インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第26話 少年少女は明日を手に入れるために戦う

 太陽が昇りつつあるがまだ周囲は夜。俺達はその中を高速で移動しながら火花を散らす。

 翼が増加したせいもあるのか一戦目の時よりも遥かに機動力が上がっているし、放たれてくるエネルギー弾の数も発射速度も遥かに上がっている。

 だとしても俺の速度の方が上だ!

「おぉぉ!」

 放たれてくるエネルギー弾を避け、福音めがけて雪片弐型を振り下ろすが翼で防がれる。

 一撃を加えるのはいいとしてもまずはあの翼をどうにかしねえと! あれだけ数を増やされたら近づこうにも近づけねぇ! ただ見るところあの翼はエネルギーの塊みたいだから零落白夜で斬り落とせば!

 

「ラウラ!」

「任せろ!」

 地上にいるラウラから福音めがけてレールカノンからの一撃が放たれ、福音の意識が俺から向かってくる一撃へと変更され、意識がそれる。

 その隙を逃さずにスラスターを吹かし、ラウラからの一撃に対する回避行動をとっている福音めがけて突っ込んでいく。

 

「っっ! くそっ!」

 突然、福音が回避行動中に翼を大きく広げたかと思えば周囲にいる俺たちに向かって大量のエネルギー弾が降り注ぎ、海面は大きく荒れ、地上に大きな穴が出来る。

 あの野郎、回避行動しながらその回転を利用して周囲にエネルギー弾を!

 

「シャル! 鈴! あいつの翼を落としたい!」

「「任せて!」」

 シャルと鈴の2人が福音めがけて攻撃を仕掛けていく。

 あいつの翼を落とすには隙が出来たその一瞬で相手の後ろに回るしかない……連続瞬時加速じゃ体にかかる負担も白式にかかる負担もでかい。ここは二重瞬時加速で行くしかない!

 

「一夏!」

「っ! 箒!」

 後ろを振り返ると全身を金色に輝かせている箒の姿があり、彼女の手が俺に触れた瞬間、白式のエネルギーが一瞬にして全回復する。

 っっ! どうなってんだこれ!? エネルギーが回復した!?

「箒! お前、これ」

「紅椿のワンオフ・アビリティーだ。一夏。これがあればエネルギー消費無しでいける」

「……あぁ。捕まっててくれよ」

 

 そう言うと箒は俺の腰のあたりに腕を回す。

 シャルと鈴と戦っている福音をハイパーセンサーによる広域視覚でしっかりとみて隙を伺う。

 俺はまだまだ弱い……これからもどんどん強くなっていく。その過程で誰かに頼ることは間違っちゃいない……俺は皆を斬り捨ててまで強くなる気なんて毛頭ねえ!

「っ! いまだ!」

 瞬時加速を発動させ、一歩大きく前に出た瞬間、再び瞬時加速を重ね合わせると高速で移動しているであろう福音やみんなの動きがスローモーションのように見える。

 弧を描くように高速で移動し、福音の後ろを通り過ぎ様に零落白夜を発動させた雪片弐型で切り裂く。

「箒!」

「あぁ! 行って来い!」

 

 翼が切断された瞬間、箒を離し、翼を1枚失くしたことでバランスを失い、落下していく福音へ接近する。

「もう1枚!」

 放たれてくるエネルギー弾をすべて避け、すれ違いざまに雪片弐型で切り裂いた瞬間、火花が散るとともに福音の翼が切断され、消滅する。

 そして俺が福音から離脱した瞬間、みんなの攻撃が集中する。

『キアァァ!』

 攻撃が集中してもなお、福音は落ちる気配を見せるどころかそれ以上の気迫を見せ、俺達に向かって攻撃を放って来る。

 これ以上の長期戦は不利だな……あれで決める!

 

「みんな! 少し時間を稼いでくれ!」

「何をするつもりですか!?」

「大技であいつを落とす! 頼んだ!」

「何をやるかは知らないが5分だけ稼ぐ!」

 箒を筆頭に福音へと向かっていく皆を脇目に俺は戦闘領域から離脱し、福音から距離を取る。

 白式からの計算結果から算出された距離に到着した俺はすぐさまフォトン・ブーストの準備を開始し、エネルギーをスラスターへと寄せていくと徐々に白式が銀色に輝きだす。

 この一撃で落とす……箒たちを……学園の皆を護るためにも!

