インフィニット・ストラトス Strong・Summer 作:kue
それでは
まだ寒い日が続く二月某日。俺―――織斑一夏は受験会場へ続く道を歩いている。
本来ならその受験校である場所へ行って校舎内で受けるのが通例だったのだが何やらカンニング事件が発生したらしく、電車を乗る距離にある市民会館みたいな場所で行うようにしたらしい。
とにかく面倒くさい。受験校での受験ならすぐについたのに……にしても寒いな。
「ひったくりー!」
そんな声が後ろから聞こえ、振り向くと同時にバイクが迫ってきているのが見えたので運転手めがけて裏拳をかましてやるとこれまたきれいに顔面に入り、金髪ピアスの不良を吹き飛ばした。
うん、今日も俺の上腕二頭筋は綺麗だ。
「てんめえなにしやがんだ!」
受験まで三十分くらい余裕あるけどチャチャっと倒すのが一番だな。ちゃちゃっと倒した後、受験会場で復習しねえと。
「というわけでさっさとそのかばん返せ。それ、お婆さんのだろ」
「うっせんだよ!」
そう叫び、男たちはポケットから包丁を取り出して俺に切りかかってくる。
包丁……良いぜ。ここでこの地区喧嘩最強No,1、不良に理由もなく絡まれた時はまずはこの俺に相談せよとまで言われたほどの喧嘩の強さを誇る俺にとってこんな不良二人造作もない。
振り下ろされてくる包丁を避けていき、一人の胸倉をつかんでこちらへ引き寄せると同時に顎にアッパーを打ち込むと意識が飛んだのか白目をむき、地面に倒れた。
「んの野郎!」
残っているもう一人がバイクの跨り、俺に向かって突っ込んでくる。
「……ふぅ」
「わっ! うわぁぁ!」
バイクを避けると同時に強めに相手の脇腹に蹴りを入れてやるとバランスを崩すと同時にハンドル操作を誤ってそのまま電柱の正面衝突し、動かなくなった。
ふん。正義は勝つのだ!
「悪いねぇ。これから病院行くところだったもんで」
「無事で何よりです」
「あ、ちょっとお待ち」
そう言って俺の手を止めると婆ちゃんはカバンをゴソゴソと探り、目当ての物を見つけたのか俺に握らせた。
…………飴玉?
「甘くておいしいよ」
「ありがとうございます。んじゃ」
婆ちゃんに別れを告げ、受験会場へと急ぐ。
俺が受けるのは藍超学園という私立高校としては学費が格安で就職率も毎年、1,2位を争うくらいに高いことで有名な私立の高校だ。
本当は受けたかった学園があるのだがそこは完全女子高なので入ることができない。
さらに言えば俺には両親はおらず、一人の姉が俺を養ってくれているのだがそろそろ独り立ちをしなければいけない時期が迫っている。よって高校卒業後は速攻で就職できるようにという事でここを選んだ。
そのはずだったんだが……。
「迷ったな」
受験会場へ入り、地図を見ながら会場内を歩くが一向に藍越学園の受験会場が見つからない。
「おっかしいな……ここであっているはずなんだけどな……次の部屋に入って人捜すか」
近くの扉を引き、中へ入ると誰もいなかったが一機の機械がそこにはあった。
まるで誰かを待っているかのようにひざを折り曲げて鎮座しているその様子はまるで主を待ち続けている忠誠を誓った騎士のような雰囲気を感じさせる。
「……ISか」
IS―――インフィニット・ストラトス。宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツだが今は軍事転用されている現最強兵器。
最強兵器なのはいいが1つ欠点があり、それは女性にしか操れないという事。
それにより、男の価値は下がり、男尊女卑気味だった世界は一気に女尊男卑の世界にハンドルを切り、各国は女性優遇政策を実施し、今じゃ男性は女性の奴隷とまで言われるほどになった。
俺はこいつの力が欲しかった……あの人を超えようと決めたあの日からこいつがこの世界に生まれてきた瞬間から俺はこいつの力を心の底から欲した。いくら料理や勉学の面で超えたと言ってもこいつで超えなくては一生、俺はあの人の腰巾着と呼ばれてしまう。
でも俺はその欠点を知った時、軽く絶望した。
俺はもう二度と千冬姉を超えることはできないのかと、一生千冬姉の腰巾着なのかと。だからせめて勝つことは諦めても腰巾着だけは卒業すると決めた。
「女性にしか操れないから意味はないだろうし…………触るくらいいか」
所詮、目の前にあるのは女にしか尻尾を振らない犬と同じでマネキンも同様。
――――そう思って触れた。
「っっ!?」
触れた瞬間、ISから俺に何かが流れたかのように頭が揺さぶられる。
直後、俺の体が勝手に動き、今まで鎮座していたISを身に纏っていく。
センサーが接続されたのか現在の状況が数値で表現され、スラスターや装備の状況など倣った記憶のないことがまるで熟知しているかのように分かる。
「嘘だろ…………」
驚きと共に俺の奥底からあふれ出てくる感情を俺は戸惑いながらも理解した。
そうだ……俺は……。
「ちょっと! ここで何を……ってえぇ!? お、男が」
――――――嬉しいんだ。
それから早二カ月ほど経過したが俺の周りの環境はめまぐるしく変わった。
世界で初めて男性IS操縦者が現れたという事で記者が大量にやってきて玄関前で居座るは生体科学研究所とか言う所からこれだけ払うから調べさせてくれだなんていう変な電話が一日に何百回とかかってきたせいでノイローゼ一歩手前になるは二カ月ぶりに千冬姉が帰ってきて分厚い事前指導書みたいなものを持って来るわ……とそんな感じで俺の周囲は変わった。
