悪の飛行要塞を叩き墜としてから、絶対悪たるアジ=ダカーハは比喩抜きで世界の全てを敵に回した。そして正義の味方、悪の組織、各国の軍隊がアジ・ダカーハという怪物を撃滅しようと接敵したが、そのことごとくが返り討ちの憂き目にあったのだ。近代兵器、魔法、超能力、人類が未だ解析しきれない未知のエネルギーなどを使って、なりふり構わず戦って三頭龍の命を奪おうと試みた。しかしアジ=ダカーハはその挑戦者をまとめて弾き返した。正義を掲げる勇者を己の王威で破り、策謀を張り巡らせる策士をより一層悪辣な智謀で迎え討つ。やがて人類、人外の区別なく生きとし生ける全てが絶滅の危機に瀕した。あらゆる国家機構が消滅し、人類、異形の残った生き残りたちがアジ=ダカーハに抗い続けた。だが、そんな有象無象のかき集めが絶対悪に届くはずもない。当初はいがみ合い、互いに敵視していた正義と悪も滅ぶ寸前になってようやく、手を組む運びとなった。アジ=ダカーハは個で世界を終焉させうる災厄。愚かしいことに生き残った者たちは未だ、アジ=ダカーハのなんたるかを理解していなかった。アジ=ダカーハが人類悪を体現していると理解しないまま。そうした相手を理解しようとしない現代社会の欠陥がこうした悲劇を顕にした。アジ=ダカーハをただの龍だと思い込んだ者たちは、アジ=ダカーハが悪神であることに気づかず、抵抗勢力たちは最後の戦いに赴く。
ここにこの世界におけるアジ=ダカーハと人類、他種族の最後にして最低な戦いが幕を開ける。そして、それは悪神の挫折に通ずる物語。
燃え盛る街、かつて人々の暮らしていた面影は欠片も見受けられない。
地獄の業火に焼き付くされた市街地で、不自然な点があるとすれば人影が無いくらいか?だが、人類はほとんどがアジ=ダカーハの脅威に怯えて隠れてしまった。故に人影がないというのは納得できる、それでもアジ=ダカーハがこの場に来たのはこの場所に逃げこんだ何者かを追跡してきたのだ。その人影が無いということはきな臭すぎる。間違いなく、まごうことなく罠だと断言できる。もっとも、それが罠であると理解した上で三頭龍はやってきたのだ。罠であろうと三頭龍は知ったことではない、悪の御旗を以て真っ向から撃ち破る。おかしな屁理屈で勝負をうやむやにすることなく、小細工を歯牙にもかけず王道を貫いてこその絶対悪。
『ふん、どうした。私の首級が欲しいのだろう、私の命を奪える者は英傑のみだ。己を英雄足らしめたいなら、私の前に立って口上の一つでも語ってみせろ!』
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返答はない、当たり前だ。もしも、仮定としてそのような英雄が居たのなら既にアジ=ダカーハへ一矢を与えている。だが、ここまでアジ=ダカーハが損傷を負った事実は一つとして確認できない。単純にこの世界に存在する者たちが弱かったのか?いいや、違う。たった一つの大きな理由。この世界にはアジ=ダカーハに届く資源、可能性が無かったに過ぎない。例えアジ=ダカーハを傷つけるモノが存在したとしても、現在、絶対悪の質量は地球と同等。恒星の形をした異常な異形。アジ=ダカーハを討つには、惑星を墜とすほどの一撃を放たなければならない。それをこの世界は産み出せなかった、いや産み出そうとしなかった?正義の面子、悪の誇り、大物きどった言い訳で、世界が滅ぶ寸前まで力を合わせなかった。それは愚かとしか言えない、絶対悪の旗は゛誰のため゛に掲げられているのかに気づこうとしないまま、自分たちの醜さ、無様さから眼を背けてきた。その馬鹿馬鹿しい逃げ癖、負け犬根性のツケを払う時が来ただけ。断崖の果て、逃げ場の無くなった子羊がどうなるかなんて語るに及ばず。奈落の底に真っ逆さま。アジ=ダカーハは《それでも立ち上がれ》と告げる。願うように、命じるように、信じるように、真摯に、誠実に人間の正面へ立ち塞がる。
