インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

13 / 37
第13話 何故、少年は答えを見つけられないのか

「なんか用か」

「言っただろう。私も混ぜてもらおうかと。貴様がどれほど強いのか見たいだけだ」

「それだったらもうすぐそういう行事がある。そこでいいだろ」

「……ふん」

「んだよ」

「いいや。戦いを好まぬ軟弱ものかと思ってな」

 

 俺とボーデヴィッヒさんの間に流れるピリッとした空気に当てられたのかさっきまで活発に練習を行っていた他の連中も今は静かになっている。

 

「私は教官が二連覇を成し遂げられなかったことは残念だと思っている。だがそれはあの方の選択だ。二連覇という名誉を捨ててでも助けなければならないものがあった……だがお前はそれに見合うほどに強いのか?」

 

 第二回モンドグロッソが開催されている期間中、俺は謎の組織によって誘拐されてしまった。

 その時、千冬姉はモンドグロッソに連覇という偉大なものを捨ててドイツ軍からの情報をもとに俺を助けに来てくれたが決勝戦には間に合わずに千冬姉の不戦敗が決まり、二連覇は消えた。

 千冬姉はドイツ軍に借りを返すために一年間、IS部隊の教官としてドイツに渡った。

 その当時はよく言われたよ。あなたさえ誘拐されなかったら二連覇だったのにとかわざわざ自分でいかなくてもドイツ軍に任せればよかったんじゃないかとか。

 

「何が言いたいんだよ」

「教官が選択したことに見合うほどの強さを持っているのかということだ。貴様が強くなければこの先一生、教官の選択は批判の対象となり、間違いだったということになるぞ」

「んなこと俺が一番分かってる。だからこうやって特訓してるんだ」

「ならば何故、私と戦わない。貴様からすれば戦いは重要なのだろう。さっき言っていたではないか。戦ったことのない相手と戦うことは良いと」

「それは……」

「教えてやろう。それは貴様が弱いからだ。強くなろうとするのに戦う意欲がない……自分の弱さを自覚しているという証拠だ。弱さを自覚している分にはいい。だが貴様は戦いを避けた。戦いなしに強くはなれない……所詮、貴様は強くなると口だけ言っている虫けらだ」

「…………お前に」

「なんだ」

 

 

 

 

 ―――――一陣の風が吹く。

 

 

 

「何がわかる!」

 全速力の瞬時加速でラウラとの距離を一瞬で詰め、雪片弐型を全力で振り下ろすが両腕手首から伸びたプラズマ手刀により、防がれ、金属音が周囲に響く。

 瞬時加速を発動したまま相手の脇腹にけりを入れ、アリーナのグラウンドに叩き付ける。

 

「ぶっ飛ばしてやる!」

「それでいい! 何も考えるな! ただ戦え!」

 

 スラスターを全開にふかし、雪片弐型による高速の突きを繰り出そうとした瞬間、目の前に別の物が挟まれ、金属音が鳴り響く。

 

「一夏。そこまでにしておきなさい」

「どけよ鈴! 俺はこいつをブッ飛ばす!」

「邪魔をするなら貴様も」

 

 ラウラの言葉が止まった。

 ラウラの周囲にはブルー・ティアーズが浮遊しており、いつでも撃てるようにロックまでされており、さらに後ろには二丁のサブマシンガンを携えたシャルロットがラウラに銃口を向けている。

 

「一夏。アリーナに他の連中がいる状態で派手に模擬戦をしたら下手すりゃ怪我人出るわよ。これ以上戦えばあんた最悪、謹慎処分くらうわよ」

「あなたもですわ、ボーデヴィッヒさん。すぐに武装を解除なさい」

「いくら第三世代型とはいっても代表候補生二人を相手にするのは少ししんどいんじゃないかな」

『そこの生徒! そこで何をやっている! クラスと名前を言え!』

「……ちっ。興ざめだ」

 

