モーレツ併合海賊   作:ノナノナ

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第28話

 「何が起きたの? 飽和攻撃の至近弾?」

 茉莉香が尋ねる。

 茉莉香の問いに確認を取るチアキ。

 「違う。これは・・後方に多数のプレドライブ現象発生!」

 空間に次々と宇宙船がタッチダウンして来る。

 「部長、またあれやったんですか」

 茉莉香がリンに聞く。

 「やってない。あれは全部実体だ!」

 通常空間に復帰してくると同時に、あたりに強制入力であの「海賊の歌」が流れる。

 予期せぬ援軍の到着だった。

 「当事者置いといて一人で突っ走っちゃってる訳? 茉莉香。」

 海賊の歌に乗って聞こえてきたのは

 「スズカちゃん!」

 「だあからぁ、ちゃんじゃあないって! 海賊相手に、なに甘っちょろい事やってんのよ!」

 そう言うがはやいか、いきなり船団から一斉射撃が放たれる。強制入力されたままに。

 幾筋ものビーム砲やミサイル弾が、空間を切り裂き、スカルスターに集中する。

 眩い閃光がスカルスターを包む。

 「きゃあああ」

 一呼吸おいてやって来た轟音に、ヨット部一同耳を塞ぐ。宇宙空間に音は無いはずだが・・。

 「効果音。」

 突然の新手出現にスカルスターの砲撃が止んだ。閃光がおさまると、見たところ派手な爆発の割にはスカルスターに損傷が無い。

 「演出。」

 シュニッツアがぼそりと解説する。

 「白鳥号以下私掠船免状を頂く海賊一同、只今参上!!」

 「私掠船免状だって。アンタ達雇い主に反旗を振りかざしたんじゃなたった?」

 スカルスターのミューラ・グラントから通信が入る。

 「よくご存じで。この度無事併合が成ったものですから、私達は無罪放免。独立した星系連合海賊として存続が認められました」

 「じゃあ」

 茉莉香の顔がぱっと明るくなる。懸案事項だった最悪の選択肢は回避されたのだ。

 「ええ、オリオンの腕は宗主星含めて銀河帝国への編入が正式に決まったわ。異例な手続きの早さだったそうだけど」

 「帝国がよくそんな茶番を認めたものだわね。何より帝国は海賊の存在を認めてない筈」

 「あら、あっさり認められましたよ。なんでも内政不干渉だからだとか。それに帝国も急いだ方が都合が良かったんでしょう。あなた方のような存在と帝国の内部事情に対処するためには。――帝国のやんごとなき方面からのトップダウンだったそうです。」

 アテナのメールとセレニティーのお陰だ。とジェニーは思った。

 当のミューラは何事かを考えて黙っている。

 「何故か行きがかり上、降伏文書を預かった私が正式な手続きってやらをするためにポルト・セルーナに行ったのよ。そしたら、あなた達がスカルスターに向かったって言うじゃない。何突っ走ってくれてる訳、これは私たちの時代の問題よ!」

 「それは一体どなたさんから・・・」

 ぼそぼそと茉莉香が尋ねる。

 「帝国情報部のナッシュさんとかいう人。カンカンだったわよ。いきなり核恒星系で置いてけぼりにされたって。」

 ・・自分たち海賊の仕事ですって、丁重にお断りしたつもりだったのだが・・。

 「でも白鳳海賊団に掛けられていた誘拐の容疑は晴れたわ。『誘拐されたと思われていた三人が、降伏文書受け渡しの現場に居た事で外交交渉に就いていたと解った』ってことだそうよ」

 帝国からの正式な依頼ではないのだから単独交渉するのに帝国政府の人間が一緒では何かと不味いと下船をお願いした。でもナッシュフォールさんも帝国中枢部を動かすために尽力してくれたのだと茉莉香は判った。情報部が動いていたことを公けにしないためにスズカには怒ったふりを見せたのだ。

 「で、スズカちゃん達はどうしてここに?」

 「だからちゃんじゃ・・まあいいわ。正式に併合がなってから銀九龍さんから海賊依頼があったのよ。第七艦隊では海賊征伐の越境許可が下りないから動けないって。で、白鳥号は白鳳海賊団として帝国の私掠船免状貰った」