 

「行くぞぉぉぉぉぉ!」

 準備が完了した瞬間、瞬時加速を発動させ、速度を限界まで上げながらまっすぐ福音めがけて銀色の輝きを放ちながら突っ込んでいく。

 俺に気付いた皆が福音から離脱し、福音もエネルギーを翼に集中させ始める。

 お前が何のために俺達と戦っているのか知らない! でも俺はお前には負けられないんだ! どんな理由があっても俺はこれから勝ち続ける! 千冬姉を超え、みんなを護る強さを手に入れるために!

 

「この一撃で最後だ!」

 銀色の輝きを放つ俺めがけて巨大なエネルギーの塊が放たれてきてぶつかり合う。

「うぉぉぉぉ!」

 俺はこんなところで止まるわけにはいかないんだ! 千冬姉を超える強さを! どこからでも皆のところに駆けつける速度と護れる強さを手に入れるんだ! こんなところで!

 

「止まるわけにはいかないんだよぉぉぉぉぉぉ!」

 雪片弐型を全力で振り下ろした瞬間、巨大なエネルギーの塊が真っ二つに切り裂かれ、俺の左右を通り過ぎていきながら海面に着弾し、大きな水柱を上げる。

「終わりだぁぁぁ!」

 道が開いた瞬間、全速力で距離を詰め、福音に雪片弐型を突き刺し、派手に火花を散らせながらそのまま押し込み、ビーチへと叩き付ける。

 福音はエネルギーをガリガリ削られてながらも俺の首元に向かって腕を伸ばす。

「いい加減に……寝ろ。らぁぁ!」」

 そう呟くと同時に全力で雪片弐型を押し込んだ瞬間、福音の装甲に深く突き刺さり、エネルギーが空になったのか黄金に輝いていた翼が光を失い、地面に落ちる。

 数秒後、福音が淡く光を放ちながら待機形態へと戻り、搭乗者らしき女性の姿が見えた。

 

「エネルギー残量17……危な」

 ホッと一安心着いた瞬間、疲れが出てきてビーチの横になるとみんながやってくる。

「おう。終わったぜ」

 その一言共に久方ぶりに俺たちの顔に笑顔が戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ! 何があったの? あの銀色の流星といいさ~」

 その日の晩、IS学園は夕食の時間なのだが専用機持ちの俺達にはみんながわらわらと集まってくるが機密事項設定されているので何も話せない。

 皆が普通にIS起動をやっている中、俺達はそれぞれの部屋で爆睡だった。久しぶりにきづいたらベッドの上っていうのを経験したな。

 あの戦いのさなか、俺が発動したフォトン・ブーストを使っている俺はさながら銀色の流星に見えたらしく、全員からあの流星はなんだったんだと質問攻めを食らっている。

 

「ダーメ。制約がついちゃうよ?」

「ん~。それはイヤだな」

 

 シャルの一言で全員がそそくさと退散していく。

 シャルはああ見えて代表候補生としての責任感が強いからな。命令とあれば秘密は何があっても喋らない。

 その時、箒が出ていくのが見え、やることを思いだした俺も宴会場を飛び出し、箒の後を追う。

 

「箒!」

「い、一夏!? な、なぜ」

「いや、お前が出ていくのが見えたからさ……あ、これ」

 忍ばせていた箒の誕生日プレゼントが入った箱を取り出し、箒に渡すと一瞬驚いた表情を浮かべながらもその箱を緊張した面持ちで空ける。

「……」

「今日、お前の誕生日だろ? そう言えば箒ってアクセサリーとかつけてるの見たことないからさ。これ、箒に似合うと思って買ったんだ」

 

 俺が買ったのはネックレスだけどただのネックレスじゃない。光に当てると淡くだけど赤く輝く。

 紅椿と色が被ったのは偶然だけどな。

「つ、つけてくれるか?」

「お、おう」

 そう言われ、箒がくるっと俺に背を向け、ポニーテールに束ねている髪を上げた瞬間、白くて綺麗なうなじが見え、ドキッと心臓が鼓動を上げる。

 そんな状態になりながらも箒の首元にネックレスをつける。

 

