世界に惹かれた魔法使い 作:イリス
なんと日間(加点/透明)ランキングで33位にルーキーランキングで39位になっていました。
沢山の方々に読んでもらえてとてもうれしいです。
良かったらこれからもよろしくお願いします。
では本編をどうぞ。
「何だよ・・・・これ・・・。」
「これは・・・酷い・・。」
俺たちがあの部屋を出て最初に見たものは地獄だった。
身体が石のように罅割れた、灰色の鬼のような姿をした化物が研究員の人たちを襲っている。
「嫌・・だ。死に・・・・た・・く・・・ない。誰・・か・・・たすk・・・。」
目の前で研究員の1人が化物に槍で刺されて死んだ。
俺の目の前で1つの色が青黒い色に染まって消えた・・・。
他にも沢山の人が、色が青黒く染まっていく。
「・・・止めろ。止めてくれ。もう止めてくれえぇ!」
俺が叫ぶと、その声で俺に気がついたのか化物たちがこちらを向く。
その中の1体がこちらに近寄ってくる。
俺は目の前で人が死んでいることのショックで体が動かない。
何とか動かそうとするけれどビクともしない。
【マスターッ!危険です。早く逃げてっ!】
「こっちですっ!」
俺が動けずにいると、イクスが俺の手を掴んで引っ張ってくれた。
イクスは俺を引っ張って遺跡の奥の方へと走る。
少しの間、走り続けると疲れで足が止まった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。この辺りにはまだ奴らは来ていないみたいですね。」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。ああ、そうだな。イクス、さっきはありがとう。」
乱れた息を整えつつ、俺はイクスに感謝の言葉を告げる。
するとイクスは少し顔を赤くしてこちらに顔を合わせようとしなくなった。
「い、いえ・・・あ、あの、私も必死でしたし、その、まだ名前も聞いていないのに死なれたら嫌なだけです。・・・・それにあなたは私の希望になるって言ってくれましたし・・・。」
そういえば、まだ名前言ってなかったな。
最後がちょっと聞き取れなかったけど・・・まあいいか。
「ああ、言ってなかったな。俺は、ミカゲ。ミカゲ・クローベルだ。」
未だに手の震えが止まらないけどこれで誤魔化せるかな?
「ミカゲですか・・・。はい、これからよろしくお願いしますね、ミカゲ。」
イクスは、俺の名前を聞くと胸に手を当ててまるで心に刻むように復唱し、眩しいくらいの笑顔で俺に微笑んできた。
・・・なんとか悟られないで済んだかな。
「でも、さっきの化物はいったい・・・。」
(あれはグールだ。)
いきなりドラゴンが話しかけてきた。
(グール?)
(ああ、魔石から生まれるファントムの一種でな。所謂、量産型ファントムってとこだな。あいつら自体はそこまで強くない固体だ。)
(なんでそんな奴らがこんな所に・・・。)
(たぶんだが、元々ここにあった魔石に衝撃が加わり生まれたんだろうな。あいつらは知能が低いから、上位のファントムからの命令が無ければ勝手に暴れまくるぞ。)
そんな・・・。
まだまだ人が殺されるって言うのか。
俺の拳に自然と力が入る。
俺の脳裏にさっきの命が、魂の色が消えていく光景がよぎる。
「・・・・・・・・~。」
ん?
何か聞こえたか?
「・・・カ・・・~。」
やっぱり、何か聞こえる。
「お~い、ミカゲ~。」
この声はっ!
