わりと原作ありきで書いているためもしかしたら説明不足なところがあるかもしれません。
分かりづらい場所があれば報告していただけると幸いです。
あとやたら行間空けてますが仕様です。
では、どうぞー!
そんなこんなでアリーナに併設された更衣室に円とシャルル、一夏は居た。
途中、他クラスの女子や新聞部の妨害にあったが、遅刻しようものなら千冬に怒られる、と三人の頭をよぎりどこぞの21番もびっくりなフットワークで抜けてきた。
そもそも男子が居ない事を前提に創られた学校なので当然男子更衣室のようなものは無く。彼らはHR後にはこうしてダッシュで着替えに来なくてはならないのだ。
ちなみにだが以前、一夏が遅刻しそうになり(原因は前述のとおり)廊下を猛ダッシュしていた際に千冬に出くわしてしまったことがある。
脳細胞の死を覚悟した一夏だったが意外にも軽いデコピンで済んだ。千冬曰く「まぁ、急なことだしこればかりはどうにもならん。やるなら私と生徒指導の教師に見つからないようにやれ」とのこと。その後、颯爽と去っていく姉の後姿に感激した一夏が「千冬姉さんマジカッケー!!」などと言っているうちに女子軍に追いつかれ、結局授業に遅れたのは言うまでも無い。
「えーと、紅波だっけ?」
「円で良いよ」
スーツに着替えながら円が答える。ちなみにシャルルは既に着替え終わっている。このスーツだがパワードスーツと人体の間の電位差を抑えるなどの役目を持っている。その結果ISの反応速度の向上に成功した。
もちろんこのスーツ無しでも動かせるがそれをする者はまず居ないだろう。なお、カチューシャとかはいらないのであしからず。
「俺も一夏で良いよ」
「僕の事もシャルルで良いよ、よろしくね! 円」
「二人ともよろしくな!」
まだ部屋を割り当てられていない円はバッグごと着替えを持ってきているため、自己紹介をしながらロッカーに荷物をグイグイと押し込んでいる。ちなみに三人がいるのは第三アリーナの更衣室だ。今回はこの場所が開いていたが基本彼らが着替える所は日によってまちまちであり、しかも第三アリーナの更衣室で着替えて第2アリーナで訓練なんてこともある。
それぞれのアリーナ間はそれほど離れていないとはいえ急がなければ遅刻してしまうのだ。遅れればもれなく鬼教官の制裁を受けることになる。
「ところで一夏ってちーちゃんの弟なんだよね?」
ようやく荷物は押しこんだ円の「ちーちゃん」という言葉に一夏が首をかしげる。彼の記憶のなかで姉をその愛称で呼ぶのはたった一人だけなのだ。
「そうだけど……、千冬姉の事知ってるのか?」
「昔、うちの道場で修行してたんだ。俺と同じ年の弟がいるってよく言ってた」
円の説明に一夏はどこか姉の強さのルーツを見た気分になる。だがそれを抜いても現状に変わりは無いのだろう。金棒を持った鬼に銃を持たせたところで大差はないのだ。
へぇー、と一夏が納得している時、シャルルがある事に気付く。
「あ、二人とも! 遅刻だよ!?」
「げ!」
「まじかよ」
更衣室の柱にかけられた時計の針は集合時間から3分ほど先の目盛をさしていた。
バチーン!
アリーナに鈍くもよく透る音が響く。
出席簿にこんな威力があったのかと円が頭をさすりながら感じていた時、先程のスーツ姿では無く、動きやすそうなジャージを着て、手に竹刀を構えた千冬が口を開く。
というか竹刀があるならそちらを使えば良いのに。
「まったく……おまえ達は……」
「痛いぞちーちゃん……」
バチーン!
