ガシャッ!
「な、なんで……?」
戸惑いを隠せない鈴音。それも当然だ。
眼下に広がる砂煙。自身の放った不可視の攻撃「龍砲」の直撃により、地上付近にいたエンペラーは間違い無く戦闘不能状態になっているはず……。
アリーナに響く金属音。砂煙の間に見え隠れする黒い装甲。
まだだ……、まだ終わっていない。そして脳内に二つの考えが浮かぶ。
一つは自らの失敗。なにかの間違いで龍砲を外してしまったのかもしれない。
それならまだ良い。このままもう一度龍砲を撃つも良し、右手に握る青龍刀――双天牙月――で切り掛かるも良し。どちらにしても鈴音は勝てる。
だがもう一つ、その予想が当たっていた場合が危ない。
二つ目、それは円が龍砲を避けた、という予想だ。普通に考えればありえない。
音速で飛び、なおかつ目に見えない龍砲を避けられるはずがないのだ。
たしかにクラス対抗戦の時は一夏も何度か龍砲の攻撃を避けた。
だがそれは常に動いていたしなおかつ、鈴音はそれほど狙いをつけなかった。
そもそも不可視の弾に狙いをつけるという事自体無理だがそれでも斜角などを調整をすれば精密性は低いものの、命中率は格段に上がる。
しかし今回は違う。エンペラーは防御に徹していたし鈴音は狙いもしっかりつけていた。
だから自分が外しただけだ、と自分に言い聞かせる。双天月牙を握りなおし、きたる反撃にそなえた。
〇〇〇〇〇〇〇〇
ガシャン!
煙の中からエンペラーが現れる。地面を踏みしめ、装甲に煙を引きながら佇む姿には傷一つ無い。
地面は粘土にボールでもぶつけたかのようにクレーター状に大きくえぐれており、エンペラーはそのクレーターの真横にいた。
「あっぶな……次はも少し早く動くか……」
入れっぱなしにしていた鈴音の通信回線から円の軽い調子の声が流れる。
「あんた……まさか避けたの……?」
「おう、避けた」
恐る恐る尋ねる鈴音に円が即答する。下にいる生徒達はわけがわからない、と言った感じに甲龍とエンペラーを交互に見ていたが千冬だけは状況が分かっている様子だ。
「嘘よ! 龍砲は音速で飛ぶのよ!? 避けられるはず「あるんだなこれが」」
鈴音を遮り円が説明を始める。
「音速と言ってもおまえが撃ってから俺に当たるまでには短いが時間がある。だから俺は自分なりにリズムを取って動き、龍砲を避けたってわけだ。それに……」
そこまで言って一度言葉を切る。先程数を数えていたのはダメージ覚悟でリズムを取っていたようだ。
「今こうして俺がここに居る、それがなによりの証拠だ」
トントン、と自分の胸元に親指をあて笑う。千冬には円が龍砲を避けたその一瞬が見えていたらしく、満足そうに頷いていた。
「なるほど、でも……」
背中からもう一振りの双天牙月を抜き、左手で回しはじめる。
「勝つのは私よ!」
双天牙月の柄と柄を繋ぐ。さながらそれは「薙刀」。変形したそれを全身で回して構えた。小柄な彼女だが得物に振り回されることなく扱える辺り流石は中国代表候補生といったところか。
「そうこなくちゃ!」
円もまた両腕を体の前で交差させるという独特な構えをとったあと、空中ヘ飛んだ。
その後、青空の下には刃と刃をぶつける音が何度も響いた。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「今日の訓練はここまでだ、全員着替えた後は昼食をとるなり好きにして良い。では解散!」
結局勝負は引き分けとなった。
円の捨て身の一撃と追い込まれた鈴音の苦し紛れの一太刀が同時に当たり、互いのシールドエネルギーが尽きたのだ。
「へぇ、一夏の幼なじみなのか」
「そ、だから他の奴とは違うのよ! 私は」
勝負を通して円と鈴音は仲良くなっていた。もともと鈴音の他人を他人と思わない性格もあってのことだろうか。
「私のほうが幼なじみ歴は長い!」
揉める鈴音と箒をシャルルがなだめ、さらにセシリアが加入し、円がそれを見て笑う。
それをよそにて千冬は一人考え事にふけっていた。
(今回は審査以来初めての戦闘という事もあり結果は引き分けだったが……あの短時間で相手ヘの対策を練り実行するとは……)
「千冬姉、どうかした?」
「いや、なんでもない。さっさと着替えてこい」
弟への教育的制裁も忘れ、千冬はどこか嬉しそうだった。
というわけで鈴ちゃんバトル終了のおしらせ。
まぁこれ以降もたたかう事はありますが(笑)
そうそう、活動報告にてちょっとした作品解説のようなものをやっておりますので
お暇でしたら覗いてみてください。
では、読了ありがとうございました。次回もまた!