インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第29話  少年は少し休む

「ふぅ。いや~今日も良い運動したな」

 日本のIS部隊にお世話になり始めてから早二週間が経過し、俺は自分でも分かるくらいに毎日ホクホクの満足顔で家までの道を歩いている。

 部隊の訓練にも特別に参加させてくれることが決まり、先週から参加しているんだけどやっぱり部隊の訓練と学園の練習は濃さが違った。

 どちらかというと学園のは訓練じゃなくて練習。まぁ今はまだ一年生だからってこともあるんだろうけど部隊の練習に一年生もくそもない。

 常に全力だ。筋トレ・走り込み・実践演習・近接格闘戦から何まで戦闘に必要なセオリーをこの一週間で徹底的に体に叩き込まれた。

 そして今日、たまたま企業のテストパイロットの人と模擬戦を行うことができ、一時間前までやっていたんだけどやっぱり強い。

 速度で翻弄なんてそんなこと考える余裕も与えてくれないくらいにがちがちぶつかってくる。

 結果は俺の負けだったけど俺がやるべきことが見つかったから意味のある敗北だった気がする。

「やっぱり回避術はマスターしないとだめだよな。装甲が他の機体に比べて半分以上、薄くなってるわけだし、速度で翻弄する前に畳みかけられたら今回みたいなことになるし……ん?」

 ふと顔を上げた時、俺の家の前に見覚えのある金髪の少女がやけに緊張した面持ちで立っていた。

 ……うん、シャルロットだな。それにしても今回もまた胸元がバッサリと開いた上の服に短い丈のスカート……シャルロットさんや。貴方、俺に秘密を明かす前よりもエロくなってません?

「よし」

「よし」

「……うわぁ一夏!?」

「おっす」

 俺みたいな戦闘の素人みたいなやつに後ろを盗られるってことはよほど集中していたのか?

「インターホンの前で何してんだ? 暑いだろうに」

「う、ううん! そ、その……き」

「き?」

「来ちゃった」

 そう言いながら若干、前かがみになるとどうしても俺の目線の角度から言ってシャルロットの深めの谷間がガッツリ入ってくる。

 慌てて目を逸らすとシャルロットに付け込まれるだろうし、かといってゆっくりとはずすのもばれやすい……ここはやっぱりがっつりと行くべきだろうか……う~ん。

 そんなことを考えているとシャルロットがとっさに胸を手で隠す。

「一夏のエッチ」

 テロレロリーン♪ おめでとう! 織斑一夏の男としての威厳が下がったよ! やったね!

 

 

 

 

 

 

―――――――☆――――――――

「へぇ。一夏って今、日本のIS部隊にお世話になってるんだ」

「まあな。夏休み中はどうしても動かせなくて鈍っちまうからな」

 シャルロットを家に招き入れ、帰ってきたら飲むようにキンキンに冷やしておいた麦茶を冷蔵庫から出してシャルロットの手前のテーブルに置き、俺が対面する形でソファに座る。

 でもまさかシャルロットが家に来るとは思ってなかったな。なんで家知ってんだ? 鈴か誰かに俺の家の場所効いたのかな? まあいいけど。

「にしてもやっぱり一夏って体鍛えてるんだね?」

「へ?」

 シャルロットがニコニコしながら向こうの方を見ていたので俺も見てみると今朝、起き抜けにやっていた筋トレの残骸が残っていた。

 ありゃま。こりゃやっちまったな。

「やっぱり一夏って筋肉凄いよね」

「そうか? やっぱり男たるもの女を護るためには筋肉がいるしな」

「じゃあ一夏」

 突然、シャルロットが俺の胸に顔をコテンと当ててきたかと思えばその豊かな胸をわざとなのか知らないが俺の腹部に軽くあてながら上目遣いをしてくる。

 ま、まずい! お、俺の息子がぁぁぁぁぁ!

「僕も護って」

 その時、来客を告げるインターホンが鳴り響く。

「はーい! 悪い! ちょっと俺行ってくるわ!」

 どうにかしてシャルロットから脱出し、一息ついて息子を確認してみるがなんとか立っていなかったので安心しつつ、ドアを開けてみるとそこには金髪のこれまた見覚えがある女子がいた。

「セシリアじゃないか」

「ごきげんよう、一夏さん」

 皆が来てくれるのはいいんだけど何で皆俺の家の場所知ってんだ? もしかして俺がIS動かせるって判明してから俺の家の情報全部ダダ漏れとか?

