インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第14話 何故、少女は明かしたのか

「――――――――ん」

 ふと目を開けると部屋の明かりは全部消されており、何も見えなかったけど俺の手を包んでいる温もりの正体だけは何故だかすぐに分かった。

「シャルロットか?」

「……うん」

 今の彼女の声はすぐにでも泣き出しそうな……そんな弱弱しい声に聞こえた。

 

「一夏。気分は悪くない?」

「あ、あぁ」

「どこかおかしなところとかは」

「いや別に……あ、でも少し痺れる」

「そうだよね……」

「どうしたんだよさっきから」

「…………ごめんね、一夏」

 

 そう言いだすや否や俺の手に何かしずくのようなものが滴り落ちるのを感じ、ふと視線をシャルロットの顔へと向けると彼女の綺麗な双眸から涙がポロポロと流れ落ちていた。

 今すぐにでも起き上がってどうしたんだよって言ってやりたいんだがどうにも体が少し痺れていて上手くベッドから起き上がることができない。

 

「本当にごめんね、一夏」

「どうしたんだよ急に……泣き出したかと思えば謝りだすしで」

「一夏が食べたチョコね……あれ、本当は僕が作ったんじゃないんだ」

 

 ……んんん? つまりシャルロットは自分が作ったと偽って俺に食べさせたことを今になって後悔し始めて泣きながら俺に謝っているってことなのか? いやいや、そんな事で泣く程今を生きる若々しい女の子は弱くないぞ……じゃあなんでシャルロットは……。

「あれはね。僕がこっちへ来るときに持たされた睡眠作用と麻痺作用を引き起こす薬を入れたチョコなんだ」

「……どういう意味だよ」

「順を追って説明するね……僕の父はデュノア社の社長……でも僕はその人の本妻の子じゃないんだ」

 その一言だけで理解した。

 本妻の子じゃない……つまりシャルロットは父親が浮気した相手との間に生まれた子供だってことだ。

「元々はデュノアから離れて暮らしていたんだけど2年前にお母さんが亡くなってね……その時に引き取られたんだ。それで色々な検査の時にIS適正が高いことが分かってデュノア社のテストパイロットをすることになったんだ。普段は別邸で暮らしているんだけど1回だけ本邸に呼ばれてね……本妻の人に殴られたよ。泥棒猫がって」

 

 そう話すシャルロットの表情は暗くてよく見えないけど声からするにどこか諦めているようでどこか何かに怒っているようにも感じる。

「それから少しして経営が厳しくなってきたんだ」

「……所詮、リヴァイブは第二世代機ってことか」

 

 その一言にシャルロットは首を縦に振った。

 デュノア社は量産機ISのシェアが第3位の大企業……とはいってもこの時代、古いものにすがっていてはその地位を維持することは難しい。次々と新たな理論、武器、機体が各国で作られている中、世界シェア第3位という地位を維持するには新しい武装や機体を作る必要がある。

 今はその大きなテーマが第3世代機だ。ただどの国も第3世代機の開発には遅れが出ているか一向に進まないかのどちらからしい。たとえ出来てもエネルギー効率が悪かったりと次々と課題が出てくるらしい。

 

「元々、大きく遅れを取っていたからね。時間も何もかもが圧倒的になかった……その時に政府からの通達で援助が大幅にカット。挙句の果てには次のトライアルで選ばれなければIS開発許可を剥奪。第3世代機の開発は会社存続のために急務になったんだ……そんなところに一夏が現れた」

 …………まさか、シャルロットがIS学園に転入してきた理由って……。

「僕はね、一夏……ハニートラップなんだよ」

「…………」

「いいや、ハニートラップは語弊があるかな……一夏の……男性IS操縦者の遺伝子を宿すための箱でしかないんだよ。僕が会社に命令されたのは織斑一夏の子供を宿すか遺伝子を取ること。でも後者は明らかに無理な話なんだ。国外に遺伝子を運ぼうとしても日本とフランスじゃ距離があり過ぎるからね……だから確実な方法として僕が君の子供を宿すことが最優先事項だったんだ」

 

 シャルロットの話しを聞けば聞くほど怒りの感情が奥底からふつふつと込み上げて来て痺れてあまり動かせない状態でも俺の拳は強く握られる。

 あり得ねえ……いったい自分の子供をなんだと思っているんだ!

