きっとそこが声優さんの腕の見せ所なのだろう(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
-十三組の十三人(サーティーン・パーティー)―
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。
それは最後の血統真庭朱雀が検体名『13組の14人目(サーティーン・オバー)』として末席を汚す箱庭学園の中でも知る人ぞ知る秘密結社である。その実態は名の通り、箱庭学園において普通(ノーマル)ではない特例(スペシャル)を超えた異常(アブノーマル)な生徒だけが在籍する十三組の中でも選りすぐられた13人(統括である黒い包帯名瀬夭歌を含めれば14人)で構成され、箱庭学園の理事長不知火袴総帥が志す教育理念に元づいて行われるとある実験『フラスコ計画』を実現させるためだけに集められた集団である。
参加メンバーは以下の通り。箱庭学園の理事長不知火袴総帥にして『歴代最高の異常(アブノーマル)な君達』と揶揄される。難物堅物曲者揃いの、一癖二癖どころか癖しかないというほかにない人材達だ。
二年十三組 やり過ぎの正義の体現者。通称『モンスターチャイルド』 雲仙冥利(うんぜんみょうり)。
二年十三組 最後の血統。戦国最後の生き残り。検体名『十三組の十四人目(サーティーン・オバー)』 真庭朱雀(まにわすざく)。
二年十三組 可愛い名瀬ちゃんの可愛い大親友。検体名『骨折り指切り(ベストペイン)』 古賀いたみ。
二年十三組 大胆無謀な露出系。検体名『宙ぶらりん(フリーワールド)』 湯前音目(ゆのまえおとめ)。
二年十三組 迂闊に動いたら地獄行き。検体名『初恋(ラヴ)』 百町破魔矢(ひゃくちょうはまや)。
二年十三組 酸でも惚けない鋼鉄系男子。検体名『占領役者(スターマスター)』 鶴見崎山海(つるみさきやまみ)。
三年十三組 十三組の十三人最強の男。検体名『棘毛布(ハードラッピング)』 高千穂仕種(たかちほしぐさ)。
三年十三組 国際指名手配犯の殺人鬼。検体名『枯れた樹海(ラストカーペット)』 宗像形(むなかたけい)。
三年十三組 誰であろうと一毛打尽。検体名『髪々の黄昏(トリックオアトリートメント)』筑前優鳥(ちくぜんゆとり)。
三年十三組 可愛い顔して暴食系。検体名『食虫食物(デンタルシューズ)』 上峰書子(かみみねしょこ)
三年十三組 義を見てせざるは勇なきなり、仲間のピンチは見逃せない。検体名『死番虫(デスウォッチ)』 糸島軍規(いとしまぐんき)
三年十三組 心優しき王の第一の臣。検体名『狭き門(ラビットラビランス)』 行橋未造(ゆくはしみぞう)
三年十三組 君臨する暴君。検体名『創帝(クリエイト)』 都城王土(みやこのじょうおうど)
そして、すべてを統括するもの。二年十三組 検体名『黒い包帯(ブラックホワイト)』 名瀬夭歌(なぜようか)。
みんなそろって十三組の十三人(サーティーンパーティー)!
ちなみに『十三組の十三人のくせに十四人いるじゃん!(・・・ていうか半分が三年生って、来年どうするんだよ)』なんて空気の読めない突っ込みを入れる人間は十三組の十三人には皆無だった!
そんな小さなことを気にしているようでは異常(アブノーマル)にはなれないぞ!
とかなんとか適当なことを言ってみたところで、物語は再びの反転。
謎の敵との戦いに挑む準備に取り掛かった最後の血統真庭朱雀達を置き去りに、物語の視点は箱庭学園風紀委員室へと移る。
―往生しやがれ―
まず、それに最初に気付いたのは生徒会長黒神めだかだった。次いでモンスターチャイルド雲仙冥利。そのほかのこの場にいる人間、生徒会庶務人吉善吉。風紀副委員長呼子笛。鬼瀬風紀委員の三人は気づけなかった。まるで蝙蝠のように逆さまに天井からぶら下がっている人間がこの部屋に何時の間にかにいることに。
「キャハキャハ」
と、天上からぶら下がった人間は笑った。
異変に気付いた生徒会長黒神めだかはいち早く動こうとして、動く前に止められた。
「おおっと、動かないでくれよお嬢ちゃん。俺としてはこんな仕事、平和的にちゃっちゃと終わらせたいんだからよ」
と、天井にぶら下がる男が声を出したところでようやく生徒会長黒神めだかとモンスターチャイルド雲仙冥利以外の三人が男の存在に気が付く。
「ひぃっ」
と、声を漏らしたのは誰だったのか。ともかくとして、それが器具もなしに天井にぶら下がる人間を見たときの普通の人間の反応だ。声も上げずに観察できた、生徒会長黒神めだかとモンスターチャイルド雲仙冥利が異常なのだ。
「おいおい。そう驚くなよ。おれが悲しくなっちまったらどうしてくれんだよ。キャハキャハ。いくら時代が違うとはいえ、今でも天井を歩ける人間がいないってわけじゃねーだろ」
そう言い、天井にぶら下がり続ける男の恰好は奇抜に過ぎていて、なんと形容していいものかその場にいる誰にもわからなかったが、たとえ男の口から自分が着込んでいるものが忍装束だと聞かされたところで信じはしなかっただろう。
その忍び装束は、一般的に思い浮かべられるものとはずいぶんと形式が異なっていたからだ。袖が根元から切り落とされ、全身に鎖が巻かれていて、忍どころか逆に目立ってしまっていて、目新しいことこの上なかった。
