インフィニット・ストラトス Strong・Summer 作:kue
翌日の朝、一月に一度のペースで行われている全校集会があるのでIS学園全生徒が第三アリーナに集合し、前に置かれている朝礼台が見えるようにクラスごとに並んでいた。
一年生が一番左、次に二年、三年と続くんだが俺以外全員が女子生徒という事もあってさっきから香水のにおいがプンプンしてくる。
女集まれば姦しいというがどちらかというと女集まれば香水臭いと言い換えるべきじゃないだろうか。
もう流石に慣れはしたけど未だに長時間その匂いを吸っているとくらくらしてくる。
たまにどぎつい匂いをするほど塗りたくってる女の子がいるからな~。その時は我慢するのがもうきつくてきつくて。まぁ、女子高にいるから仕方ないんだけどさ。
「それでは生徒会長からのお話しです」
「みんな大好き楯姉ですよ~」
そんな聞き覚えのある声が聞こえ、ガバッと顔を上げてみるとなんと朝礼台に立っているのは昨日の生徒会長でそれはいいんだけど俺と接したあのテンションのまま立っていたからびっくりした。
しかもどこかからお姉さま~なんていうピンク色の声援が聞こえてきた気がする。
「いや~ん☆。もっと! もっと私にお姉さん成分を……って虚ちゃん? それはいったい痛い! 痛いってば虚ちゃん!」
放送では絶対に見せられないような制裁劇場が数分間続き、明らかに涙声の生徒会長がヒックヒックと吃逆を上げながら話し始める。
なんだかんだで大変なんだな。生徒会って。
夏休み明けというわけで体重は増えてないか、日焼けはしていないか、お薦めの日焼け防止グッズは無いかなどという明らかに関係の話しから始まり、今月の学園目標、および学年全体の評価などが伝えられていく。
「というわけで固い話はこれでお終い。本題はみんな楽しみ文化祭!」
直後、後ろの方で歓声が沸き上がる。
そんなに楽しい物なのか? IS学園の文化祭って。
生徒会長が扇子を横へスライドした瞬間、それに合わせるようにして空間投影ディスプレイが浮かび上がるが何故かドアップで俺の写真が写る。
そしてどこからともなくファンファーレが響いたかと思えば俺の写真が縮小し、その上に大きく文化祭特別ルールの説明と表示された。
「本来、文化祭ではそれぞれの部が催し物を開いて生徒の皆が投票。その投票数が多い上位の部に生徒会から特別助成金っていう名目で予算が降りました。で・す・が! 今年は例外! なんと織斑君がいるではありませんか! 皆不満ブーブーです。織斑君という運動神経抜群・筋肉最高・イケメンという三拍子揃った上に学年最強の座を手に入れ、挙句の果てには女の子を手駒にしているというなんという悪魔的な男子!」
おい、誇張が過ぎるぞ。誇張が。
「そんな織斑君が部活に入ればその部活だけが成績を伸ばすこと間違いなし! ということで今回の文化祭では投票結果による特別予算に加え、何と織斑君を勧誘する権利を与えるわ!」
直後、アリーナが揺れるんじゃないかと思うほどの大歓声が響き、思わず耳を塞ぐ。
な、なんていう甲高い叫びなんだ!
「皆の者! 全身全霊を出し切り、織斑一夏を手に入れよ!」
こうして俺の知らないところで進んでいたであろう計画は大々的に発表されたのであった。
―――――――――☆―――――――――
その日の放課後、特別に設けられたHRにおいて文化祭の一組の出し物を決める会議を開いたんだけど会長のあの発表があったという事もあってかやけに白熱している。
黒板には出し物の候補が出されているがどう考えても納得いかない。
「織斑一夏とポッキーゲーム、織斑一夏とツイスターゲーム……却下」
直後、教室からブーイングの嵐が巻き起こる。
「当たり前だ。全部おれに迷惑かかるわ」
「じゃあさじゃあさ! 織斑君の筋肉美を見せつける」
「ダーメ」
何故に一人筋肉大会をしなくちゃいけないんだ。
「では一夏は何がしたいのだ」
「ふっ。箒、よく聞いてくれた。この一週間、俺はただひたすら考えていた。IS学園という特殊な環境の中でいったい何が良いのか……そう! まさにこれだ!」
満を持して俺は黒板に大きくその文字を書き連ねる。
その文字は男のロマンというものが全て詰め込まれた素晴らしい物であり、書道家の先生でさえ感動のあまり涙を流してしまうほどの素晴らしい物。
ロマン・夢、この言葉を言い表すものはごまんとあるが最も合っているのがロマンだ!