無音に覆われた街の中、地獄がひっくり返されたような惨状の場で佇む三頭龍。その三頭龍の後方、死角から鋭い光の一閃が翔んでくる。三頭龍の現時点での質量では、並大抵の攻撃は通用しない。光速で飛来する光線を体で受け止める、当たり前のごとく三頭龍の肉体には僅かな傷すらついていない。三頭龍は三メートルの巨体に合わない機敏な動きで攻撃が行われた方角に振り返り、そちらに向かって駆ける、駆ける。そして光線の放たれたとおぼしき高層ビルに拳を撃ち込む、たったそれだけの行動、大した技術も使われていないテレフォンパンチ。その結果、ビルだけではなく、後ろの街並みが纏めて消し飛ばされる。三メートルという生物ではあり得ない体躯。その巨体には惑星並みの質量が籠められている、膨大な質量から放たれた一撃は街並みを空の彼方へと吹き飛ばす。吹き飛ばされた街並みは大気圏を突き抜けて、地球周辺の宇宙空間を漂うデブリの仲間入り。しかし、アジ=ダカーハは標的には直撃していないと即座に看破する。
『空間移動?ふん、小賢しい』
「…………シッ!」
大鎌を振りかぶった女が背後に突如、出現して斬りつけてくる。その斬撃を表皮だけで跳ね返す。その攻撃に対して体を反転させて回し蹴りを放つことで応じる、音速に達する惑星並みの蹴りは暴風を生み出した。余波の暴風は街を更に破壊するが、蹴りによる一発は敵が消えて外れてしまう。……瞬間移動をさせる敵には心当たりがある。そして、そいつが自分をここで仕留める腹ということも理解した、ならば策を全て真っ向から喰い破るのみ。
『フゥゥ………………』
三つの頭にある六個の紅玉が閉じる、視覚情報をカットして空間把握に全神経を集中させる。精神を尖らせて空間に波紋が生じる前兆を感知しようとする。三頭龍のセンスを用いて空間移動の能力の一歩先を行く、アジ=ダカーハの膨大な戦闘経験を記憶で追体験してきた。その取得した多くの経験からくる予測は、もはや未来予知の領域に踏み込んだ。
『同じ手が何度も通じると思うな』
ポツリと呟くと、同時に虚空に向かって拳を打つ。今度こそ命中の感触、人体を破壊したような感触が拳に伝わる。明らかな致命傷、よほどの強者でも死に至らしめる必殺の攻撃。それにも関わらず、攻撃を受けた赤い装束の少女は耐え抜いた。かろうじて生存しているのだろうが、それでも立ち上がれないため動きが無い。
「くっ、………もう少…し」
重傷と言ってもいい状況で、その瞳には諦めの光がない。おそらくアジ=ダカーハを仕留める策があるのだろう、それをアジ=ダカーハの持つ権能゛千の魔術゛を発動させて幾つかのパターンを予想する。予測を完了すると、まず動きがない赤の少女を仕留めようと拳を握った。その時、上空から蒼い弾丸が飛んでくる。アジ=ダカーハの中央の首筋の同一点に一瞬で数百の弾丸が直撃した。それは何とアジ=ダカーハの鱗に僅かなヒビを入れる、しかし血を流すほどの傷ではない。次の瞬間にはヒビが無くなってしまった。三頭龍はその攻撃の放たれた上空に眼を向ける。そこには青の装束を纏った少女の姿、両手には同じく青の銃。三頭龍は両足に力を込めて空を見上げる、爬虫類である生物には縁のない空という世界。背中の影を翼のように形どって羽ばたくことで、どこまでも広がって見える空という領域にアジ=ダカーハは侵入した。
『これまででもっとも良い一撃だった。だが、私に血を流させるほどではない。いや、我が眷属の出現を警戒して手を抜いたのか?』
アジ=ダカーハの血液から双頭龍が産み出されるという情報を知っているのは、この世界では二人のみ。空間移動、双頭龍の情報、間違いなくあの二人が、この戦場にいると断言できる。アジ=ダカーハは口を歪めて、笑みを深める。自分を恐れながらも、゛それでも゛と絶対悪の前に立った。それは誇るべきことだ、その勇気に応えるためにアジ=ダカーハは全身全霊を以て敵を打ち破る。
