを組む相手を探しているらしく道場内は最初のような賑わいに包まれた。

 聞き慣れない単語に円が首をかしげる。一夏は既にシャルルとペアを作っていた。

「日本ではこういった訓練のバディを決める際に溢(あぶ)れた者は教官とペアを組まされる、と聞いているが?」

「(一度コイツに日本語教えた奴を見てみたい)」

 自分の知らないところで日本の文化(?)は世界に広まっているようだ。そんな事を円は考えていた。

「教官とペアを組むのはむしろ歓迎すべき事だが生憎忙しそうだからな」

「ま、そういうことなら」

 見ると千冬は何人かの生徒達に教えて回っている。とてもじゃないが一人に付きっきりで指導する暇があるようには見えなかった。

「しかし円よ。なぜあのような戦い方をしたのだ」

「ん?」

「部屋で会った際におまえは一発で急所を捉えにきた。それも私が反応できるかどうかギリギリの速度でだ」

 眉を潜めながらラウラが尋ねる。先程の試合の事を言っているのだろう。当然のことで他者、しかもある程度実力を知っている者からすれば何故無駄な戦い方をしているのかわかるはずが無いのだ。

「先程の試合を見ている限りおまえは本気を出していなかった。一体なぜだ」

 ラウラの質問に円は困ったように笑う。妹に問いただされる兄、んなこ構図も見える。

「まぁ今回は授業の一環だしさ、男が勝っちゃっても面白くし女子達にも大して興味をもってもらえないだろ?」

 それに、と円は続ける。

「俺は手加減した訳でもないし本気を出してないわけでもないんだ」

「ん? そうなのか?」

「確かにわかりやすい動きをしたけど箒をやっつけようとしたのは本当だ。あいつが強かったんだよ

 ぽんぽん、とラウラの頭を叩きながら笑う。きっと箒も同じ気持ちで臨んでいただろう。

「しかしだな、最初にキックを出したあたりは納得いかんぞ! 私だったら……」

 あーするだのこーしろだのと騒ぐラウラの背後に箒が現れる。少し向こうの方には彼女のペアだろうか? 女子生徒がこちらを見ながら待っていた。

「先程の試合、中々面白かった。汲み取ってもらえてよかったよ」

「いやいや、結構必死だったぜ」

「謙遜しなくていい。次はもっと心置き無くやりたいものだな」

「そうだな」

 一瞬驚いたような顔をしたもののすぐに円も笑顔になる。お互いに長い年月を武道に捧げてきたからだろうか、どこか通じ合うものがあるのかもしれない。

「それにしても随分と受け慣れていたな。流石は紅波流といったところか」

「あれ、知ってたのか」

 両腕を組んで箒が口を開く。胸の下で組んだため同年代から見ても年上から見ても豊かな乳房がたゆんと持ち上がった。

「随分前にだが父から教えてもらったことがある。まぁ一夏から聞くまで失念していたが 」

 苦笑して肩を竦めた。円自身は気にも止めておらずゲラゲラと笑っている。

「ウチの流派ってのは要するに総合格闘技みたいな物だからさ、合気道とかの技も使うんだ。やられてると慣れてくるもんさ」

 そんな感じに笑っていると千冬に頭をはたかれた。あれだけはよけれない、と円は語る。

 

 

 

 

 その日の放課後のことだった。

 ラウラは先に帰ったのか姿が見えず本音も「委員会があるから~」といなくなってしまった。つまり一人である。

 そういえば今日は一夏とシャルルが放課後アリーナで特訓するとか言ってたなぁ、と思いだした円はせっかくだしお邪魔しようかなと正面玄関に向かう。

 夕陽が差し込み下駄箱の影がハッキリと映し出される玄関に生徒の姿はなく、静な空間に円が自分の靴入れを開いた音だけが響いた。

「みんな帰るの早いんだなぁ」

 一人言を言いながら扉を閉めて靴を履き替える。外に出てみるとやはり誰もおらず円はアリーナへと向かおうと歩き出した。

 そのときだった。

「あの……」

「ん?」

 振り返ってみるとそこには一人の女子生徒。円の三歩ほど後ろに立っている。

 身長は百六十かそこらであろう、胸元には黄色のリボンが着けてあり、以前一夏から黄色は二年生、赤色は三年生、と聞いていたので今前にいる彼女が二年生であることはわかった。

 容姿は一言でいえば「可愛らしい」だろうか。どこか幼さが残る顔は夕焼けによるものではなく、恥ずかしさで紅潮している。

 時折モジモジと肩を動かしては上目遣いに円をチラ見し、また恥ずかしそうに顔を背けてしまう。普通に見れば甘酸っぱい青春の一ページを刻みそうなシチュエーションだが生憎この男には通用しなかった。

「あの……お手洗いならそこ入って左ですよ」

「違いますっ!」

 うっかり一年生の棟に来てしまいトイレの場所を尋ねてきたのだと勘違いするのが円である。(ちなみに同様のシチュエーションで一夏の場合では『具合でも悪いんですか?』のような台詞からいわゆるラッキースケベへと発展するだろう割愛するが)

 しかしそれも違ったようで円は怒られてしまう。

「えと……私二年生で空手部の小林といいます。今日後輩の子からあなたの事聞いてそれで……」

「はあ」

 気の抜けた返事をしながら円は小林と名乗った彼女を観察する。

 確かによく鍛え込んでいるらしく、スカートから覗くけしからん太ももはインパラのようにスマートながらも瞬発性を秘めているように見受けられた。

「あの、本当にいきなりなんですけど……

「はい」

「私と……立ち合ってください!」

 瞬間、その場の空気が変わる。気づけば円も鞄を降ろしていた。

「いつですか?」

「今です」

 ニッコリ笑って小林が踏み込む。狙うのは首、右足の回し蹴りを放つべく足を振り上げた。が

「ちょっと遅いかな」

 蹴りを放つ瞬間、というよりは蹴りとして足に力が乗るかどうかのタイミングで円は小林の足を踏みつけるような形で止めた。

「なっ!?」

 蹴り上げようにも足を振り抜けないため今度は左足を使った。

 抑えられている右足を支店にして左足の膝蹴り。こめかみを狙って放った。しかしそれもだめだった。

「はい、残念」

 こちらも膝がぶつかる直前だ。円は小林の股を通して左足の付け根を抱き抱えた。つまり、左足が可動出来ない。蹴りがすべて封印された。

 体勢としては円の右腕は小林の股ぐらを通り、左腕は肩口を通った状態で抱き締めている感じだろうか。

「よいしょっと」

 押し飛ばすようにして小林を離す。

「っ!!」

 今度は踏み込むながらの正拳突き。余談だがこの生徒、中学時代に全国大会にも出場している猛者である。

 一歩引いて円はその腕をあっさりと掴み、そしてそのまま一本背負い。小林が背中から地面に落とされた。

「スカートで回し蹴りなんかしたらパンツ見えちゃいますよ?」

 じゃ、と言い残し円は鞄を手にアリーナへと駆け出していった。

「……負けちゃったか」

 少しして起き上がった彼女が呟く。そして同時に円の言葉を思いだしたのか慌ててスカートをおさえた。  






まあ、次回ぐらいからようやっと話が(少しだけ)進むのかな。
オリキャラの俺Tueeeeeeを無くすつもりが結局なってんじゃないかっていうね

では、読了ありがとうございました!

次回もお楽しみに
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