IS~制御不能の黒皇帝~   作:暴風圏0294

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第5話 ロイヤルドジっ子フラッシュ

放課後

 

 日も傾きかけ、学園の施設が橙色に染められる。

 この時間になると生徒は早めの夕食を取ったり、使用可能であればアリーナで訓練を行ったりするのだが

「いやーまいった」

 円は違った。一人敷地内にある小川の前で仁王立ちをして途方に暮れていた。

 

 

「迷子になっちゃたよ」

 

 

 馬鹿だった。

 

 

 

 編入したばかりで道なんぞわかるはずもないクセにウロチョロした結果がこれである。

 一応生徒手帳に校内の地図はあるのだが彼がそれを知るのはこの三日後のことだ。

「大体広すぎるんだよなぁ。もうちょい狭くすればいいのに」

 無茶苦茶言っている間にここは一年一組の教室前である。もしかしたら教室に誰か居るかもしれない、と戻ってきたのだ。(徒歩十分ほど)

「あれ?」

 ドアの前に立つが開かない。センサーの反応が悪いのか、となんどか試してみるがそれでも開かない。

 そう、この学園の教室は午後五時半を過ぎるとオートロックされてしまい、それ以降は職員室でキーを借りなければ開かないのだ。

「あ、紅波くんだ」

「あーほんとだー!」

 声がを掛けられそちらを向く。廊下の先では二人の女子生徒がこちらに手を振っていた。一人はやけに袖の余った制服の小柄な女子、もう一人は藍色の髪をショートカットで整えたおとなしそうな女子だ。

 円の姿を見つけるや否や小走りで駆けてくる。(小柄な方は物凄く遅かった) 

「紅波くんも忘れ物?」

「いや、迷子になったから原点回帰に」

 なにそれー? と笑いながら彼女達はキーを使って中に入る。

「そういえば本音も最初の頃に迷子になったよねー」

「あれれ、そうだっけ?」

 教室は夕日に照らされており、それによって生まれた影にはどこか哀愁を感じられた。

 それぞれの席を物色していた二人は目当ての物を見つけたらしく、さっさと教室を出た。

「二人ともちーちゃ……じゃなくて織斑先生か山田先生見なかったか?」

 教室前で待機していた円が二人に尋ねる。一応呼び方を改めたのはどこかから出席簿が飛んできそうな予感がして、とのこと。 

「んー、見なかったなぁ。私達これから職員室にキー返しに行くから一緒に来る?」

「是非ともおねがいしやす」

 歩きだした二人についていく。ちなみに先ほど円が通ってきた道とは真逆の方向だった。

 それと同人に本音が円を向いて口を開く。

「あ、私は布仏 本音だよ。みんなからは「本音」とか「のほほん」とか呼ばれてるから好きに呼んでね」

「じゃあ本音で」

「わたしは「こっちはかなりんだよ」ちょっと私にも自己紹介させてよ」

「いいの、かなりんはかなりんだから」

 楽しそうに話す二人を横目に円は迷わぬように道を覚えながらこれからのことを考えていた。

 

 

 

 

 

「まぁ居なかったんじゃしょうがないよね」

 三人は現在一年生寮の廊下を歩いていた。

 結局千冬達が居なかったため「じゃー私達の部屋においでよー」という本音のお言葉により、円は二人の部屋で待たせてもらうことにした。

「はい、とうちゃーく」

 そして到着。当然だが他にも同じ見た目のドアがあるため、一応部屋の番号プレートがあるもののパッと見ただけではどれが自分の部屋なのかも分からない。 

 早いとこおぼえなきゃなぁ、などと円が考えていたときだ。かなりんが何かを思い出したように急いでドアを開け、薄く開いているのにも関わらずスルリと身を滑り込ませる。

「ちょ、ちょっと待っててね!」

 そう言うと勢いよくドアが閉められ、中からはドタドタと慌てた様子の足音が聞こ始めた。

 残された二人呆然としながら首をかしげる。

「? どうしたんだろ」

「あ、かなりんベッドの上に下着とか出しっぱなしにしてるから片付けてるんじゃない?」

『本音! 余計なこと言わないの!』 

 ヘラヘラと笑う本音に一喝。円も苦笑いである。

 

 

 

「はぁ、はぁ……いいよ」

「おつかれー」

「おじゃまします」

 少しして息を切らせたかなりんがドアを開け、二人を迎える。余談だがこれ以降かなりんは下着の類をキチンと片付けるようになったとか。残念だが良いことです。

「ねーねートランプやろーよ」

 部屋には入ると同時に本音が円の服の袖をクイクイと引く。その姿はさながらエサ欲しさに人の気を引こうとするリス猿のようだ。(あるいは日本猿の子供か)

