インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第21話 何故、彼女は外を見るのか

「見てみて! 海だー!」

 暗いトンネルを抜けた途端にクラスメイトの一人の女子が叫ぶとそれにシンクロしてかバス内が女子たちの甲高い声一色に染まりあがる。

 天気は快晴そのもの、海面もここから見る限りでは落ち着いているように見える。

 ついに臨海学校が始まるのか……俺も初心に戻って基礎の基礎からやんねえと……ってよく考えたら俺、初心に戻るほど進んでねえじゃん。よし、言い変えよう。初心者として基礎から学ぼう。うん、こっちの方がしっくりくる。学年別トーナメントで1年生最強と謡われている実力を持つラウラを倒したとはいえ、あの時は1対2だったしな。何回か模擬戦をやったけど今のところは俺が負け越しているし。

 

「日本の海も綺麗なんだね~」

「沖縄の海なんかもっと綺麗だぞ。な、箒」

「……う、うむ。そうだな。一度は現地に行ってこの目で見てみたいものだ」

 

 後ろの箒に話しかけるとさっきまで何か考え事をしていたのか少し様子がおかしい。箒の様子がおかしいのはここ最近始まったことだ。昼飯に誘っても反応が薄いし、何より放課後訓練にあまり顔を出さなくなった。

 体調が悪いってことじゃないみたいだけど……大丈夫か?

 

「嫁」

「うぉ!? お、お前どこから」

 

 ラウラが俺の足の間から顔を出す。

 まさかこいつ座席の下を通ってきたのか? ここ人が通れるほど隙間あるか?

 

「ちょ、ちょっとラウラ! ど、どこに顔を出してんの!?」

「なんだ? 嫁の股の間だが」

 いや、それはいいんだが……俺としてはなんだか俺の息子をジーッと見られているようでなんか恥ずかしい。

「そうですわラウラさん! 破廉恥ですわ!」

「破廉恥? 何故だ?」

「良いから!」

 シャルに手を引かれ、ラウラは渋々自分の席に戻り……はせずに俺の膝の上にちょこんと座ってしまい、まあなんというかバスに核爆弾並に力を持つものを投下しやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達が3日間お世話になる旅館・花月壮の女将さんに挨拶をし、中へ入るが俺はどうやら千冬姉と同じ部屋らしい。なんでも就寝時間を過ぎてから俺の部屋に突撃してくる奴らがいるとかなんとか。

 まあそこら辺の説明は特に大事じゃないから半分聞き流してたけどな。

 

「す、すごっ! 織斑君筋肉凄!」

「そうか?」

 体を鍛え続けてはや数年。腹筋は物の見事に割れ、腕に力を入れればそれはまあ大きく膨らみ、胸筋はよく見るようにぴくぴくと動かせる。

 流石にこれ以上は鍛えると危険なので今はこの状態を維持することを目的として筋トレはしている。

 

「おりむ~すご~い」

 俺的には全身きぐるみを着ている風にしか見えない水着を着ている布仏さんの方が凄いと思うぞ。

 それにしても海に来たのはいつぶりだ? いや~波のたつ音とこの風……うん。まさに生みに来たぞっていう感じがして中々にいい気分だな。

 

「相変わらずあんたの筋肉人気ね」

「おぅ、鈴。似合ってるな」

「っっっ! い、いきなりいうなバカ!」

 な、何故水着を褒めたのに怒られなきゃいけないんだ?

「一夏~」

「シャル……ラウラも水着なんだな」

「まあな」

 

 鈴はオレンジ色のビキニ、シャルはその金髪の髪色に近い黄色のビキニ、ラウラはパレオと中々の種類の数の水着に思わず見とれてしまう。

 なんかやっぱみんな女の子なんだよな……いかんいかん。これじゃ俺がただの変態になってしまう。

「い、一夏さん」

「ん? セシリア」

 

 セシリアは青色のパレオを着ているんだが何故か最近セシリアは俺を名前で呼ぶようになった。ついこの間までは苗字のさん付けだったのに今じゃ下の名前のさん付けだ。まあそっちの方が近づけた気がして俺的には嬉しいんだけどな……それにしても箒の姿が見えないな。

 周囲をキョロキョロと見渡してみるが箒の姿がどこにも見当たらない。

 体調は悪いわけじゃなさそうだから心配はしてないんだが……流石にここ数日のあいつは少し心配だ。

 

「に、似合っていますか?」

「おう。似合ってるぞ」

 そう言うとセシリアはカァッと頬を赤くして顔を隠す。

 何故に?