 

「お前は……シャルロットはどう考えてるんだよ」

「僕? 僕はただの道具だからね……命令を失敗したから本国に戻されて良ければ牢屋行……悪かったら……女としてぞんざいに扱われるんじゃないかな」

「道具って…………それはお前の意思じゃないだろ!」

「い、一夏」

 痺れている体を無理やりに起こし、シャルロットの肩を掴む。

「道具っていうのはそれはお前の親父が決めつけたことだ! お前の意思は……お前の意思は道具なんて思ってないんだろ! 親が子供を道具になんてできないんだよ……どんなことがあっても」

「ど、どうしたの一夏」

「…………俺は親の顔を見たことがない」

 

 恐らく、事前に俺のタイプの女性だとかそういうのを調べる時に身辺情報を調べて俺の両親が不在っていう事も知っていたのかシャルロットは申し訳なさそうに顔を伏せる。

 

「だから俺には親がいる奴らの気持ちとか反抗期とか分かんねえよ……でもこれだけは分かる! 子供は親の道具なんかじゃねえ! 子供は子供だ! どこまで行っても道具なんかになんねえよ……シャルロット、お前はどうしたいんだ。道具としてじゃなくてシャルロット・デュノアっていう一人の女としてどうしたいんだ」

「僕は…………分からないよ」

「……じゃあ、ここにいればいい」

「へ?」

「IS学園はどこの組織からの外的介入も禁じている。つまり3年間はデュノア社だって何も手が出せない……その間に自分がどうしたいのか決めればいい……お前を狙って襲ってくる奴らがいたらそん時は俺が護ってやる!」

 …………まただ。また口任せに行ってしまった。本当は誰かを護れるくらいに強くなんかねえのに……。

「…………一夏は強いね」

「へ?」

 

 突然言われたことに思わずそんな変な声が出てしまう。

 今の今まで自分の中で弱いって考えていたんだけどな……そう言えば誰かに強いって言われたのってほとんど初めてじゃないか?

 

「普通の人ならだれかを護れるなんてそんなたいそれたこと怖くて言えないよ……でも一夏はそれを言えるだけの強さがあるんだね」

「……そんなことねえよ。俺は弱い……この前だってボーデヴィッヒに挑発されただけでブチギレて周りのこと考えずに突っ込んだし、前に1回鈴だって怪我させちまったし」

「そうじゃないよ」

「え?」

「僕が言ってる強いっていうのはね。ISが強いとかそういう意味じゃないんだ……なんていうのかな。人として、一人の男として強いっていうか……一夏に言われてどこか僕、安心したんだ。もしかしたらそう言ってくれる人を求めてたのかもね」

 

 そう言いながらシャルロットは笑顔を浮かべる。

 …………俺の追い求める強さはそんなもんで良いのか……そんな強さで千冬姉を超えられるのか……仮に超えたとして他の奴らはそれを認めてくれるのか……。

 

「…………うわぁ!」

 シャルロットの肩から手を離そうとした時、まだ体にしびれが残っていたせいで上手く動かせずにそのままズルッとシャルロットの胸に顔を突っ込んでしまった。

 あ、柔らかい……ってそんなこと思ってる場合じゃない!

 

「わ、悪い! まだ痺れてて」

「ううん……いいよ」

 そう言うや否やシャルロットは俺を抱きしめた。

 千冬姉に抱きしめられた時とはまた違う温かさが伝わってきて離れようとする俺の意思があっという間に破壊され、そのまま暖かさに身を任せた。

 

「ありがとう、一夏……僕、少し考えてみる。本当に何がしたいのか」

「あぁ……何がしたいのか決まったら教えてくれよな」

「うん……ありがとう、一夏」

 そう言うシャルロットの浮かべている表情はきっと満面の笑みなんだろう。

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