インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第24話 少女の出した選択肢

「福音のエネルギー欠損を確認しました! 織斑先生!」

 宴会場に山田先生の嬉しそうな声が響いた瞬間、今まで集中していたのを解くために教員たちが大きく息を吐きだ、千冬も固くしていた表情を少し和らげる。

 既に福音に少しのエネルギーも残っていないことを空間に投影されているディスプレイには表示されており、操縦者についても無事であることが表示されている。

 

「ふぅ。何とか終わったか」

「そうね。それにしてもなんで暴走を起こしたんだか」

「…………」

 

 シャルやラウラたちが各々、作戦の成功を喜んでいる最中、箒はただ一人だけ、沈痛な面持ちのまま爆煙に包まれている福音の映像が映し出されているウインドウを眺めている。

 ――――何か恐ろしいことが起きるのではないか。

 そんな考えが彼女の中にはあるとともに姉のあの笑みが浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっし!」

「やりましたわね、一夏さん」

 

 福音のエネルギーが尽きたことを確認した俺はガッツポーズを決める。

 今の今まで意識を尖らせるくらいに集中していたこともあってか心臓はバクバク鼓動を強く打っているし汗の量も普段の倍以上はかいている。

 でも作戦は終了したんだ。あとは福音の操縦者を回収して旅館に戻ればそれで任務は――――

 ――――警告!

 そんなウインドウが表示された瞬間、突然、爆煙の中から周囲に向かって爆風が放たれ、さっきまで静かだった並を大きく波立たせる。

 爆煙が晴れたそこにいたのは全身から銀色ではなく黄金色の輝きを放っている福音。

 

「な、なんだ」

「っっ! ふ、福音のエネルギーが回復していますわ!」

「なっ! さっきの一撃で空になったはずだろ!」

『キアァァァァ!』

「「っっ!」」

 

 機械からは発されたとは思えない程の甲高い音に思わず俺達は福音の方を見る。

 福音を包み込むように生えていた翼が縮こまっていき、福音の全身が黄金色に輝いている翼で完全に包み込まれた瞬間、縦にビシッとひびが入るかのように線が入り、そこから黄金色の光が漏れ出す。

 ――――次の瞬間。

 繭を吹き飛ばすかのように大きな爆発が起き、視界が一瞬にして輝きによって埋め尽くされる。

「くっ……なっ」

 輝きが晴れ、俺達の視界に入ってきたのは全身を黄金色に輝かせている福音の姿。

「なんですのこの現象……形態移行とも違いますわ」

『キアァァァァ!』

 

 甲高い音を出したかと思えば福音の黄金に輝く翼が交差する。

 ―――その瞬間

「っ! セシリア!」

 俺たちめがけて巨大な羽根の形をしたエネルギー弾が放たれ、近くにいたセシリアを俺から離すために強く推した瞬間、腹部に強い衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『がぁ!』

「い、一夏!」

「専用機持ち! すぐに向かえ!」

 

 エネルギー弾が一夏に直撃し、大爆発を起こした瞬間、宴会場に千冬の怒鳴りつけるような声が響き、鈴たち専用機持ちが慌てて宴会場から出てビーチに出てISを展開し、一夏たちが闘っていた海域へと全速力で向かう。

 さっきまであれほど荒れ狂うように波が高かったにもかかわらず今は不気味なほど穏やかで風もそよ風程度の強さしか吹いていない。

 それはまるで今起きた最悪の出来事を海が理解しているかのような状態。

 その時、専用機持ち全員の目の前に敵ISの位置情報が伝えられ、全員が同時に伝えられた位置である上を見上げると黄金に輝く翼で全身を覆って球体となっている福音の姿が見えた。

 

「あいつが……あいつが一夏を」

「鈴。今は一夏とセシリアの救出が先だよ」

「分かってるわよ」

 

 鈴は真上の敵を睨み付けながらもセシリアたちがいる場所へとスラスターを吹かせる。

 その時、再びISから情報が送られてくる。

「セシリアか。もうすぐだ!」

 ラウラのその一言から全員が同時に瞬時加速を発動させてセシリアとの距離を縮め、送られてきた情報にあるその場所へと到着した時、思わずその光景に全員の動きが止まった。

「み、皆……さん」

 全身を一夏の物であろう真っ赤な血で汚したセシリアが今にも泣きそうな表情で腹部から大量の血を流して青ざめている一夏を抱えていた。

 どうにかして体に鞭をうって動かし、旅館へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから四時間、運び込まれた一夏はすぐさま待機していた医療スタッフによる治療が始められ、今も予断を許さない状態が続いており、一夏の傍には二人以上の医者が交代で常に横についている。