「ラウラ、眼帯したままでいいのか?」

「構わん……嫁が外せというなら外すが」

「俺はどっちでも良いぞ……でもラウラの眼帯の下の目も俺は綺麗で好きだぞ?」

 

 理由は知らないがラウラの眼帯の下にある目の色は通常の色ではなく金色に染まっているが特に俺はそれを見ておかしいとは思わないしむしろ綺麗だと思う。

 学年別トーナメント戦では戦いのさなかだったからそんなことは思わなかったけどそれが終わった以降、ちょくちょくラウラの下の目を見るようになってそう思うようになった。

 

「そうか…………そ、そうか」

 復唱するや否やラウラは顔を真っ赤にする。

「アハハ。ラウラ恥ずかしくて顔真っ赤になっちゃってる。本当に一夏は泥棒さんだよね」

「そうね。泥棒ね。言うなら……どっかの刑事みたいね」

 刑事? 刑事なのに泥棒なのか? それって矛盾してるくね?

 少し考えてみるがシャルと鈴が言っていることがイマイチ理解できず、頭の中でグルグル回る。

「オリム~。ビーチバレーしようよ~」

「よし。やるか!」

 布仏さんの誘いを受け、チームを均等に分け、用意周到に準備されているビーチバレーの柱にネットをかける。

 明日から2日間は遊ぶこととか考えられないくらいに忙しいみたいだからな。初日の今日に遊ぶに限る!

「いっくぞー!」

 そんな俺の掛け声とともに放たれたサーブを合図として試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の晩、俺は千冬姉の部屋兼俺の部屋で筋トレを行っている。

 もちろんカバンの中に忍ばせておいた筋トレ器具を利用しての本格的なものであり、そんじゃそこらの男子どもが『もうすぐ夏だから鍛えようか』みたいな感覚ではない。

 これのためにネットを漁り、本を漁ったからな。

 

「また筋トレか」

「ちふ……織斑先生」

 さっきまで風呂に入っていたのか浴衣姿にしっとりと濡れた髪の千冬姉が部屋に入ってきた。

「……前と比べて軽くしたようだな」

「まあ……またぶっ倒れたくないし」

 

 きりの良いところで切り上げ、傍に置いてあったタオルで汗を拭く。

 以前、過労と疲労骨折で入院を余儀なくされた俺は仕事で忙しいはずだった千冬姉に俺の見舞いという余計な負担をかけてしまった。

 あの時千冬姉はなんとも無さそうな感じを装っていたけど明らかに疲れていたはずだ。千冬姉に迷惑はかけない、なおかつ超えたいと思っていたのに迷惑をかけてしまった。

 

「ところで一夏」

「なに?」

「お前、女は作らんのか」

「……な、何を急に出だすかと思えば」

「お前以外は女なんだぞ?」

 

 そ、そりゃまあ俺だっていっぱしのお年頃の男子だ。そっち系の興味だってバンバンあるし女の子とそういう関係になりたいっていう気持ちだってある。でも今はただ単にそうなりたいと思う女の子がいないだけであって仙人様の様に恋心がないわけじゃない。

 

「そ、それは千冬姉だって同じだろ」

「ふん。手のかかるお荷物が独立したら見合いでもやってすぐに収まるさ」

 リアルにそんなことになりそうだからなんか怖い。名前も知られているしなおかつ弟贔屓無しでも千冬姉は美人だから引く手数多だろう。下手したらその日に結婚ってこともあり得る。

 でも……千冬姉が結婚するまでには追い抜かしたい。

 織斑千冬が織斑千冬でなくなる前に。

 

「白式の様子はどうだ」

「白式? なんでまた」

「良いから答えろ」

「あ、あぁ。まあ凄く良い」

「そうか……ならいい」

 

 そう言うと千冬姉は窓の外をボーっと見始める。

 千冬姉が何を考えているのか全く分からない。実の弟である俺でも姉である千冬姉の内心は全くと言っても過言じゃないくらいに分からず、逆に俺の考えていることはあらかた見透かされてしまう。

 今、千冬姉が何を考えているのか……俺がどれだけ長く考えても一生解けない問題だ。でもこれだけは分かる。千冬姉が何か遠いものを見ているような目をしている時は決まって近い日に何かが起きる。

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