インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第25話 少年は新たな力に至る

 海上二百メートルの位置で翼を丸めて自分を覆い隠している福音は何をするわけでもなく、ただただ自分の全身から放たれている黄金の輝きを見ている。

『―――――?』

 ふと、福音が顔を上げた瞬間、翼に突如飛来した砲弾が直撃し、大きな爆発が起きる。

 自らの眠りを、そして守るべき存在の眠りを妨げられた福音は黄金に輝く翼を大きく左右に広げ、遠く離れた位置に集結している人影の方を見る。

 

 

 

 

 

 

「初弾命中! 続けていく!」

 八十口径レールカノンを両肩にそれぞれ装備し、さらに遠距離からの狙撃から防御するための物理シールドがラウラとシュヴァルツェア・レーゲンを護るように左右と正面に備え付けられている。

 すぐさま次弾を発射するがISから送られてきたのは直撃ではなく回避、そしてドンドン詰められている距離の二つだけだった。

 迫ってくる福音めがけてひたすら砲弾を撃ち続けるが全て翼から放たれるエネルギー弾によって着弾前に叩き落されていく。

 福音の手がラウラの首を掴もうとしたその時、突然上空から青色のレーザーが次々に降り注ぎ、福音に直撃していく。

 上空にはステルスモードのブルー・ティアーズがおり、六基のビットは腰部にスカートの様に取り付けられてなおかつ砲口はふさがれてスラスター代わりとなっている。

 福音はターゲットをセシリアへと変更し、レーザーを避けながら一気に近づくが彼女の背後からの弾丸の雨に動きを阻害されるとともにセシリアの射撃が至近距離で直撃する。

 

「ふふ。どう? 僕の雨は」

「一夏さんの仇、取らせていただきますわ!」

 

 次々に放たれるレーザーや砲弾を避けながらシルバーベルによる反撃を行うが三方向からの連続攻撃に徐々に消耗していく。

 やがて福音は最優先事項を殲滅ではなく現空域からの離脱を最優先事項へと変更し、翼を羽ばたかせて空域から離脱しようとした瞬間、海面が爆ぜた。

 

「させるかぁ!」

 真紅の機体・紅椿を纏った箒とその背中に乗る鈴が海面から飛び出す。

 箒の背中から飛び降りた鈴はすぐさま増設された計四門の衝撃砲を戦闘状態へと移行させ、連続で放っていく。放たれる弾丸はいつもの不可視の弾丸ではなく赤い炎を纏っている。

 連続で大きな爆発を上げ、動きを止めた福音めがけてラウラ、セシリア、鈴、シャルの遠距離武装が火を噴き、次々と大爆発を起こしていく。

 

「やった!?」

「っっ! 全員離れろ!」

 ラウラの叫びと同時に福音から金色に輝くエネルギー弾が全方位めがけて一斉射撃が行われ、周囲にいた全員めがけて向かっていく。

 全員が福音から離れていく中、箒だけは二本の刀を握りしめてエネルギー弾の雨の中を突っ切っていく。

 

「馬鹿! 突っ込んでどうするのよ!」

「構わん! 一夏の痛みに比べれば私の痛みなどたいしたことはない!」

 エネルギー弾が直撃してもなお、箒は福音めがけて突っ込んでいく。

「えあぁぁぁぁぁ!」

 

 二本の刀を同時に振り下ろした瞬間、福音の両手がそれらを鷲掴みにし、火花が散る。

 箒はニヤリと笑みを浮かべる。

 直後、箒の意思にこたえるかのようにつま先の展開装甲が開き、エネルギー刃を発生させる。

 さらに瞬時加速を発動させ、目にもとまらぬ速度で足を振り下ろし、福音を一閃する。

「今だ!」

 箒が離脱した瞬間、全方向から福音めがけて攻撃が放たれ、大爆発を起こす。

「やったか」

「あぁ……流石に」

 ラウラのその先の言葉は誰にも聞き取ることが出来なかった。

 何故か? 答えは簡単だ。

 爆煙に包まれている福音から全員めがけて巨大なエネルギー弾が常識外れの速度で打ち出され、全員が直撃し、海に叩き付けられたから。

 

「かはっ! い、いったい何が」

 箒は海から上がり、眩む視界で福音の方を向くと先程まで一対だった黄金の翼が今度は二対に増えている。

 その姿を見た瞬間、美しいと思うと同時に底なしの恐れを抱き、体が震えはじめる。

「私は……諦めんぞ。勝つその時まで!」

 箒は震える体に鞭を撃ち、刀を握りしめて福音へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 波の音共に少女の歌を聴いていたがいつの間にか歌は終わっていたらしく、今は波の音しか聞こえない。でもその音すらも心地いい音楽のように聞こえ、俺はその場から動こうとしなかった。

 もうずっとこの場所にいたい。そう思っているんだが何故か俺の中ではそんな選択肢など無く、ぼやがかかったように見えない選択肢が一つだけある。

 

