元踏み台ですが?   作:偶数

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 この作品のタグを見てください。つまりこの作品は地雷です。読み手を選び、グダグダの展開で酷く苛立ちを覚えさせます。だから、この作品、この物語の辿る道を知りたいという人はある程度の覚悟を持っていると信じています。至らぬ点が大量にある作品ですが、被害者を少しでも少なくするためにタグは大量に付けさせていただきました。つまり、この作品は地雷です。読まない方が精神衛生上良いと思います。それに、更新が非常に遅いですし、読みたいと思う人はイリイリとするでしょう。だから、つまり......

「僕の中二病小説を楽しみにしている、我慢が出来る人、楽しんでいってください!」
「僕の中二病小説を楽しみにしている、ツンデレさんも楽しんでください!」
「でも、新規の方々は少し敷居が高いですよ!」

 それだけです。

 あと、今回は時間が空いたので物凄く文章が汚いです。次回の『シグナム』までにはどうにかしておきますのでご了承してください。


アイリス 下

 最初から彼女は理解していた、この戦い、龍崎一人少年に勝利の光は射していないと......

 模擬戦をしている二人の少年、一人は悲しそうな瞳をした少年。一人は戦士のように鋭い瞳をした少年。前者がカズトで、後者が自分の本当のマスターになる少年。もし、この戦いにカズトが勝利したとしても、彼女は後者の少年の元に旅立たなければならない。だから、カズトの敗北、勝利したとしても敗北、すべてにおいて大敗しているのである。

 アイリスはただただ、無言で教え子の戦いを眺め続ける。自分が数年間の歳月を経て作り上げた芸術作品、無駄のない戦闘、まだ体に違和感が残っている筈なのにここまでの戦闘が出来るのは彼の才能か、それとも彼女の教えか、だが、これだけは言える――大敗が決まっている戦いでもカズトは善戦している。

 彼女の頬に一滴の涙が流れた。

 

「......最初の頃は軟弱者で、弱虫で、繊細で、才能の欠片もないあの子が――頑張ってるじゃない」

 

 頭の中に走馬灯が走る。

 まだ幼いカズトが自分をはじめて使った瞬間、

 はじめて魔力の扱い方を覚えた瞬間、

 はじめて魔力弾を撃った瞬間、

 自分の教えに従い実力を伸ばした日々、

 そして今日まで......

 

「カズト「ひかるくん!」頑張って!」

 

 ぬるりとアイリスの心に何か嫌なものが巡った。フェイトと高町なのはという少女の声が重なった、とても大きな声だ、戦っている二人にも伝わる程の声だ。汗流れる。戦っているカズト見たくない、見た瞬間にこの戦いの勝敗がわかるからだ、いや、最初から勝敗は決まっている。が、それでも、最初から最後まで負けているカズトに、この戦いくらいは勝利して欲しい、母親のような気持ちがある。目を瞑った、目を開いた瞬間に決まっている。怖かった、でも、目を開けなければ――

 カズトは泣いていた、流せるものはすべて流して泣いていた。まるでただ何かを悲しむ子供のように......

 

 ◆◇◆◇

 

 アイリスは心の折れたカズトの顔をとても悲しそうに見つめる。だが、カズトは笑うだけ、不適な笑みを垂れ流すだけ、こんな姿、一秒たりとも見たくない。それはこの少年の成長を見守った母のような気持ちが存在するからだ。

 

「ほんと、情けないわね......」

 

 アイリスは久しぶりにカズトに皮肉を投げつけた。だが、少年は笑みを浮かべるだけ、笑い続けるだけ、面白いわけじゃない、その逆、悲しいから笑っているのだ。心が折れているから笑えるのだ。彼女は泣きたくなった。

 そんな姿を見ている内に彼女の中に苛立ちのような感情が現われはじめる。それは自分というじゃじゃ馬を五分間しか使用することが出来ないという傷を負ったカズトでも、その五分間で近藤少年を倒すことは出来た筈、あの模擬戦、すべての条件を平等にし、それでも技量で勝っていた。それなら、彼の使用するデバイス、そして、自分を使用しても勝敗は見えていた、逆にこんな結末になる前にすべてが終わっていたかもしれない。そう考えると酷く怒りを覚える。