「学校では織斑先生と呼べ」
「すみません……」
千冬に促され、円達は他のクラスメイトと同じように列に戻る。
戻る時に何人かの生徒が「痛そう……」と呟いたのが三人の耳に入った。
「今日は2組も一緒に授業を行う! まずは全員班を組み歩行と武器の使用方法を練習しろ、専用機持ちは20分後に実戦訓練を行う、良いな!」
『はい!!』
威勢の良い返事が響く。円が道場の癖で「押忍!」と言いそうになったのは秘密だ。
20分後
全員の訓練も終わり(セシリアや鈴音にとってはおさらいもいいとこだが)先程の列に戻る。
専用機持ちの訓練を見るのだ。授業がこれで良いのか? と思うかもしれないが仕方がないのだろう。
時間割的に考えても代表候補生や専用機持ちが訓練できるのは放課後などのみになり、学校の業務に追われる教師陣はその訓練を見てやる事は難しい。
そうなるとやはりこうして授業に盛り込むしか無いのだ。
実際、まだ候補生とはいえ限りなく実戦に近い訓練を見学する事は彼女達にとっても有意義な物であり、一夏を見る事も出来る。
見学とは「見て学ぶ」という事なのだ。
だが生徒達が驚いたのは円が一夏やその他代表候補生に混じって準備を始めていた事だった。
「え、円も専用機持ちなのか?」
「あぁうん、俺が動かしちゃった奴をそのまま使ってる」
白式を装着した一夏が尋ねると右の中指にはめた黒い指輪を見せ円が笑う。
指輪をはめた方の手を軽く握ると円の体の周りが光り、量子変換されていたパワードスーツが円に装着される。
ISは本体を始め、武器なども量子変換が可能で訓練すればかなりの速度で武装を展開し攻撃する事ができる。これも最強の兵器と呼ばれる要因の一つなのだろう。
なお、素粒子レベルまで分解された装備をどうやって戻すのかは我々にはまだいらぬ知識である。
「なんかすごいな……!」
「ええ……なんというか圧倒されるたたずまいですわね……!」
一夏を始めセシリアも素直に驚いていた。
重厚感のある黒いカラーリング。手首に取り付けられた鎌型ブレード。鎧を思わせる形の浮遊パーツをはじめ全体的にトゲトゲしたデザインである。
「よし、まずは凰と紅波にやってもらう紅波、行けるか?」
「まぁ大丈夫かな」
円も軽く答え、鈴もISを装着して前に出る。
「では、始め!」
千冬の合図で二機は上空へと向かった。
○○○○○○○○○
「あんた転入生なんだって?」
「あぁ、紅波 円だよろしくな」
「私は凰 鈴音、中国の代表候補生よ、よろしく」
ISの通信機能を使ったなんとも言えない自己紹介だが二人とも特には気にしない。
「さてあんたの機体情報はと……」
鈴音の呼びかけと同時にスペックを表示したウィンドウが現れた。向かいでは円も同じように甲龍のすぺックを見ている。
「蹄王(エンペラー)か……。見たことない機体ね」
「甲龍(こうりゅう)か」
「甲龍(シェンロン)よ! 一夏とおんなじ事言うのね!」
甲龍のスペックをモニターで確認した円が機体名を読み間違える。よく見るとローマ字で読み仮名が書いてあるが……。決して円の頭にZなあの龍はよぎっていない。……はず。
「まぁいいさ、そろそろいくぜ? 俺ワクワクしてるし」
前言撤回、考えていた。
『さっさと始めろ』
ISの通信機能を使い千冬が促す。他の生徒達は危険が及ばぬよう少し離れたところから見学していた。
円がかまえる。
「んじゃ、いくぞ」
「いつでもどうぞ」
瞬間、甲龍とは数十メートル離れていたエンペラーは一瞬で甲龍との距離を詰め、左手首鎌で切りかかる。この鎌は「マーダーゲイズ」と呼ばれる装備だ。実態の可変ブレードであるほか、一夏の愛機「白式
」の「雪片弐形」同様に刃を粒子エネルギーで構成することもできる。
予想以上の速さに鈴音はもちろん、下から見ていた生徒達も驚いていた。
「ずいぶん速いじゃない……!」
だが流石に代表候補生、鈴音もまたマーダーゲイズを双天牙月――甲龍の装備である青龍刀――で受け止めている。
