インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第18話 これまでの結果

「な、何あれ!?」

 観客席で一夏の戦いを見ていた鈴とセシリアは突然のアクシデントに大きな声を上げて立ち上がってしまう。

 先程行った二連続瞬時加速の負担はすさまじいものだったらしく白式の脚部スラスターは大きな爆発を上げて全損した挙句、炎を上げている。

「脚部スラスターが爆発しましたわ!?」

「もしかしてさっきの奴のせいで……一夏、あんたどうする気よ」

「ここまで……ですの?」

 しかし、鈴はふと気づく。

 ―――――まだあいつの顔は諦めていない。

「いいえ、まだよ」

「え?」

「あいつはまだ何もかも諦めていないわ。勝つことも、この状況をどうにかすることも」

 

 

 

 

 

 

「脚部スラスターが全損! PICにも異常が発生しています! 織斑先生!」

 モニターに送られてくる白式の異常を見て大慌ての麻耶に対し、千冬は酷く冷静な面持ちのまま目の前の巨大モニターに映し出されている弟を見ている。

「このまま続行させろ」

「で、ですが!」

「奴の顔を見ろ……まだあきらめていないだろ」

 

 

 

 

 

 

 そんな警告ウインドウが表示された瞬間、ウインドウにノイズが流れ始め、さらには脚部スラスターが爆発を起こし、体勢を大きく崩してしまったうえにゆっくりと地上に向かって落ちていく。

「な、なんだ!? いったい何が起きたんだ!」

 ――――異常! PICに異常発生。脚部スラスター全損。

 なっ!? こんな時に何で問題が起きるんだよ! しかもPICまでおかしくなるってウイルスでもぶち込まれたのかよ!

 

「うぉ!?」

 ゆっくりだったのが一気に落ちる速度が速くなり、ドンドン地面が近づいてくる。

「一夏!」

「させるかぁ!」

「っっ! しまった!」

 

 突然のことに連携が崩れ、シャルは俺からラウラの意識を外そうと突っ込んでいくがラウラのAIC・停止結界に捕まってしまい、動きが完全に止まってしまう。

 下には勝利を確信した笑みを浮かべているラウラがレールカノンをこちらへ向けている。

 下も地獄、上はさらに地獄という最悪の状況が完成してしまった。

 まさかさっきの連続瞬時加速のせいか!? くそっ! せっかくここまで来たっていうのに俺はここでラウラに負けるのかよ! 鈴たちと約束したじゃねえか! 絶対にラウラに勝って来るって!

 

「終わりだ! 織斑一夏!」

 他の処理を行っているのかもう白式の警告ウインドウすら出てこない始末。

 無駄に性能が良いハイパーセンサーのお蔭でレールカノンのロックが解除され、戦闘状態へ移行、さらには弾丸が装填される様子までハッキリと俺に伝わってくる。

 こんなところで俺は負けるのか……あいつらとの約束を…………いや、待てよ。

 ふと、鈴とセシリアたちのことを思いだした時にこんな状況で使える何かがあることに気付く。落ちていく中必死に頭の中に潜り、その使えるものを探していく。

 あるはずなんだ! こんな状況でも使えて俺が勝てるものが! 思い出せよ! 思い出せよ俺!

 目はラウラを睨み付けながら必死に頭の中を探していく。

 

 

 ――――そしてようやく見つけた。

 

 

 

 無重力反転! それだ! PICに異常が発生した時にスラスターだけで相手の攻撃を避ける技術! それをセシリアから教わったじゃねえか!

 すぐ白式の現在のデータを全て引っ張り出してきて確認すると背部スラスターだけはまだ完全に生きている。

 これだ! これでまだ俺は戦える……ただ一回だけだ。チャンスは一回だけ。

 雪片弐型を握りしめ、奴を睨み付ける。

 

「っっ! まだこの状況で諦めていないというのか……無駄だ! 脚部スラスターもPICも使えぬ今のお前が勝つことなどは絶対にない! これが限界だ!」

「限界なんて……限界なんていくらでも越えてやる!」

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 白式から警告が送られてこない以上、俺の目視で回避行動を行うしかない!

