絶対悪・暴虐のアジ=ダカーハ   作:悪事

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双頭の魔龍

どこにでもありそうなありふれたデパートの屋上。

その屋上で異彩を放っている三人のドレスと武器を持った少女ら、

そして眼前に佇むは、現実には存在を確認されることのない空想にして架空の存在とされる龍。違和感しかない状況で、まず少女らは宝石の付けられた武器をドラゴンに向ける。龍の姿も普通なら(龍に普通も何もないだろう等の指摘は控えてもらおう)いや、生物の常識として一つしかないはずの頭が二つに別れていて、言い表すならば異形の双頭龍。バケモノは四つの眼を少女らに向け虹彩をギョロギョロと動かしている。

少し前は会話できていた怪物は先程までの言語を忘れたがごとく、無言で体を僅かに動かした。まるで変貌を遂げた己の体に試運転をするかのように、刺々しい突起物の生えた尾をくねらせ、首を少し傾けた。

その姿を見て少女らは、この龍が先の戦いをしていた怪人とは異なる生命体になったのだと直感で理解する。根拠などない、理屈ではない、理由はいらない、ただ自分たちの深層にある人類が薄れさせた生命維持の本能から理解する。

それでも彼女たちは毅然と目の前の双頭龍を睨みつける。

 

まばたきすらしなかったのが功を奏したのだろうか、双頭龍が振るった尾を咄嗟に避けるため屋上の地面にしゃがみこんだ。頭上を死神の鎌が通過し、絶対的な死の命令に抗う。しかし、自分たちが避けたその先には子供を抱いて縮こまっている母娘がいた。

 

 

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 

紅いドレスを纏った少女、ルビー・ウィッチ(以後、ルビー)こと城配朱里は親子に向かって跳躍する。はた目から見れば空間移動を行ったような機動、それでもルビーは親子と自分を助けることは出来ず、庇って背中に強烈な尾の打撃を喰らうのがやっとだった。普通の人体ならば体は真っ二つどころではなく爆裂四散するだろうが、ルビーは魔法系統の正義の味方、己の体に付加された強化魔法と瞬間的に張った防御魔法がなんとか彼女を崖っぷちに留まらせる。それでも衝撃によって隣のデパートの屋上まで吹き飛ばされた。

 

 

「ルビー!」

 

 

吹き飛ばされた友人の元へ急行しようとするサファイア・ウィッチ(南雲響)は同じ仲間のエメラルド・ウィッチ(皆川瑠璃)が抑える。(以後、サファイア、エメラルドと呼称)

 

 

 

「離して、エメラルド!ルビーが、ルビーが………………」

 

 

「落ち着いて!ルビーは防御魔法をしっかり張ってた。

なら私たちがするのは?わかってるでしょう」

 

 

「…………怪人を倒さないと」

 

 

「うん、でも周りの人を傷つけないように慎重に戦っていこう」

 

 

「…………………わかった!」

 

 

吹き飛ばされたルビーは向こうのビルで立ち上がろうとしている。だが、その姿からして戦闘に再復帰は困難と言わざるをえない。生存していることは把握した。彼女を助けるにしろ、なんにしろ、まずは眼前の双頭龍を打ち倒さねばならない。二人の魔女は双頭龍に銃弾と斬撃を叩き込んだ。

 

 

「はぁぁぁぁぁ」 「いっけぇぇぇぇ」

 

 

翠の斬撃が、蒼の弾丸が双頭龍に直撃する。

ずぅぅぅ、双頭龍に直撃した攻撃は龍だけではなく屋上の床に当たり、土煙ならぬコンクリの石煙が屋上に広がる。双頭龍に攻撃した時の手応えは確かにあった。だが、双頭龍がこの程度で倒れる訳がないと直感する。

 

 

「やったか!」 「やった?」

 

 

石煙が腫れた先にいたのは、傷一つない無傷の双頭龍。

その紅玉の瞳は二人の正義の味方を捉えていた。

まるでその足掻きは無価値だと宣告するかのように、人にはどうしようもない天災のように、大陸に悠々とそびえたつ山脈のように泰然と佇んでいた。

 

 

「そんな!」 「こんなに強いなんて」

 

 

僅かな傷もつけられないことに驚愕を隠しきれない少女たち、すこし前は自分たちでも対処可能だったというのに怪人がいきなり苦しんで変貌した途端に自分たちの勝てるイメージが消え失せてしまった。