俺は声がする方を振り向く。
すると俺の知っている人が、父さんが俺たちよりさらに奥の方から走ってきている。
「父さんっ!」
「えっ!」
俺が叫ぶと隣で警戒していたイクスが驚いたように父さんを見る。
父さんはこちらに走ってくると俺を強く抱きしめた。
「良かったっ!ミカゲ、本当に、無事で良かった・・・。」
父さんは俺を抱きしめるといきなり泣き出した。
俺はそれが嬉しくて父さんに強く抱きしめ返す。
「父さんこそ、無事で良かった。」
「ああ、ミカゲ、いったい何が起こったんだ?俺がここより奥の方に行っているときに化物が現れたって通信があったんだ。それにその子は?」
そうか、父さんは知らないんだ。
俺は父さんにイクスのことも含め何があったのかを説明した。
「・・・なるほど、そんなことが・・・。」
「ごめん、父さん。俺・・俺目の前で人が殺されているのに何も・・できなかった。」
俺は固く拳を握り、頬からは涙が流れる。
そんな俺を父さんは優しく撫でてくれる。
「お前は子供なんだ。仕方ないよ。・・・そうだ、イクスちゃん。」
「はい、何ですか?」
父さんは何かを思いついたようにイクスに話しかける。
「家の子にならないかい?」
「・・・え。」
あまりにも唐突なことに思考が一時的に止まったようだ。
・・・なるほど、その方がいいかもな。
俺は涙を拭いてイクスの方を向く。
「ああ、俺もそれには賛成だ。イクスには戸籍とかが無いから孤児を引き取ったってことにすればいいしな。」
「それにミカゲは欲しいだろ、妹。」
妹か・・・。
なんかいいな。
家族が増えることを考えるとなんだか今までのことも乗り越えられそうなきがする。
「イクス、いいだろ?家族になろう。」
イクスはまだ唖然としていたが、俺の言葉が聞こえたのかこちらを向く。
その瞳には少しずつ涙が溜まっていく。
それは悲しみの涙ではなく、喜びの涙だって一瞬で分かった。
なんでかって?
そりゃ分かるさ、イクスがこんなにも満面の笑みを浮かべてるんだから。
「はい、これからよろしくお願いします。」
これで終われば良い話だったんだけど・・・。
ドーンッ!!!!
いきなり後ろの壁が吹き飛んだ。
その開いた壁から奴らが出てきた。
「ミカゲ、あいつらがその化物かい?」
「ああ、父さん。」
俺たちは身構えながら少しずつ後ろに下がっていく。
だが、奴らがそれを許してくれるはずもなく、こちらに槍を構えて走ってくる。
速いっ!!
「後ろだぁ!」
気がついたときにはもうグールが槍を俺に振りかぶっていた。
やられると思いとっさに目をつぶる。
・・・・・・。
だが、何時になっても痛みが、衝撃が来ない。
俺はゆっくりと眼を開けた。
「ぐあぁ。だ、大丈夫か・・・・ミカ・・ゲ。」
「父さんっ!」
父さんが俺に覆いかぶさっていた。
父さんは俺の無事を確かめると地面に倒れる。
傷は浅かったようだが、背中から血が流れ出ている。
「父さん、なんで・・・。」
「ばか・・くぅ・・親が・あぁ・子共をまも・・・るのは、当たり・・はぁ・・まえ・・だ。」
【マスター。今治癒の魔法を使いますので魔力供給をお願いします。】
「それは私がやります。」
父さんは心配だが、ディノとイクスがいるから大丈夫だろう。
・・・・俺は大馬鹿だ。
いつまでも迷って、父さんを傷つけて・・・。
だけど・・・もう迷わない。
「待ってて父さん。今こいつらを片付けて病院に連れていくから。」
(ドラゴン。)
(なんだ、ミカゲ・クローベル?)
俺はドラゴンに呼びかけると神様から貰ったベルトと指輪を取り出す。
(こいつがあればあいつらを倒せるんだよな?)
(・・・ああ、そうだ。だが、それを使うということは俺に、絶望により近づくということだぞ。いいのか?)
(ああ、俺はもう迷わないって決めたんだ。だから、・・・)
「力を貸せっ!ドラゴンッ!」
俺はベルトを腰に巻く。
ベルトの操作はなんとなくだが分かる。
左手の中指に赤い指輪を嵌め、指輪の顔の「目」のところの部分に当たるカバーを下ろす。
【シャバドゥビタッチ!ヘ~ンシ~ン!】
ベルトから音が流れ始め光だす。
俺はベルトに指輪を嵌めた左手をかざしてこう叫ぶ。
「変身っ!」
【フレイム・プリーズ!ヒー!ヒー!ヒー・ヒー・ヒー!】
左側から赤い魔方陣が通かする。
俺は全身を黒い魔法衣に纏われる。
ああ、これが魔法使いなんだ。
なぜかは分からないけどこう言わなければいけない気がする。
「さあ、Show Timeだ!」
これが俺の魔法使いとしての始まりの物語。
ビギンズナイトってやつだ。
次の更新は次の週末に行う予定です。