モーレツ併合海賊   作:ノナノナ

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第20話

 

 「送った先が星間戦争の真っ最中だとは知ってたが、あん? もう終わり?」

 

 身を潜ませながら、二つの勢力の最終決戦を傍観していた温大夫。

 単結晶の行方を追って、たう星系海明星というド田舎星までやってきたが、追っていた肝心の海賊の姿が無い。そのうち宗主星の総攻撃が始まり、植民星側の艦船が次々と迎撃に出ていく。自分の愛機の脇を掠めるようにして。

 こちらは念入りにステルス掛けているから、相手に気付かれる心配はないが、接触しないか冷や冷やものだった。中央のスカラー・ルートより混雑がひどい。それが距離間や速度無視ですっ飛ばしていく。よほど慌てた事態だ。

 海賊は居ないかと、飛ばしていく艦船の間を縫うようにドライブしていると、母星近くにタッチダウン反応。その中から目指す相手が出て来た。

 「いたいた。トランスポンダー『仮装巡洋艦 海賊船白鳥号』。はあ?太陽帆船?――どーやって海賊してんだぁ。あ、単結晶見っけ。やつら単結晶を船首衝角にしてるよ。戦利品のつもりかねえ」

 ここで出ていくわけにはいかない。何しろ戦場の真っただ中で周りの目も多い。そのうち戦闘になるんだから、船体が破壊されたところでブツを回収すればいい。何しろ単結晶は単体では破壊できないんだから。

 そこで様子を見ていたのだが、様子がどうもおかしな方向に動いていく。

 スズカの声は全指向性で放たれていたから、こちらにも聞こえている。

 「泣かせるねえ。青春を戦時に捧げた乙女の叫び。どーしよーもない政府を持つと、不幸なのは若者だねえ」

 なんて感慨に耽っていると、いきなりの宣戦布告。口をあんぐりさせて、何ぶっ飛んでんだあと一人突っ込みしていたところに、それは起きた。

 突然の第七艦隊の出現。

 帝国が乗り出してくるなんて聞いてねえぞとぼやいたが、

 あれよあれよという間に、終戦してしまった。

 「あーあ。早々と一発も打てずに降伏かよ。文字通り、来た!見た!勝った!だな」

 しかしくだんの第七艦隊が、いつもの調子と微妙に違う気がした。しかし今それを確認することは出来ない。こちらの存在を相手に知られることにもなるし、しかも相手はあの銀九龍が居る第七艦隊だ。不確かなままチョッカイ出すなんてリスクは負えない。

 こうなると、チャンスを待つしかない。人目が無くなったところで、直接やる。

 

 たう星系宙域に展開していた宇宙船が減っていく。

 始めに撤退していったのは、海明星に殺到していた宗主星の艦隊群。先に植民星連合が降伏してしまったものだから、彼らと敵対していた自分たちが敵となる。突然現れた勢力に現場の判断で降伏しようにも権限が無い。戦闘で白旗は上げれても政府の全権委任は受けていないのだ。政府に判断を仰いだが、相当混乱しているようで、兎に角撤退せよとのお達しだった。

 降伏文書が手渡されたところで帝国艦隊も引き上げた。それは現れた時と同様に水際立っていた。ぱっと現れさっと引いていく。あの第五八突撃起動艦隊は居残っているが、海賊団が植民星連合に攻撃されないか監視しているのだろう。その海賊団も植民星艦隊も三々五々宙域から引き揚げていく。

 すっかり平和な空域になったところで、白鳥号も動き出した。中継ステーションに入港するかと思ったが、どうやら他に持つ自分のアジトに向かうようだ。温大夫にしてみれば願ったりだ。ドックに入港したとしても盗み出せる自信はある。だが人目が無いに越したことはない。

 密かに、相手に気付かれないよう後をつけていく。第四惑星から外惑星軌道の間に広がる小惑星帯に入ったところで温大夫は動いた。

 

 「不審船にエネルギー反応増加!」

 ナタリアから報告が入る。

 「周囲の目がなくなったから、警告なしでいきなり攻撃? 随分焦ってるわね。証拠隠滅のつもりかしら」

 チアキが呆れたようにため息を吐く。

 「来たあ! 敵の射撃管制波!」

 リンが待ってましたとばかりに、電子戦を開始する。

 「敵の電波からの直結回線よし。動力コントロール切断!」

 「え、え、え?」

 いざ撃とうとした瞬間、いきなり船のシステムがダウンして温大夫は狼狽した。動力エンジンが止まり、非常用バッテリーしか電力がない。パチパチ色々と再立ち上げしようとしても一切コマンドを受け付けない。

