次回は視点変更するかも?
Side 大和
連理の案内をするために川神院を出発した俺たちは、商店街に向かっていた。
仲見世通りでお菓子や土産物を覗きながらブラブラと歩く。
現在の先頭はワン子、クリス、そしてその二人に挟まれキョロキョロと辺りを見回す連理。
その後姿を優しく微笑みながら歩くまゆっちと並び、京と俺が歩く。
連理は途中で買ったお菓子の袋を持ち、カリカリと食べながら歩いている。
最初はワン子とクリスの両者が連理の手を繋いでいたのだが、意外にも好奇心旺盛だった連理は何度も立ち止まり『あれはなに?』と興味を示す。
その類の質問に答えるのは主に俺の役目となり、いつの間にか興味対象が現れた場合、連理は俺の傍へ来るようになった。
その度に手を繋ぎなおす自称・保護者二人だったが、やがて連理が微妙に手を繋ぎたがらないことに気づいたのだろう。
現在では隣で歩きながら常に話しかけるだけに留めている。
これもまた意外だったが、連理はどうやら人見知りしない性格であり、一緒に歩く俺たち全員に対して様々な質問を投げかけてくる。
街の説明役である俺が一番話しかけられてはいるが、案内を除くとほぼ平等に話しかけている。
店の店員にも抵抗なく話しかけていた。
気を使って周囲に話しかけているのではなく、ただ単純に気になったことを問いかけているだけなのだと思う。
俺、ワン子、クリスには自然に話しかけてくる。
京に対しても、何の間なのかはわからないが若干の沈黙を挟みながら普通に話しかける。
驚いたことに京も、無表情ではあるが別段嫌がったりすることはなく答えている。
真似をしているわけではないだろうが、京と話すときの連理は京と同じく無表情に近い。
しかし度々会話を投げかけていることから、京に対して苦手意識はないようだった。
そのことを京に打ち明けてみる。
「なんか京、連理と仲良くないか?
お互い表情は硬いっつーか、一見つまらなそうにも見えるけどそうじゃないんだろ?」
「うん。なんていうか、波長が合うみたいだね」
「電波かお前らは」
まあ、納得できる話でもある。
好奇心旺盛で人見知りしない、それに表情も豊かな連理だが、はしゃいだりするわけでもなく、割とおとなしい性格だ。
似たような人間といえばキャップだが、彼は好奇心旺盛で人見知りしない、更にじっとしていられない性格である。
反対といえば反対に属する二人なのだろう。
内向的で人見知りが激しい京とも、対照的な性格と言える。
しかし、そのマイペースさが似ているが故に、京との距離が縮まったのだと思う。
「でも、私より意外な人がいるでしょ」
「……まぁ、意外と言えば意外。納得と言えば納得だな」
そう言って、いつの間にか並んでいる連理とまゆっちを見る。
「ねぇ、松風はさっき"つくもがみ"って言ってた。神様なの?」
『ロンモチだろ連坊~!』
「なんの神様?馬?」
『"松風"っつったらかの有名な駿馬だろ~!その辺の馬と同じだと思うなYO!』
「しゅんば?」
「足がとても速い馬のことですよ」
「松風足速いの?どれくらい?」
『オイラを舐めんなぁ!当然の如く一番だ!イ・チ・バ・ン!』
「あはははっ」
『そこ笑うとこじゃNEEEE!ちょっとそこへなおれ連坊!』
「ムキになってはいけませんよ松風」
正確には、物凄い勢いで仲良くなる連理と"松風"。
連理は松風の存在か、あるいはそのキャラクターがツボに入ったのか、松風と話すときはテンションが一段階上がる。
しかし、松風と仲良くなるということはまゆっちと仲良くなることと同義だ。
「子供への接し方のお手本を見ているようだね」
若干呆れながら京が言う。
確かに傍から見れば、『人形を介して子供の機嫌をとる優しいお姉さんの図』である。
松風との会話を見ているまゆっちが常に微笑んでいるから尚更だ。
しかし、普段のまゆっちを知っている俺たちからすれば思わず「あのお姉さん誰?」と言ってしまうような光景だった。
「松風これ食べる?」
『いやオイラ神だから食い物はオウフッ、ブッ、ヤメ、お菓子をグリグリすんない!』
「連理さん、嫌がる人に無理を言ってはいけませんよ」
『そうだそうだ~!神の権限フルに使ってバチを当てるぞ!』
「あははっ、ごめんね松風?」
『ええ子やね。わかりゃーええんよ』
松風に悪戯をするが、まゆっちに注意されると連理はすぐに謝った。
まゆっちも連理が素直に謝ると、とても嬉しそうに笑う。
「クッ、なんだこれは!?和む場面なのに胸がドキドキする!」
