インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第35話 少年は見つける。

「ふぅ。何とか撒いたか」

 物陰に身を隠し、チラッと外を見ながら四人が来ていないことを確認し、汗を拭きながらホッとため息をつくが心臓の鼓動は未だに高鳴っており、少し体も疲れが出てきている。

 流石に代表候補生全員を相手にするのは無理だって……狙撃の腕は学年トップクラスのセシリア、近接格闘戦ではトップのラウラ、近接・遠距離どれもオールマイティーにできる鈴、状況判断能力が高く素早く戦闘方法を変えることが出来るシャルロット……全員が押し寄せてきたら無理だって。

 

 

 ―――――スパァァン!

 

「…………どうぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 聞き覚えのある音が響いたかと思えば金属製の壁が綺麗に半分に切られており、ズズズッと滑るように地面に落ちるとそこには太陽の光を反射し、輝きを放っている真剣を握りしめ、その目はまさに殺し屋と言った眼をしている箒がそこに立っていた。

 

「お、お前はどこの剣士だ!」

「私に斬れぬ物は無い。心と剣が合わさった心剣こそ最強の剣。安心しろ、一夏」

「ほぇ?」

「お前に当てる際は峰打ちだ!」

「当てるのは確定かよ!?」

 

 振り下ろされてくる真剣を避けるが間髪入れずに刀が振り上げられ、俺の髪の毛の先端が刀の切っ先によって持っていかれ、風によって運ばれていく。

 ……ほ、箒さ~ん。峰打ちじゃなかったんですか~?

 

「丸腰の相手に真剣で戦うのは気が引ける……だ、だが剣士には時として己の信念すら捨て去らねばならないこともあるのだ! 一夏覚悟!」

「お前は一体会長に何を言われたんだぁぁぁぁぁ!?」

 

 あの誇り高い剣士だった箒が自分の信念を捨て去るほどのことっていったいあの人はどんな魅力ある物を箒に提示したんですか!?

 ていうかなんでみんなのご褒美が俺と何かすることなの!? もっとほかにご褒美としていいものがあるでしょうよ! 学園規則でISは部分展開も使えないしもうやだ!

 学園の廊下を全力疾走しつつもチラッと後ろを振り返ってみるといつの間にか人数が増えており、しかも全員の目が殺し屋そのものだ。

 え、えっと真剣だろ? アーチェリーだろ? 弓道だろ? あとなんでバスケットボール?

 

「こっちです!」

 

 曲がり角に曲がった瞬間、伸びてきた腕に捕まれるとともに引き込まれ、真っ暗な室内に入ると追跡者たちの声が聞こえてくるが少しするとみんなの足音は遠くなっていった。

 

「誰だか知らないですけど……って巻紙さん?」

「はい。織斑様が追いかけられているのを見てつい」

「すみません本当に……たっく、あの生徒会長は……確かに盛り上がってるだろうけど危うくこっちが怪我しかけたっつうの」

 

 ドアを小さく開けて隙間から外の様子を眺めている時にふと疑問が頭に浮かび上がる。

 ちょっと待てよ……確か今は俺を追いかける行事で一般来客者は教室のモニターでこの様子を眺めているはずだ……それに薄暗くて見えにくいけどここは更衣室…………っっ!

 ある一つの結論に辿り着き、振り向き様に白式を部分展開した瞬間、そこに槍のような物が直撃し、金属音が更衣室内に響き渡る。

 

「ちっ! スコールの言う通り中々やるじゃねえか」

 

 さっきまでの大人びた喋り方から一転、まるでヤンキーのようなぞんざいな声が聞こえてくる。

 部分展開から一気に全身を展開すると相手の情報が瞬時に送られてくる。

 八本の装甲脚が特徴で蜘蛛の形をしたアメリカ製IS・アラクネ……。

 

「あんた何者なんだ!」

「ま、どうせ知られるし今言っておくか。あたしは亡国機業のオータム! 白式を頂きに来たんだよ!」

 

 直後、ロックされている警告が表示され、慌ててその場から飛び去った瞬間、俺が今までいた場所に砲弾でも着弾したのか爆発が起き、ロッカーが崩れていく。

 さらに連続してロックがなされ、スラスターを吹かせて回避するが更衣室という狭い場所のせいで壁にあたり、一瞬体勢を崩してしまう。

 クソ! 広い場所じゃねえからいつもの速度で回避行動をとったら壁にぶち当たる! スラスター無しであいつの攻撃を避けるしかねえ!

 

「行くぞ行くぞ!」

「くそ!」

 

 雪片弐型を握りしめ、相手が放って来る装甲脚による突きを往なしていくが八本という数でのごり押しを全ていなせず、装甲を掠っていく。

 あいつ、体勢を保つのに少なくとも半分あればいいから四本で攻撃してくる……つまり、二人を相手にしてるって考えればいい話か……狭い場所じゃなかったら!

