人間時にはアジ=ダカーハではなくザッハークと記します。
アジ=ダカーハの活躍がみたい方はしばしお待ちください。
でも、ザッハーク状態でも面白いと思います。
暗躍中の閣下にご期待ください。
2020年現在は正義の味方と悪の組織が存在するという、
過去では信じられないことが、この現代では常識として成り立っている。
正義の味方は、悪を退治することや、その被害の補填を主な業務とする。
一方、悪の秘密結社のすることといえば、何なのだろうか?
それは悪いことだろう、と言われるのがオチだが。
詳しく説明すると、正義の味方とは違い、業務の量が尋常ではない。
まず、一般戦闘員の福利厚生、幹部には特殊手当ての給与を、
首領は組織全体を考え続けないといけないし、
正義の味方の情報収集、襲撃地点の下調べ、特殊な機材の発明、
金利関係の問題、怪人として有望な者の勧誘などと、
その業務は多岐に渡り、常に社会に悪として挑み続けている。
「閣下、と言うわけで是非とも、我らの組織に」
「何が゛と言うわけだ゛だ。
何度誘おうが、私にはその気はない。諦めろ」
「ああ、なんてカリスマ。これならば幹部ではなく次期首領にも」
青年の額に青筋が刻まれる、手は怒りを示すように強く、強く握る。
そう、ここにいるのは黒の女性スーツを着た妙齢の女性……ではなく、
黒のパーカーを着た、幼げなメガネ少女だ。
この占拠されたデパートの喫茶店、そのテーブルの上座にいるのは、
うんざりしたような面持ちながら、万人の眼を惹く青年。
肌はエキゾチックな褐色、瞳は真紅、髪は艶やかな白。
溢れ出るオーラは、万人を平伏させうる覇者の威圧感。
その顔だちは、名高き芸術家が丹念に作り上げたようだ。
彼は、呆れたように喋る。
「………死ぬか?」
「まぁ、なんて冷徹なことを。
そんなことを言ったら、惚れてしまいますよ」
「はっ、下らん」
「それより、これからどういたしますの?
このデパートは占拠されているのよ。
早くしないと正義の味方どもが来てしまうわ。
どこの結社か、わからないけど。さっさと終わらせましょう」
ここで提案をしてきたのは吸血鬼や人狼などの怪異が、
多数所属する組織の幹部である色白な少女だ。
ちなみに彼女の種族は吸血鬼である。
「ふん、まさか閣下と私が正義の味方ごときに恐れをなすと?
臆病な貴様はさっさと尻尾を巻いて逃げるがいい」
「がぁーーー言いましたわね!
別に怯えているのではなく、
私達、幹部は無許可の戦闘が禁止されているからです!」
「言い訳はご立派なことで」
「ほぅ、貴女は死にたいと言うのですね?
いいでしょう、奈落までお送りして差し上げるわ」
すると占拠犯の一人が大声を出して、威嚇してくる。
だが、この場に限ってはそれは失策、間違いの類いだ。
「貴様らぁ!何を話してやがる、死にてぇのか!」
「「黙ってろーーー」」
黒い魔力の塊とコウモリの大群が怒鳴った男を襲う。
「んギャーーー」男は一瞬で物言わぬ骸に早変わり。
「運がなかったな、まぁ来世ではもう少しマシな生をおくるがいい」
「それで閣下はこれからどうするので?」
「この騒動を終わらせる、それだけだ」
「手伝ってもよろしくてよ」「お供しましょう」
意図せずして二人の言がハモってしまう。
彼女らは人を睨み殺せそうな眼でメンチを切っている。
青年は、それに眼もくれずに喫茶店を出ていく。
「閣下、お待ちを」「待ちなさい!馬鹿蜥蜴!」
「閣下でも蜥蜴でもない。人間状態の時はザッハークと呼べ」
「とうとう、閣下がでr、いやザッハーク様がデレた!」
「まぁ、その、貴方がどうしても、と言うのなら考えてあげなくも」
「…………付き合ってられん、私はもう行くぞ」
レジの怯えきった店員に三人分の金を渡して喫茶店を出ていく。