青い魔力で空を翔ぶ少女、以前、双頭龍との戦いで仲間を喪った正義の味方であるサファイア。そんな彼女の下方から影の翼を羽ばたかせ三頭龍が襲いかかる。攻撃手段は徒手空拳。拳が突く、蹴りが穿つ、余波で大気が掻き回される。それらの形を為した脅威を掻い潜り、中距離から三頭龍に魔力で構成された弾丸を見舞う。それらの攻撃は鱗を砕くモノではあっても、血を流させるモノではない。その決断は間違いではない、アジ=ダカーハの身に損傷を与えられるのは、この世界では現在彼女のみ。もしも双頭龍が出現すれば、物量差で押しきられる。それを避けて血を流させない程度の攻撃するという判断は間違いではない。それでもアジ=ダカーハを倒すには、霊格の詰まった血液を全て抜いて心臓を露にしなければならない。言うは易し、行うは難し。アジ=ダカーハの霊格は現時点で地球と同等、血液の量は惑星並み。血液は外に出れば、双頭龍に成ってしまう。その困難を乗り越え、恐怖の先に行かなくては絶対悪の旗には届かない。それ故に彼女の方法ではアジ=ダカーハを越えられない。
アジ=ダカーハの攻撃を避けながら、サファイアは必殺の攻撃をなんとか回避する。彼女は逃げる、避ける、死の誘惑を寸前で回避して街の北の方角に向かう。だが、奇跡的に回避し続けていた彼女に、とうとうアジ=ダカーハの拳が命中する。当たった瞬間に、彼女は渾身の魔力を纏わせた両手を体の前に置いて盾の役割をさせる。拳の着弾、インパクトが腕に伝わると、腕の血肉はブチ撒かれ、骨がへし折れんばかりに強烈な軋みをあげる。それでも驚愕すべきは彼女の両腕がまだ繋がっていることだ。おそらく、空中という足場の無い環境で見舞った拳は重心が不安定だったため、威力を乗せきれなかったのだろう。それを差し引いても、アジ=ダカーハの一撃は、サファイアを地面へ強制的に叩き墜とす。地面へ接地すると共に、大地には半径20メートルのクレーターが出来上がった。
「カハっ!」
叩きつけられた衝撃で呼吸が乱れる、その一瞬乱れた呼吸によって定期的に放出していた魔力が途切れる。いくらでも逃げ場のあった空中から、様々な障害物のある地上に落とされた、そんな危機的状況にも関わらず、少女は口元を笑わせて歪める。アジ=ダカーハはここまでが敵の予定された行動だったのだと理解する。ここは自分を討つための策が巡らされた舞台、しかし、それを゛くだらない゛と一笑に伏す。相手の策に慌てふためいて、馬鹿げたトンチ、小手先の付け焼き刃で応じるなど、魔王としては恥ずべきこと。例え、どんな手段を用いられようと正面から打倒する。人類に対して誰よりも誠実で、人類が
「……ハァ……ゴフッ…どうしたの?三頭龍、こんな弱った私を殺せない?」
『抜かせ、心の折れていない眼でそんな安い挑発を述べても、萎えるだけだ。私を謀るというなら、早くしろ。私は一向に構わん』
サファイアは策が見破られているということに、焦燥を覚える。だが、策に嵌めようとしているにも関わらず、アジ=ダカーハは撤退しようとする気配がない。サファイアはそれを油断していると考え、魔力の弾丸を上空に打ち上げる。上空に上げられた弾丸は爆散して、何らかの合図を報せた。
「いまですわ!」 「当たって!」 「隙あり!」
その狼煙と同時にコウモリの大群、黒い魔力の弾、赤い斬撃がアジ=ダカーハを四方八方から襲いかかる。
『まさか、この程度の奇襲が私を倒す策だというのか?…………だというなら、貴様ら……………ここで死ね』
アジ=ダカーハの抑揚のない死の宣告に、集まった者たちが息を呑む。恐怖に呑まれて、彼女たちは焦ったのだろう。本来、アジ=ダカーハを多少、攻撃してから発動させるはずの策を本能的に使ってしまった。それは彼女らの終わりを決定づけるモノだった。
「封印を!」 「急いで!」 「大至急!」
