IS~制御不能の黒皇帝~   作:暴風圏0294

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 まず初めに。

 これほどまでの遅れ更新、本当に申し訳ありません。パソコンの不調(故障)とはいえ前回投稿からかなり時間が空いてしまいました。
 待っていていただいた方、並びにお気に入り登録までしていただいた方々に深くお詫び申し上げます。
 普段こういった事は活動報告に書くのですがこれだけはこちらで伝えたいと思います。


 というわけでー! 第7話でございます!


第7話ソルト&ペッパー~pm~

「なんか……見せ物にされてるような気がなぁ」

「しないでもないな」

 空中でぼやく彼らが恨めしげな目で地上を見る。

ISに搭載されたハイパーセンサーによる超高感度の視界は三十メートルも離れた生徒達の顔を鮮やかに映し出し、辟易した二人にゆため息をつかせた。

 

 

 さて、本日午後の訓練は一組&三組の合同で行われている。

 「メインテーマ」というわけではないが訓練の前半ではそれぞれ得意な「武器」を使い、ちょっとした模擬戦闘を行った。当然だが鈴音はいない。

 ちなみにだが円を含む専用機持ちを除いた生徒達は主に「量産機」を使う。日本で正式に採用されているのは「打鉄」だが性能とその扱いやすさから「リヴァイヴ」も導入されており、個数制限などもあって毎回早いもの勝ちの取り合いが起こるのだ。(ビーチフラッグ的な意味である。バーゲンではない)

 打鉄は標準装備として近接ブレード(日本刀型)が装備されているが別にそれしか使えないということではない。薙刀、ヌンチャク、三節棍、斧、スコップ、ハンマー、ドリル、鎌、などなど後付装備(イコライザ)に入れれば他の武器を使うこともできる。

 もちろん白兵武器だけではなく、拳銃、突撃銃、長距離ライフル、弓、などの飛び道具もある。

「じゃ、はじめるか」

 言いながら一夏は円との距離を離す。いい加減始めないと地上から出席簿が飛んできかねないので。

「おう」

 黒の帝王と白の騎士が対峙した。

 

 

〇〇〇〇〇〇

 

「あの……織斑先生」

 一方こちらは地上。他の生徒達はそれぞれ自分の訓練に勤しんでいたり円達の試合を見学している。

 イギリス代表候生補セシリア・オルコットもその一人である。

「なんだ」

 腕を組んで試合を眺める千冬に声をかけたセシリアは誰からみても分かるほどに不機嫌そうな表情をしていた。ちなみに真耶は他の生徒達の指導に回っている。

「……彼の機体についてお聞きしたいことがありまして」

「白式の事か? もう知ってるだろう」

 悪戯っぽく笑う千冬の横に並んだセシリアはその表情をさらに不機嫌に染める。

「イジワルしないでください! ……エンペラーのことです」

「そうか。言ってみろ」

 彼女が意地悪な笑みを浮かべた事に気づいているのかいないのかセシリアは上空で行われている戦闘を見ながら質問する。

「あの機体……ただの打撃攻撃なのにどうしてあんなに威力があるのですか」

 ISのハイパーセンサー越しに見える白式のシールドエネルギーはエンペラーの格闘攻撃によりみるみる残量を減らしていく。それこそ兵器を使っているがごとく威力なのだ。

「それはエンペラーの特殊な機構のおかげですよ」

 背後からかかる声にセシリアが振り返る。そこにはISを装着したままの真耶が。

 スーツを解除した彼女はずれた眼鏡を両手で直し、セシリアの前に立つ。

「エンペラーのアームパーツって普通のISより大きいと思いません?」

「そういえば……」

 言われてみるとそうだ。エンペラーのアームパーツは手首から二の腕にかけて大きなもので構成されている。

「エンペラーの腕には排莢式ピストンが設けられていてですね、攻撃の際に火薬を炸裂させてそれを動かすことによって高い威力を出すことができるんです。ほら、肘の辺りから空薬莢が排出されてるでしょ」