 両目を見開き、ハイパーセンサーの広域視覚から送られてくる情報をその小さな頭にぶちこみ、ただひたすらラウラのレールカノンをハッキリと見る。

 この一撃が最後になる! 俺が勝つか奴が勝つか!

 

 

 ―――――――直後、ラウラのIS全体がズッシリとほんの一瞬だけ下に沈むのが見えた。 

 

 

 

 

 右背部スラスターON!

 空気が吐き出されるような音が聞こえた瞬間、俺の体が左側へと傾き、レールカノンから放たれた一撃が俺のギリギリのところを通り過ぎていき、俺の背後で大きく爆発を上げた。

 その先に見えるのはラウラの驚いた表情。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 雪片弐型を強く握りしめ、最後のエネルギーを零落白夜にまわし、そして一気に!

「うらぁぁぁぁぁぁ!」

 まっすぐに振り下ろされた雪片弐型はラウラのISを切り裂き、装甲に深い傷をつける。

 地面に足がついたのを確認した直後、今度は雪片弐型を下から上へとラウラに背を向けるように全力で振り上げた瞬間、彼女のくぐもった声と共に金属音が辺りに響くのが分かった。

 その直後に白式のエネルギーが空になるとともに背部スラスターも大きな爆発を上げて全損してしまい、粉々に砕けたパーツが地面にいくつか落ちるのが見えた。

 ふと後ろを見てみればISを纏ったままアリーナの天井を見上げるようにラウラが倒れている。

 

「私は…………負けたのか」

「あぁ……俺達が勝ったんだ」

『ワァァァァァ!』

 そう言った直後、アリーナを包み込むほどの大歓声が鳴り響いた。

「なるほどな……ようやく理解できた」

「何がだよ」

「教官が貴様を高く評価していたことをだ……私は強さこそが力そのものだと思っていた……だが違うのだな。仲間との連携、その身を削ってでも戦う決意……そして最後まで諦めない心……ようやく理解した」

 そう言うとラウラはゆっくりと立ち上がり、俺の方を見てくる。

「織斑一夏。貴様は強い」

 そう言いながら拳を突き出してラウラに合わせるように俺も拳を突き出し、ラウラの物に軽くぶつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、俺の白式は脚部・背部スラスター及びPICを激しく損傷し、損害レベルCを超えてしまったため、これ以上の大会参加は不可能という判断を下され、試合は辞退。1つできてしまった穴は不戦勝組を作ることでどうにかして補ったらしい。

 もちろん白式は整備行きとなってしまい、今俺の手元にはない。

 まさかトーナメント初日で結果を出すと同時にISを破壊しつくしてしまうとは……もう少し白式のことを考えて使わないとだめだな。

 

「それにしてもあんたよくあんな状況で無重力反転なんか使ったわね」

「ほんとだ。俺も驚いてる」

「ふふん! これも私の訓練の賜物ですわね!」

「流石は私の嫁だな」

「「「…………」」」

 俺たち三人の目線はいつの間にか自然と混じってトランプをしているラウラに集中している。

「なんだ? 何かおかしなことでもしたか?」

「そ、その前になんであんたがここにいるのよ!」

「そ、そうですわ!」

「うむ。そのことだが…………すまなかった」

 

 そう言うや否やラウラは手札をベッドに置き、頭を深く下げた。

 この前のこともあるセシリアと鈴は酷く言ってやろうと考えていたらしいのだがラウラのその姿を見て強く言えなくなってしまったらしく、もごもごとしながら何も言わなかった。

 

「お前達のISを壊したのは私の責任だ。どんな罰もうけよう」

「い、いや罰って……ねえ、セシリア」

「そ、そうですわね。コアごと破壊されたわけではありませんし」

「良いというのか?」

「「う~ん」」

 お前らは許すのか許さないのかどっちだよとツッコミたいがぐっとこらえよう。これは当人たちの問題だし……ところで箒の姿が見えないな。

 

「ま、まあ今回は許すわよ。実力不足も分かったし」

「そうですわね。まあ今回は、ですが」

「そうか……礼を言う」

「あ、革命!」

 シャルがそう言いながら場に3のカード4枚を出した。

 おぉ、これぞフランス革命!