「あ~、愛らしさが突き抜けるとそうなるのよ。アタシも今日知ったけど」
「大和、私たちもこんな子供が欲しいね。結婚して?」
「連理みたいな子が可愛いのは同意するがお友達で」
全員で連理の可愛さに悶えているが、ふと周囲を見回してみると、
「おい周り見てみろ。どうやらあの愛らしさは範囲攻撃らしい」
通行人や店のおばちゃんまでニコニコしながら連理とまゆっち(と松風)を見ていた。
「すごいね。初めて松風が喋ってて違和感ないと思ったよ」
「俺たちもまだまだ松風を理解しきれてないのかもな」
ファミリーに加入してひと月も経ってないしな。
「やっほ~ナオッチ。なんかすっごい可愛い子がすっごい可愛いことしてるじゃない」
近くの店から知り合いが声を掛けてくる。
「あぁ、小笠原さんこんにちわ。今あの子のために川神の案内をしてる最中でね」
小笠原千花。仲見世通りで菓子店をしている店の娘で、クラスメイトだ。
「へぇ~。じゃあうちの店も紹介してよ。サービスしてあげるわよ」
悪くない申し出だが、俺は松風と話しながらお菓子を食べる連理を見る。
「う~ん…まだこれから昼飯なんだよな。
今もお菓子食ってるから、お昼食べられなくなっちゃうと可哀想だし…」
「そうね~金平糖くらいなら大丈夫じゃない?」
「そうだな。…連理ー!」
納得した俺は連理を呼んで手招きをする。
呼ばれた連理はどうしたのかとこちらへ歩いてきた。
「大和?」
どうしたのか?と首を傾げる連理に、小笠原さんも速攻で落ちた。
「か、可愛い!近くで見ると更に可愛いわね!」
「このお姉さんの店で金平糖食べるか?」
すると、途端に目を輝かせる連理。
「金平糖!食べる!」
「あら、金平糖好きなのかしら?」
「そうなのか?」
「好き」
ニコッと笑ってこの発言。
「っ…」
小笠原さんの顔に赤みが差す。
これは破壊力が高い。耐えられるか?
「ズキューーーン!」
ワン子は耐えられなかった。心を打ち抜かれたらしい。
ちなみに効果音は口で言ってた。ちょっと今日あいつテンションおかしくないか?
「うわーなんなのこの子。天使のようだわ…
ナオッチ大丈夫?誘拐なんてしたらダメよ?」
小笠原さんは真面目に心配してくれる。
「何の心配だ……と言いたいところだが、気を付けよう」
自分がロリコンとして軽蔑されかねない発言ではあるが、小笠原さんの気持ちも分かるのでそう言っておく。
彼女も小声で『頑張って』と応援してくれた。
「じゃあ、金平糖食べに行こうか」
気を取り直してそう切り出す。
「は~いご案内~」
小笠原さんも立ち直りが早い。さすが看板娘だ。
その後、金平糖を食べつつ店のお菓子を見て過ごした。
人見知りしない連理が小笠原さんに『これは何のお菓子?』『これはおいしい?』と立て続けに問いかけていた。
小笠原さんも自分の店に興味を持ってくれるのが嬉しかったのか、優しく答えているのが印象的だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おーい大和。やっと見つけたぜ」
「今日は人が多いね」
「大和ー!お前起こしてくれよ!」
昼時になったので駅前の商店街へ向かう。
別行動していたガクトとモロに連絡し、商店街入り口で待ち合わせしていた。
キャップも起きたと連絡があったので同時に合流。
姉さんはまだ来ないらしい。
「土曜日の昼だからな。外食も多いんだろ
それとキャップは起こしても起きなかっただろう」
「おうよ!昨日の集会の後急にポテト食いたくなってよ!
ついでに新作のシェイクとかチキンとかも食ってたら遅くなっちまったぜ!」
金曜集会が終わってから寮にいないと思ったらそんなことしてたのか。
「それで?今日案内する金髪美少女ってのはどの子だ?」
ガクトが鼻を伸ばしながら聞いてくる。
こいつのことだ、クリスと同じかそれ以上(ガクト好みのナイスバディ)を想像してるんだろう。
「今ワン子とクリスに囲まれてる女の子がいるだろ」
「やっぱりあの子なんだ。大和の言う通り美少女だね
あの金髪はクリスとはまた違う魅力があるなぁ…」
髪フェチであるモロが食いついてきた。確かにあの髪は連理のトレードマークと言っていいだろう。
「なんだガキかよ…
いや確かに可愛いとは思うけどよ、あれに反応する奴なんざ井上くらいだろ。
つか確実に狙われるぞ」
年上好きのガクトはテンションが下がった。
連理にとっては幸運だと思う。
そしてやはり井上準の存在はガクトであっても無視できないらしい。
「まずは合流組の自己紹介だな!