 

「だぁぁ!」

「大振りだなおい!」

「っっぐぁ!」

 

 大きく横に薙ぎ、相手の突きを弾いた瞬間、下から伸びるように装甲脚が俺の腹部にめり込み、至近距離からの砲弾を喰らい、エネルギーを大幅に削られる。

 やべえ……今の一撃で七割も持っていかれた……くそ! 装甲が薄くなった影響がさっそく出てきた!

 

「情報通りだなおい! てめえの装甲は第二次形態移行前後で半分近く薄くなってやがる! それにてめえの最大の武器の速度もこんな狭い部屋じゃ発揮しきれねえだろ!」

「なんでてめえがそれを知ってんだ!」

「お前が知る必要はねえよ!」

 

 ロック警告が表示されると同時にその場から転がるようにして退いた瞬間、爆発が起きる。

 どうすりゃいいんだよ! こんな狭い場所じゃ瞬時加速なんか使えば壁に激突し、あいつに隙を見せるだけだし、かといって避けないと俺がやられる…………まだ会長のアドバイスすら完全に実行できてねえのに。

 

「終わりだ!」

「っっなぁ!?」

 

 避けようとした瞬間、さっきの爆発で穴が開いていた場所に足をかけられてしまい、体勢を崩していく中、四本の装甲脚が一斉に俺に向かってくる。

 この一撃を喰らったらエネルギーが尽きる!

 片足だけ脚部ラスターを軽く吹かせ、四本の攻撃をどうにかして避ける。

 

「ちっ! てめえお得意の無重力反転か。が、一回だけ避けた所で好い気になんなよ!」

 

 一度、奴から距離を取るために大きく後ろへ飛び退く。

 今の感覚……右足には力がかかってて動かなかったけど左足だけスラスターを吹かせた勢いで動いた…………重心が固い……風に吹く紙……っっ! そうか! やっと分かった! 会長が言っていたことが。

 雪片弐型を粒子化し、収納した様子を見てオータムとかいう女は眉間に皺を寄せる。

 

「てめえ舐めてんのか? 武器も無しであたしに勝とうってのか!? あぁ!?」

「良いから来いよ。もうあんたの攻撃は貰わねえ」

「調子こいてんじゃねえよクソガキガァァァ!」

 

 相手が地面から少し浮かび上がった瞬間、八本の装甲脚全てが俺に向かって砲門をむき出しにした状態で放たれてくる。

 大きく息を吐き、両腕をダランと伸ばした状態で顔に向かってきていた一本目をギリギリのところで避け、両膝に時間差で向かってきていた二本目を片足を上げて避け、三本目を挙げた片足の脚部スラスターを強く吹かしてその勢いのままその場で空中で一回転することで避け、着地と共に深く伏せ、五本目を避ける。

 そして五本目を避けた所で大きく踏み出し、あえて六本目をその足に狙わせ、もう片方の足でその装甲脚を踏みつけ、七本目の一撃を大きく体を逸らし、避ける。

 

「こんのクソガキガァァァぁぁぁぁ!」

 相手が大きく体を逸らした瞬間、瞬時加速を発動させ、相手との距離を一気に詰める。

「そっくりそのまま返すぜ……大振りになったな!」

 そして腕に力を込め、瞬時加速の勢いを殺さずに相手に腹部目がけて下から上へと腕を一気に!

「バースト!」

「ごぁぁ!」

 一気に振り上げた瞬間、相手の苦しそうなそんな叫びと同時にアラクネの装甲に大きく亀裂が入る。

「だあぁぁぁぁ!」 

 

 勢いよく腕を振りぬいた瞬間、相手は簡単に吹き飛んでいき、ロッカーをいくつも巻き込んで更衣室の厚い壁に背中から激突した。

 相手の攻撃を無理に避けるんじゃない……相手の攻撃に沿って攻撃を避けるんだ……そして一気に力を爆発させて相手にぶつける!

 

「んのクソガキがぁ! てめえごと気がこのオータム様に勝てると思うなよ!」

 

 相手が大きく八本の装甲脚を引き、そして勢い良く放ってきた瞬間、スライディングするように姿勢を低くしながら装甲脚の下を瞬時加速状態で滑っていく。

 そして雪片弐型を手に握ると同時にその場で回転し、四本を切断し破壊した。

 

「なっ!?」

「うえぁぁ!」

 相手の股の下を通り過ぎながら相手の足を掴み、その場で回転して相手を床に叩き倒す。

「てんめえ!」

「はぁぁ!」

 

 相手が剣を展開し、それを握りしめ、切っ先を俺に向けて勢いよく突きだしてくる。

 それをスラスターを吹かし、床を滑るようにして移動しつつ体勢を後ろへと傾けることで剣を避け、相手の持ち手の部分を蹴り、剣を飛ばす。

 

「えあぁぁ!」

「ぐぉぁ!?」

 零落白夜を発動した状態で雪片弐型を全力で振り下ろした瞬間、相手の装甲がはじけ飛ぶ。

「剣で俺に敵うと思うなよ」

「このくそがきがぁ!」

 その時、更衣室に小さな拍手が響く。

 

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