インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第12話 何故、少年は悩むのか

 第二グラウンド近くに設置されている更衣室で着替えてはいるのだがやはりあのラウラとかいう奴の言葉が頭から離れないでいた。

 強いのか――――その質問に強いって答えられなかった自分が鬱陶しくて仕方がなかった。どうしてあそこで嘘でも良いから言えなかったのだろうか。

 いや、たとえ嘘でも強いと言えないという事を自分自身、理解しているんだ。だから言えなかった。

 

「くそ…………」

「へぇ、良い体してるね」

「ひゃぁ! だ、誰だよ!」

 

 いきなり背中をススっと撫でられ、変な声を出しながら後ろを振り返るといつの間にいたのかISスーツを着たデュノアさんがニコニコと笑顔を浮かべながら立っていた。

 な、なんでここに俺以外の奴がいるんだよ! ここは一応、男子更衣室ってことになってるのに!

 

「アハハ、ごめんごめん。ついつい良い筋肉を見ちゃったから触りたくなっちゃって」

「そ、そんなもんなのか?」

「そんなものだよ。女の子はみんなね、男の子の凄い筋肉が好きなんだよ。ふふ~ん」

「ちょ!」

 

 笑みを浮かべているデュノアさんに抱き付かれた瞬間、腕に2つの超柔らかいものがあてられ、俺の心臓が別の意味で大きく鼓動を上げた。

 や、柔らかいな……ってそうじゃなーい! 何俺は興奮しているんだ!

 

「は、離してくれるか? 着替えられないし」

「ダメ?」

 

 何がダメなのか分からないけど上目づかいかつ敢えてそうしているのか改造したISスーツから見える胸の結構深い谷間が俺の理性を大きく揺さぶる。

 ま、待て待て待て! さっきまでちゃんと胸まで隠れてたじゃん! ってよく見たらファスナーついてるし! 女子のISスーツってファスナーついてるの? 俺も欲しいな。トイレ行く時とかいちいち、脱がなきゃいかんしってそんな話をしている場合じゃなーい!

 

「と、とにかく! 先に行っててくれよ、デュノアさん!」

「シャルロットでいいよ。じゃ、またね~」

 

 シャルロットはファスナーとちゃんと上まで上げた後、スキップ交じりにグラウンドへと向かった。

 ………ど、どうしよう……起っちゃった。

 

 

 

 

「はわわわ…………ぼ、僕……恥ずかしすぎるよぅ」

 

 

 

 

 

 

「織斑。遅刻の言い訳を言え」

「何も言う事はないのでしばいてください」

 

 結局、俺の何がしが落ち着くまで待っていたら余裕で遅れてしまい、こうして千冬姉に許しを請わずにしばいてくれとお願いしているのだが小さくため息をついただけで何もされなかった。

 よ、よかった。

 

「今日から射撃及び戦闘を含む実践訓練を行う!」

『はい!』

 気合入ってるな~。俺も専用機持ちだからってうかうかしない様に気合入れてやらねえと!

「というわけで織斑、遅刻の罰として今からサンドバックになれ」

「…………はい?」

「きゃぁぁ!」

 そんな気の抜けた返事をしていると上空からすさまじいかなキリ声が聞こえたかと思えば何かが地面に激突したような凄まじい音がしたので振り返ってみると訓練機を身に纏っている山田先生がいた。

 ……えぇぇ? IS纏っていて上から落ちてくることってあるのか?

 

「諸君は少し教師を舐めているところがある。よって教師の実力がどれほど高いのか見てもらおう。山田先生、織斑を本気でボコボコにしてくださって構いません」

「い、良いんですか?」

「どうぞ」

 おいぃぃぃぃぃ! それは実の姉として言ってはいけない言葉じゃないんでしょうか!?

「では織斑君。白式を展開してください」

「お、おっす!」

 だとしても負けられないので白式を一瞬で展開し、その手に雪片弐型を握りしめて上空へと上がると山田先生もゆっくりと上空へと上がっていく。

 トホホホ……何でこんな目に合わなきゃならないの? これもそれもあそこで笑顔を浮かべているシャルロットさんの所為だ。チクショウ……でも山田先生の雰囲気、さっきとまるで別人みたいだ。

 

『織斑。聞こえているな』

「はい。聞こえてます」

『そう不貞腐れるな。サンドバックと言っても白式を完全に破壊されるほどのものじゃない』

 いや、それだったら俺全力で拒否っています。

『ではこれより、始める』

「行きますよ、織斑君!」

 

 いつもの山田先生ではない声が聞こえると同時にロック警告が表示されたのでスラスターを吹かせてその場から離脱するがそれよりも前にアサルトライフルから放たれた弾丸が白式を掠る方が早かった。

 っっ! ロック警告があってから数秒の間に打てるもんなのか!?

