絶対悪・暴虐のアジ=ダカーハ   作:悪事

2 / 22
絶対悪を掲げる者

世界には正義の味方が多数存在し、大半は裏で国家に援助されている。

国家から援助を受けている者は正式な正義の味方として活躍できる。

だが束縛を飼い慣らされることをよしとしない人々が存在している、

それは社会の秩序を乱すもの、悪と呼称されてきた。

しかし、そこにある怪物が出現したのだ。

自らを絶対悪と名乗りあげて、己の力のみで正義の味方や国家など、

悪の秘密結社もお構い無しに全てを滅ぼす龍。その名をアジ=ダカーハという。

 

 

 

 

「それでは調査結果を」

 

 

それは数人の年配の男女が座った円形のテーブル。

そこにいるものは正義の味方だった者たち、

引退をしてからは世界正義連盟の重役に就任した百戦錬磨の兵だった。

報告をする女性は一時期、正義の味方として活動していた経験を持つ。

今ではサポートに回っているが正義の味方として活躍していた、

国家資格持ちの正義の味方である。

 

 

 

「はい、では調査結果を秘密結社ヴィラン、ヴァイス、イービル、

カタストル、クライムは各地でのヒーローと戦闘を行っていますが、

幹部級の怪人は現れておらず、怪人討伐率は平均してみたところ

73%と高い数値を表しています」

 

 

「我々が聞きたいのは、そんなことではない

件の三頭龍の正体、所在地は特定できたのかね?」

 

 

「……………申し訳ありません。以前として発見には至らず、

次々と他の正義の味方を倒しており、被害は甚大なものです」

 

 

「これ以上の損害は我々正義の味方の沽券に関わる!

その討伐は急がねばならん!……あの三頭龍は己を悪と呼んでいた。

ならば我々が倒せない道理がどこにあろうか」

 

 

「その通りだとも、……そういえば君の教え子はとても優秀だったな」

 

 

「おお、ならば若い者に経験を積ませるのは急務であることだ、

その三頭龍の討伐、任せてみましょうか」

 

 

「ちょっとお待ちください、彼女たちはまだ未熟です!

此度の件は国家資格持ちの正義の味方に要請するべきでは!」

 

 

「何を申すか、幹部級の怪人を十人撃破したと報告があった。

君が後詰めで行けば首領級であろうと、決して討伐できない訳もなし」

 

 

「三頭龍はその能力が未知数で謎が多すぎます。

もしヤツに配下の怪人がいれば、三頭龍と闘っている間に攻撃され、

致命傷を負うほど命取りになります」

 

 

「君の言うことにも一理ある、ならば国家資格持ちの正義の味方と、

君を護衛につけることで手を打とう。

そして討伐の暁には国家資格を与えよう!」

 

ゴクッと生唾を呑んで心と頭を冷やす。

ここでのリスクとリターンを冷静に見つめていく。

 

 

「それは本当ですか、彼女たちの国家資格の取得は?」

 

 

「無論のこと、では三頭龍の出現時には君の教え子たちを、

戦闘に参加させることでよろしいか」

 

 

「…………………わかりました、必ずや三頭龍を撃破してみせます!」

 

 

その言葉を合図にしてこの会議は終わり部屋が闇に包まれる。

そこにいた女性は笑顔を浮かべて部屋を退出していった。

 

 

 

 

その女性は部屋を出て同じ建物にある図書室に向かった。

その図書室は何年も管理していないような放置された雰囲気を漂わす。

図書室の奥のそのまた奥、本の密林を潜り抜けて、

本棚の合間を滑るかのごとく歩き続ける。

そうして到着したのは本の入っていない本棚。

その本棚を軽く押した瞬間、本棚が横にスライドして扉が現れる。扉は暗証番号を打ち込む装置があり、パスワードを打ち込んだ。

そうして出現したエレベーターに乗る。

下の下に地下に降りていく、チーン、到着を知らせたベルの音を耳にするとエレベーターをおりる、そこは白い空間だった。

なんとも不思議な空間で椅子が3、4と、巨大なモニターに、壁には《正義にために世界のために》とデカデカと貼られた紙があった。

そう、これはいわゆる秘密基地といったモノだ。

 

 

「諸君!集まりたまえ!」

 

 

軍隊の上官の怒鳴り声を彷彿とさせる、雷のような大声。

それに反応して三人の少女たちが集まってくる。

 

 

「はい、教官。何のご用ですか?」

 

 

「きっとまた怪人が現れたのでしょう」

 

 

「私語は慎みなさい、教官の前よ」

 

 

「君たちには言わねばならんことがある。

静かに聞いてくれ、これは君たちの今後を左右する」

 