それもそのはず、この双頭の魔龍は絶対悪の眷属。

討ち滅ぼすことができるのは英雄、英傑のみ、

その高みは人類誕生から存在する最古にして最凶の試練。人類の魂の奥底に刻み込まれ、インプットされたラスト・エンブリオ(人類最終試練)。

しかし、それを知るよしもない彼女らは困惑し、どうやってこの双頭の龍を打ち倒すべきなのか必死で、懸命に模索し続ける。

ヤツの装甲を、鱗を破らなくては傷の一つを刻みつけることさえ夢物語としか言えない。それにヤツは攻撃をしていない。やったことといえば尾を振るった程度だが、おそらく相手は変化した体の縮尺を確かめるため行った確認作業でしかない。攻撃以下の゛ただの動作゛で自分たちは命の危険を感じたのだ、これで攻撃でもされれば自分たちは立っていられるかさえ怪しい。

 

 

そんな思考をしている間に双頭龍は少女らの事情などお構いなしに、ようやく攻撃と呼べるレベルの攻撃を開始した。攻撃といってもやることは単純で、双つの頭が二人の魔女を丸呑みにしようと大きく口を開き突進してくる。二人の魔女は回避をしようとするが、迫り来る龍の口に足がすくみサファイアがよろけて転んでしまう。サファイアはただでさえ戦闘経験が少ないのだ、そんな彼女を責めることはできないだろう。しかし、そのままでは彼女の運命は死に直行する。そこでエメラルドは既に回避できたにも関わらず、サファイアを救おうとして彼女を押し退けた。命を救われたサファイアの視界には双頭龍の広げた口の中、奈落のごとき深淵に吸い込まれるエメラルドの姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、屋上に通じる階段の扉の陰にいるのは、

褐色の肌の男性、黒のパーカーを着た少女、ゴスロリの服を着た蒼白い肌の少女といった、しっちゃかめっちゃかな集団だ。その中の男性、ザッハークは屋上で起きている惨状に冷静な観測者の目付きで戦いを眺めていた。

 

 

「ふん、急造にしては中々の出来だな」

 

 

「………あれはザッハーク様がお作りになったのですか?」

 

 

「…………まさか!あれってちょっとした組織の首領級ですのよ!」

 

 

「何を呆けている、貴様ら。…………………………ふん、それにしても小娘どもめ、英雄を気取って戦場を駆けるくせに、生まれたての我が眷属にすらその手を届かせることができないとは嘆かわしい。もし、英雄としての証明を見せられない敗北をするのなら…………この世界に未来は存在しないものと知れ」

 

 

 

評価、採点、論評するように語っているのは、長身、褐色、美麗の学者然とした優男、しかしてその正体は史上最悪の魔王。

彼は双頭龍と対峙して、完膚なきまでに打ち据えられた少女らを見て嘲るように、どこか期待するように戦闘を眺めていた。

 

 

「ザッハーク様、まさかこのような力を持っていたとは………」

 

 

「あなた、野良の怪人でその実力なんて……」

 

 

二人はザッハークの血液が少し付いただけの怪人が、あそこまで強化されるとは予想外すぎて驚愕する。悪の秘密結社にいて異常事態に耐性を持っている二人ですら、この驚きようなのだ、どれほどに凄まじいのかは言語にするまでもないだろう。そして、この凄まじい状況を起こした青年を見つめる。

 

 

「貴様らが何と言おうが知ったことか…………………………私は己の目的がために、我が宗主に預けられた御旗に従い動き続ける。」

 

 

「「宗主?目的?」」

 

 

「………チッ、口が滑った。今のことは忘れろ、いいな」

 

 

口を滑らせたことに対して腹を立てるように不機嫌になったザッハーク。彼が図らずも口にした言葉は彼女らが調べ続け、まったくと言っていいほどわからなかったアジ=ダカーハ、いや、今はザッハークと呼んでいる怪人の過去や情報に関することだった。二人は疑問の声がハモったことを不満にしながら、それ以上に彼のことを知れる絶好のチャンスを逃すまいと互いに頷いて、ザッハークの方へ向き直った。

 

 

「ザッハーク様の目的とは何なのですか!」

 

 