モモ先輩はいねぇけどファミリー全員集合!」
キャップの声にファミリーが集まる。連理は突然現れた男三人組を不思議そうに見ている。
「連理、この三人は俺たちの友達だ。今から一緒に川神を案内するよ」
人見知りしないことはわかったので大丈夫だとは思うが、緊張しないように先手を打つ。
「まずはオレ!風間翔一だ!
趣味は冒険!やりたいことをやりたい時にやるのがモットーだぜ!」
「しょーいち?」
「今日一日俺たちと遊ぶんだろ?それなら風間ファミリー特別会員にしてやるぜ!
俺のことはキャップと呼んでくれ!」
「わかった、キャップ。
出雲連理です。連理って呼んで」
「おうよ!よろしくな連理!」
さすが、連理のような美少女を前にブレないな、キャップは。
「俺様は島津岳人だ。ナイスなマッスルガイだぜ。
…ところで連理はお姉さんとかいるか?いたら紹介してくれ!」
最低の自己紹介だが、ガクトらしいっちゃらしい。
「お姉さん?いないよ?」
「連理、律儀に答えなくていいからな…」
いたとしても紹介させないけどな。
「じゃあ僕の番だね。
師岡卓也。モロでいいよ、連理ちゃん」
モロが微妙に目をそらしながら言う。
モロ…美少女とはいえ子供相手なんだから…
まぁ最後に名前を呼ぶくらいはできてるからいいけど。
「モロ、連理って呼んで」
「あはは…わかったよ。よろしく、連理」
京の時もそうだけど、連理は"人見知り"という壁をぶち破ってくるな。
まぁ良いことだから気にしないけど。
「よし、自己紹介も終わったし、軍師大和!これからどうする?」
「そうだな、もうお昼だからそこのファミレスにでも入るか。飯食いながらどこ行くか決めよう」
そう提案するが、異論を唱えたのはクリスだ。
「ちょっと待て大和。せっかくの川神案内なのにファミレスなのか?
もっと美味しくて良い店のほうが良くないか?」
まぁ、普通の案内ならそのほうが良いと思う。でもな…
「そうなんだけどな、連理ぐらいの子だったらファミレスのほうが好きなもの沢山あるだろ。
それにさっきお菓子食ってたし、凝ったもの出されても食いきれないと思う」
「ム…それもそうか…。よし、そういうことなら自分も賛成だ」
旅行の後からクリスは俺の意見もしっかり聞いてくれるようになった。
あの対決も無駄にならなくて良かった良かった。
「他に案がなければファミレスだな。皆はいいか?」
そう聞いた途端、まゆっちが連理の近くに移動して辺りを見回す。
まるで警戒しているかのような……
「どうしたまゆっち?」
聞いてみると、警戒を続けながらまゆっちが答える。
「いえ、なんだか禍々しい気がこちらへ向かっているので…」
「なんだと!?どっちからだ!?」
クリスが叫んで、同時にワン子と京も警戒し始める。
「…っ!あちらです!!」
まゆっちが指し示す方向へ出て警戒を強める武士娘たち。
俺たちも身構えながらその方向を見ると…
「うおぉぉおおおおおおおお!!!!」
こっちに向かって全力で走ってくる見覚えのあるハゲが…
「あいつは!井上準!!」
隣のクラスのロリコンだった。
井上の視線は明らからに俺たち…いや、俺たちの中心にいる一人だ。
「クソッ、連理の存在を嗅ぎ付けたか!まゆっちは連理を守ってくれ!」
「はい!」
『連坊はオラたちに任せろぉ!』
「クリ!京!迎撃するわよ!」
「了解だ!」
「しょーもない……フッ!」
京は呆れながら、足元にあった小石を拾って迫りくるハゲに勢いよく投げる。
弓使いの京だが、最近は体術やスリングショット(パチンコ)、素手による投擲も身に着けていた。
京の投げた小石は見事、井上の額に強打を与えるが…
「ッ!?弾かれた!勢いが止まらない!」
まさに重機関車。その姿はまるでどこかのフリーカメラマンのようだった。
……フラッシュも使えるしな。
「ってそんなこと考えてる場合か!ワン子!クリス!急所を狙え!」
「合点!」
「任せろ!」
最早接近戦の間合いに迫ろうとしていた井上に、二人が瞬時に構える。
「うおぉおおぉおおおおおおお「セイッ!」うぐっ「やあ!」ごはっ!?」
クリスが井上の鳩尾に鋭い蹴りを放つと、それまでの勢いも合わさって重機関車もさすがに怯んだ。
そこへワン子のアッパーが顎に叩き込まれ、崩れるようにハゲが沈黙した。
「でかしたぞぉ!ワン子、クリス!」
「ったくどうしようもねぇハゲだな」
後詰として二人の後ろにいたキャップとガクトが言う。
「こいつはどこから来たんだ?」
「明らかに商店街の向こうから走ってきてたよねぇ…
本能で察知して暴走でもしたのかな」
どんだけなんだコイツ。
とりあえず沈黙している井上をどうかしたいが、こいつがいるってことは…
「ハゲはっけーん!」
「おや、見知った顔ぶれですね」
やはり現れたのは葵冬馬と榊原小雪。いつもの三人組だ。
「おい葵冬馬。お前のところのハゲがうちの客を襲いかけたぞ」
「すみません。歩いていたら突然『女神の気配がする!』と言って走り出したもので」
「ビックリするくらい速かったのだ~」
俺が危惧したことそのまんまじゃねぇか。
詳しくは前話参照で。
「はっ!?倒れている場合じゃないとロリコニアの民が言っている!」
ハゲが起きた。犯罪臭漂うその国は早く解体したほうが良い。
「準、あなたいつも言っている"イエスロリコン・ノータッチ"はどうしたんですか」
「若、すまねぇ。だが俺はもう自分を止める自信がない!」
井上が勢いよく立ち上がり、連理のほうを見る。
そこには既に、連理と話す榊原小雪がいた。
「連理っていうの~?じゃあレンレンだね!