「あ、ザッハーク様。私は五十鈴玲香です。
幹部名はアルカナ・ハーミットと申します。
支障がなければ玲香とお呼びください」
「知るか、それよりこの騒動を手早く終わらせる」
「お待ちなさい!私はサーシュア・ブラッド。
サーシャと呼びなさい。
蜥蜴、名を呼んで欲しいのなら、それなりの態度というものがあるのではないかしら?さぁ、名前を呼んでくださいと懇願なさい」
その時、青年の足元の影が、まるで首をもたげた蛇のように動く。
その影は音速を容易く超越し、槍のごとく直進する。
空気の壁を引き裂いて、シュッと音が僅かに遅れて聞こえる。
幾つもの影の槍はサーシャを貫いて、粉微塵にした。
「お見事です、ザッハーク様。
では邪魔なコウモリも消えたことですし、
私たちは、このデパートの組織を「何を言っている?邪魔なのは貴様もだ。疾く失せろ。目障りだ」
同じように影が黒の少女を貫ぬこうと神速で迫る。
少女はなすすべもなく貫かれる、そうでなければおかしい。
だが、少女を影の槍が貫通しようとした瞬間に、
少女が煙か、霞みのように消える。これぞ、正しく雲散霧消。
「ちっ」 舌打ちをして占拠され敵が何処から来るのか、わからないデパートを普通の買い物客のごとく歩く。
「ザッハーク様、では参りましょうか」
しれっと自分の背後に瞬間移動した玲香が気安く話しかける。
面倒だが、放っておいても問題ない。
「ちょっと、殺すのならもっと綺麗にヤってくれません!」
粉微塵にしたにも関わらず既に元に戻っている少女は、
自身を殺したことより殺し方に文句を言ってくる。
まぁ、そんなことはどうでもいい、それより今日の人類観察の邪魔をした目障りな占拠の犯人には相応の罰を刻まなくては気が済まない。
まずは主犯格を探さなければならない。
手当たり次第に探すのもいいが、手間がいる上に時間もかかる。
ならば、ここで魔術を使用する。
手で印を結び、自身の体内に荒れ狂うチカラを術式に変換する。
使うのは物見の魔術で、即座に視点が変わる。
大気圏から地表に近付き、近づき、近づき、デパートの上空に、
屋上には戦闘員と、主犯格と見える爬虫類の怪人がいる。
自分は龍であって、正確には爬虫類ではないが不愉快には違いない。
さて犯人グループは屋上にいるとわかった。
ここから行うのは、ただの圧倒的な蹂躙の時間だ。
口元を微妙に歪ませて、デパートを征く。
服装品、靴、帽子、そういった物が売られるデパートの4階。
このデパートは地下に1階、地表部分には5階まであってエレベーターは使用不可で現状では徒歩で屋上まで行かねばならない。
といっても屋上まではあと2階上がればいいだけの話だ。
このフロアには怯えきって震えているデパートの客。
そして、この4階の屋上に続く階段前には、
ホッケーマスクやひょっとこのお面を着けた仮装、いやコスプレ?
とにかく占拠犯の仲間らしきものがいた。
「ザッハーク様、では私が行ってきて蹴散らしてきましょう」
「いいえ、この私が吸いつくしてきてあげましょう」
「要らん、下がってろ」
ザッハークは、数人の仮装集団の方向に歩いていく。
すると、その集団は近づく存在に気づいたのか、
殺気だって、こちらに銃口を向けてくる。
「おい、止まれ!貴様それ以上近づくな!」
銃を向けて怒鳴る男を無視して、己の権能の一つに接続する。
《千の魔術(サウザンド・マギア)に接続》
アジ=ダカーハは千の魔術を使いこなすと伝承にある。
それは正しい、が正確ではない。
古代では魔術は叡智ということだったのだ。
それは医学、化学、心理学、錬金術、魔術など、
人から生まれた知識ならば過去、未来を問わずに理解、習得ができる。
そこで疑問になるのが、原作のアジ=ダカーハが攻撃系統の魔術を使わなかったのは何故なのだろうか?