 

「なんで、私を使わなかったの? あの程度なら、五分でも倒せたでしょ......」

 

 少年は笑うことをやめた。そして、悟ったような表情になる。

 

「アイリス、俺はおまえのことが大好きだ。だから、おまえを悲しませたくなかった」

「なんで私が悲しむのよ?」

「なあ、わかってるだろ、知ってるだろ、俺じゃあもう、おまえを使いこなせない」

 

 ハッキリとした言葉だ、そして、アイリス、彼女もそのことは重々理解している。今の彼には、自分という傑作を使いこなす力はもう存在しない。存在したとしても、従来の何十分の一、彼は怖かったのだ、自分の師匠に、相棒に、アイリスに、弱った自分を悟られることを、知られることを...... 

 アイリスは喋ることをやめた。自分のマスターはどうしようもないくらい軟弱者で、女々しくて、自堕落で、諦めの悪い人間だったはず。それなのに、今の一人は共に戦った、共に語り合ったどの時よりも潔かった。それが彼女を傷付ける。まるで、自分が彼をこうしたかのような錯覚におちいる。それが我慢できなかった。叫びたかった。でも、アイリスは声をあげることが出来ない。何故なら、一人は心の中で泣いているのだから、泣き叫んでいるのだから。自分より――苦しんでいるのだから。

 

「......龍崎、体調はどうだ?」

 

 まるで悪いことをした子供のように病室の中に入ってくる近藤少年。カズトはその姿を見て、細く、「よお、負けちまったよ......」と告げた。近藤少年は困惑した、まるで彼が自分の知っている龍崎ではなく、もっと他の人間ではないのだろうかと錯覚したためである。だが、この場にいるのは、龍崎一人とデバイスのアイリスで間違えない。それがまた、近藤少年を困惑させるのだ。

 

「......アイリス、俺は全部知ったんだ、知ってたんだ」

「――!?」

 

 カズトの目を見た瞬間にアイリスは悟る、そして、『知った』の一言で確信に変わる。

 

「父さんの書斎を掃除してたとき、本棚にあった日記の中に色々と書いてた......」

「......」

「なあ、近藤、一つ頼まれごとをしてくれないか?」

 

 そうか、最初からカズトは知っていたのか、と、アイリスは考えた。自分との来る別れと自分の本来のマスターになるべき少年の存在を、と......

 

 ◆◇◆◇

 

 龍崎一人少年とは違い、近藤光という少年の存在は酷く綺麗で無垢な存在だと彼女は思った。幼い頃の龍崎一人という少年は野心にギラギラと心をたぎらせ、自分の望む未来を掴み取ろうとする人間だった。だが、この近藤光という少年はまるで川の流れに逆らわず、流れに沿って生きて行くうちにカズトが欲していたものをすべて手に入れている。簡単に説明すると何か不可思議な『流れ』のようなものが発生しているようにも思えた。

 

「何か困ったことがあったらすぐに言ってくれ」

「わかりました、マスター」

 

 カズトには絶対に言わなかった敬語、それを嫌味のように近藤少年に使う。カズトの隣にいた彼女を少なからず知っている近藤少年は少しだけ不信感を感じ、自分も彼と同じように気さくに話しかけてくれていいと言ってみるが、逆にそれが彼女の逆鱗に触れる。

 

「わたしが心を許す人間は龍崎一人だけです、貴方はただのマスター、わかります? わたしは貴方様に雇われているのです、平社員が社長に敬語を使わないなんてありえないでうしょう、それと同じですよ」

「......俺は龍崎と約束したんだ、だから!」

「黙れ......」

 

 彼女の中の何かが燃えた。

 

「約束、違うわ、彼は約束なんてしていない。借りた物を返しただけよ」

「どういう意味......?」

「それは――」

「今帰ったわ、光、元気にしてた?」

 