 

少女たちは先ほどの緩んだ空気を一秒で切り替えて、

教官と呼んだ女性の顔を見つめる。

 

 

「本日、元老会議で君たちにはある指令が下された。

それは巷で正義の味方、悪党どもを倒している怪人。

名はアジ=ダカーハ、これを発見次第、討伐せよとの指令だ」

 

 

「教官?確か、それは名高いジャスティス5を打ち破った、あの?」

 

 

「なんだよ~、びびってんの?」

 

 

「むしろ、慎重に行動するべきよ。

もう少し緊張感を持って教官の話を聞きなさい」

 

 

「今回の悪党は首領級の力を持つと断定、

諸君には私と国家資格持ちのサポートで討伐をしてもらう。

そして一番重要なのは、今回の件の活躍によっては、

君たち全員に国家資格の授与が行われる」

 

 

「「「国家資格!!!」」」

 

 

国家資格持ちの正義の味方は活躍に応じて、

国からの支援があり自分の身元を隠蔽も手伝ってくれるのだ。

ちなみに国家資格をもたない者は、壊したものを自費、もしくは自分の能力で直さないと訴えられることもあるのだ。

国家資格を持たないうちは、実質上ただのボランティアに等しい。

 

 

「やる気が出てきたーーー」

 

 

この元気な少女は皆川瑠璃。

正義の味方育成学校の一年で、先輩たちを越える力、勇気で、

本部にスカウトされた若き才媛である。

 

 

「落ち着きなさいよ」

 

 

こちらは城配朱里、とある企業の子女であり、

実力も確かな者と見込まれたエリートだ。

 

 

「よし、頑張ろう!」

 

 

こちらの背筋に筋を入れたような少女は南雲響。

ある日、突然、能力に目覚めたので訓練不足が悩ましいが、

才能はすさまじく未だ実力未知数のスーパールーキーだ。

 

 

 

「くれぐれも油断なきように、

下手をすれば町が一つ、消えかねない怪物なんだ。

私ともう一人もサポートするが、苦しい戦いとなるだろう。

それまで英気を養うように解散!」

 

 

「「「はい!教官!」」」

 

 

こうして少女たちは戦場に向かうのだ。

その先に地獄が待ち受けるとは露知らず。

英雄たちよ、刮目せよ。待ち受ける者こそは貴様らが目の敵とする至上の怨敵、悪の体現者、アジ=ダカーハなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の雑踏を静かに歩む男がいた、彼は周囲の注目など気にも止めずに街を歩く。その外見は見事としか言い表せない。

白く艶やかな髪、夕焼けを思わせる朱の瞳、

異国情緒の漂う褐色の肌、その相貌は映画スターのようだ。

だが、そこには王道を行く王のような威圧感が見てとれる。どこかの国の王族といえば信じるであろう、この青年こそがアジ=ダカーハなのだ。

 

 

「さて、どうしたものか?」

 

 

誰に問うこともなく、呟いた声は周囲を震わせた。

周りの大衆は見ていたいが、声をかけられないといった面持ちだ。

だが彼らは知らない、彼が世界の悪を背負った神であると。

 

 

 

 

 

 

気づいたらそうだった、訳のわからぬままに見たことも聞いたこともない世界に存在していた。俺はそんなモノを知らなかった。

覚えているのは自分がもっと取るに足りない゛ただの人間゛だったと言うことだけで、こんな特撮やアニメの世界、俺は知らなかった。

だが俺はここにいる、それだけはまごうことなき真実だ。

そしてあるものを背負っている。

それは悪だ、いわゆる人類悪と呼ばれるモノ。

ただの人間にこんなモノは背負いきれないと叫び、逃げ出したかった。

だが今の自分にそんな無様な真似が許される訳がない。

この世界にやってきてから絶えることなく頭に見知らぬ映像が浮かぶ。

それは自分がある国の王になってすばらしい政治を行っているイメージ。ただ毎日、毎日、毎日、国を安定して治めるルーチンワーク。

ある日、一人で休みをとっていた時に俺は、いやこの映像の男、ザッハークはある少女と出会ったのだ、外見は美しいといえるが、少女からは形容できず名状しがたい異形の気配を出して俺をみていた。王は城に侵入されたと思われる賊と予想される怪しげな少女に向かって、怒鳴るように何者かと問いかけた。

 

 

「貴様は何者だ!」 「…………………悪」

 

 

何者かという問いに対して、人物名ではない答えを返した。その答えは少女とは思えない、恐ろしいまでの覚悟の籠められた一言。言葉を発した瞬間を引き金に激痛が頭の内部を侵す、例えるなら脳髄に焼けて液体となった鉄が注ぎ込まれたような痛み。王は疑問の声と共に痛みによる絶叫をした。