「メイド喫茶!」
『却下』
「なんで!?」
シンクロ率百%の却下の二文字を突き付けられ、俺は必死に近くの席の子に詰め寄るがその子は腕を組んでツーンとした表情で俺と目も合わせてくれない。
何故だ! いったい何がいけないというのだ! メイド喫茶とは青春を謳歌する男子にとっては一度は入ってみたいものなのだ! メイド喫茶に入るまでの各党はそれはもうシルバリオ・ゴスペルとの戦いなど鼻くそ以下になってしまうほどの大きな戦!
言うならば自制心が欲望を抑えてはいるがその後ろから虎視眈々とメイド喫茶というアサシンが狙っている状況の中、どちらを選ぶか! これがまさに男の争い!
「やろうぜ! IS学園は女の園! メイド喫茶をやっても恥ずかしくない! さあみんな一緒に」
「それはただ単にお前が満足したいだけだろう」
うっ。流石は幼馴染の箒さん。鋭い突きだ。
「別にメイド喫茶を貶すわけではありませんが本物のメイドを見ている私からしたらちょっとメイド喫茶というものは合わないと言いますか」
くっ! 貴族のお家のセシリアという障害があることを忘れていた! 本物のメイドさんから見たメイド喫茶は本当に腐っているという。
「僕は別にいいんだけど皆に合わせておかないとね」
うぅ、シャルロットさんや。貴方まで私を捨てるのですか。
「そうか……皆のメイド服姿見たかったな」
―――――☆―――――――
(い、一夏が見たがっている……こ、ここは引き受けても……い、いや! ダメだダメだ! あ、あんなフリフリが付いた服など私が着るべきではないのだ! あ、あんなフリフリのついた服など!)
(一夏さんが見たがってますわ……せ、セシリア・オルコット! ここはひと肌脱ぎませんと!)
(へぇ、一夏はメイドさんが好きなんだ……ふふ、じゃあ僕はちょっとエッチなメイドさんになっちゃおうかな……って何僕は言ってるの!? ち、違うからね! べ、別に一夏に色仕掛けをするためじゃなくて一夏に可愛いメイドさんの姿を見せたいだけであって……ふぁぁぁぁ)
(ふむ、メイドか。そう言えばクラリッサが日本には全ての疲れを癒す万能薬・メイドがあると言っていたがそれのことか……うむ。我がライバルであり、嫁である一夏の全ての疲れを癒す万能薬になろう)
――――――☆――――――
「「「「賛成!」」」」
「え、マジ?」
さっきまで反対派の筆頭だったセシリア・ラウラ・シャルロット・箒の四人が立ち上がるや否やそう叫ぶと他の反対派の女子たちも揺らぎ始めた。
だ、だが何で今更になって……というかな、なんだあの四人から放たれているオーラは! み、見えるぞ……俺には見えるぞ! 真っ赤なオーラがみんなから見える……ていうかあれ、殺気じゃね?
「あ、そうだ。織斑君が燕尾服を着てくれるならいいよ」
『賛成!』
「うそーん……ま、まあ燕尾服位なら」
そう言うや否や全員が一気にキャッキャと騒ぎ出し、それを止めるはずの山田先生も何故かポッと頬を赤く染めて首を左右に振っていた。
もう訳分からん。