焦燥感と、死の恐怖により想定より早かったが、彼女たちはアジ=ダカーハを止める一手を打った。それは封印、街の上空に巨大な魔法陣を描いて、永久に、この周辺百キロと絶対悪を空間ごと停止させるつもりなのだ。………アジ=ダカーハは激怒した、ラストエンブリオである自身を越えるのではなく、封印してうやむやにしようとする行為に灼熱の感情を爆発させる。
『封印?この私を?絶対悪の旗を乗り越えるのではなく、封印するとほざいたのか?………虚仮にするのも大概にしろぉぉ!!!!』
三つの頭がもたらす怒りの咆哮で大地が揺れる、大気が砕け散ったような爆音が響く。アジ=ダカーハはここで必滅の一手を切ることを決定した。それはアジ=ダカーハの持つ破壊の権能、伝承では世界の三分の一を滅ぼすとまで記された消滅と崩壊の一撃。森羅万象の一切合切を無に帰す滅亡の形象。災禍を招来させ、地獄の業火すら焼き尽くす焔。アジ=ダカーハの持ちうる中で最高の威力を誇る
アジ=ダカーハになった男は、死ぬことに恐怖を持っていた。それは至極真っ当、当たり前だ、誰でも死にたく無いと考えるのは、生物には共通の生存本能。しかし、それ以上に絶対悪が倒されることで人類の破滅の道を回避できるのだと希望を持って、絶対悪の旗の重みに耐えることを魂に誓い、死の覚悟を決めた。真っ向から
独りよがりの信頼が産んだ、求めていない勝利の美酒。
人類を信じる想いを、打ち砕く最低最悪の結末。
無条件の信頼が、この結末を産んだのか?それともアジ=ダカーハが持ちうる中で最強の攻撃手段である
『喰らえ!我が必殺の
両手を腰元に構えて、己の終末論を熱エネルギーに変換する。変換された紅蓮は周囲の温度を爆発的に上昇させ、周囲を焦熱地獄へと変貌させる。地獄の業火すら児戯に思えるような炎の猛威。手裏剣でも投げるような動作でアジ=ダカーハの両腕が振るわれ、円盤状の閃熱が前方に打ち放たれた。
視界が白で覆われる。人類側の者たちにとって最期の瞬間に見えたのは、理解不能の理不尽な白炎だった。人類の敗北が決定すると同時に、世界が終わった。地表がひび割れ、大陸が崩れ去る。海は熱により干上がって、永遠に溶けぬと信じられてきた絶対零度の氷が刹那で蒸発する。世界はここに終焉した。辛うじて生き延びていた生物も地球そのものが無くなっては生きられない。これにて絶対悪と人類、異種族たちの幕は最悪の形で閉じたのだった。
……………それをもたらしたアジ=ダカーハはかすり傷どころか、埃一つ純白の身に付いていない。それがアジ=ダカーハを茫然とさせた。街ごと敵を一蹴するはずが、気づけば人類纏めて殲滅するなど、予想だにしない。人類がここまで脆弱なのかと
絶望する。慟哭の叫びが何もかも消えた無の世界に轟いた。
『何故だ?何故、これで終わりを享受する!死にたくないのだろう!?ならば、何故
アジ=ダカーハの言うことは人類側からすれば、無茶ぶりもいいところだ。アジ=ダカーハは自身の現時点のスペックが原作のアジ=ダカーハと異なることを知らなかった。封印された状態でも世界を三分の一を滅ぼせるのだ。封印されていない状態、惑星と同等の質量まで増大した恩恵は人類に僅かな抵抗を許さなかった。人類に対する信頼は無惨に裏切られた。勿論、原典のアジ=ダカーハの戦いでも、まともに抵抗しない無様な闘争もあった。みっともなく絶対悪から逃走することもあった。それでもアジ=ダカーハは戦い続けた、この世界のアジ=ダカーハは人類に期待しすぎた。人類への期待は最悪の形で裏切られた。それによって三頭龍は絶望の闇に呑まれていく。
『期待したことが間違いだったのか?元々、人類に生存の可能性は微塵も無かったのか?本来のアジ=ダカーハは人類のどこに希望を持っていたんだ、私はどうして゛あんなヤツラ゛のために命を捨てる覚悟をしたんだ』
絶望と後悔の奈落に墜落する。そんな中、脳内に映しだされるのは、逆廻十六夜がもたらした絶対悪の