藍越学園入学のはずがIS学園入学というこれまたおかしなことになってしまったんだよな。
女子率100%だったはずが俺という一人の男子が入学したことで女子率99パーセントになってしまい、俺だけが男というある意味女の園が生まれたんだが結構これがキツイ。
さっきまで教室にいたんだが周りの視線が気になり過ぎたので今は屋上で逆立ちをした状態で腕立て伏せをするという筋トレをしている。
強くなるにはまずは健康で丈夫な肉体がいるからな。
「78、79……」
そんなことを考えているとガチャッと扉が開いた音がしたので目線だけそっちの方を向けると扉に俺の幼馴染であり、ISの生みの親の妹である箒が立っていた。
「やはりここにいたか」
「おう……何故、視線逸らしてんだ?」
「と、とりあえず服を着ろ!」
箒が顔を真っ赤にしながら言うので俺は仕方なく腕立て伏せを辞めて服を着るとようやく箒がこっちへ顔を剥けたが相変わらず顔は赤いままだ。
「久しぶりだな、箒」
「う、うむ。久しぶりだな……お前は相変わらず筋肉バカのようだが」
「まあな。強くなるには健康な肉体がいるし」
筋トレを始めたのが小6くらいだが結構筋肉がつきやすい性格なのかは知らないが今じゃ腹筋は割れているし、力を入れれば力瘤が出来るくらいにまでなった。
箒はまだ顔を真っ赤にしながらさっきから指を出したり引っこめたりしている。
「何やってんだお前?」
「イ、イヤ何もない!」
「そうか……あ、剣道の全国大会で優勝したんだってな。おめでとさん」
「う、うむ。ありがとう……だがまだお前に勝っていない。忘れていないだろうな。あの時の約束」
「あぁ。箒が全国一位になったら俺と戦うって約束だろ?」
姉である束さんがISを生み出したせいで箒の家族は重要人物保護プログラムによって政府の保護下に入れられてしまい、小学校低学年の時に引っ越してしまったのだ。
その時の約束があの約束だ。
「とりあえずここ一カ月は色々と忙しいから……またあとでいいか?」
「仕方がないな……で、では戻ろうか」
「そうだな」
屋上の扉をくぐり、階段を降りていくがちょうど三歩分後ろへ下がった距離から箒も歩いてくる。
そう言えば昔から箒って俺の後ろ三歩分の距離にいるよな……なんでだ?
一年一組―――それが俺と箒が在籍するクラスなんだが唯一の男という事でさっきから他のクラスや上級生の数が多すぎて困っちゃう。
これぞ客寄せパンダ化……俺は白黒なんかじゃない!
とはいうものの引き寄せてしまうのは致し方ないことだろう。
そんなことを考えていると始業のチャイムが鳴り響き、女子たちが一斉に蜘蛛の子を散らすように自分の教室へ戻ると同時に1人の女性教諭が入ってきた。
…………谷間がガッツリ見えているのは恐らく気のゆるみからだろう……その直後に顔を赤くして谷間を隠したのも気のゆるみだろう。絶対にそうだ。俺は見てなんかいないからな。
「皆さんご入学おめでとうございます。これから一年間、皆さんの副担任を務めます山田麻耶と言います。何かわからないことがあれば何でも聞いてくださいね」
第一印象を答えろと言われたら幼いと言える。
まあ胸の大きさなら大人と言えるな。
……にしてもまさか望んでいたものが手に入るとは……年甲斐もなく久しぶりに喜び勇んだわ……にしてもなんで今まで女性にしか使えないでいたISを男の俺が使えるようになったんだろうか……またあの天才ウサギが何かやらかしたんだろうか。
「織斑君!」
「は、はい!?」
「次、織斑君の番なんだけど……自己紹介してもらってもいいかな?」
「あ、はい」
立ち上がり、周囲を見渡してみるがやはりどこを見ても女子、女子、女子。
「織斑一夏です。色々と皆には迷惑かけるかもしれないけどその……よろしくお願いします」
チラホラと拍手が出てくる。
せ、せめて全くないかめちゃくちゃあるかにしてくれないと反応に困るんだが……い、いやだがここは覚えてもらうために一発デカいことをした方が良いのか。
と、それと同時に教室の扉が再び開かれ、黒いスーツ姿のよく知っている人物が入ってきた。
「あ、織斑先生。会議が終わったんですか?」
「あぁ。挨拶を押し付けてすまなかった」
「い、いえいえ! これも副担任の仕事ですから」
織斑千冬―――俺の実姉であるがそれと同時にISの方面では名前を知らない奴はいないと言われているほどの有名人だ。
その理由は第一回モンドグロッソ……要するにISの世界大会でブリュンヒルデという称号を貰った世界最強のIS使いなのだ。
職業不詳で月に一回か二回、下手したら二ケ月帰ってこない姉がまさかIS学園で働いていたとはね。
「諸君。私がこのクラスの担任である織斑千冬だ。私の仕事は君たちを優秀なIS使いにすることだが私はそこらの生温い教官とは違って厳しいぞ。ついて来れないと思ったものは遠慮せずにいえ。すぐに転校手続きをとってやろう。これから半月間で基礎知識を叩きこんでもらい、その後実習となるが分からなければ来い。分かるまで教えてやる。以上だ」
「キャ――――! 本物の千冬さまよ!」
「私千冬さまのファンです!」
口々に千冬姉への熱い思いを女子たちが吐き出していくが当人は鬱陶しそうな表情を浮かべて額を抑えている。
「今年も馬鹿ばかりか……静かにしろ! 授業を始める」
その一喝のもと、教室は静寂を取り戻した。
俺ガイルは当分書かないので次はISを書きます。それでは