それは至極簡単なことだ、例えば人間が車より早く動ければ人間は車を作らなかっただろう。アジ=ダカーハにとっては魔術の攻撃より自身の素手のほうが効率がいいのだ。
魔術は攻撃手段よりサポート方面で使ったほうが効率がいい。
では、ここで彼が取得した知識とは何のことか?
それは白兵戦闘の知識だ。
元々の彼はただの一般市民であって、絶対悪たるアジ=ダカーハの過去を見せられこそすれ、その経験を完璧にトレースできる道理はない。
自身には欠けているものが多すぎる。絶対悪を背負う覚悟、英傑を見定める審美眼、戦闘経験、死に対する恐怖、もしも、今の自分が本家本元のアジ=ダカーハと戦えば直ぐ様メッキが剥がれるだろう。
それでも俺はあの絶対悪に並ぶと誓ったのだ。
そのためには経験が要る、これはいわゆる経験値稼ぎというやつだ。
別世界の旧全能の雷神も経験値を求めてた、避けては通れない道順。
ーー検索完了ーー
接近して八極拳による対処を選択。
よって八極拳の知識をインストール。
武術というモノも広義的な解釈、分析をするならば立派な学問である。
求めるモノが人間の殺傷、もしくは損傷を与えるのを目的とするだけ。
アジ=ダカーハの権能の《千の魔術》にこれが含まれているのは、
まぁ、言ってみれば当然というものだ。
ーーインストール完了ーー
ーー動作想定完了ーー
デパートの床を踏み砕かんと言わんばかりに、
強く、強く踏み込む震脚を行い、前へと電光石火のごとく進む。
それは人類の反射速度を超越した速度で突っ込んでいく。
しかし、相手も黙ってやられるわけはなし。
一瞬遅れはしたが、それでも弾かれたように銃の引き金を引く。
バババババババババ、銃の乱射が襲いかかる。
常人ならばそこでジ・エンドだろうが、
あいにくと、こちらは曲がりなりにも世界の悪を背負った悪神。
この体の質量は恒星級なのだ、銃弾などで体を傷つけられるはずなどない。(ちなみに質量は重量とは異なるが密接に繋がっている概念だ、恒星級の質量で動いて地球は大丈夫なのかと疑問が出るが、そこで魔術を使用してやりくりしているのだ。そういう面倒なことをアジ=ダカーハがするとは信じられないが絶対悪の真の目的は悪=己の討滅によっての人類の存続だ。この程度の手間は惜しんで人類滅亡でもすれば洒落にならない)
腕の届く範囲それは八極の領域。
接近すると近場にいた男の鳩尾へ肘打を叩き込む。
そのまま慣性を消すことなく重心をぐるっと回す。
回転することで得た遠心力を用いて裏拳を次の人間に、
周りの男たちは同士討ち、誤射を恐れて銃を使うことができない。
その迷いは3秒弱、だが直ぐに白兵戦に移ろうとするが、
もう遅い、拳にひねりを加えて打ち込む。
その技の名称は崩拳、攻撃された男は臓腑をグシャグシャにして、
10メートルほど吹き飛ばす。
「イヤァァァ」 「キャァァァァ」
男が吹き飛ばされたことにうずくまっていた一般客は悲鳴をあげる。
「舐めんなーーー」仲間を次々と倒された男たちは大声をあげることによって、自分自身を叱咤激励する。
それでも悲しいことに実力の差は歴然だ。
ザッハークが震脚を踏み込む、それは一撃の威力を極限まで高め放つ発勁の予備動作、それに気づかない男たちはナイフを持って斬りかかる。
次の瞬間、射程内に入った男たち一人一人に一撃を射つ。
最初の人間には鼻の下、口の上の急所である人中に、次の男には顎へ肘で一撃、最後の者には互いの息の届く範囲へ、この距離では肘も拳も当てられない。そこで打ったのは肩による、いわば体当たりだ。だが、ただの体当たりではなくどんな防御も打ち崩す技、その名を鉄山靠。
「行くぞ」 「「へっ?」」
ここまでにかかった時間はおおよそ3、4秒。
そして相手に与えたのは一撃のみ、彼女らが疑問に思うのも当然だ。
「あのザッハーク様?こいつらはどうするんですか?」
「そうです!まさか手加減でもしたと?