「おっと!」
なんとか円を押し返した鈴音が一度体制を立て直してエンペラーに切り掛かる。が円は空中でしゃがみそれを難無くかわした。
「な……!?」
攻撃を避けられ、鈴音に隙が生まれる。円がそれを逃す筈が無くすぐさま左のアッパーカット。鳩尾を狙い思い切り振りぬく。
しかし鈴音が突然加速してエンペラーとの距離を離したので空振った。
「格闘型とは書いてたけどここまで露骨だとはね……。でもこれなら!」
甲龍の肩付近にある鉄球のような物がガチャリと機械的な音を発した途端、エンペラーが後方に吹っ飛ぶ。
数百メートルほど吹っ飛び、地上すれすれでなんとか体制を戻した円が甲龍を見上げる。飛び道具はあるにはあるがあまり使いたくない。どうするべきかと策を練るしか無かった。
一方鈴音は勝ちを悟ったらしく、とどめとばかりに鉄球にはオレンジ色のエネルギーが集束しているのが円にも見えた。
『あれは龍砲だ』
エンペラーの通信スピーカーから千冬の声が流れる。
「龍砲?」
『衝撃砲と言ってな、空間に直接衝撃を与えて攻撃する事が出来る特殊兵装だ』
その間にも甲龍にエネルギーが集束していく。鈴音にも千冬の通信が聞こえているらしく自分のISの説明を聞く円を見て余裕の表情を浮かべていた。
「でもさ、それって敵味方構わずあたっちゃうんじゃね?」
『それを制御するから兵器なんだよ馬鹿者』
「すいませんね、こちとら素人なもんで。それで、どうやって避ければいい?」
『それを考えるのはおまえの役目だ、切るぞ』
ブチッ、という音と同時に通信が切れる。そっけないのもまた彼女なのだ。
「つれないの……」
千冬の素っ気なさに苦笑いしつつもまぁ当然だなと納得していると今度は鈴音から通信が入る。
「終わったんならそろそろ行くわよ!」
待ち飽きたらしく言うや否やエンペラーに向けて龍砲を放つ。この龍砲というのはチャージ中は見えるくせに発射後は見えないという。
円も右腕にシールドを展開して龍砲を防ぐ。シールドエネルギーはそこまで派手に減少はしていかないがどちらにせよ早く対策を練らなければエンペラーのシールドエネルギーが尽きてしまう。
ISでの闘いはこのシールドエネルギーを先に無くさせた者が勝利となる。エネルギーの減りかたは攻撃の威力はもちろん、人体の急所への攻撃などで大きく変化するのだ。
なお、ISには絶対防御というのがあり、搭乗者の命を守るための非任意型のシステムも存在し、通常より多くのエネルギーを消費してしまう。
「さて……どう出るかな?」
正直なところ千冬は楽しんでいた。先日の一夏対セシリアの試合もそうだが可愛い弟やその弟と同じように接した円の成長を見れることが嬉しかった。
彼女が知る限り円は強い。だがそれがISを着けた場合でも同じかはわからない。だからこそ円がどのような戦い方をするのか楽しみでならないのだ。
そのせいか自然と頬が緩んでいた。ちなみにその千冬を見て生徒達は
「微笑む千冬様も素敵!」だの「モナリザの再来だわ!」などとその日の夜、自室で悶えていたとか。
「ほらほら! シールドエネルギーが尽きるわよ?」
「1……2……3……」
龍砲の猛攻に耐えながら円はなにやら数を数えていた。しかしエンペラーのシールドエネルギーは残りわずかだ。
「とどめ!」
両方の鉄球から龍砲が発射された特大(見えないが)弾がエンペラーへ飛来する。とほぼ同時に砂煙が巻き起こり、彼の姿が隠れた。
見学していた千冬を除く全員が円の負けを悟る。あの一撃でエネルギー残量はもう0だろう。
だが……
「ど、どういうこと……!」
帝王は朽ちない
「あれは!」
慌てる鈴音に気付き一夏が砂煙を見る。そこには……。
「……やるじゃないか円」
ぼそりと千冬が呟く。
砂煙が晴れた
今回のおもな改変点
・シールドエネルギーについての独自解釈
・龍砲の演出にややアニメ成分あり
それでは、読了ありがとうございました!
次回もまた!