......一億人殺し、俺が殺したのだろうか?
回らない頭を必死に回して、論を並べてみる。
そうだな、彼女の印象的な言葉を一つ一つ並べてみることにしよう。
まずはじめに『デイヴィッド』これは俺の名前の可能性がある。何故なら、デイヴィッド・マーカスという名前を思い出したからだ。つまり、この名前は俺の名前だという説が出てくる。だが、俺は日本人の筈だ。日本人がデイヴィッドという名前を付けられるのだろうか? その疑問点がこの説の信憑性を低くしているような気がする。
次に『パパをあんな風にした仇』これは俺が彼女の父親に危害を加えたということになる。だが、俺にはそんな記憶もないし、戦ったのなら、ある程度の外傷も残っているはずだ。それなのに、体に目立った外傷は見られない。これは仮設の状態だが、今現在の俺ではなく、未来の俺が彼女の父親に危害を加えたというものだ。
「つまり、この仮説が万が一正しかったら、そう、彼女は未来から来た?」
だが、彼女の言葉に俺を狙ったと思われる言葉が一つも入っていなかったことを考えると、俺を狙ってこの場所に現れたという説は消える。なら、何らかの偶然によってこの場所に現れて、俺という存在を発見した。これが一番考えられる説だと思う。通常なら、考えられない説の筈なのだが、オート戦闘と魔法のような何か、それを見てしまえば、この説に信憑性が出てくる。
残る印象的な言葉は『一億人殺し』これは信じられない。一億人という膨大な数を一人の人間が殺すことが出来るはずがない。もし、殺せたとしても、当然のごとく重症の一つや二つを負っている筈だ。だから、彼女の一億人殺しというセリフは狂言だと推測する。
「......この世界はどうなっているんだ?」
「あ、あの? 大丈夫ですか......」
「ん? 君は......空を飛んでいた......?」
オート戦闘が働かないということは、敵意がないのだろう。
なら、彼女が知っていそうな、ことを質問するのが先決か......。
「デイヴィッド、デイヴィッド・マーカスという人間の名前を知っているか?」
「で、デイヴィット? い、いえ、知りません」
反応を見る限り、彼女はデイヴィッドという人間を知らない。この少女も金髪の女性と同じような力を持っているのだ、なら、少なからず一億人もの人間が殺された事件を知らないはずがない。つまり、一億人殺しは狂言の可能性が増えた。だが、未来に起こると考えると、微粒子レベルだが、可能性は残されているかもしれない......。
「......すまない、変なことを聞いてしまい」
「い、いえ! 大丈夫ですよ。あの、お怪我は?」
「いや、大丈夫だ。君、さっきの女性のことを知っているか」
「いえ、何も......」
やはり、彼女の存在がよくわからない。仮説の段階では、彼女は未来からやってきた存在で、俺という存在、もしくは、未来の俺という存在に因縁がある。これが、今現在で一番信憑性を持っている仮説。悪言い方をすると、これ以外に有力な情報も無ければ、説もない。
だが、困った状況下だということは理解できた。オート戦闘がどれだけの効果を発揮するかわからない状態、そして、敵がウジャウジャと存在していて、一人の女性に命を狙われている。やはり、隠れ家が必要だ。
「あの、貴方は魔導師の方ですか?」
「魔導師? ああ、ナイフとか作ってたが、これは魔法の類なのか」
「もしかして、魔法をご存知じゃないんですか?」
すべての戦闘をオート戦闘でどうにかしていた。だから、作り出したナイフが何なのか、どういう風に出したのか、曖昧な状態で使用していた。だが、目の前に現れた少女は魔法という言葉を口にした。つまり、俺が作り出したものは全て魔法、オート戦闘も自己防衛的に繰り出された魔法。下手をすると、自分が死なないように魔法をかけられた可能性すらある。
「質問をしていいかい? 魔法の類には、魔法を使えない存在に魔法を使えるようにする魔法は存在するか?」
「えっ? デバイスを使用したら魔法を使えるようにはなりますが、見たところ、貴方はデバイスを持っていないようですし、元々から資質を持っていたのでは......」
彼女の手にしっかりと握られた杖のようなものがデバイスなのだろうか? まるで魔法少女だな、いや、魔法を使う少女が目の前にいるのだ、魔法少女以外の何物でもない。
「......すまないが、俺のことを保護してくれないか? どうにも、状況が理解できないが、俺は命を狙われているらしい。見たところ、君は何かの組織に所属しているようにみえる。なら、人一人を匿う程度のことは出来るだろ?」
「......はい、わかりました」
身の安全を手に入れることが先決だ。俺は、理解できないまま、死に至るなんてことはしたくない。
久しぶりに書いたらグダグダ本当に嫌になりますね、文章力向上に努めていきたいです。
活動報告で今後の方針を語っていきたいと思います。