 それは困るな。

「どうしたんだ?」

「実はついさっき、日本へ帰ってきたのですがたまたま一夏さんの自宅を見つけたので美味しいケーキもありますのでご一緒にどうかなと思って」

「へぇ。とりあえず暑いから入れよ」

「は、はい! では……あら? 既に先客が?」

「おう。シャルロットだ」

 その瞬間、セシリアは一瞬だけギョッと表情をこわばらせたように見えたけどすぐにそんな表情は消え、いつもの笑みを浮かべて上がってくる。

 にしても今日はお客さんが多いな。まぁ、多いのは嬉しいんだけどさ。

 と、そんなことを思っているとまたもやインターホンが鳴り響いたので玄関を開けてみるとそこには箒・鈴・ラウラのいつもの三人が立っていた。

「…………ま、まぁあがれよ」

 そう言うと三人は乾いた笑みを浮かべながら玄関へとはいるがそこに置かれている二人の靴を見るや否や箒と鈴が同時にため息をつく。

「ほぅ。ここが教官の家であり、嫁の家か」

「おう。上がってくれ」

 三人を上げて食器棚からコップを三つ取ってキンキンに冷えている麦茶を注ぎ、テーブルに出す。

 でもまさかIS学園が誇る専用機持ちが全員集合するなんてな……いつでも外交問題に発展しかねない戦力が集中しているのがある意味怖い。

「一夏、あんた最近IS部隊に行ってるらしいわね」

「なんで知ってんだよ」

「情報が回ってくるのよ。あんたは少し世界が注目してる人間だって意識しなさいよね」

「まぁ、一夏が何をやっても大体は許してくれるんじゃないかな」

「むしろ一夏に手を出せば外交問題に発展するからな」

 それもそうだよな。俺は世界でただ一人の男性でISを操縦できる人間だから色々と他の奴らとは違うっていう所を意識しないといけないかもしれない。

 でもそうなるとあれだよな……コンビニとかでHな本とか立ち読みできないよな。

 中学の頃は弾とかと一緒に読んでたんだけどな。

「で、なんでみんな家に来たんだ?」

 そう尋ねると何故かラウラ以外、全員俺から視線を逸らす。

「わ、私はたまたま一夏さんの家の表札が見えたものですし、美味しいケーキも持っていましたので」

「あ、あたしは久しぶりにあんたの家に行ってやろうかな~って思っただけよ」

「う、うむ。私も一夏の家にお邪魔したいと思ったのだ。か、勘違いするなよ!」

「僕は一夏に会いたかったから来たんだよ~」

 直後、リビングにピリッとやけに冷たいというか尖った空気が流れ、ラウラ以外の皆の視線がニコニコ笑っているシャルロットに集中する。

 というかさっきからシャルロットが座っている場所と俺が座っている場所的にスカートの中身が見えそうで見えない絶妙な位置関係なので視線が妙にそっちへ行ってしまう。

「シャルロット~。あんたなんでそんなにミニスカートで胸バックりな訳?」

「そ、そうですわシャルロットさん! 破廉恥ですわ!」

「そうかな? 僕、こんな服しか持ってなくて」

「こ、小悪魔め……一夏、貴様今どこに視線をやっている」

 バ、バレた!?

「い、いやどこだろうな~ア、アハハハハ」

「一夏、夏休み明けの新学期最初の模擬戦、よかったら多対一というものを経験してみないか?」

「ほ、箒さん? 何をおっしゃって」

「あ~それ良いわね~」

「良いですわね~」

「うむ。実戦では応援が来る間、一人で大勢の敵を相手取ることもあり得る。多対一の戦闘方法を教えるいい機会だ。一夏、ぜひ多対一をしよう。どの道お前は回避戦術を学ばなければいかんのだ」

「あ、あの俺に」

「「「「ない」」」」

 ふぇーん! 日本国憲法の基本的人権すら認められないなんて俺哀しい! 皆独裁者にしか見えないから怖いし、さっきからみんなの顔がヤンデレ少女が浮かべる黒い笑みにしか見えないから怖い!

「ま、そんなことはさておき……何する」

 ラウラ、ナイスだ。

「とは言っても俺ん家にゲーム機は無いしな」

 千冬姉が稼いできてくれるお金で生活している以上、あまり贅沢や我儘は言ってはいけないと子供ながらに感づいていたこともあって我が家にはあまり娯楽に関するものは無い。

 ゲームだったり、マンガだったりは一切ないし、パソコンも共通の物が一台だけあるだけでそのほとんどが千冬姉が使用しているのでほとんど千冬姉の私物みたいなものだ。

「じゃ、ここは一夏のすべらない話でもあたしが披露しちゃおうかな」

「おい、何言ってんだ」

「ぜひ聞かせてほしいって人~」

 鈴がそう言った瞬間、全員が一斉に綺麗に手をピンと上げ、満場一致で俺のすべらない話が公開されることが決まってしまった。

 ……まずい。非常にまずいぞ。中学の頃は弾たちとバカみたいなことばかりやってたから……まずい。

「あれは中学の頃よ。その当時、Theバカトリオの二つ名を貰っていた一夏が机の上に乗って遊んでたんだけど急に何を思ったのか箒を持ち出して我が人生に一片の悔いなし! とか叫びながら机から飛んで天井にでっかい穴開けてたわね」

「一夏……お前は小学生の頃から変わらないんだな」

「箒、そんな遠い目をするな」

 あぁ、そうさ。俺はバカだったさ! その当時は色々と精神的に来ていたこともあって筋トレもしながらバカみたいなことやってストレス発散的なことしてたもん!

「あと他にも」

 

 

 

 

 

 結局、その日は俺のバカみたいな中学生の歴史を餌にしながらお菓子を食べて一日を過ごしたのであった。

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