ボクのことはユキって呼んでいいよ!ましゅまろ食べる?」
「ユキ、ありがとう。金平糖あげる」
「ウェーイ!」
ましゅまろと金平糖を交換する二人。
まゆっちとの会話に引けを取らない和み空間だ。
「珍しいですね。ユキが自分から仲良くなっていくなんて」
「ぉぉぉ…、神よ…貴方は何故こんなにも罪深い存在を創り給うたのだ…」
井上は涙を流して感動している。軽くキャラ崩壊まで起こしてるぞ。
「俺は井上準と言います!あなたの名前を教えて下さい!!一生のお願い!」
「ここで使うんだ…一生のお願い…」
ワン子が驚愕していた。
「出雲連理です」
やはりというか、素直に答える連理。
「連理ちゃんか…素晴らしい名前だ…。
これが……恋か…」
井上はもうそのまま天寿を全うするんじゃないかってくらい穏やかな表情をしている。
「連理って呼んで」
「!?…そそそそそそんなこと許されるのか…!?」
ドモりすぎだろ。
しかしなんで"ちゃん"は嫌がるんだろ。
「レンレン恥ずかしいの?」
榊原がなんとなく聞くと、連理は顔を赤らめながら頷いた。
「はうあっ!?」「ほあっ!?」
その表情に崩れ落ちるロリコンと、なぜかワン子。
……ワン子大丈夫か?連理と会って変な扉開いたんじゃないだろうな?
どうなってんだ川神姉妹は。
その後、なんとか行動を共にしようとするハゲを榊原小雪が(物理的に)沈めて、引きずりながら葵冬馬と人ごみに消えた。
俺たちは三人を見送って、体力と精神力を回復するためにファミレスへ入った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ、姉さん合流できるって」
ファミレスでチャーハンセットを黙々と食べる連理を見て精神力を回復した俺たちは、イタリア通りを練り歩いていた。
カラフルな建物に目を輝かせていた連理は、携帯を開いた俺に尋ねる。
「姉さん?」
「うん。学校の先輩だけどね」
ただの舎弟である俺の立場を説明しても混乱させるだけだと思い、簡単に告げる。
すると連理は何を思ったのかガクトの元へ駆け寄った。
「ガクト、大和お姉さんいるって。紹介」
おそらく自己紹介のガクトのセリフを思い出したのだろう。良い子だ。
「あ~連理。モモ先輩のことは俺様も知ってる。だから紹介してもらわなくても…
いや待てよ?連理から俺様のいいところを伝えてもらえば……
連理!これから会う先輩に俺様のいいところを沢山言ってくれ!」
ガクトはやはり最低だった。
今更姉さんにガクトのことを伝えても無駄だろうに。
「しょーもない…」
京も同じことを思ったのだろう。
「街は大体案内できたし、どうするキャップ?河原にでも行くか?」
『川神から出ないように』と言われているので、七浜に行くこともできない。
後は自由に遊ぶ時間にしたほうが良いだろう。
「ようし!それじゃ河原でモモ先輩と合流して皆で遊ぼうぜ!」
キャップの一言で進行方向を決めた俺たちは、姉さんと合流するために歩き出した。
――この時、俺たちは知らなかった。連理が抱える"もの"の大きさを。
それどころか、連理が何かを抱えているなんて、思いもしなかったんだ。
出雲連理
俺たちにとって小さくない出会いは、まだ始まったばかりだ。
作者は別にロリコンではありません。
次回、若干シリアス入ります。
誤字、脱字報告、感想などお待ちしております。