世界に惹かれた魔法使い 作:イリス
読んでくださりありがとうございます。
感想もどしどしお願いします。
「・・・ここは・・・ああ・・あなたが私を?」
目覚めたイクスヴェリアは周りを見回した後、俺に向かって問いかけてきた。
「ああ、そうだよ。俺が君を目覚めさせたんだ。おはよう、イクスヴェリア。」
「また・・・私は、誰かを殺さなければならないのですか?終わらないのですね、悪夢は・・・。」
やっぱりそう思うよなぁ。
今まで自分の意思は無視され、無理やり人を殺させられ続け、それが終われば今度はいきなり眠らされたらなぁ。
だからこそ、俺はそれを否定しなきゃならない。
「いいや、違う。俺は、君を・・・いや、君に・・・イクスヴェリアに希望を届けにきたんだ。」
「希望・・・。そんれは私にだけはあってはならないものです。私は、沢山の命を奪ってきました。そんな私が希望をもつなんて許されるわけがないんです。」
イクスヴェリアは悲しげな顔をして俺の言葉を否定する。
だけど、俺にはそんな彼女が助けを求めているように見えた。
「そんなことない!誰にだって・・。」
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
「うわっ!」
「きゃっ!」
俺が話しかけたところで、急に揺れが起こった。
俺は、揺れで倒れかけたイクスヴェリアを間一髪で抱きとめる。
「おっと、大丈夫か?なんなんだ、今の揺れは・・・。」
「ええ、大丈夫です。・・・あの、そろそろ離してください。」
俺が少し考え込んでいると、イクスヴェリアが顔を少し赤くして言ってきた。
「え?・・・っ!あっ、ごめん、ちょっと考え事してた。」
俺はそう言ってすぐに手を離した。
「いえ、近づく人は全て殺していたので、あまり男性に触れたこと自体なかったですから少しなれなくて・・・。」
ははは、なんて物騒な・・・。
【マスター!そんなことをしている場合ではありません!大変です!】
ディノが慌てて話しかけてきた。
ディノなら何が起きたのか知っているかもな。
「ああ、そうだった。ディノ、いったい何が起きたんだ?」
【この遺跡が、いえ、研究員たちが何者かの攻撃を受けているようなんです。センサーに生物と思わしき熱源が多数確認できます。今のところは障壁が作動して何とか持ちこたえられているようです。あと30分といったところでしょうか。】
な、なんだって!
でもいったい誰が何の目的で・・・。
「・・・まさかっ!・・・いや、でも・・・。」
俺は相手の狙いがイクスヴェリアかもしれないと考えたが、直感は違うと言っている。
そこでふと別の考えがよぎる。
もしイクスヴェリアがこの可能性に気づいたらどうなる。
自分が狙いなのだから自らを犠牲にしようとするのではないか。
自分が奪った命に対してこんなにも後悔するような子だ。
ありえない話ではない。
だが、相手の狙いがイクスヴェリアではなかった場合・・・・。
「・・・もしかしたら私が狙いなのかもしれません。私が眠っている以外には何もないこんなところに来たのですから、狙いは私なのでしょう。」
っ!?
俺が考え込んでいる間に案の定、イクスヴェリアがその可能性に気がついてしまった。
「もしそうなら私が犠牲になりましょう。私の犠牲で沢山の命が救えるのです。私には生きる価値すらないのですから躊躇う必要もありません。」
パンッ!