そんな偽善者のような真似をするなんて見損ないましたわ!」
「たわけ、一撃だ。
一撃で済ましたのだから二の打ちは要らん」
その言葉に反応して男を見る、
外から見れば傷などついていないように見える。
だが、近くにいけば誰一人として呼吸をしていない。
全員が全員、息絶えていた。
「……………ザッハーク様は武術にもお詳しいのですね」
「ふふん、それくらいできなくてはむしろ期待はずれというものですわ。
その実力、私の元で役立てなさい!」
無言で龍影を使って八つ裂き、十六分割。
もはや、悲鳴をあげる暇さえ与えようとしない。
「…………煩わしい」
苛立ちを隠そうともせず、屋上への階段を昇る。
途中に数人の警備がいたが、それらに連絡すら許さずに撃破する。
屋上まであっという間に辿り着く。
「ちょっと、殺るならせめて原型を残してくれません!」
「というより貴方、本当に頑丈ですね。
さすが回復馬鹿」
「回復に特化しているとはいえ、攻撃のほうも幹部級なのです。
一度、喰らって試してみますか?」
「ほう?回避特化の私にその貧弱な攻撃を当てられると?
貴方では私の影にすら届かない」
「黙っていられんのか、貴様ら」
ズドーン!…………何かが爆発でもしたような轟音が聞こえる。
何事かと、気になって屋上の扉を開けて、
屋上に到着すると倒れ伏す戦闘員、呆然とした怪人。
鎌、銃、サーベルを持つドレスを纏った三人の少女がそこにはいた。
わけがわからん。
SIDE OUT
視点を切り換えて
「ねぇ、今日はこれからどうする~~」
「どうするも何も教官は休めと言ったのよ。
帰って睡眠をとって、訓練でもしてなさい」
「朱里ちゃん、教官は英気を養えって言ってたよ。
だったら、これから遊びに行かない?」
「ちょっと響、貴方は自分が正義の味方候補生ということを理解してる?養成学校の中でも私たちは一握りのエリートなのよ。それでも悪党たちを倒すのには危険が伴うわ。その自覚を持って日々の行動の細部まで神経を巡らせていないといけないの」
「むー、話が難しいよ~」
「響は途中編入だからね~、ある程度は仕方ないっか」
「その通り、瑠璃ちゃんの言う通りなんだよ!」
この南雲響は他の正義の味方養成学校の生徒とは異なることがある。
他の候補生は生まれながらに持った固有能力を試験で証明し、
数多くの戦闘訓練、座学を突破してやっと世界正義連盟の本部に立ち入りを許可されるのだ。しかし南雲響は普通の学生だった。ある日遊園地へ行っていた彼女は、とある悪の秘密結社に家族を襲われかけるがその時彼女の中の能力に目覚めて幹部級の怪人を何とか撃退したのだ。撃退したはいいが相討ちで病院に搬送され、目が覚めると正義の味方養成学校に強制編入が決定していたのだ。
響も初めは戸惑っていたが次第に正義の味方としての覚悟を決めて、
悪と戦うことを決意したのだ。
「………わかったわ、でも遊ぶっていってもどうするの」
この辺りには遊べるような建物は大手デパートくらいなモノだ。
城配朱里はたびたび買い物で行ってはいるが、
あのデパートに遊べるような場所は存在しない。
昨今のデパートには珍しいことにゲームセンターすらないのだ。
「お買いものだよ!洋服を買って見せあいっこしよう!」
「別に洋服にこだわる理由はないんだけど、
それは遊ぶっていうことになるの?」
「ええ!朱里ちゃん友達とお買いものに行ったことないの!」
「別に、服なんて買いにいってもらえばいいじゃない」
「…………瑠璃ちゃん、もしかして朱里ちゃんって」
「うん、朱里って訓練とかしか頭にないから、
あと家がお金持ちだから、こういうのって経験値不足なんだと思う」
「ちょっと?何をこそこそ話しているのよ」
「何でもないよ!さぁ行こう!」
「そうそう!早く行こう!」
「……………おかしな二人、まぁいいわ。
付き合ってあげることにしましょう」
そうして誰もが振り向く美少女三人組はデパートへ向かった。
そうするとデパートの前が人だかりで混雑、いや混乱している。
どうかしたのかと思って前に進もうとするが進めない。
「通してくださ~い」「すいません、通らせて」
「はわわわぁぁぁ」
そうした努力は報われることなく逆に人混みに弾かれて、
拒まれて、もみくちゃにされ疲労困憊する。
すると三人組の携帯にメールが送られる。
それは特殊なメールで、指紋認証をしないと開けることのできない代物。だがこのメールがきたということは、すなわち事件の証だ。
《近隣デパートが悪の秘密結社ラグナロックが占拠》
という様な内容が書かれていて、手の空いている正義の味方は急行しろといったことが書かれていた。
「なるほどね、でどうする?