「それにあなたの言う宗主とはいったい誰ですの?」

 

 

すると男は腕をダランと下げ脱力する。

いきなり力を抜いた彼は空気か、水、闇のような空虚で不穏な雰囲気を漂わす。先程の話題は例えるならば、龍に存在する逆鱗と呼ばれる箇所だったのだろう。突然、彼女たちは背骨の脊髄に氷塊を押し込まれたような違和感を感じる。不吉すぎる圧力、威圧、自分たち幹部とは訳の違う首領級の迫力。体は無駄と理解しつつ、とっさに動けるように力を溜め込んでいく。

 

 

「…………今を生きる生物でありながら、我が目的を存在理由を問うのかよ。そして、それだけに飽きたらず我が宗主が誰かだと?」

 

 

透明な威圧はその濃度を増していく。

上から押さえつけるような力の発露に恐怖と呼ばれるモノが二人の少女らに接近する。だが彼女らとてただの少女ではない、悪の秘密結社の幹部と呼ばれし者たちで実力は確かだ。そんな彼女らはザッハークの行動を見落とさないように凝視する。

だが、凝視してもザッハークの体術が見えるのか?いわく、圧倒的で余計なモノがない純粋な力と言うものは一定値を越えてしまえば、途端に他を隔絶して届かないモノになってしまうらしい。体術を使われれば命はない。しかし運のいいことにザッハークは龍影を使って始末しようと考えている。

 

 

 

 

「…………サーシャ、全部あなたの責任でくたばってきなさい」

 

 

「あら?そんなこと言ってもあの蜥蜴が聞き入れると?」

 

 

「………聞き入れませんよね、おっと、私、定規を忘れてしまったので、

いったん本部の方に帰らせていただきます」

 

 

「って、ちょっとお待ちなさい!

私一人にあれの相手をさせるつもりですの!」

 

 

タロットにおけるハーミットには様々な解釈が存在する。正位置は経験から出る助言、秘匿、そして神出鬼没や変幻自在というトリックスターのような解釈。逆位置では閉鎖的、消極的といったモノらがあり、他を自分に受容しないと言うものがある。ハーミットの名前を持っている彼女は、その神出鬼没という解釈から空間移動を得意としていた。だから、危険のあるザッハークとの交渉に駆り出された訳だ。だが、そんな技で逃げ続けるには相手が悪すぎた。

 

 

「逃がすかよ、生きのびたいなら我が心の臓に蛮勇、智謀を尽くして一撃を叩き込め、逝きたいのなら大人しく生を諦めるがいい。至極単純、簡単な話だろう?」

 

 

 

片腕で印を結び体内で暴れまわるエネルギーを意味ある形に造り出す。力は魔術として世界に異常を刻み込み、物理現象を侵していく。己の権能、千の魔術から敵を逃がさないため空間閉鎖の魔術を引き出した。すると半径百メートルに魔法陣の映った半円の膜が広がる、その半円の内と外では空間が隔絶された。ハーミットは百メートルよりも遥かに遠い組織の基地に移動しようとすると、移動できたのは僅か十メートル、設定した空間に跳ぶことができない。

 

 

「ははは、ザッハーク様がこんなことができるなんて………」

 

 

「………………空間移動をしないのですの?」

 

 

「そもそも出来なくなっている」

 

 

「マジですの?」 「マジですよ」

 

 

「下らない話は終わったな、なら疾く死ね」

 

 

その言葉を皮切りにしてザッハークの影が尖り、影の槍が十にも二十にも枝分かれして二人の少女の怪人たちに襲いかかる。ハーミットは空間移動を小刻みにして、サーシャは体を霧に変えることで、己の体を貫通する影の槍を回避する。だが、その攻撃を避けきることが出来ずに一秒、一秒ずつ浅いが確かな傷を刻んでいく。そして影の攻撃も一秒ごとに正確さを増していく。

 

 

「(龍影を使うのに僅かなタイムラグがあったが、このまま使い続けていけば元のアジ=ダカーハと同等の精度で龍影をコントロールできるようになるか)そら、逃げているだけで私に届くと思っているのか」

 

 