「そ、その……私はこういうものはつけたことがないのだが……き、綺麗か?」

「おう。綺麗だぞ、箒」

 そう言った瞬間、箒の顔が真っ赤に染まりあがり、コテッと俺の胸元に首を垂れる様にしてもたれてくる。

「ほ、箒?」

「……お前はやっぱり泥棒だ」

「はい? 泥棒?」

「少しこうさせろ。馬鹿者」

「はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅椿の稼働率は絢爛舞踏を含めて42パーセント。いっくんと一緒に戦いたいっていう願いが紅椿に届いたのかな? なんにせよ少し上方修正しなきゃね」

 

 海面からは30メートルほども高さがある場所に設置されている柵に腰を下ろすウサミミをつけた女性―――束は空中に投影されているディスプレイを見ながらデータを修正し、もう一つのディスプレイを開く。

 そこには二次形態へと進化を遂げた一夏の専用機・白式のスペックデータ、およびその戦闘時の映像が流されている。

 

「お姉さん的にはいっくんの射撃訓練でのデータを基に新たな遠距離武装を生み出すと思っていたんだけどな……まさかここまでスピードに特化した機体に変化するなんて。瞬時加速の最高速度は全IS中トップクラス。零落白夜もあるから攻守ともに備えた機体になったわけだ」

「その代わり、装甲は薄くなり、エネルギー消費もトップクラスだがな」

 闇夜の中から黒いスーツに身を包んでいる千冬が現れるが束は後ろを振り返ることなく海を見続け、千冬も何も言わずに近くの木に身を預ける。

「どうだ? うちの弟は」

「そうだね……相変わらず束さんの予想を超えていくよ……ふふ。まあそこがいっくんの良いところなんだけどね。唯一、お姉さんがいっくんに教えてもらったのが予測は簡単に裏切られる」

「ふん…………お前は何をしたがっているんだ」

「ちーちゃん。この世界は楽しい?」

「そこそこな」

「そっか……私はね」

 

 その瞬間、強い風が吹く。

 目を開けた次の瞬間には既に束の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の最終日、全ての日程を終えた俺達はくたくたになりながらもクーラーが聞いて涼しいバスの中でグテングテンニなっていた。

 IS学園へ帰ると数日後には終業式があり、それが終わってようやく俺達に長い長い夏休みがやってくる。

 それにしてもどうやら俺の白式はおかしな方向へ進化をしたらしい。

 さっきスペックデータをしっかり見ていたんだが装甲が一次形態と比べて40パーセント減少しているし、スピード以外のスペックは落ちてしまっている。これが悪い部分。

 良い部分はスピードが飛躍的に上昇したし、瞬時加速を発動するまでに時間がほとんどなくなり、発動時に消費するエネルギー量も一次形態と比べて45パーセントほど減少した。

 いうなれば速度でほんろうし、零落白夜で一撃で決める機体になったわけだ。攻撃を食らえば致命傷になるからよければいいんだけど……回避技術をもっと上げねえとな。

 夏休みの間はみんなそれぞれ忙しいだろうし、アリーナだって使えないだろうしな……あ、久しぶりに箒の家の道場行ってみるか? でも今は閉まってるだろうしな……やっぱり自己練習が先か。

「織斑一夏君っているかしら」

「あ、はい。俺っすけど……あ」

「ハロー」

 名前を呼ばれ、顔を上げてみるとそこにいたのはあの暴走した福音の操縦者の金髪の女性がいた。

「ナターシャ・フィルスよ。あの子を助けてくれてありがとう」

「あ、いや。俺だけじゃないですし」

「謙虚なのはいいけど時には胸を張った男がもてるわよ。ちゅっ」

「え?」

 不意打ち気味にあてられた唇は俺の頬にあたり、一瞬だけ感じたその柔らかさは今までに感じたことがない柔らかさで心臓がドクンと鼓動を上げた。

「ふふっ。可愛い反応。またね」

 そう言い、ナターシャさんはバスから出ていった。

「や~っぱり一夏は泥棒だね」

「あぁ、一夏は泥棒だ。捕まったら死刑は免れないほどのな」

「どちらかというと私刑では?」

「いや、そこは禁固刑でいいのではないか? 皆が住む家に」

『なるほど』

 ラウラの最後の一言に全員が何故か大きく頷き、俺を見てくる。

 いや、だからなんで俺泥棒なの? 

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