元踏み台ですが?   作:偶数

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ドキドキ! すずかとデート? 中

「さて、宿題が終わったことだし、俺は行くよ」

 

 ノートと教科書、筆箱を鞄の中にしまい、凝り固まった肩と腰をほぐしてその場を後にしようとする。

 

「急ぎの用事でもあるの?」

「いや、ない」

「つまり、暇ってことだよね」

「まあ、必然的にそうなるな」

 

 すずかは俺の右手を取り、そして、ハキハキとした声色でこう告げる。

 

「なら、お買い物に付き合って」

 

 俺は少し放心状態に陥ったが、女の子からのお誘いは断ることが出来ない、二つ返事でわかった告げる。すずかは嬉しそうに輝くような笑顔を見せた。そんな姿に苦笑いが出てしまう。

 すずかも鞄の中に桜のしおりが挟まれた文庫本をしまい、早く行こうと手招きをする。やれやれと思いながらもスキップするように歩くすずかを追いながらあるく。もしかしたら傍から見ると彼氏と彼女に見えるかも知れないが、現実は非情である。彼女が俺に気がある筈がない。

 

 ◆◇◆◇

 

 情熱の赤、さわやかな青、活発な黄色、大人っぽい黒、子供っぽい水玉、100%を連想させるいちご柄、全部ブラジャーとパンツです、それも女性用の。

 俺は台風の暴風域が如く揺れ動く心をどうにか鎮静させ、平常心、理性、人間性を保つ。が、やはり男が女性物の下着を見てしまうとこんな風にいやらしい笑みが出てしまう。よく考えてみろ、ブラとパンティーなんて所詮は布きれ、人類が進化していく過程で恥じらい、つまりは羞恥心が生まれたおかげで誕生したものだ。そうだ、俺、所詮は布きれなんだ、だから、興奮するな、呼吸を荒くするな、平常心、龍崎一人、おまえは南極大陸のようにcoolな男だろうが!!

 

「月村すずかさん? 男性が入ってはいけないお店トップ10に入る女性下着屋さんに何故、ワタクシを??」

「最近、ブラがきつくて......」

 

 顔をトマトのように真っ赤に染め上げるすずかさん、可愛いと思うのだが、普通好きでもない男にそういうことを言うかね......この子もフェイトと同じくらい天然なのだろうか? フェイトが津軽海峡で水揚げされたブラックダイアモンド黒鮪なら、この子は北海道で水揚げされた天然鮭だな......

 

「で、俺はこの店で何をすればいいのだ? 男がこんな店に居ても意味ないだろ」

「あるよ」

「どんな?」

「選んで」

 

 頭の中の脳細胞が一斉に活動を停止する。いや、そんなことがあったら確実に死んでしまう。でも、それくらい彼女の小さなお口から放たれた一言がとてもショッキングだったということには変わりがない。もしかすると、この子はフェイト以上の逸材かもしれない。昔は毛嫌いしていた龍崎一人、つまり俺に自分の身に着けるもの、つまりは下着を選ばせる、狂ってる。俺、男だけど絶対に自分の下着は選ばせないね、だって、この子はこの下着を履いているんだと思われたくないもん! 男の俺でも選ばせたくないよ!!

 額に右の手の平を乗せ、

 

「月村、そういうのは本当に好きな人か、女友達に頼みましょうね......」

「つまり、友達だから大丈夫だよね?」

「何時から俺は女になったんだ......」

 

 すずかは少しムッとした表情になる。俺は溜息を一つ吐き出し、月村の目を約五秒眺める。ああ、これは絶対に引かないな、女ってのは変に意地があるから、男はそいうい女の意地に付き合わないといけないんだ。俺は「わかったよ」と、若干不貞腐れたような声で告げるが、すずかはありがとうと返してくれる。なんというか、フェイトとヴィータを足して二で割ったような扱い難さだわ......

 

「何色が良いんだ?」

「龍崎くんが選んでくれたらなんでも」

「そういうのがお母さん一番困るんだよね......」

 

 俺は手っ取り早く上下セットのコーナーに向かい、月村に似合いそう......な、下着を探してみる。すると落ち着いた青色の下着が目に付いた。サイズが小さいよう見えるが、そこは店員に彼女のサイズに合ったものがあるかどうかを確認すればいいだけだ。

 

「すいません」

 

 その一言でレジから一人の女性店員が風のように現われた。接客口調で「どうかいたしましたか?」と尋ねてくる。

 

「すいませんが、この下着、彼女に合うサイズありますかね?」

 

 青色の下着を指さすとサイズを測らせていいですかとテープメジャーを取り出す。すずかも顔を真っ赤にさせながらうんと頷く。恥ずかしいなら選ばせないなら良いのにと思ったことはお兄さんとの内緒だぞ。

 慣れた手つきで胸囲やその他もろもろを計る店員。やましい気持ちは一切ないのだが、顔を反らしてしまう。

 

「在庫を確認してきますね」

「すいませんが、それ以外にも彼女に合うサイズのものを少し持ってきてもらえませんか」

「かしこまりました」

 

 すずかがもうお嫁に行けないと顔面を真っ赤にして座り込んでいる。だから、恥ずかしいなら俺に選ばせるなよ......

 店員がまた颯爽と下着、すずかのサイズに合ったものを持ってくる。

 

「さっきの下着と彼女さんに合うサイズのものです」

 

 『彼女』その言葉に尚更顔を赤くする。もう今更だから否定はしないが、傍から見れば彼氏と彼女に見えるのだろう。一応、顔だけは前世と違って整っている。

 

「試着して来いよ、俺は外でゆっくりと黒い豆の搾り汁でも飲んでゆっくりしておくからさ」

 

 流石に試着した姿を見ることは出来ないと思い、女性下着屋から出ようとするが、服を掴まれる。

 

「まだ選んでもらってないよ」

「いや、選んだだろ?」

「一個だけだよ」

「まあ、そうだが......」

 

 無言の圧力、冷や汗が数滴流れ落ちる。

 この子、もう完全に開き直ってるよね? 見られても良いと思ってるよね......

 

「わ、わかりました......最後まで見届けましょう」

「うん!」

 

 店員さんの温かい目がとても痛い。

 すずかは試着室の中に入り、試着を開始する。

 頭が痛いよ、俺はこの子のお姉さんや恭也さんこんなところを見られたらどう返事をしたらいいのだろうか......いや、その前に首をちょん切られてしまいそうだ。

 思わず店の中を確認するが、すずかの親族は誰一人歩いていない。ほっと一息。

 ガラリと試着室のカーテンが開き、店の外に向いていた顔を試着室の前に向けてみると、俺の選んだ下着を着たすずかがいた。そりゃそうだ、試着しているのだもの。

 

「ど、どうかな......」

「似合ってるぜ、流石は俺が選んだ下着だ」

「声が震えてるよ?」

「女性の下着姿を見て即興で感想を述べられる男になりたいものだよ......でも、似合ってるのは確かだ」

 

 すずかは顔を真っ赤にして俯く。

 俺もバツが悪く頬っぺたを数回人差し指で掻く。

 下着選びを終えた後は、軽く食事をとって、男性が入っても許される場所で買い物をして一日を潰した。あとはすずかを家まで送り届けるだけだ。




 今回は完成度低いけど、次回は五千文字書くから許してください。

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