インフィニット・ストラトス Strong・Summer   作:kue

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第8話 何故、機体は強奪されたのか

 そんなこんなで日数は経過し、とうとう俺が鈴にショック療法を行われる地獄の日が遂にやってきてしまった……ようするに対抗戦当日である。

 なのだが千冬姉から試合が始まる1時間前に集合をかけられ、今は第三アリーナのAピットにいるのだが何故か箒もセシリアも俺と同じ場所にいる。

 

「あ、あの~。どうして篠ノ乃さんとオルコットさんまで」

「付き添いです」

「教官として」

「ま、構わんだろう。織斑。お前の専用機が奴から届いた」

 

 千冬姉のその言葉の直後、ゴゴゴッ! と重い音が響き、ピット搬入口が開くと俺の専用機らしきISが立ったままの状態でそこにあった。

 ボディカラーは全てが白で統一されており、所々黄色や青と言った色も見えるがそれはほとんど見えない場所であり、真正面から見ると白しかない。

 

「元々そのISは倉持技研で欠陥機として放置されていたものをお前用にあいつがカスタマイズしたものらしい」

「そっか……」

 

 やっと……やっと手に入れたんだ。俺だけの力、俺が追い求める力の一端……紛い物じゃなくて本物の俺の為だけに存在する力が。

 そう思うと心の底から嬉しさやら喜びといった感情が湧き上がってくるのが自分でもわかる。

 

「では織斑君。初期化と最適化を行いましょう」

「はい」

 

 俺の為だけに存在するISに乗り込み、背中を預けるようにすると俺の体にISが纏われていき、全身の表面を薄い膜が広がっていくような感覚を抱くとともに目の前に膨大な桁数の数字と進行状況を示すパラメータが出現し、このISの名前が大きく表示される。

 白式……そうか。それがお前の名前か…………。

 

「これが一夏のIS」

「第3世代機といったところでしょうか……織斑さん。何か武器は積んでいますの?」

 武器一覧を表示させてみる。

 

 ――――近接用ブレード・雪片弐型

 

「……ブレード一本しかない」

「……本当に第3世代機なのですの?」

「どういう意味だ」

「第3世代機は操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした世代。私であればBT兵器ですわ……ブレード一本ということは何かしらの特別な部分があるという事でしょうか」

 

 今は初期化と最適化の最中で白式のほとんどの処理がそっちに回っているため武装を出すことはできないけど説明を見る限りではただのブレードだ。

 白式のスペックデータを表示させてみる。

 …………特にこれと言って突出した部分はないんだよな。ただあげるなら速度が他の機体よりも少し早いっていうだけであとは第3世代機相応のスペックだ。

 

「まぁ、ブレード一本だろうが何世代機だろうが対抗戦には絶対に勝つさ」

「もちろんですわ。なんせこの私が教官をしておりますもの」

「それを言うならば私は一夏と剣の修業を長きにわたって共にしているのだ。絶対に勝つ」

 

 箒もセシリアの同じように腕を組むが腕に乗っているふたつのあれの大きさは明らかに箒の一回りか二回りほど大きい。

 そう言えば束さんも大きかったよな……姉妹で共通するものなのか? っていかんいかん! 俺は何を考えているんだ。今は目の前のことに集中せねば。

 煩悩を振り払い、膨大な桁数の数字を見つめるが何をやっているのかさっぱり分からないので結局二人の方に視線を移してしまう。

 ……そう言えばなんで鈴はあそこまでブチギレていたんだろうか……なんか惜しいって言っていたけど……もしかして約束の内容が違うのか?

 そんなことを考えていると突然、ISから異音がしたのでそちらの方を見ると背中の装甲が分解・再構成されて白と青が若干混ざっているようなカラーリングの翼のようなものが生み出された。

 

「なんだこれ」

「背部スラスターですわね。ISがそちらの方が貴方に合っていると判断したんですわ」

 まあ確かに背中に直接あるよりかは良いかもな。

「一夏。瞬時加速の使い過ぎには気をつけろよ」

「おう」

「あと貴方は詰めが甘い部分があるので試合が終わるまで徹底的にすること。良いですわね?」

「お、おう」

 なんで俺はこんなにも二人に激励されてるんだ?

 

 ―――――フォーマットとフィッティングが終了しました。確認ボタンを押してください。

 

 目の前に現れたウィンドウにある確認ボタンを押すと膨大な量のデータが整理されていくのが分かる。

 見に纏っているISの全身が一度、真っ白な粒子へと変化するがその姿は一瞬で終わり、工業的な凸凹は消え、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴などこか中世の鎧のような姿へと変化した。

 

「はい。これでフォーマットとフィッティングは終了です」

「織斑。まだ試合が始まるまで30分あるがどうする。試運転するか?」

「……いや。試合で慣れます」

「……ふっ。お前はそういう奴だったな」

 

 今ここで慣れるよりも実践で慣れた方が理解も早いだろうというのが俺の考え方だ。ほら、人も絶体絶命の時に発揮できる火事場の馬鹿力。あんな感じだ。

 

「そう言えば相手は誰なのだ」

「4分の1の確率で鈴さんですわね」

「多分だけど……鈴が相手な気がする」

「良かったら表示しますよ~」

 

 山田先生がそう言うと聞いたことも無い速度でキーボードが叩かれる音がビット内に響く。

 いつもはあんな頼りない感じの先生だけど実は裏では……みたいな先生なんだろうな。だって俺、あんな速度で叩かれるキーボードとか見たことないし。

 そんなことを思っているとモニターにトーナメント表が表示される。

 

「げっ。やっぱり」

 俺の予想通り、一回戦は鈴だ。

「一夏! 勝てよ!」

「私の為にも!」

「いや、そこは一組の為だろ……とにかく俺の命の為にも勝つ!」

 負けたらマジでショック療法で記憶を思い出すどころか記憶喪失になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから早くも30分が経過し、今俺はフィールド内で鈴と5メートルという遠からず近からずな距離を開けてたがいに対面している。というか向こうが一方的にこちらを睨み付けてくる。

 マジで何とかしないと俺殺される……でも約束は確かに酢豚を一緒に食べようっていう約束だったはずなんだけどな……いったい何が違うんだ?