時間の経過するごとに巧みになっていく殺意を具現した影の槍に、いたぶられているように感じている二人は、それを悔しく思いながらも現在の生存にしがみつく。一秒先を生きているのかさえ、綱渡りな現状。しかし今を打開しようと思考することすら自殺に等しい。短距離とはいえ、空間移動などという物理現象を超越した行為を細かくし続けているハーミットは疲労が蓄積されて、サーシャも体を霧にしてるとはいえ、龍影によって霧ごと体を削られているためダメージは着々と溜まっている。彼女らの死亡は、もはや決定されたも同然だ。何らかのイレギュラー(不確定要素)が起こらない限り…………………そして奇跡か、偶然?はたまた必然か、そのイレギュラーは地震、落雷のごとく不意を突いて起きた。

 

 

「何だと?……………………」

 

 

龍影は殺意というエネルギーが尽きたように、その動きを停止する。先程まで見ていた戦場を振りかえると、そこには思いがけない状況を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双頭龍と正義の味方の戦いは終始、双頭龍の圧倒的優位によって成り立っていた。三人のうち一人は向こうのビルに吹き飛ばされ、あと一人は双頭龍の巨大な口の中へと消えていった。バキッバキッと煎餅を噛み砕くような咀嚼音だけが厳かに響きわたる…………………………………最後の一人は今起きたことを理解しきれず、理不尽な現実に屈して呆然と膝をついた。始めの二人は正義の味方育成学校で努力と研鑽を重ねていたにも関わらず、最後の最後に残ったのが正義の味方に成り立ての少女とは何とも皮肉が効いている。だが、サファイア(南雲響)が正義の味方として見いだされたのには彼女が持っていると予測された凄まじい潜在能力にある。仲間を次々と失って、精神的にも限界という状態で彼女がその潜在能力を覚醒させたのは必然といっていいだろう。彼女の瞳が色を無くすと同時に、体から凄まじいほどの魔力が吹き出す。その魔力を推進力にして一瞬で双頭龍との距離を詰める、その速度は第三宇宙速度に匹敵する。その推進力を以て、龍の片方の頭部に煌めく光の軌跡を残すほどの鋭く、重い蹴りを射つ。双頭龍は四肢で踏ん張っていたが、蹴りの衝撃で空に吹っ飛ばされる。因果応報というものか空に吹っ飛ばされた双頭龍は空中で体勢を立て直し、こちらに向かって跳躍してくる少女を双頭の瞳が冷静に見下ろす。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「Geeeeeeeeeyaaaaaaaaaaaaa!!!!!」

 

 

 

ドドドドド、秒間数千を越える弾丸の嵐。

双頭龍は前足で防御するが、その攻撃はまるで効かなかった先程とは違い、鱗の防御を抜いてダメージを与える。双頭龍も負けじと咆哮によって生まれた衝撃波で応戦するが、機動性は彼女が上回っているためにかすらせることもできない。双頭龍は鱗が剥がされ、その下の筋肉を損傷する。形勢逆転したようだが、双頭龍が爪を大きく振るった瞬間に、百メートル以内の街中にあるビル郡が次々と爪を振るった際に発生したソニックブームで崩れ去る。崩れたビルの中の人間や下の道路にいた人間が死に絶え、絶叫して逃げ惑う。だが、百メートル以上先には行けない。それもそのはずこの半径百メートルの空間は完全に外と遮断されていて、出ることも入ることも叶わない領域。叫び、嘆きをBGMに怪物と少女は地獄の淵で躍り狂う。弾丸はステップ、咆哮は伴奏、そしてこの地獄はダンスホール。交わる殺意がパートナーと交わす唯一の感情。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、ああああああああ!!!!」

 

 

 

「Giiiiiiiigyaaaaaaaaa、GEEEYAAAAAAA!!!」

 

 

 

刹那とも永遠とも思える舞踏会は幕引きに近付く。

青の魔力をブースターにして跳躍を越えて飛行するサファイア。

確かに凄まじい魔力の上昇、双頭龍の硬度を凌駕しているのだから、その威力は恐ろしいだろう。だが、双頭龍は生まれたばかり自身のスペックの確認がようやく終わったところなのだ。双頭龍も力が上昇する、いや、馴染んでいく。サファイアは自分も力が長続きしないことを理解していた。力が尽きる前に決着をつけなければ、その思考から彼女は狂気の沙汰とも言える行動に出る。それは双頭龍の懐に潜り込んでのゼロ距離射撃。狂っていると断言できる、そここそがたった一つの活路、仲間を奪われた悲しみとありったけの魔力を込めて、ゼロ距離の自殺志願者は銃の引き金を引く、そこで命懸けの弾丸を喰らえば双頭龍もただでは済まない。勝負は一瞬、懐に接近してきた彼女を前足で地面に叩き落とす。ゼロコンマの出来事にどちらが先だったかは正確にはわからない。それでも結果は双頭龍は腹に風穴が空き、その代償としてサファイアは前足の一撃をモロに喰らう、翼をもがれた鳥のように急速に街中に幾つもあるビルの一つへ墜落する。