 「て、ていこくのしりゃくせんめんじょおお!?!」

 茉莉香が面食らう。

 「だから、白鳥号と一緒にお仕事してる植民星連合の海賊一同は、いま帝国お墨付きの海賊って訳。帝国内何処へも行けるし帝国外でお仕事出来る。もっとも非合法は駄目だけど」

 じっと二人の会話を聞いているミューラ・グラント。

 双方無事ではすまないが、一〇〇隻近い戦艦とやり合うとなると要塞港として分が悪い。現状でも電子戦では相手の方に押されている。代表と言っても所詮辺境海賊ギルドは寄り合い所帯だ。ミューラの面子より損得勘定が何より優先される。

 「てことで、ミューラさんだったかしら。お初にお目にかかります。海賊船白鳥号の船長、シラトリ・スズカです。」

 面と向かってスズカが口火を切る。

 「ほお、私を見据えるかい。いい度胸だ」

 ミューラの目が冷たく光る。なんでも相手を見透かしてしまう目だ。だが、スズカは物怖じしない。真っ直ぐミューラの目を見て話している。

 「御望み通り力づくでもいいのだけれど、ここは海賊同士、取引と行きましょう」

 「取り引き?」

 「そう、お仕事の話です。こちらは先般からの話通りそちらが保護している人物の引き渡しが目的です。誰とは申しません。その方がお互いのためでしょう。先程の砲撃はいわばご挨拶。辺境海賊ギルドと事を構えるつもりはありません。身柄さえ渡していただければ私たちはすぐ引き払います。髑髏星の座標は知られてしまいましたが、重要犯罪人の身柄確保に協力したという事で、銀河帝国も今回はそれ以上関与しないでしょう」

 「すごい」

 やり取りを見つつグリューエルが呟いた。

 相手が嘘を言っているかを見抜く力がある彼女だったが、あのように心を凍らせてしまう眼光に耐えられる自信は無い。

 やり取りを見つつグリューエルが呟いた。先程からスズカはあの長命種の目を見て話をしている。ミューラの見透かす睨みをものともせずに。

 「それが私たちになんの利益があるのかい。担保が無いんじゃこれまでと何ら変わらないんだがねぇ。取り引きってのは、お互いにイーブンで成り立つモンだろ」

 ミューラは敢えて取り合おうとはしない。だが打ち切りもしない。確たるものを得るまで腹を探り合う。

 ミューラを見て、やっぱり美人と茉莉香は思った。以前会った時は妖艶な美しさを湛えており母と同じ年恰好に見えた――勿論梨理香さんの方が美人だが。いまのミューラはそれより若い。そうジェニー先輩と同年代に見える。でも自分に近い年頃とはいっても受ける貫禄が段違いだ。

 「でもスズカちゃんも素敵」

 そんなミューラに堂々と渡り合っている。

 「じゃあこうしたらどうでしょう。私たちと協定を結ぶのです」

 「そんなことが出来るのかい。アンタ達は帝国の使いっ走りだろ」

 「使い走りでも私達は軍には縛られない。帝国政府とは独立した存在、それが海賊です。違いますか? 海賊が独自で協定を結んでも政府が口を差し挟む立場にはない」

 「――話を聞こう。」

 「辺境海賊ギルドと対立状態にある銀河帝国第七艦隊は、スカルスターの掃討がお仕事のようですが、あなた方と私たちの間に不戦協定が結ばれたという事になれば、第七艦隊の進出を牽制できます。私掠船免状を押し頂く海賊は軍務に準じますから、戦力の同盟関係と見なされます。帝国領内での犯罪行為は内政って事で取り締まるでしょうが、これまでのように海賊だからという理由での掃討作戦は打てなくなる。この辺境宙域でのお仕事はやりやすくなるのでは。――いかがですか」

 スズカの提案を聞いたミューラの目がすうっと細くなり、口元に凄艶な笑みを浮かべる。

 「そこが落としどころのようねえ。それにしても、いい目をしてるわね貴方」

 「ついさっきまで、現役で戦争やってましたから」

 スズカもミューラに負けないほど凄みのある笑みを浮かべた。

 

 

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