 

「一夏~。今なら謝ったらボコボコレベルを下げてあげるわよ」

「ふん。んなもん雀の涙ほどだろ。俺はあの人を超えるために鍛えてきたんだ……相手と全力で戦わずしてどうやって自分を強くするんだよ」

「でしょうね。受け入れるとはサラサラ思ってないわよ、バカ」

 

 鈴は異形の青竜刀を握りしめ、それを肩に担ぐようにしてひっかける。青竜刀というよりも両端に刃が付いた槍みたいなもの。

 そんな脅しには屈しないと意思表示をするために俺も拳を広げ、ブレードを呼び出し、握りしめる。

 雪片弐型――――それは世界最強の姉がその座を勝ち取った際に使用していた剣とほとんど同じ名前であり、形状もほとんど同じだ。

 要するに俺はあの人から受け継いだと言ってもおかしくはない。そんな状況で無様にボコボコにされたら千冬姉の顔に泥を塗るだけでなく俺を鍛えてくれた箒やセシリアの顔にも泥を塗ることになる。

 現時点での実力は確実にあいつが上だ…………ただ俺もここ1週間、遊んでいた訳じゃないんだよ。ひたすら体を鍛え、ISの技術を磨き、剣の腕を磨いてきた……ただじゃ負けねえ。

 

『では両者、試合を始めてください』

 ブザーがアリーナ内に響き渡り、鈴と俺が同時に動き出す――――が。

 

 

「きゃぁ!」

 先に攻撃が当たったのは鈴の方だった。

 アリーナにいる連中も何が起きたのか分かっていないのかシーンと静まり返っており、攻撃を行った俺自身でさえ、何が起きているのが理解できていない。

 な、なんだ今の感覚……一瞬で鈴の横を通り過ぎていた……いくらISだっていっても5メートルの距離を相手に気づかれないうちに詰めることが出来る訳がない…………っ! そうか……今やっとわかったぞ! こいつがなんで速度の領域だけスペックが上なのか!

 

「へ、へぇ。やるじゃない。いきなり瞬時加速を使ってあたしのエネルギーをゴッソリ削ろうって魂胆ね……でも残念。今の攻撃で減ったのは3割ほど……ここからこれ以上は減らさせないわよ!」

「そいつはどうかな!?」

 

 今のは瞬時加速なんかじゃない。いつもの通りのスラスターを利用して加速だ……ただ出せる速度が他のISよりも少し上なんだ!

 鈴が振り下ろしてくる青竜刀を自慢の速度で避け、即座に後ろに回って雪片を振り下ろす。

 

「甘い!」

 雪片と青竜刀がぶつかり合う音が響き、火花が散る。

 流石に後ろに回っただけじゃ一撃は与えられないよな!

「でやぁ!」

 

 ハイパーセンサーからの広域視覚による情報を基に鈴の次の行動を予測し、上空へ飛び上がると横薙ぎに振るわれてくる青竜刀が空を切った。

 そのまま上空から横にスライドするように旋回しつつ速度を徐々に上げていく。

 

「なんなのよその速度! 瞬時加速じゃないの!?」

「さあ、どうかな」

 タイミングを合わせて……今だ!

「はぁぁぁぁ!」

 旋回の速度のまま直進距離へと変更し、鈴へ雪片を振り下ろそうとした瞬間!

「甘い!」

「っっ!」

 

 鈴の肩アーマーがバカッと開いたのが見え、反射的に瞬時加速を発動させて鈴の前方から離脱した瞬間、アリーナの地面に何かが直撃したのか粉塵があがる。

 今の一撃……前にセシリアを止めた時の奴か!

 

「避けたわね。流石はヤンキーに意味なく絡まれた時は相談しろとまで言われた喧嘩1位。野生の勘は今でも健在ってわけ」

「まあな」

 

 にしてもあの兵器はなんだ……肩アーマーが開いたのは見えたけど打ち出された砲弾はおろか撃って来る予兆すら何も見えなかった。さっきは肩アーマーが開いたことが合図となったけどあれ以来、アーマーは開きっぱなし……つまり完全にいつ打ち出してくるか不明なわけだ。

 

「それがお前の第3世代兵器ってやつか」

「正解。名前は衝撃砲。特徴はもうわかったでしょ……ここからはあたしのステージなんだから!」

「くっ!」

 

 打ち出すタイミングが分からない以上、速度で鈴から離れればいいがどうしても今の俺では旋回から直進というアクションの中でさらに途中で変えることは無理だ。さっき衝撃砲の一撃を避けるために上へ行けたのも最後で速度を少し落としたからだ。

 さて、どうやってこの状況を打破するか!

 

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