 

 

 

 

ズドーン、バキッ、ドド、パリ。墜落した場所は既に使われなくなった廃ビル。ガラス、コンクリート、鉄筋をぶち抜いて、やっと止まる。偶然にも人はいなかったため、ここでの一般人の怪我人はゼロ、だが墜落した際に体の骨を数本折ってしまったようだ。戦闘継続は無理と言えるのに、彼女は立ち上がる。歯をくいしばって立ち上がる。そしてサファイアを追って双頭龍もビルに着地する。ビルは上の部分が原形を保っていないどころか、今の双頭龍の着地のせいで崩れそうな音をあげている。

 

 

「……………………ケホッ、ゴホッ、……だ、………ま…だ……終わ………って……ない」

 

 

言葉を吐き出すこともろくに出来ない現状で、腹に風穴の空いた怪物は敗者に敬意をはらうよう、己を勝者だと誇示するように少女の前に立った。

徒に痛みで苦しみ続けさせるより最後の慈悲と言わんばかりに、双頭龍は己の口を大きく開けて敗者を呑み砕かんとする。

 

 

「せやぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

確定された死を否定するのは、紅い大鎌を双頭龍に振るう少女。

最初に一般人を庇って退場したウィッチ・ルビーだった。

彼女は今も最初のダメージで足取りも覚束ない、双頭龍が万全の状態ならばかすり傷すらつけられなかっただろう。だが、仲間が命懸けで刻んだ傷に重ねるように今ある全ての魔力を鎌に乗せて怪物を切り裂いた。腹に穴が空いて、体は一刀両断された双頭龍は砂となって静かに消えていった。

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「ほう、英傑としての誇りを見せつけたか。

まぁこれなら及第点といったところだろう、この世界には我が御旗に届くやもしれぬ者がいるとわかった。今日のところはこの収穫で満足するとしよう」

 

 

ザッハークは戦いというより作業を止めて、正義の味方と自身の眷属の戦いを見物し始めた。あまりにも隙だらけだが、後ろの二人はザッハークを攻撃することなど出来ずに結果として戦いは自然消滅した。先程まで二人を殺しにかかっていたとは思えないほどに、気分よさげに笑っている。

そして思い出したように二人を見ると、

 

 

「ああ、まぁ今回のことは水に流してやろう、だから、失せろ」

 

 

といい、階段を下りていく。

まるで子供が目当ての玩具を手にいれたように、彼には珍しい浮き足だった様子で下の階に降りている。一方の二人の少女は命が助かった安堵と、任務の失敗のせいで名状しがたい顔色になって愚痴をこぼした、というよりぶちまけた。

 

 

 

「はぁぁ、無茶苦茶ですよ~、ザッハーク様があんな強いなんてこれじゃあ先輩たちに叱られる。それに総会が始まりそうだっていうのに!!」

 

 

「今回ばかりはマジで死ぬかと思いましたわ、あの蜥蜴ときたらこの私の下僕に何の不満があるっていうの?総会前に新戦力を補充しようときたのに計画がこんなに狂うなんて!!!…………それもこれもぜ~んぶ貴女のせいですわ!ハーミット!」

 

 

「はぁぁ!?訳がわからないんですけど、というか貴女の方こそザッハーク様を蜥蜴とか呼んで、そのせいで交渉が上手くいかなかったんです!!!」

 

 

「私が悪いというの!?」 「当然でしょう!!」

 

 

「おい、貴様ら」

 

 

「「ザッハーク様(蜥蜴)!?」」

 

 

突如、声をかけられたことに驚いた二人はザッハークを見つめる。絶体絶命のピンチを回避したかと思った矢先、さっきまで自分たちを殺しにかかってきた男が戻って来たのだ。自分たちはとうとう年貢の納め時と、諦めて眼を閉じる。だが、運命の女神は彼女らを助けたようだ。