「その子最近トランプにはまってるんだよね。あ、紅茶で良い?」

 シンクに立つかなりんに返事をしている間に本音は手早く準備を進める。みんな大好き大富豪。

「いっちょやるかー!」

 寮に着いたは良いものの鍵が無いし部屋がどこかも分からない。そんなわけで円の脳内では部屋のことから革命をどうやって起こすか、に摩り替わっていた。  

 

 

 一時間半ほどしたころだろうか。唐突に部屋のドアがノックされる。ちなみにここまでの戦績は円の十二勝八敗。よくもまぁ飽きないものだ。

「開いてるんでどうぞー」

「おじゃまします……。あ、紅波くん見っけ」

 かなりんの応対の後にドアが開く。そこには一年一組が副担任、山田真耶の姿が。

 やや疲れた様子の彼女だがそれには理由がある。というのもHRからはや三時間。とある用事がありその間ずっと円を探して園内を歩き回り、最終的に各部屋にローラーを掛けるという作戦にでたのである。

 そこまでしなくても校内放送でもなんでもあるだろう、なんともドジな先生だ。

「マヤマヤも大富豪やろーよー」

「え? でも……」 

「やろーよー」

 

 

 

 

 

 一方ここは第一アリーナ前。自主トレを終えた一夏と鈴音が並んで歩いていた。

「なんていうかアンタは押しが弱いわね」

「うーん。押しかぁ」

「攻めるときはガッツリ攻めないと。そんなんだから頼みごとも断りきれずに安請け合いすることになんのよ」

「む、それとこれとはべつだろう」

 

 

 

 

 

「はっくしゅん!」

 そして本音達の部屋である。

「マヤマヤ風邪?」

「いえ……。なんだか噂されたような……」

 結局三試合ほど付き合ってしまったわけで。ちなみに全敗。

 現在は四試合目。真耶と本音の一騎打ちである。

「じゃー八で切ってあがりー!」

「あーんまた負けたー……」

 あっけなく終了。元代表候補生もトランプは弱かった。

 負けた者が山札を切って全員に配るという定番ルールに則り、真耶が山札を手に取る。

 そしてようやく

「あ、大事なこと忘れてた!」

 本来の目的に気づいた。トランプとは恐ろしいものです。

 立ち上がりポケットからなにやら鍵をとりだした。

「紅波君のお部屋を紹介しにきたんだった!」

「あ、そういえばそうだ」

 円も忘れていたらしく、彼女に倣い立ち上がる。しっかり屋さんのかなりんでさえ失念してしまうとは……。やはりトランプは恐ろしい。

「それじゃ、おじゃましました」

「またね紅波くん」

「ばいばいくーちゃん」

 この「くーちゃん」というのは本音がつけたあだ名である。紅波だからくーちゃん。シンプルイズザベスト。

「あ、そうだ。くーちゃんも一緒に夕飯しよーよ」

「オッケ、じゃあまたあとで」

 学食は八時半までしか開店していない。(店がしまっているだけで施設自体はいつでも開いている) 食事の約束を交わし、円は部屋をあとにした。

 

 

 

 

「はい、ここが紅波君のお部屋です」

「おー」

 本音達の部屋から少し進み角を二つ曲がったところが円の部屋だった。なんとも迷いやすそうな場所である。

「ごめんね。二人部屋に一人っていうのはさみしいと思うんだけど部屋割りが……」

 困ったように笑う真耶から鍵を受け取り円は「部屋割り?」と首をかしげる。

「デュノア君が来る前は織斑君と篠ノ之さんが相部屋だったの。そのあとお部屋を組み替えたりいろいろあって……」

「え? シャルルが?」

 はぁ、とため息をつく彼女の横で円は不思議そうな顔をする。

「どうしたんですか?」

「え、あ、いや……。なんでもないです」

「?」

 その後、円は本音達の部屋を見つけるために再び迷子になったとか。(かなりんによってすぐに発見されたが)

 

 

 




 はい! 前回の更新後、チラッと見たらお気に入り件数が「グワッ!」と伸びてて「うおっ!?」となった暴風圏です。

今回の主な改変点
・教室が放課後入れない。(まぁ大体そんなもんですよね)
・学食の開店時間(原作に明確な描写あったっけ? 読み直しましょうかね)
・かなりんとのほほんが相部屋。(これはまぁ。ねぇ?←)


 かなりんって原作だと恥ずかしがり屋さんだけどきっと普段はしっかり者のお姉さんなんだよ。という妄想の結果がこれだよ。

 では、読了ありがとうございました!

 次回もまた!
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