 ちなみに足にも同じ機構があるんですよ、と補足する真耶を尻目に彼女は考える。

 ピストンによる打撃攻撃の威力の増加。なるほどそういうことだったか。

 しかし説明された機構形式からしてその効果時間は恐らくヒットの数瞬だろう。それを完全なタイミングで作動させている円のポテンシャルはかなり手ごわい。

 対策を練らねば、と再び空を向いた。

 

〇〇〇〇〇〇

 

「くっ……結構威力あるんだなぁ」

 同じく一度距離を置いた一夏も考えていた。

 先日鈴音との試合を見ていたものの、実際受けてみるのとではかなりの違いがあった。根本として手数が違うのだ。

 おまけにやたら威力がある。手にした実体剣「雪片弐型」で受けようにも追いつけない。これはやっかいすぎる。

 そのとき二人のオープンチャンネルに千冬の声が割り込んだ。

『紅波、おまえ武器はどうした?』

「え? あ、いやちょっとあの手の武器って苦手で……」

『使え』

 プチッ

 通信が切れる。反論は許されないようだ。

「エンペラーって武器あったのか」

「一応な」

 言いながら胸の前に両腕を伸ばす。すると光の粒子が現れ、円の手を覆った。

 粒は次第に棒状にへと形を変えていくが目だった変化は無く、未だ彼の手にまとわり付いている。

『遅いな』

 再び千冬の声が流れる。同時に光はグニャリと変形した。

「槍……?」

「やっと出たぜ……」

 現れたのは一本の槍。いわゆる「鉄騎槍」に似た姿をしていた。

 しかし細部にはちょっとした差異がある。一つは槍の中腹部分に入った縦長のスリット。もう一つは、一見ナックルガードにも見える湾曲したパーツ。

 どうやらただの槍ではないらしい。

「なになに……DR-7《ドラグーン》か」

「もう少し早くだせたらなぁ」

 ISでの戦闘は極めてスピーディーに進む。それ故に量子化した装備を呼び出す早さを求められるが、本人の言葉の通りまだコールに時間がかかるようだ。 

「さ、行くぜ」

 ドラグーンの先端を一夏に向け、柄を握った右手を捻ると同時にグラウンドに轟音が鳴る。

 腹に響く重低音は一夏にも聞き覚えがあった。

「バイク……?」

 そう、ドラグーン最大の特徴はこのジェットエンジンを用いた強力な突進攻撃にある。持ち手に設けられたアクセルグリップを捻るとことにより槍の内部で推進剤を噴出して生み出される推進力で破壊力やスピードを高める。