「ところで嫁って何だ」

「なんだそんなことも知らないのか。私の部下で日本のサブカルチャーに詳しい奴がいてな。そいつが言うに日本人は気に入った相手を嫁というらしいじゃないか。だからお前は私の嫁だ」

 それは嫁と書いて好敵手と読むのではないでしょうか……まあ、いいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……姉さん」

『やあやあ箒ちゃん。久しぶりだねぇ。せっかく番号教えたのにかけてくれないから束お姉ちゃん寂しかったぞ!ぶいぶい! 用は何かな……なんていう面白くない質問はしないよ』

「私も……私も専用機が欲しい」

『もっちろん! その為のISはもう作ってあるよ。白を凌駕するのはいつだって紅だから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園という特殊な学園に置いてはセキュリティーというものは非常に高く設定されている。

 例をあげれば監視カメラは学園の入り口、および周囲に張り巡らされているかのように複数台が設置され、さらには入り口で持ち物検査を受けた後、さらにそこから金属探知機を潜り、さらに事務方の職員により、本当にその会社から送られてきているかの確認を受けた後、ようやくIS学園の中へ入ることが許される。

 だがそれは人間に関して言えること。

 たとえばISの能力によって大気の成分を変質させることで周囲の人間、およびカメラなどに”そこには誰もいない”という錯覚を与えることが出来れば余裕で通り抜けることが可能。

 学園の整備室の何もない場所から黒の眼球に金の瞳、流れるような銀髪を持つ少女が現れ、そこに鎮座するように置かれている白式に近づいていく。

 少女は徐に近くにある電子機器に目を向けると勝手に電源が付き、ログイン画面が表示される。

 

 

 ―――――教員IDおよびパスワードを入力してください。

 

 

 

 ―――――※※※※・××××。ようこそ、織斑千冬さま。

 

 

 あっという間にプログラムをのっとった少女はそのまま操作し、白式の修繕状況を表示する。

 脚部・背部共に全損するだけでなくPICに関してはプログラムから壊れており、完全に修復が終わるのは三カ月先という結果がでている。

 だが少女は表情一つ変えずに指先だけISを展開し、その状態で画面に触れる。

 

 

 

 ―――――新たなインストールデータを確認。プログラムを信頼してインストールを行いますか?

 

「旧修繕(リペア)データは全消去(オールデリート)。新データをインストールし、それに従って白式の修繕を行え。なおインストール時、新データの保存は不要。修繕終了後、全て削除」

 

 ―――――インストールを行います。旧データを全消去し、新データに基づいて白式の修繕を行います。

 

「修復完了期間は」

 

 

 ―――――予測では1日と2時間20分。

 

「12時間短縮するために整備室の全機能を修復作業にあてろ」

 

 

 ―――――整備室に存在する全機能を一時停止。修復作業にあたります。

 

 

 そんな画面が表示された直後、白式の周りを独立稼働アームが囲い、少女がインストールしたデータを基に白式の修繕を始めた。

 少女はそれを見て再びISの能力によって姿を消そうとした瞬間。

「むぐぅ!」

 口を押えられると同時に首筋に冷たい何かがあてられ、壁に押し付けられた。

「貴様、束のところの奴だな」

 酷く冷たい声の主は織斑千冬。いつからそこにいたかは分からないが明らかにその手にはサバイバルナイフが握られており、その目は殺気に満ちている。

 世界最強が殺しにかかっているその様子を見て少女は恐怖に体を震わす。

「私の質問にだけ答えろ。あの無人機は何のために送られてきた」

 少女はその質問に知らないと首を振る。

「…………まあいい。今回は見逃してやる…………それとあいつに言っておけ……今度からは連絡をよこせと」

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