 

 

「何を言って………あ、あぎ…ぎぃぃ!がぁぁーーー!!」

 

 

その瞬間にザッハークはこの世の中に起きる全ての悪を見た。

全ての不条理を見た、地獄を見た。

その果ての人類の終焉を見た、知ってしまった。

理解した瞬間に自分の前に立つ少女の正体がわかった。

この森羅万象、あまねく世界の悪業を背負った、その名前。

悪を想うその名を………………悪神、アンリ・マユ。

自身が宗主と仰ぐに相応しき者だった。

次の日に俺は罪人を裁いた、今までならばその罪に応じた労働によって償わせるといったものだが、男はその日、始めて死刑を言い渡した。

罪人は女と子供を殺した男で反省もしていたが、その判決を聞くや否や王に赦しを請いだした、周りの宰相、文官は初の死罪にどよめいたが、その命令に従って刑を執行した。

王は刑罰を執行された男の亡骸を抱いて泣いた。どんなすばらしい国の中でも罪を犯す者がいることに、人類のあまりの罪深さに、王は泣いた。

そして王は数日間、自身の寝室で考えぬいた。

王は部屋から出ると、仕事を始めた。

表面上は何も変わってなどいなかった。

王は罪人を死刑とするようになった、罪人の数は減ったかのように見えた。しかし罪人が減ったのは一時で、今度は増え始めたのだ。

王は嘆き悲しんだ、そして最悪のおぞましい行為を行った。

それは罪人を理解するべく、悪人の脳髄を咀嚼した。

食らい、喰らい、王は人々から恐れられた。

そうしていくうちに王は人から外れていった。

美しい褐色の肌には鱗が生え、優美な指先は触れるモノの全てを傷つける鋭利な爪に尖り、民に愛を伝えた口は何もかもを飲み干す大顎を開いた。

肩からは蛇が生え頭蓋は三つに別れそれぞれが醜悪、かつ凶悪な龍となった。

その姿からはかつての面影は欠片も存在しない。

だが後悔はなかった。

勇敢な男が逃げ出す面構え、清純な乙女が悲鳴をあげる威圧感。

そして彼は悪となった、悪神アジ=ダカーハと呼ばれる怪物に。

それでも構わなかった、己の目的を果たすためには、己が人類の試練と脅威となる必要があったため、……………その目的とは人類の存命。

不可避の滅びの運命を覆すために、悪となった、成り果てた。

戦い、闘って、争って、虐げて、蹂躙して、悪を貫き続けた。

何時か未来に現れるだろう英傑を待ち続け、幾星霜と戦った。

だが己を封印するほどの猛者には会えど、

己を討ち滅ぼす者はついぞ現れなかった。

そこで見えるのは恋い焦がれた女の涙だった。

己の宿命に立ち向かい、血まみれの手で顔を隠した女。

龍は問いをした。『何が悲しいのか』と。

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 

 

その問いかけの答えを、龍は、自分は決して忘れない。

その涙を拭うため、彼女をその宿業から解き放つため。

龍は戦って、戦って、戦い続けたのだ。

 

 

そんなモノを見せ続けられたのだ、俺はその意思を継ぐと誓いをたてた。人類の誰より人類のことを考えてくれた神様に一欠片でも報いるため、借りを返すために、ザッハークと呼ばれた人でも、アジ=ダカーハと恐れられた悪神でもない俺は絶対悪を背負った。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

そういった事情で自分はアジ=ダカーハとなった?

いや正式にはなっていない、まだ俺が人間形態になれることが、

その証明だ、俺がアジ=ダカーハとなるにはまだ何かが足りないのだろう、その何かは人里離れた場所にいても見つかる訳ではない。

故に俺は人間の営みを眺め、正義の味方、悪の秘密結社を見ている。

ようするにアジ=ダカーハの見習いといったところだ。

しかし、そうしていたら様々な事が起こる。

正義の味方が起こす行動に怒りを覚える、正義に酔った愚か者が検討外れな暴論をさも正しいかのごとく撒き散らす、許せるはずもない。

悪の秘密結社もそうだ、己の悪を関係のない者たちに振るい、何の覚悟もせずに悪を名乗り傍若無人に振る舞うその罪深さ。

俺は今のところ、すごい立場にいる。

正義の味方は俺を国際指名手配して正義の味方を次々と差し向けてくる。しかもその大半は正義を大した信念も持たずに振るう者ばかり。

悪の秘密結社は何を考えたか俺をスカウトする始末、絶対悪に味方はいない。何故なら悪の御旗は万人の、不倶戴天の敵だからであって、どこかの勢力につくことなどするわけもない。なのにスカウトしては八つ裂きにし、勧誘を殺そうとするも逃げ足の早い幹部クラスを使って繰り返しスカウトする根性の入った組織も存在する。この場合は呆れるべきなんだが、諦めないことだけは評価する。