ーーーどこと知れぬ森ーーー
『ああ、ここはどこだ?………………どこでもいいか……』
空間を超越する魔術によって、移動した場所は草木が生い茂る夜闇の森の中。人の手が加えられておらず太古の姿を残す植物。アジ=ダカーハは己の知識から、周辺の植物が近代に絶滅した植物だと看破する。そうやって自身は現在、人類が存在しない時代に移動したのだと判断した。自身の状況をあらかた把握すると、三頭という明らかな異形の龍は目的も定めないまま歩き始める。何も考えず、ただただ緩慢に歩き続ける。動いていないと、魂が腐り朽ちると既に直感で理解しているのだ。ノープランで欠伸の出そうな動作を緩やかに行う。
『……………………』
深い森林で行く宛ても無しに進んでいく。前を向いて前進しているだけなのに、心も魂もどこを向いて進んでいるのか、わからない。思考は纏まらず、茫然自失となった状態で動き続ける。
『……………』
体は動いている、心臓は鼓動を止めていない。それだけのことが酷く鬱陶しい。アジ=ダカーハの願いを自身が諦めたことが後ろめたい。人類に対する期待が折れたことで、魂にも亀裂が入ったようだ。暫く、いや、何日、時間感覚がおかしくなるほど歩き続けていると、遥か前方に光が見えた。目を凝らして見えたのは、自然の光とは明らかに異なる人工の光。時代を考えればあり得ないとさえ断言できる光量。光を放って、輝いているのは時代錯誤な建造物。洞窟を住居にするような時代で、異端と思えるほどに高度な都市がそこにはあった。アジ=ダカーハは誘娥灯に魅せられた虫のように都市に向かっていく。すると突然、都市の方から数えるのも馬鹿らしい光の弾が飛んできた。思考は止まっていても、アジ=ダカーハの肉体に刻まれた幾万、幾億の経験が光を全て打ち払う。
『……………………GAAYEEEE!!!』
攻撃を行った側からすれば専守防衛、疚しきことなど一片たりとも無いのだろうが、何も行っていないアジ=ダカーハからすれば理不尽に思うのは当然の話。三頭の龍という異形を見たのだ、攻撃するのは自然の成り行き。いきなり攻撃を行った者たちに罪は無い、そうわかっていても自身の不甲斐なさと鬱憤が攻撃を行った者たちに殺意を抱かせた。殺意の咆哮は天に轟き、万里に激怒の感情が響きわたる。その咆哮によって攻撃を行った者たちは、意識を失う、失禁する、怯えて脇目もふらずに逃げだす等の被害を受ける。結果として、それは三頭龍と彼らのファーストコンタクトになった。
これより始まるのは、原初の物語。語られず、知られることの無い昔話。
月の都と呼ばれる光絶えぬ都市と、絶対悪の旗から逃げた三頭龍の戦争。
これより紡がれる物語は、幻想郷と呼ばれる箱庭が出来上がるまでのお話。アジ=ダカーハでは無くなった怪物の新たな神話。
東方Project編.開始.→
ーーー???ーーー
「まったく、街が見つかるまで何日も歩き続けるなんて」
黒髪の青年は、ぼやきながら大きな街を歩く。特に顔立ちが優れている訳でも、劣っている訳でもない黒髪の青年は帝国の首都、帝都と呼ばれる都市に到着した。この街に辿り着くまで野盗、危険な生物など、様々な出来事に巻き込まれた。途中で出会った怪物が危険種と呼ばれていることを、通りすがった者たちから教わった。危険種、生物としては一目でわかる異形。真っ当な進化の課程を通過していると思えない非合理的なライフデザイン。怪物に襲われ、街では悪法、上流階級が我が物顔で傲慢を為す世界。つまり、この世界が己のいるべき世界と理解する。苦しみ、哀しみが跋扈する世界で理想郷を望むのは仕方がない。ディストピアの魔王は笑顔を浮かべ、街を再度見回す。見えるのは、この見かけだけの街。きらびやかな繁栄を思わせる街も、街行く者たちの表情を見れば、メッキ、偽りの繁栄だといやでもわかる。
「この街は血の臭いがする」