教官からは英気を養えって言われていたけど」
「わかりきったことを聞かないで、ちょうだい」
「困っている人を見捨てるなんてできないよ!」
「だよね!じゃあ行こっか!」
三人組は人の通りそうもない路地裏に向かう。
路地裏は誰も通る気配がない。
さて、これでようやく準備は整った。
少女たちは瞳を決意で燃え上がらせて叫んだ。
「「「変身!」」」
すると周辺が虹色の光で覆われた、そのカラフルな光は大いなる慈しみを含んでいて安らぎを感じさせる。
そして七色の優しい光が少女たちを包んでいく。
光が体を覆い、布に変わっていく、フリルやレース、布だけではなくサファイア、ルビー、エメラルドと宝石にも変わった、物理学者がいればあり得ない!と絶叫する光景だが、これぞ物理法則にしばられぬ正義の味方。
光が消えていくとそこには赤、青、緑を基調としたドレスを着る美少女たちが佇んでいた。ただドレスを着ているなら、まだいいが(それだって充分に変なことだがツッコミは無しにしてもらおう)あまりに物騒なモノを持っていた。
それはキラリと金属特有の煌めきを放っていて柄のところにルビーがある、どんな物も両断できそうな大鎌、また別のはサファイアの埋め込まれた青く光を放つ銃、最後に刀身が緑色という現実的に考えてあり得ないエメラルドの嵌め込まれたサーベル、おかしさを感じるがこの世界ではツッコミが存在しない。
なんといっても正義の味方が実在する世界なのだから。
ドレスを着た少女たちは路地裏から軽く飛び上がる、しかし、それは地上を遠く、遠く離れ空に手が届くかと思わせるくらいに、飛んでいく。
ビルの高さを越えたところで今度はビルに向かって急降下を決行する。
ビルには怪人、戦闘員に襲われている一般人が大勢いた。
ならば戦闘員たちの集中している地点を着地点に決める。
空から昼間にも関わらず流れ星のように、
光の跡を描いて、ここに正義の味方は現れる。
ズドーンと大きな音を出して着地の衝撃で戦闘員たちを吹き飛ばした。それは人々の希望を背負った者、救いの体現者、真打ちの登場だ。
満を辞して彼女らは、ここに名乗りをあげた。
「「「ウィッチ・トリニティ、ここに参上!」」」
器用なことに衝撃は戦闘員だけにしか、影響していない。
一般人たちは無事のようだ。怪人は、いきなりすぎて状況を飲み下せずに呆然とするばかり、彼女らは眼前の敵を睨んで戦闘体制に入った。
SIDE OUT
赤の薙ぎ払いが、青の銃弾が、緑の斬撃が怪人に迫る。
それを紙一重でなんとか避ける爬虫類型の怪人。
それでも時間の経過と共に僅かな裂傷が刻まれていく。
「ガァァ、貴様らぁぁ舐めるなよーーー
このラグナロックの名を持った一員として、ここに立っているのだ!
ただただ敗北するなどできるかぁぁぁ」
「関係のない人を巻き込んでるようなヤツに負けるかぁぁ」
「悪はさっさと滅びなさい!」
「こっちは正義を掲げてるのよ、悪が勝てる訳ないでしょう!」
「何故、わからない!世界は終焉を迎えようとしているのだ。
お前ら正義もただの人間もこの世界を貪ってきた!
