モーレツ併合海賊   作:ノナノナ

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第27話

 号令一下、オデットⅡ世のマストから強力なレーダー波が放たれた。

 「敵妨害電波、出力上がります。」

 「射撃管制波から侵入開始!」

 レーダー担当ヤヨイ・ヨシトミからの報告に百目がコマンドを入れる。オデットⅡ世と弁天丸のブリッジは双方解放回線で一体化されている。

 「忘れじの行く末までは難ければ、今日をかぎりの命ともがな。・・・さっすが要塞、対抗のプレッシャーが半端ない」

 「でも、まるまる電子戦出力アンテナと化したオデットだよ。余裕で押せる。アイちゃん上手く避けてくれよ」

 オデットの電子攻撃を取りまとめるリン部長にアスタ・アルハンコが出力を上げる。操帆担当はいまレーダー調整班だ。

 「チアキ先輩とグリューエルのサポートがあれば万全です。それに皆さんの電子攻撃もあるから掠りもしません。――あまつかぜ(攻撃波)フネの通い路吹き閉じよ、オデット(おとめ)の姿しばしとどめん!」

 てきぱきと応対していくオデットⅡ世のヨット部員たち。

 「敵のハッキング率、隔離領域に八七パーセント。船体及び航行に支障なし」

 船体情報をモニターし続けるチアキ・クリハラ。

 「しのぶれど上に出にけり我が腕は、ものや何ぞと敵の問うまで。――乗っ取り八二パーセント終了、相手の射撃管制はこちらにありまーす!」

 ウルスラ・アブラモフが歓声を上げる。

 「もう一息ぃ!!」

 スカルスターでは大混乱になっているだろう。いくらハッキング率を上げても相手の航行やレーダーに何の変化もない。しかしこちらのコマンドは次々と奪われていく。斉射の命中率がガタンと落ちビームがあらぬ方向に撃ち出される。相手は何故かまだ撃ってこないが、このままいけば動力源まで奪われて生殺与奪権を握られてしまう。

 「春の夜の夢ばかりなん海賊に、かひなく立たむスカル惜しけれ。――ん、敵の射撃が変わった。精度は落ちてるけど管制が戻ってる」

 ナタリア・グレンノースが報告する。

 「まさか、光学照準? まずい!」

 以前光学照準で攻撃された時のことを思い出したジェニーが叫んだ。部長だったあの時は、茉莉香の機転でマストの帆の透過率を調整し、相手の目を潰すことが出来た。だがこの空間には集束させる光源、恒星が無い。オデットⅡ世も帆船で無く通常推進で航行している。だから帆を丸々アンテナに使うことが出来ている訳だが。

 「アイちゃん! より細かな操船お願い。グリューエル、チアキ、詳細なサポートを!」

 「はい!!」

 距離はライトニングⅪの時より離れており、光学照準も赤外線センサーもだいぶ甘いが確実にこちらを狙える。

 「ビームを回避するため拡散幕を張るか」

 シュニッツアが発射ボタンに手を伸ばした時、茉莉香が制止させた。

 「駄目、ビームの拡散光でこちらの的が大きくなる。そこに目掛けてミサイル飽和攻撃されたら避けきれない」

 敵の射撃はオデットⅡ世、弁天丸、サイレントウィスパーのそれぞれを狙うだけでなく、それぞれの間を縫うように撃ってきている。

 「奴さん、こちらの連携に気付いた。三隻を分断して通信のタイムラグを狙ってる。超光速回線に切り替えるか?」

 百目が唸るように茉莉香に聞く。

 「もっと駄目! タイムラグ無しの超光速回線にしたら、乗っ取られはしなくても、逆にこちらの出力がダイレクトに伝わって相手の機関が暴走しちゃう!!」

 電子回路にいきなり高圧電流が流れるようなもの。回路が焼き切れ全停止する。火のついている転換炉が安全装置無しでストップしたりエネルギーが逆流を起こす。どちらもスカルスターは無事では済まない。

 「ショート・ダウンバースト現象か」

 「効率は落ちても、散開して光速回線のままで行きましょう」

 「ネットワークは良くても、電子妨害が影響を受けるぞ」

 固まったままの隊列では、的が大きくなり相手も照準をつけやすい。下手な鉄砲でも数撃ちゃ当たるの喩えもある。散開して狙いをつけにくくし各艦が回避行動を執る。しかしそれは一体となっていた電子攻撃も鈍くなる。特にアンテナに特化しているオデットⅡ世ではそうだ。回避運動とレーダー指向を同時に行うため操舵が難しくなる。

 「俺があっちに乗っていた方が良かったんじゃないか」

 弁天丸の操舵手ケインが心配する。

 「彼女らを信じましょう。事実これまでの攻撃には全部対処し切ってる」

 船長代理のミーサが表情を硬くした。

 赤外線照準を避けるため、メイン推進を切って慣性航行で進むオデットⅡ世と弁天丸。速力は落ちたが確実にスカルスターには接近している。ビーム砲やミサイルはスラスターでの回避行動で避けているが出力は弱い。それはあまり動かない的と同じで相手の照準も距離と相まって徐々に正確になりつつある。

 スカルスターの要塞砲塔に照準を定めているシュニッツアが言った。

 「船長、本当に撃たなくていいのか? 今なら正確に敵の砲塔を沈黙させられる。相手もプロだ。早晩修正値を補正されて有効弾が出て来るぞ!」

 「こちらから物理攻撃はしません。あくまで話し合いをしに来たんだから。海賊流に電子攻撃に徹します」

 操舵を担当するケインもアイ・ホシミヤも徐々にきつくなってきた。特にアイは弁天丸以上の繊細な操船が要求されている。チアキやグリューエルの助力もあるが、交差するビーム砲やミサイル弾にほとんど反射神経に近い操舵だった。

 「アイちゃん・・・」

 肩で息しながら舵輪を握るアイに茉莉香は焦った。これまで完璧に対処し続けてきたが彼女の限界も近い。

 「弁天丸!」

 「どうした船長」

 「ビーム砲でオデットⅡ世を撃って!」

 なんだってぇと一同驚く。

 「船長、プレッシャーでイッちゃたんじゃないだろうな?」

 ケインが訝しがる。

 「失礼なこと言わないでよ。ビームは威力を落とした拡散、照明弾程度でいいんだから。光が無いんだったら光源を作ればいいだけ。オデットⅡ世をレンズにして相手の目を潰す。そりゃ帆の何枚かは逝っちゃうかもしれないけれど」

 「成程、光学照準を無効化させる訳か。営業用のフラッシュビーム、あれを使う」

 射撃管制のシュニッツアが、海賊営業で相手の船に接舷するときにぶっ放す空砲をセレクトする。船体装甲には問題ないが、繊細な太陽帆には影響するだろう。

 「オデットⅡ世と弁天丸を軸線に乗せる必要がある。斉射する一〇秒ほどは回避行動が取れなくなる。いいか」

 「その間、敵の攻撃が当たらないことを祈りましょう」

 「よおし、弁天丸前進。」

 ケインがメインブースターを吹かして舵を切る。

 スカルスター、オデットⅡ世、弁天丸が同一線上に来るように回頭が始まった。敵の攻撃もその軸線に集中する。

 「x〇,二五度、y一,〇三度、z三,七度修正。もうちょい!」

 その間にも、衝撃波が船体に響いてくるほどの至近弾がオデットⅡ世を掠めていく。

 「十三、十二、十一・・・・・・四、三、二、一、乗った!」

 弁天丸が主砲を斉射しようとしたその時、

 背後の空間が爆発した。

 

 

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