 

 

「この街は、一段とでかいんだな」

 

 

「はい、絶好の破壊日和でありますね、閣下」

 

 

「…………………」噂をすれば影とは良く言ったモノだ。

 

 

「閣下、それでこの度は私どもの組織も協力し、

この街を灰塵にしようかと思っておりまして」

 

 

「何故、居場所を、いや貴様、何故にここにいる?」

 

 

「それは閣下を愛しているからにございます、

そしてあわよくば閣下には我らが結社に入っていただきたく」

 

 

「失せろ」 「まあ、閣下。女性にそんな冷酷な言葉を投げるなんて」

 

 

「どうした、まさか傷ついたなどと妄言を吐く気か?」

 

 

「いえ、その冷酷さに濡れてしまいます」

 

 

「死ね」

 

 

この少女は幼いながら組織の幹部で空間移動を得意とする面倒なヤツだ。

何度殺そうとしても空間移動で逃亡するのでキリがない。

本腰をいれれば逃げた空間ごと消し飛ばせるが、

そこまでの労力を使って殺すほどの存在でもない。

というか天下のアジ=ダカーハがそんな無様をさらす訳がない。

何より街を見物、観察するのが今日の目的だ。

ここで攻撃すれば、街の大衆どもは大騒ぎのパニック状態、

少女を始末するのは後でも、できると放置することにした。

 

 

「お待ちなさい!そこの駄目蜥蜴!」

 

 

この高飛車な声は聞き覚えがある。

というか足をそんなブルッブルッ震わせる位なら、そんな啖呵を切るんじゃねーよと言ってやりたいが、この肌の白い女性は見覚えがある。

なんか自分を誇り高きヴァンパイアとか言って、

俺を上から目線でスカウトしようとした女。

 

回想中ーーーー

 

「あなたのような蜥蜴に、こんな名誉なことはありませんわよ。

この私達、ヴァンパイアの配下となることを、

許してさしあげましょう」

 

 

『フム、失せろ』龍影で一蹴してただの肉片にした。

 

 

 

回想終了ーーーー

 

 

「おい、面倒だ。貴様ら今すぐ消えろ」

 

 

「閣下の機嫌が悪くなったぞ、

おい、血吸いコウモリ。とっとと失せろ」

 

 

「まあ、それは野蛮なそちらでしょう。

この蜥蜴は私とお茶をするのです、邪魔をしないでくれない?

でないと、ここでミイラにするわよ」

 

 

 

黒の魔力とコウモリの群れが周りに漂い、

殺意が交差して周囲の人間もおかしいと気づき始めた。

中には警察や正義の味方に電話する者まで現れた。

 

 

「おい、場所を変える。ついてこい」

 

 

「え、閣下からお誘いを?

………………………了解しました!」

 

 

 

「え?え?ちょっとお待ちなさーい!」

 

 

 

面倒なやつらに絡まれたと後悔しながらも、

適当なデパートの中に入り、喫茶店でコーヒーを注文をした。

 

 

 

「閣下!では私どもの組織にぜひおこしください!

待遇は最初に幹部からで、功績によっては給与も増やせると!」

 

 

「な、こちらだって負けていませんわ!

こちらは最高の食事や財宝など………あと貴方が望むなら、

最高の女性でもなんでも…………その……私が…」

 

 

「閣下がそんなモノで釣られるとでも!ちゃんちゃら、おかしい!」

 

 

「貴方とて、同じようなものでしょう!」

 

 

「少し黙れ、何のために場所を変えたと思っている」

 

 

場所を変えても騒がしい二人を睨んでいると、

次の瞬間にデパートのスピーカーから、

衝撃の、はたまた驚愕の事実が告げられる。

 

 

 

『このビルは我々、ラグナロックが占拠した!

諸君は人質である!大人しくしていろ!』

 

 

 

少し落ち着こうとしたデパートでこんな目に会うとは、

アジ=ダカーハとなった男の日常は混沌と化していた。

 

 

 

さてこの魔王の物語の末に訪れるモノとは何なのか?

序章の物語は開演いたしました、それではお楽しみあれ。

 

 

 




この作品のアジ=ダカーハって、
カット、カット言ってる某吸血ピアニストに似てる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。