 そう言うとラウラはプラズマ手刀を量子変換して消し、ピット入口まで飛んで行った。

 帰れば怒り心頭の教師が待っているだろうがあいつの性格からしてそんなもの無視するだろう。

 問題は俺か……。

 

「一夏。挑発されてそれに乗ったら意味ないじゃない」

「……悪い」

「でもあの程度で止められてよかったよ。もしも僕らがいなかったら今頃、二人を止めるために先生たちがIS装備して出て来てたかもね」

「シャルロットもセシリアも悪かったな…………もう今日は上がろう」

 

 アリーナにも閉館時間はあり、今の時間帯はもう閉館時間間近だ。

 白式を待機形態へと戻し、男子更衣室へと戻るが一人になったこともあるのかさっきのラウラの言っていたことが勝手に脳内で再生されて頭に反響する。

 …………あいつの言う通りだ……強くなるには戦わなきゃいけないのに俺はそれを避けた…………全部あいつの言う通りなんだ。千冬姉が選択するに相応しいくらいに強くならなきゃいけないのに俺はなれていない。それどころか千冬姉に迷惑ばかりかけてる…………何がどこにいても駆けつけて護れるくらいに強くなるだ…………全然なれてねえじゃねえか……そもそも強いって何なんだよ……みんなを護れるくらいのが強いのか? 世界全部を敵に回しても戦えるくらいのが強いのか? 分かんねえ…………何が正解なんだよ。

 

「織斑君、いますか~」

「山田先生?」

「少し大事な話があるんですけど……入ってもいいですか?」

「あ、どうぞ」

 慌てて脱ぎ掛けていたISスーツをまた着なおすと同時に山田先生がファイルを片手に入ってきた。

「良かった~。まだいてくれて。実は白式の登録関係のことで書かないといけない書類があるんです」

「はぁ」

「それでですね。一緒に来てくれますか?」

「分かりました」

「じゃあ外で待ってますので……あ、あとそれと織斑先生が後で私の部屋に来いって言ってましたよ」

 千冬姉が? いったい何の用なんだ。

「分かりました」

 山田先生が出ていき、再び静かになった更衣室の中で黙々とさっきの疑問の答えを探しながら制服に着替えるがやっぱりそんな短時間で納得がいく答えなんか出るはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………情報はまだ……か…………分かってるよ。所詮僕はデュノア社が生き残るための道具……そんな道具の僕が学園生活なんか満喫してる場合じゃないよね……本気出すよ」

 

 

 

 

 

 

 

 山田先生に書くように頼まれた書類はほとんど俺の名前を書くだけのものが多かったからそんなに時間もかからず30分ほどで終わったけどなんせ数が多かったこともあって腕がかなり痛い。

「はぁ…………今日はもう寝るか」

 

 書きながらずっと考えていた。俺の言う強くなるっていったい何なのか。何をもってして俺自身が強いと言えるのだろうか。可能性としていくつか選択肢は出てきたけどどれにも正解の判を押すことなんて出来なかった。

 あいつの言う通り俺は弱いままだ…………みんなを護れるくらいに……それで本当に千冬姉が選択したものに相応しいくらいの強さと認められるのか?

 

「あ、そうだ。確か千冬姉に呼ばれてるんだった」

 それを思い出し、小走りで寮長である千冬姉の部屋へと向かう。

 でも話しって何なんだ……もしかして今日、アリーナで暴れかけた説教かな…………それも良いかもしれない。強さを何もわかっていいない俺にはぴったりだ。

 

「千ふ……織斑先生」

「入れ」

 

 寮長室へ入るとまず一番最初に目に入ったのはそこらへんに適当にハンガーにかけられたスーツ、選択して乾かしたのはいいが適当に畳まれている下着。

 相変わらずズボラなままなんだな。

 