誰にも聞こえないような呟きは空気に紛れて消える。青年は大通りを進む、広場に到着すると、そこにはある光景があった。磔にされて既に息絶えた者、その正面にあるのは死んだ者がいかなる罪を犯したのかが書かれた貼り紙。罪を裁く断罪の場、つまり処刑場。そんな光景を見て青年は溜め息をつく。
「まったく、前時代すぎる…………国はどれだけ腐っているんだ」
青年の呟きに周囲の人間はギョッとする。国の在り方に異議を唱えるなど、それだけで重罪、この青年は気でも狂ったのかと大衆は距離を取る。処刑場の監督をしていた男たちは青年を捕らえようと威嚇し、近づく。一歩一息まで接近した男たち。囲まれた黒髪の青年は慌てる様子もない。大衆の多くは彼が諦めたのかと考える。だが、一部の腕利きの者は黒髪の青年が理解できない異常な雰囲気を放っていると即座に見抜く。そして、近づいてきた男たちは一斉に飛びかかろうとする。次の瞬間、飛びかかろうとした男たちが動きを止めた。血の通っていた人間が突如、ブリキ人形にでもなったような突然の反応。這いつくばった男たちを尻目に青年は裏路地の方に静かに歩く。処刑場の監督をしていた他の警備隊の者たちは、男を捕まえんと、走り出す。だが、裏路地に入った時には既に青年の姿はどこにもない。
「あいつはどこに消えたんだ?」
「知るか!それより詰め所に行って増援を呼んでこい、あいつを捕まえないと俺たちの首がトンじまうぞ!」
隊長格の男の一喝で茫然としていた男たちはキビキビと動き出す。しかし、彼らの奮闘はむなしく、処刑場で国の批難をした青年を見つけることは出来なかった。これが後に帝都を崩壊させる物語の序章であると、誰も知らぬまま、序幕は終わった。
千年続いた帝国に、終わりを告げる閉鎖世界。
ディストピアの魔王はこの世界に何をもたらすのか?
アカメが斬る!世界→In.ディストピアの魔王
ーーーーUnknow.Worldーーーー
どことも知れぬ、暗闇に包まれた道を歩く人影。服装はなんと布一枚、何の変哲もない布が着る少女の美しさによって、職人がオーダーメイドしたドレスと言っても信じる美しさを放っている。胸元は豊満な膨らみによって押し上げられ、白の布から出ている肌は真珠を粉末状にして振りかけたような白さ。髪は黄金を溶かし、柔らかな糸に加工したよう、瞳は最上級の緑色の翡翠を埋め込んだ至高の美。形容する言葉の見つからない最高峰の美しさを誇る少女。しかし、その真の正体は魔王と呼ばれる人類が越えなければならない最終試練。人類によって存在を定義され人類によって存在しえないと踏みにじられし、救世を成し得る無限の力。その真名は第三永久機関。そんな彼女が動き出したのだ。かつて、閉鎖世界に力を与え、絶対悪を新生させるに至った根源。
さぁ世界よ、怖れ戦け。
来るぞ、来るぞ、来るぞ、来るぞ。
人類の技術の果ての果て。
3S.nano.machine.unitが!
「ここ、どこ?」
今回の話でアジ=ダカーハのメンタルが弱いのではと思った方もいるとは思いますが、仕方ないとご了承ください。普通の転生モノではなく、怪物になって殺人、破壊をしなければならないのです。メンタルの負荷は尋常ではないでしょう。東方の世界は心折れたアジ=ダカーハがもう一度、絶対悪の旗と人類への期待を取り戻すための物語です。古代東方編、幻想郷が出来あがるまでを御覧ください。
まずは月の都VSアジ=ダカーハ
異世界移動、千の魔術で異世界移動が出来るのか?
完全にご都合主義、独自解釈、妄想です。
某英雄王の蔵と同じくらい千の魔術が便利な件について
他の魔王の話は番外編で書いていきますが、更新はランダムですので過剰な期待はしない方がよろしいかと。番外編は読者さまの声を聞いて、話をつくっていくのでお楽しみに。
誤字脱字があれば、感想でアドバイスを御願いします。
他の作品に興味が湧いたら、是非とも、閲覧を。