俺がイクスヴェリアの頬を叩いた音がそこまで広くない部屋に響く。
イクスヴェリアの言葉を聞いたと同時に手がでていた。
叩いた後から怒りが沸いてくる。
「取り消せ。自分の命に価値がないだとっ!ふざけるなっ!お前の命は、お前が殺してきた人たちの上になっているんだぞっ!今の言葉はお前が殺してきた人たちの命を馬鹿にしてるって何で気がつかないんだっ!」
俺は、怒りに任せて思ったことを叫ぶ。
「そ、それは・・・あなたに、あなたに何が分かるんですかっ!人を殺させられ続けてきた私の何がっ!」
イクスヴェリアも関が外れたように叫んでくる。
俺にはそれがイクスヴェリアの本心であり、助けを求めるSOSに聞こえた。
だから、俺が思ったことを、考えたことを、思いをそのまま叫ぶ。
「んなもん知るかっ!それはお前の過去で、お前の罪だ。その罪は絶対に消えることはない。絶対にだ。お前が自己犠牲を働こうが、自らを死地に追いやろうが関係ない。消えないんだ。だから、お前はその罪を背負って生きていかなきゃいけない。奪った分の人生を、意地汚くても、どんなに辛い目に遭おうと・・・その罪を背負って生きていかなきゃいけないんだ。生きることが、最後の最後まで行き続けることがお前の償いだっ!」
俺はイクスヴェリアに手を差し伸べ、笑いかける。
「でもな、それはお前が希望をもってはいけない理由にはならないんだよ。そんな辛い道なんだ。希望の1つや2つ、もっててもいいだろ?だから、ここで約束する。俺がお前の希望の1つになってやる。だから掴め。これがお前の、イクスヴェリアの償いの第一歩だ。」
俺がそう言うとイクスヴェリアの頬に一筋の涙がこぼれる。
目の前のイクスヴェリアは今にも泣きそうだ。
無理もない。
だって俺と変らない5歳くらいの女の子だぞ。
そんな子がいくつもの死を背負ってるんだ。
いくら覚悟してたって大の大人ですら潰されてしまうだろう。
「・・い、・・いい・・の・・・です・か?わた、・・・私は、・・生き・・て・・いて・・・。」
「いいに決まってる。さっきも言ったろ、それがお前の償いだって・・・。」
イクスヴェリアは、手を震わしながらも俺の差し出した手に伸ばしてくる。
それと同時に少しずつ俺の視えているイクスヴェリアの色が蒼に変り始めている。
そしてついにイクスヴェリアが俺の手を掴むと同時に色が完全な蒼に変った、いや、戻った。
「う、うあああああああああああ・・・・。」
イクスヴェリアは、俺に抱きつくと感情が爆発したのか大声で泣き始める。
俺は、それがあの日の自分みたいに見えた。
俺は、イクスヴェリアが落ち着くように何度も頭をできるだけ優しく撫でてやる。
でも、なるべく早く泣き止んでくれないと危ないんだけどなぁ。
あと障壁はどのくらいもつのだろうか?
まあ、こいつが泣き止むくらいまでは大丈夫だろう。
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「あ、あのっ!ありがとう・・・ございました。」
あれから5分位してやっとイクスヴェリアは泣き止んでくれた。
「ああ、イクスヴェリアはもう大丈夫なのか?まだ顔が赤いけど・・・。」
俺が心配になって聴いてみる。
「はい、大丈夫です。あと、イクスでいいです。イクスヴェリアなんて一々フルネームで呼ぶのは大変でしょうから。」
「ああ、分かったよイクス。」
イクスヴェリア、おっと、イクスは笑顔で答えてくれた。
うん、とりあえずは大丈夫そうだな。
さてと、これからどうしたものか。
とりあえず父さんたちと合流しないとな。
「ディノ、父さんたちの居場所は分かるか?」
【はい、分かります。ですが、障壁の位置がここの出口の近くなので危険だと考えられます。】
う~ん、どうしたものか。
「連絡は取れるか?」
【いいえ、無理です。この部屋の周辺ではジャミングのようなものが起動しており現状把握くらいしかできそうにありません。】
連絡も無理か・・・。
本当にどうしよう。
イクスも連れて行かないといけないし・・・。
「障壁はあとどのくらいもちそうなんだ?」
【もってあと10分ですね。】
10分か・・・。
ドーンッッッツツツツツ!!!!
「うわっ!」
「きゃっ!」
大きな音とともにまた揺れが起こる。
「なんだ、何が起こったんだ!」
【大変です!障壁が破られました!】
「そんなっ!あと10分はもつはずだろっ!」
【大量の侵入者がお父様たちのところへ!】
父さんたちが危ない。
行かなきゃ。
「行こう!」
【危険です!】
「そうです。それに私たちが言っても足手まといになるだけです。」
「それでも、それでも俺は黙ってこんなところで怯えているなんてできない!」
イクスは俺の言葉を聞いてため息をつく。
ディノからも似た雰囲気が感じられる。
「分かりました。行きましょう。」
【ええ、こうなったらマスターは梃子でも動きそうにないですからね】
今考えてみると、
この日、このときから俺の魔法使いとしての戦いは始まったんだと思う。
いかがでしたか?
設定としてイクスヴェリアの見た目の年齢をかなり下げてみました。
良かったらこれからも読んでいってください。