 近藤由紀子、すべての元凶が現われた。そして、あの日のように不適な笑みを浮かべ、アイリスを見つめる。そして、「あら、回収する前にやってきてくれたのね」と誰にも聞こえない声でそう告げた。彼女は近藤少年に部屋に戻りなさいと告げ、少年が部屋を出て行った瞬間に人払いの結界を張り、二人以外は侵入できない空間を作り出す。

 

「あの少年のおかげで色々とデータが取れたわ、出来損ないにしてはそこそこ育ったわね」

 

 アイリスは歯を食いしばる。が、彼女は笑みを崩さない。

 

「出来損ない? 貴方が育てている息子さんの方が出来損ないじゃないの」

「あの子は独学であれだけよ、良い師匠に巡り合ったら、あんな出来損ないを優に超えるわ」

「......」

「そんな顔しないで、わたしは冗談とお世辞が言えないタイプなの。出来損ないは出来損ないとしか思えない、言えない。その逆に良い物はとことん良い物だと評価するのよ」

 

 近藤博士は椅子に深く腰掛け、胸ポケットに入れられている煙草に火を灯し、一服だけしてそのまま灰皿に捨てるように置く。

 

「煙草はね、最初の一口だけが最高に美味しいのよ、それ以外はただの煙。世の中は要らないものはゴミだと思った方が楽なのよ」

「どういう意味?」

「貴方のお弟子さんにもう二度と会わないでちょうだい」

 

 アイリスが予想していた展開、だが、少しだけ動揺してしまう。

 

「何故?」

「まあ、死んだ龍崎博士への嫌がらせよ。わたしはあの人が殺したいくらい......いいえ、殺したくらい大嫌いだったから」

「......やはり、貴方が」

「ええ、彼が癌を治すナノマシン治療を行っていたがら殺すのは容易かったわ。病院の連中を買収するのも容易だったし」

 

 アイリスは博士に殴りかかろうとする、が、彼女の小さな拳では痛みすら感じない。ただ、笑顔を崩さないだけだ。

 

「わたしは、嫌いな人間は死んでも嫌いなの。そして、その人間を愛している人間も同じく大嫌いなのよ......」

 

 ◆◇◆◇

 

 近藤博士は研究室で溜息を一つ吐き出した。その理由は龍崎博士が引き取った個体の存在。最初は単なるデータの収集と出来損ないがどれだけ育つかという好奇心でアイリス、伝説の王の一人、義王のデバイスを出来損ないに渡し、どのようになるかを楽しんでいた。だが、結果は彼女の思う結果よりずれていた。

 

「......基礎スペックは光の方が上の筈。どんなに鍛練を積み重ねたとしても、才能の差が生まれるはずなのに」

 

 近藤光のデータと龍崎一人のデータを見比べる。すると頭一つ龍崎一人の方が優秀なのだ。彼女は困惑する、動物というものはそれぞれ個体の能力があり、その能力が高ければ高いほど優秀な人材になり、それが低ければ生きている価値もない人間になる。赤子の状態でその能力の値はある程度判別が出来ていた筈、それなのに、彼の実力はどの個体よりも上、コンピューターの計算でも、この少年が個体の中で一番の実力を持っていると算出される。

 

「これが人間の可能性というものなのかしら、とても興味深いわ......」

 

 彼女は歯を食いしばり、カズトの映像を睨み付ける。だが、映像は映像、それ以上でもそれ以下でもない。

 

「......でも、闇の書事件で魔力量が大幅に減少している。アイリスも取り上げた。殺すのは容易い」

 

 彼女はもう一度溜息を吐き出す。

 

「でも、彼には大きな後ろ盾が付いてしまった。あの組織を味方に付けるなんて、龍崎博士はどんな裏技を使ったのかしら......まあ、彼には息子を殺す力はもう存在しない......」

 

 だが、決着は付けなければいけないわよね、と、彼女は笑った。




 五十点! 愛してる! I♥五十点!!
 もう遠慮なんてしない!! どうせ五十点について怒られても、俺の作品は最初から最後まで五十点なんだ!! もう何にも怖くない......

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