「あれ?」

 いつの間にか白いワンピースの少女の姿はなかった。

「力を欲しますか?」

 そんな声が聞こえ、無限に広がる海の方へ視線を向けると膝のあたりまで海に浸かり、白く輝く甲冑を身にまとい、剣を自分の前に置いた人物がいた。

「力を欲しますか? なんの為に」

「…………」

 ようやく思い出した―――俺はいつまでもこんな場所にいちゃいけないんだ。行かなきゃいけないんだ。

「仲間を護るための力を。どんな遠い場所にいても一瞬でそこに行き、護れる力を欲する……ありがとな。おかげで目が覚めたよ」

 そう言うとともに徐々に視界が白くなっていくが何も怖いことなど無かった。ただ単に心地いい夢から元の世界へと戻るだけなのだから。

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 そんな誰の物でもないため息のようなものが聞こえ、千冬はチラッと視線を後ろへとやるとそのあまりのあり得ない光景に目を疑った。

 さっきまで昏睡状態にあった一夏が何事もなかったかのような顔でベッドから起き上がっていた。

 

「い、一夏。お前」

「千冬姉、ごめん」

 いつものあの笑顔で謝られた千冬は驚きやら嬉しさやらが入り混じって何とも表現できない状態にあるが必死に冷静になろうとする。

 

「俺、行ってくる。行って、あいつに勝ってみんなと一緒に帰ってくる」

 教師として、そして姉として本来ならば止めるのが当たり前の選択肢なのだろうが今の一夏を見ている千冬の頭の中にはそんな選択肢など無かった。

 ただ単に行って来いと背中を押すという選択肢しか初めから存在しない。

「行って来い。一夏」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬姉に送り出された俺は白式を展開し、纏うがいつもとは違う事に若干驚きながらも白式のスペックデータを引っ張ってきて必要最低限な情報だけを頭に叩き込んでいく。

 第二形態・白式・白銀の流星(シルバー・スターダスト)か……なんか格好いい……第一形態の時よりもさらにスピードに特化した形態か。零落白夜はそのままにスラスターが増設、瞬時加速の速度も上昇、そして……へぇ。白銀の流星っていうのはこれから来てるのか。

 

「よし。やるか……フォトン・ブーストの準備に入る」

 そう呟きながらスラスターを吹かせた瞬間、エネルギーがスラスターに集中され始め、銀色に輝くエネルギーのようなものがスラスターから放たれて全身を覆い、銀色に輝きはじめる。

 瞬時加速をさらに超えた第二形態の大技。

 徐々に速度が上がっていき、フォトン・ブースターの準備が完了したことを告げるウインドゥが開かれたと直後に福音、そして箒たちの姿を捉える。

 福音は箒の首を掴み、今にも翼からエネルギー弾を放とうとしている。

 させねえよ……俺の仲間は俺が護る!

 

「フォトン・ブースト!」

 そう叫んだ瞬間、スラスターから爆発的な推進力が発生し、周りの景色がスローモーションのように感じるほどの速度と同時に白式の全身のエネルギーが溜められていく。

 全身からエネルギーを解放しながら最高速度の瞬時加速で相手へと一撃を決める! それがこの白銀の流星たる所以の技だ!

 

「であぁぁぁ!」

 福音がこちらに気付くよりもはるかに前に相手の顔に蹴りを入れ、そのまま蹴り飛ばすと海面に叩き付けられ、何度もバウンドしながら吹き飛んでいく。

 フォトン・ブーストが解除され、銀色の輝きも消え失せる。

 連発はできないまさに必殺技だな……。

 

「い、一夏?」

「おう」

「ほ、本当に一夏なのか?」

「あぁ。待たせたな」

 そう言うと箒は目から涙をポロポロと流しだす。

「良かった……よかった」

「何泣いてんだよ……皆! まだいけるよな!」

「あったりまえじゃない!」

 そんな鈴の声と共に海面から鈴、セシリア、シャル、ラウラが姿を見せる。

「嫁。戻ってくると信じていたぞ」

「ほんと、一夏は泥棒だよね。女の子限定の」

「ま、まぁそのことに関しては同意いたしますわ」

 

 前から言われているが泥棒ってなんのことだ? どっかの刑事とか言われるし、女の子限定のとか言われる俺にはよく分からん。

 そう考えていると向こうの方から海面が爆ぜる爆音が聞こえ、黄金に輝く翼を最大にまで展開した福音が夜空に現れる。

 

「行くぜ。セシリア!」

「はい!」

「鈴!」

「ええ!」

「シャル!」

「オッケー!」

「ラウラ!」

「任せろ!」

「箒!」

「あぁ!」

「行くぜー!」

 俺達は一斉に福音へと向かった。

 これが最後の戦いだ! 誰も死なせず、誰も傷つけずにこの戦いを終わらせる!

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