「千冬姉。ちゃんとたたまないと折り皺つくぞ」

「ん? あぁ、そうだな」

「はぁ」

 小さくため息をつき、手に取って皺くちゃになっている皺を伸ばしながら畳んでいく。

「一夏」

「ん?」

「ラウラとやりあったそうだな」

 

 そう言われ、畳んでいた手が止まる。

 そうだよな…………千冬姉の耳に入らないわけがないか……また俺は千冬姉に迷惑ばかりかけて……。

「あいつと僅かなりに戦ってどう思った」

「…………強い……俺なんかよりも…………」

「だろうな。一夏、私はお前でもラウラと互角に渡り合えるだけの力はあると考えている……ただな。お前とあいつとでは決定的に違うものがある」

「違うもの…………」

「何のために強くなるかだ」

 

 その一言が俺の心臓を鷲掴みにする。

 別に怒られていないわけじゃないのにまるで怒られている時の様に冷や汗は出てくるし、千冬姉と目が合わせられない。

 

「一生徒のプライベートな話をするわけにはいかないから詳しくは言わないが……少なくとも奴は強くなるための理由を得ている。お前はあるのか。自分が何のために強くなりたいと思う理由が」

 

 ………俺が強くなる理由…………千冬姉を超えるため? 確かにそれもあるけどそれは理由じゃなくて目標だ。じゃあ何のために俺は強くなりたいんだ…………みんなを護りたい……俺は確かにそう願った。だから白式もそれにこたえて零落白夜っていう力を俺にくれた。でも本当にその答えに戻っていいのか…………本当にそんな理由で千冬姉が選択したことに相応しい強さを得られるのか?

 

「その理由を見つけられない限り、月末の学年別トーナメントでは勝てないぞ。話は以上だ」

「……失礼しました」

 寮長室を出て壁にもたれ掛る。

「…………今日はもう寝よう」

 

 そう結論付け、誰もいない静かな廊下を一人歩きはじめる。

 自分の部屋に到着し、鍵を開けて中へ入るが飛び込んできた衝撃過ぎる光景に俺は扉を閉めて外に出る。

 …………つ、疲れてんのかな俺。

 

「よし……うぉ!?」

 目をこすり、もう一度扉を開けた瞬間、スケスケのネグリジェというエロさを前面に出した格好のシャルロットが笑みを浮かべながら立っていた。

 あ、ある意味その笑顔怖いぞ。

 

「お、お帰り、一夏」

「な、なんでシャルロットが俺の部屋に」

「鍵開けっ放しだったから部屋で待ってたんだ」

「お、おいシャルロット!」

 

 ニコニコ笑顔のシャルロットに手を引っ張られ、部屋の中へ入ると小さなテーブルの上にチョコレートがいくつか箱に入った状態で置かれていた。

「あれ、このチョコ」

「僕が作ったんだ。一夏ってなんか悩んでそうだったからね。悩んでいる時は糖分補給が大事だよ」

「それもそうだな……にしてもシャルロットって料理も上手いんだな。ISも上手いし」

「そりゃもちろん代表候補生だしね。ほら、食べてみて」

「おう! いただきまーす!」

 

 ベッドに座り、チョコを1つ口の中に入れるとほんのり甘さが広がる中に少しだけ苦味も感じたけど顔を歪ませるほどの物ではなくいい塩梅なおかげで絶妙なおいしさだ。

「どうかな?」

 スケスケエロ全開の格好をしたシャルロットが小さく笑みを浮かべながら俺の隣に座り、腕に抱き付いてきてわざとなのか柔らかい二つの物まで当ててくる。

 

「あ、あのシャルロット?」

「な~に? で、どう? 美味しい?」

「お、おう。おいしいっ!?」

 

 その時、突然視界がグニャリと歪み、平衡感覚がなくなってきた。

 あ、あれ俺…………なんかかなり眠い……。

 襲ってくる眠気にあらがう事すらできずに俺はベッドに倒れ込んだ。

 

 

 

 ―――――ごめんね、一夏。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。