 

「直撃させるつもりだったんですが……中々の速さですね」

「先生の射撃の速度も速すぎます……行きます!」

 

 スラスターを全開にふかし、先生に切りかかるが物理シールドを目の前に展開され、雪片弐型の一撃をそれによって防がれるとともにサブマシンガンを手に持ち、こちらへ銃口を向けてくる。

 

「っ! 消えた!?」

 瞬時加速を発動させたままの状態で先生の頭上を通り過ぎ、背後に回って雪片弐型を振り下ろすが向こうにも瞬時加速で距離を開けられ、掠っただけだった。

 くそ! 掠っただけじゃ零落白夜の一撃で落とせない……やっぱり学園の先生って強いな。

 

『そこまで! 二人とも降りて来い』

 オープン・チャネルからそう言われ、先生と共に地上に降り立った。

「先程の戦闘で山田先生の実力は分かっただろう。以後、教員には敬意をもって接するように。では専用機持ちをグループリーダーとして1グループ8人で訓練機による歩行を行え。それぞれ各班のグループリーダーが指導しろ。一番遅かった班には罰を課す」

 

 鶴の一声とはまさにこのことで一瞬にして専用機持ちの前の1列8人の列ができ、さらにリヴァイブ・打鉄をどの班が使うのかさえ、決まっている様子だった。

 女子力半端ねえ。

 

「というわけで1番の方~」

「はいはーい! 相川清香! ハンドボール部所属!」

「は、はぁ。じゃあどうぞ」

 何故、自己紹介したかは分からん。

 コクピットへと乗り込み、打鉄を身にまとい、おぼつかない足取りでゆっくりと歩きはじめる。

「な、なかなか難しいんだね」

「俺も最初はそうだったな……まあ、セシリアという鬼教官のお蔭で短期間で慣れたが」

「セシリアって教え方上手?」

「おう、上手だぞ。流石は代表候補生って感じだ」

「へぇ~」

「降りるときはしゃがんでな」

「了解!」

 

 しゃがまずにISを解除してしまうと立ったままの状態で固定されてしまうのだ。専用機持ちはそんなこと考えなくていいが訓練機を使用するときは気を付けなければならない。

 その後も順調に2人目、3人目と消化していく。

 午前中は起動テストまでだから今日は楽だけど……日数が経ったら模擬戦とか入ってくるよな……それまでにクラス代表として恥ずかしくない強さになっておかねえとってそれはちょっと期間が短いか。

 強く…………か。

 ふと、今朝されたボーデヴィッヒさんの質問が頭をよぎる。

 俺は…………強くなれているんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後、いつものIS訓練にシャルロットもいた。

「ど、どうしてデュノアさんが」

「僕も一夏の戦い方みたいな~って」

 僕? シャルロットさんは俗にいう僕っ娘なのか……やだ、なんか可愛い。

「で、一夏。今日は誰とやるの?」

 

 最近、放課後のIS訓練の基礎講座はもうほとんど終わったも同然なのでその埋め合わせとして鈴やセシリアとの模擬戦をやっている。

 戦績的に言えば今のところ零落白夜との相性が最高にいいセシリアには勝ち星をあげてはいるが鈴との模擬戦では衝撃砲という見えない兵器があるせいで半分勝って半分負けている。

 箒も訓練機を借りれた日は箒ともやっている。

 

「今日はシャルロットとやってみたいな」

「は、はぁ!? 昨日セシリアとやったんだから次はあたしでしょ!」

「や、だってクラスメイトとはやっておきたいっていうか……それにまだやったことのない奴とやるのはそうそう悪いことじゃないと思うんだが」

 

 俺の発言に鈴は何も言えず、渋々後ろに下がってシャルロットが前に出てきた。

 どうもこの前の更衣室での一件以来、シャルロットのISスーツ姿を直に見れない。

 な、何を意識しているんだ俺は。

 

「よろしくね、織斑君」

「一夏で良い」

「うん。じゃあ一夏、行くよ」

 

 シャルロットが専用機であるラファ―ル・リヴァイブを展開する。

 シャルロットの専用機はリヴァイブその物らしいんだけどそこは専用機なので色々と弄っているらしくカラーリングもネイビーから変わっているし、装甲自体もかなり異なっている。

 白式を展開し、ゆっくりと宙へ浮かぶ。

 

「私も混ぜてもらおうか」

 そんな声がオープン・チャネルから聞こえ、新たなISの反応が表示される。

「……ボーデヴィッヒ」

 漆黒のISを身にまとった孤高の転入生がそこにはいた。

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