 次第に音が高くなっていきドラグーンが全身を赤く染めていく。推進剤が内部で滞留し熱を帯びているのだ。

「来るか!」

 ブオンッッ! エンジン音が大きくなった途端、一夏の横をエンペラーが駆け抜けた。突然の出来事に一瞬呆けた一夏が後ろを向く。

「な、なんだ!?」

「あーくそ、やっぱ当たんねーや」

 一夏からかなり離れた空中に円は居た。手に持ったドラグーンからは白煙が立ち上っている。

「これさ、威力はあるけど馬力が半端じゃないから制御が出来ないんだよ」

 言いながらドラグーンの身を叩くと槍の中腹がスライドし露になった内部から濃い白の煙が吐き出された。ドラグーンの放熱動作だ。

「しかも放熱が遅い」

「なんかロマンがあるな」

 瞬間的な火力はあるもののそれを補う為の機能が悪すぎる。典型的なロマン兵器である。

 未だ白煙を吐き出しているドラグーンを再び一夏へと向けると円は空を蹴り動き出した。

 それに合わせて後方へ身を引き剣を握り直した一夏と円の距離感はあっという間に縮まった。

「せいっ!」

「うおっと!」

 顔面に向けて突きだされた槍を寸でのところで避け、剣を逆袈裟に振るうが円はあっさりとかわした。

 続けざまにドラグーンの切っ先を突きだし、同時に右のローキックを見舞う。

「くっ! こっちも威力あるな……」

 槍の直撃は避けたもののキックは避けきれずまたもやエネルギー残量が落ちた。地上でセシリアが声をあげたが聞こえるはずも無かった。

「(どうする? 放熱が終わったらまたさっきの突進がくるよな)」

 円の攻撃を捌きながら一夏は思考を巡らせる。心もとないエネルギー残量に放熱完了までの僅かなタイムリミット、どれも彼にとって不利なものだ。

 だがしかし自分にも勝機はある。多用こそ出来ないが得意のイグニッションブーストや反則級の威力を持つ零落白夜があるからだ。

 問題は……。

「(避けられたら俺がヤバイんだよなぁ)」

 零落白夜とはつまり自らの身を削って繰り出す攻撃だ。それは当然都合の良いものではなく当たらなかったからといってエネルギーが減らない訳ではないのだ。

 

 一方円もまた最良の一手を考えていた。

「(そろそろ放熱は終わるけど……。当てる自信は無いんだよなぁ)」

 チラリとドラグーンを見る。噴き出す煙の量が少なくなったそれを構えなおし前方に佇む一夏を睨む彼の顔は普段と違い、どこか鋭くあった。

「あっそうだ」

 機械的な音をたてドラグーンの身がスライドし放熱完了を告げる。同時に円が動き出す。

 対して一夏は円から離れるように動き、その距離を広げていく。

 一夏の策はこうだ。先程のとおりエンペラーのドラグーンによる突進攻撃は制御が聴いていない。ならば自分は回避に徹しスキを突いて零落白夜を放つ。それを狙うため距離を離したのだ。

「逃げんなって!!」

 ブオンッッ! ドラグーンが再び咆哮し赤く染まり、上昇する回転数にあわせ音が高くなっていく。

 それを確認すると円はすぐさま一夏へ突っ込んだ。

 噴炎を撒き散らしながらエンペラーは白式に向け一直線に突っ込む。

「(今だ!)」

 エンペラーが動いた事を確認し、一夏はすぐさま左横に飛行して円とのラインをずらした。

 あれだけのスピードで飛ぶとなると必然的に方向転換は難しくなる。つまりエンペラーの正面に立たず側面に回り込めば良いのだ。

 しかし円の動きは一夏の予想を大きく上回る。

「ほい」

 素早く持ち手から手を離し、円はスピードを殺しながら一夏に向かってカーブする。慣性に習いドラグーンは明後日の方へ飛んでいった。

 そのまま白式へ左のフックを打ち込み円は再びピストンを作動させる。ガシャリと音をたてアームパーツが後ろにスライドしながら空薬莢を排出し終える間に白式は後方へ飛ばされた。

 すぐさま体制を戻そうと、もがいたがもう遅かった。

「うおらっ!」

 腹部に目掛けて右の後ろ回し蹴りを放ち同じくピストンを作動させる。それによって蹴りのインパクトを増幅し、白式のエネルギー残量は一気にゼロとなった。

 

 

 

「今日の訓練はここまでだ。ホームルームに遅れないようにしろよ」

「はーい!」

 授業開始の時と同様に生徒達は一ヵ所に集まっていた。何度も言うが鈴音はいない。(2組なので)

 千冬の指示通り生徒達はさっさと散っていく。

「くー……良い考えだと思ったんだけどなぁ」

「一夏は思ったこと直ぐに実行するからね」

 一夏はと言うと早速反省会を行っており、その横を呆れ顔のシャルルと箒が歩いていた。

「いつものくだらん洒落もそれだな」

「いや、別に口に出して無いだろ。あとくだらんってなんだよ」

「言葉どおりだ」

 脊髄で動く男、それこそが織斑一夏なのだ。

 

 一方、円はと言うと

「くーちゃん今日なに食べるー?」

「今日はカレーの気分だな」

 今日カレー曜日だし、と続ける円の横で「なにそれー」と本音が笑う。気分と直感で動く男、それこそが紅波円なのだ。

 そしてその後ろで彼の背を睨むセシリアの行動理念は……まだ分からなかった。

 

 





ドラグーン
「ガンランスとか知らないし」

 第7話でした。今回意図的な設定変更はあまりないですね。多分。

 では!


 読了ありがとうございました。次回もまた!
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