これは当然の帰結に過ぎないだろうがぁぁぁ」
「「「わかってたまるかぁぁぁぁぁ」」」
それでも数の差は明確な差だ。
個人個人では、彼女らは怪人と同等の実力でしかない。
しかし、コンビネーションを決めることでその差を無くし、
いや、むしろ怪人を越えている。
そして、それを遠くから見ているのは怪人とは比較にならない三人組、
二人は幹部級の怪人で中々の強者。
一人に関してはそれを遥かに上回っているくらいだ。
彼らは呑気にも観戦し感想を言っていた。
「あの怪人も多少はやるようですが、
あの正義の味方の方が上回っていますね」
「あの程度の連中に手間取るなど、なんと惰弱なのでしょう」
「…………………………」
「あ、腕を斬られた。そろそろ終わりですかね」
「でしょうね、まぁ順当といったところでしょう」
「あのドレスの奴等は、ここで仕留められますかね?」
「資格持ちでは無さそう、それなら意味が無いですわ、
仕留めたところで何の足しにもならないでしょう」
「………………」
「「…………………………」」
「あのザッハーク様?」
「蜥蜴、どうしたのです。さっきから黙って」
「……………ふん、あの小娘どもにも英雄としての自負があり、あの怪人にも悪として掲げる理由があるか」
じっくりと味わうようにザッハークは呟いた。
その時の彼の瞳は爬虫類のように楕円の虹彩になっていた。
するとザッハークは何を思ったか、爪を伸ばし皮膚を斬った。
斬った場所から、赤の鮮血が流れ出る。
「え、ザッハーク様?何をしてるのですか!」
「わぁ、美味しそう」
「鎮まれ、気づかれるだろうが」
彼の凶行に戸惑ったり、美味しそうとか言ってる少女たちを尻目に、
絶対悪を掲げ、勧善懲悪を人類に課す魔王は、
今や戦場と化したデパートの屋上で戦う怪人に向かって血を飛ばす。
刮目せよ、これは悪神の加護にして眷属になるための許可、
正義の味方を名乗る少女たちの試金石とすべく、
彼が送った祝福(呪い)にして最悪の試練。
怪人が血を浴びた瞬間、怪人が悲鳴をあげる。
それは新生のための苦しみ、絶対悪の眷属になるための始発点。
「な、何が起きているの?」
「それでも倒すしかないでしょ」
「そうね、さっさと倒してお買いものに行きましょう」
少女たちは隙だらけの怪人を倒そうとする。
しかし、彼女らは勘違いをして気づいていなかった。
さっきまで戦っていた怪人が、既に異なる存在に変貌していると。
少女たちは己の武具を怪人打ちこむ、そしてその攻撃は弾かれた。
それは、まるで大地に向かって攻撃するような感覚。
一本だけだったはずの首は二ツに分かたれ、変貌は完了する。
変貌を遂げた双頭龍は天に向かって絶叫する。
まるで世界に問いかけるように、世界に訴えるように、
強く強く、その叫びを轟かせた。
「GEEEEYAAAAAAAAAAAAAA!!」
「何が、ううん。負けたりしない!」
「そうよ、こっちは正義の味方なんだから」
「大勢の人を守るのが私たちの使命!」
「「「だから、かかってこい!」」」
敵は明らかに強くなっているにも関わらず、
彼女たちの戦意は欠片も鈍りはしない。
むしろ、さらに戦意をたぎらせている。
「さぁ、試してみろ。小娘どもが正義を名乗るに相応しいか」
裏でザッハークという青年は笑い、己の眷属に命じる。
その娘らが我が絶対悪に挑むに相応しいのか、
裁定を下すため捨てゴマとなれと。
双頭龍はその咆哮を持って了承し、少女たちに襲いかかる。
少女たちは先程とはまるで違う威圧感を放つ双頭龍を睨む。
果たして双頭龍に挑み、英傑の資格を示せるのか。
双頭龍VS美少女戦士、勝つのはどっちだ!
まぁ勝ってしまっても、さらなる絶望がいるんだけどね。
そんじゃあ、いっちょ逝ってみよう!