 あれ以来、福音は黄金の輝きで闇夜を明るく照らしながらまるで繭に包まれているかのような状態で休眠状態とも言える状態に入っており、全く動きを見せていない。

 そんな中、箒は昏睡状態にある一夏の様子を遠目に見ている。

 その表情は悲しみがいくらか籠っているが一番、彼女の中を支配している自分に対しての怒りや失望と言った感情だった。

 自分が専用機を姉にお願いしなければこんなことにはならなかったはずなのに自分の弱さからの囁きに耳を傾けてしまったせいでこういう事態になってしまった。

 さっきまで誇らしげに見ていた紅椿の待機形態を今回の事態を引き起こした原因としか見ることができないでいた。

 箒は静かに部屋を抜け、旅館を出て断崖絶壁の近くに立つと手首に付けてある紅椿を外し、目の前の海へと投げ捨てようと腕を大きく後ろへ持って言った瞬間、誰かに腕を掴まれた。

 

「……あんた、自分が今何をしようとしているのか理解してんの?」

「理解している……私が……私が姉さんに専用機をお願いしなければこんなことにはならなかったんだ」

「はぁ? あんた何言ってんの?」

「本当なんだ! 私が専用機を欲しいと言ったから姉さんは紅椿を私に渡して活躍させるためにこの事態を引き起こしたんだ! 全ては……全ては私の弱い心そのものが生み出したこいつがいけないんだ」

 涙を流しながらそう叫ぶ箒を鈴は冷たい目のまま見る。

「あんたねぇ……それがなんなの?」

「なっ……だから私が」

「あんたが専用機を欲しがったから一夏は死にかけてるわけ?」

「そうだ……」

「じゃあ、あんたが欲しがらなかったら一夏はなんともなかったって言いたいんだ……あんたの中じゃ一夏ってそんなに弱い人間設定されてるのね」

 鈴の一言に箒は驚きを隠せずにいた。

「な、何を言って」

「だってそうでしょ? あんたが専用機を欲しがったから一夏は死にかけてる。でも欲しがらなかったら一夏は無事のまま……それってつまりあんたの手の平の上で一夏は転がってたってわけでしょ?」

「そんなこと私は」

「言ってるわよ!」

 

 崖に打ち付けられる波の音に遮られることなく鈴の怒鳴り声は周囲に響きわたり、箒にもはっきりと一字一句耳に入ってきた。

 その表情は明らかに怒りであり、その目は失望したものを見るような目をしている。箒はそれらをぶつけられる理由が分からず、戸惑いを隠せないでいるがその姿が余計に腹が立ったのか鈴は箒の胸倉をつかむ。

 

「確かにその専用機が騒動の発端かもしれないわよ。でもそれが無いからって今回のことが起きないってわけじゃないでしょうが! 福音があんたの言う理由以外で暴走を起こしたかもしれないし、IS学園を狙うテロリストが襲い掛かってきて今の一夏と同じような結果になったかもしれない! あんたの行動一つで一夏が変わるなんてそんなことはないって言ってんのよ! あんたにはやることがあるでしょうが」

「私に……私に何が出来るというんだ!」

 胸倉をつかんでいる鈴の手を振り払い、怒りをぶつけながら鈴の胸倉をつかみ返す。

「戦えばいいじゃない」

「っっ!」

「あんたはその力を持ってる。その力で一夏をあんな目にやった福音をぶっ倒すのよ。いくら悔やんだってこの状況がよくなるわけじゃない。だったら後ろを見て後悔するよりも前を見て先に進むしかあたしたちもあんたにも選択肢はないのよ」

「…………」

「あんたは選ばなきゃいけないのよ。その力を使ってあいつを倒すか。それとも一生、私の所為で一夏がって悲しみに暮れてるか」

 

 紅椿の待機形態である赤い装飾品をギュッと握りしめ、一夏のことを思い浮かべる。

 ずっと昔から箒は一夏に救われてばかりだった。自分が女の子らしくないからという理由だけでからかわれていた箒を一夏が助けてくれた。初めて可愛いと言われた。

 一夏との楽しかった思い出はいくらでも昨日のことの様にはっきりと思い出すことが出来る。そして箒は一つの答えに辿り着く。

 ―――――自分に責任があるのならば自分でけりをつけなければいけない。

 頭を下げて謝ることなどいくらでもできる。だが一夏のために戦う事が出来るのはこの瞬間しかない。

 

「…………戦う……私も戦う。この……紅椿の力で!」

「じゃ、行くわよ。皆のところへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 波の音が聞こえる。

 そう気づくとともに自分が見たことも無い砂浜に立っていることに気付き、そして俺から少し離れたところに白いワンピースに白髪の少女が楽しそうに歌を歌いながら無限に広がっている綺麗な海を見ている。

 どうも俺は彼女に声をかける気が怒らず、彼女と同じ方向を向き、どこまでも広がっている青いきれいな海を見る。

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