 「目があることを教えてあげましょう。一斉にやっちゃって」

 茉莉香の号令と共に、三方向から強烈な近距離射撃管制レーダーが放たれる。レーダー波は正確に不審船をクロスゲージしていた。と同時に、白鳥号と弁天丸のエネルギー反応が上がる。

 後ろから攻撃と狙っていたところに、フリーズ!を掛けられ、ぎょっとする温大夫。何もないはずの空間に宇宙船が現れる。

 そして馴染みある声。

 「よお、久しぶりだなジャッキー。こちらはお馴染み第58突撃機動艦隊の銀九龍だ。ルナライオンに停船を要求する。――抵抗は無意味だ」

 よりによって何でアイツがぁ。

 いきなり現れた、あの太陽帆船と同型艦からの強制通信に温大夫は頭を抱えた。

 

 「じゃっきーぃ? ルナライオン!?」

 意外な知り合いの登場に驚く茉莉香。

 「あー、あの時はつまり。わたしたちはご先祖さまのカタキだったっていう訳ねぇ」

 「てゆーかあ、ここで会ったが百年目?」

 ヨット部員たちから、達観したような感想が漏れる。

 「温大夫。本名、ジャン=ジャック・ランキン。ヤークブ商会公司を名乗る密輸業者だ。辺境海賊ギルドを追っている中で浮かび上がって来た胡散臭い奴でね。やっと尻尾を捕まえた」

 「あれが戦略兵器の部品だったなんて知らなかったんだ。代金が未だだったんで来てみたんだが、意外な使われ方にこっちも驚いてるんだ。で急いで回収しようとしてた訳。こちとら、いたって真面目な貿易商人だぜ」

 「真面目な商人が、辺境海賊ギルドと関係を持つかよ。証拠品は抑えさせてもらった。言い逃れは出来ないぜ」

 「温大夫、軍警察のホーガスです。あなたは密輸、大量殺人の幇助、場合によっては帝国内乱誘致で国家反逆罪の容疑が掛けられております」

 「国家反逆罪だってぇ? 冗談じゃない、一介の業者が密輸品を一つ取り持っただけだぜ」

 「つまり、法律に抵触する行為だったことは認識されている訳ですね」

 ぐっと言葉に詰まるジャッキー・温。

 「場合によっては、という話です。あなたに今回の取引を持ち掛けたのが誰だったのか、それを教えて下されば司法取引も吝かではないということです。まあ密輸に関しては、これまでの件もあり目を瞑るわけには参りませんが・・・」

 諜報部のナッシュフォールが、銀九龍に視線を送りながら口を挟む。

 「海賊ギルドなんて知らねえ。たとえ知ってたとしても言えねえ。海賊ギルドを売ったとなりゃ、この先この宙で商売できなくなる」

 「そんなこと言っていいのかねえ。今回は密輸だけじゃない。帝国内乱陰謀の容疑がある。そこんところの潔白を主張しないと、間違いなく処分だぜ。海賊ギルドにそこまで義理立てする理由もないだろう」

 何だかカツ丼が似合いそうな構図である。

 はあーと息を吐く温。

 そして、帝国士官とはちぐはぐな、周囲のヨット部員たちを見回す。

 「それにしても、硬派な筈の帝国軍人が、また随分と華やかな中にいらっしゃるんですね。電子戦にあ、ちっとは自信があったんだが、まるっきり気付かないうちに、いきなり銃を取り上げてのホールドアップ。アンタたちは一体何者なんだあ」

 ジャッキーの言葉に三人の帝国士官は苦笑するしかなかった。銀河帝国自身も同じように決められてしまったのだから。

 「白鳳海賊団。正義の味方です」

 ニッコリ営業用のスマイルで茉莉香は答えた。

 

 「ひとつ確認したいんですけど――」

 続けて茉莉香はモニターの向こうに問いかけた。

 「あなたの本名、温でもランキンでもないでしょう。本当はケルビンっていうんじゃないですか」

 意表を突かれたという顔のジャッキー。

 「いいねえその名前。ケルビン(絶対零度)か、次からは是非それを使わせてもらうよ。」

 

 

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