 

 

「さっきの話はどういうことだ?」

 

 

「それってザッハーク様の勧誘ですか?」

 

 

「蜥蜴の名前を呼ぶことですか?」

 

 

「そうではなく、貴様ら総会とやらがあるなどと言っていたな。

総会とは名のごとく貴様らのような者が集まると考えていいのか?」

 

 

「…………………………………………ああ、総会とは年に一回だけ名高い悪の組織が集まって、正義の味方の対策、組織たちが己の力を誇示する場所です」

 

 

「メンツ争いの場で総会の結末が悪の組織の未来に直結していると言っても過言ではありませんわ」

 

 

二人は怯えていて声が枯れかけていたが、ここで無言でいるほど神経は太くなかったようで総会について詳しく語り始める。するとザッハークはフムフムと、どこか納得したように頷いて二人に驚愕の問いを御見舞いした。

 

 

「その総会とやらに興味が湧いた、どこでするのか教えてもらおう」

 

 

「「………………………………………………えええええええええええ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー蛇足ーーーーー

 

 

ザッハークと悪の組織の幹部である二人が話をしている最中、テレビではどこの局も今日起こった惨劇についての話題で埋め尽くされていた。その裏で暗躍していた者のことなど知らぬまま。

 

 

「負傷者234名、死傷者121名、行方不明者421名と史上最大の事件、駆けつけた正義の味方も甚大な被害と受けたようで、現在も行方不明者の捜索に自衛隊や消防、正義の味方たちが全力で行っている模様です」

 

「なぜ、正義の味方はもっと早く駆けつけなかったのか?

その真相を正義の味方研究家の佐田大二先生が…………」

 

「未確認の情報で事件の起きたデパートの百メートル周辺には不可視の壁があったとの話がありました」

 

「駆けつけた正義の味方は三人のうち二人が重症、一人が行方不明となっており、三人が未成年であったことから、正義の味方への強い反発感情が……………」

 

「正義の味方という枠組みではなく、国の軍隊組織に編入をするべきではとの声を聞き、正義の味方に関する法律の改正案が明日に国会に提出されることを■■■党は本日未明に発表しました」

 

「本日、デパートを襲撃した悪の組織は過激派組織ラグナロックであることが判明しました、人質となっていた買い物客は怪我をした人が多少いるものの、全員が無事とのことです」

 

「ラグナロックのメンバーはほとんどが逃走しており、警察に正義の味方たちが包囲網を張っているとのことです」

 

「デパートにはラグナロックの構成員の死体が発見され、仲間割れをしたのではないか、と専門家は見解を述べています」

 

 

 

 

ブチッ、苛立たしげにテレビの電源を落とした者たち、彼らは資格を保持する正義の味方であり、今日は正義の味方の本部のある街でこんな大事件があったのだ。正義の味方たちの面目は丸潰れだ。

 

 

「現場にいた一般市民の証言では、あのデパートにいたのは最初は爬虫類型の怪人で二ツの首の龍に変身したという」

 

 

「要領を得ない、もっとましなことの言える者は見つからなかったのか?………それにしても龍、龍か、この間に首領級に登録された怪人も龍じゃなかったか?」

 

 

「質問は一回にしてよ、それに現場にいた一般人が口を揃えて同じようなことを言ってたから二ツの首を持った龍が今日の事件の犯人で間違いないわ。何でも双頭龍はルビー・ウィッチが最後に仕留めたらしいけど」

 

 

「ふむ、もしかすれば今日の双頭龍とその首領級の龍は関係があるのかもしれんぞ。一応、警戒しておけ」

 

 

「ああ、次回その龍が現れれば確実に仕留めろ。でなければ正義の味方の存在価値に疑念が出る。それだけは阻止しなければ」

 

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 




魔法少女はパクって逝かれるのが鉄板ですよね。
双頭龍に美味しく喰われる、要するにマミる。
ネタのわかる方がいれば感想希望。
それでは次回から悪の組織Sideに突入。
それでは最後に読者の皆さま。
この小説を見ていただき、ありがとうございます。
句読点に悪戦苦闘していますが、この小説を是非ともよろしくお願いいたします。
誤字、不満等あればアドバイスを書いていってください。
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