もっとも、モンスターチャイルド雲仙冥利だけはその姿が同僚の私服姿に酷似していたため、何故だが妙な既知感があった。
「で、誰だよテメエは」
風紀委員室という場所で、この場を代表してみんなが聞きたかったことを聞いたのはやはり風紀委員長雲仙冥利だった。
「キャハキャハ。おっとと、いけねえいけねえ。冥途の蝙蝠ともあろうこの俺が、名乗りもしないなんて言う接待不足をやらかしちまうなんてよお。これが年って奴かねぇ」
そういうと、冥途の蝙蝠と名乗った男は逆さまのままポーズを決めた。
何故のそのポーズが初代○リキュアの黒い方だったのかは謎だ。
「聞いて驚け、見て驚け。俺が数百年前に死んだはずの真庭忍軍十二頭領が1人。真庭蝙蝠様ご当人様だ!死んだはずの人間を生で見られるなんて、いい冥途の土産になっただろう。だからよう、お前らさくっとあっさり殺されてくれよ」
そういって、冥途の蝙蝠は――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――動きだせなかった。
「・・・てっ、はあ?」
冥途の蝙蝠は思わず疑問符を口にせずにはいられなかった。逆さまのポーズを決めた態勢から、体がピクリとも動かない。周りには何もないはずなのにまるで何かに縛られているかのように。
「ケケケ。なっさけねーさまじゃねーかよ」
と、モンスターチャイルド雲仙冥利は冥途の蝙蝠のその姿を見て、小さく笑った。
「お、お前、何をしやがった」
「別に俺は何もしちゃいない。お前がたまたま網にかかっただけだ。俺様名物『霞網』。見たか聞いたか感じたか。細すぎて見えやしねえだろうが、一本で5トンを持ち上げられる糸が数百本単位でテメエの体を縛り上げているんだぜ。・・・もっとも、自慢は出来ねえがな。こんなに早く黒神の前でこいつを披露することになるなんざ、最悪の結果だよ」
モンスターチャイルド雲仙冥利は舌打ち交じりにそう吐き捨てて、生徒会長黒神めだかを睨みつけながらそう漏らした。
「見えない糸を張り巡らせていただと?おいおい、ありえねえだろそんなこと。そんな時間がどこにあった。おれが登場してからお前はずっと驚いて棒立ちになってたじゃねーか。はっ、それともまさか、お前は本来ならありえもしねえおれの登場を予知してたとでもいうのか!?」
「ちげーよ。言っただろ、『俺は何もしちゃいない。お前がたまたま網にかかっただけだ』」
天井にぶら下がった冥途の蝙蝠にとっては不運という他にない。ここは風紀委員室。モンスターチャイルド雲仙冥利が生徒会長黒神めだかに言ったことであるが、風紀委員にとっては本拠地であり身を守る砦である。
そして、それ以外の者にとっては敵本陣に他ならない。
そんな場所にモンスターチャイルド雲仙冥利が、敵には厳しく身内には甘いこの少年がなにもしないわけがない。罠を張っていないはずがなかった。しかし、風紀委員室のすべてに罠を張り巡らせれば日常業務にも支障をきたすことだろう。だからこそ、モンスターチャイルド雲仙冥利は風紀委員なら絶対に使わない場所に、一番人通りの多い出入口ではなく敵が入って来やすい場所に、換気口や床下、天井に罠を仕掛けた。仲間を守るために。敵を捕らえるために。
だからこそ、冥途の蝙蝠が気づかれないで風紀委員室入った時点でこうなることは決まっていた。そうならないためには生徒会長黒神めだかがそうしたように、正面から堂々と入ってこなければならなかった。
しかし、冥途の蝙蝠にはそれができない。なぜなら彼は忍なのだから。
真正面から挑むなど、忍の戦い方ではない。
「どこの誰だか知らねえが、あんまり風紀を舐めんなよ。不法侵入は立派な犯罪行為だぜ。だから」
モンスターチャイルド雲仙冥利は両手を、十本の指を繊細に震わせながら言う。
「見えない糸(ルール)に縛られて往生しやがれ」
文字通り、風紀委員会の見えない糸(ルール)に雁字搦めにされて、謎の襲撃者冥途の蝙蝠は捕えられた。
ここ言っておきたいことはもしモンスターチャイルド雲仙冥利と冥途の蝙蝠との戦いの場所が風紀委員室でなかったなら、彼がこんなにもたやすく負けることはなかったということだ。
彼は決して噛ませ犬などではない。
―生きちゃいない。もう、死んでるんだ―
「で、貴様は一体何者なのだ?随分と変わった格好をしているが」
モンスターチャイルド雲仙冥利の手によって簀巻きにされ床に倒れる冥途の蝙蝠に対して、生徒会長黒神めだかは冥途の蝙蝠のツンツン頭を扇子で突きながら首をかしげていた。
後ろの方で『変な格好って、あなたに言われたくはないですよね』と誰かが言っていたが、生徒会長黒神めだかは気にしなかった。
「キャハキャハ。俺が誰かって?そんなもんさっき自己紹介したじゃねーか。俺は真庭忍軍十二頭領が1人。真庭蝙蝠。二つ名は冥途の蝙蝠ってな。冥途の土産をあまりに大盤振る舞いする接待好きの性格から、ついた名だ。いかすだろ」
キャハキャハと笑いながらそう言った冥途の蝙蝠に対して生徒会長黒神めだかは満面の笑みをこういった。
「ふむ、なかなか可愛らしい名ではないか。それでメイドの蝙蝠よ」
明らかに字が違っていることにその場の全員が気づきはしたが、誰も突っ込むことはなかった。放ったらかされる女である。
「貴様は一体何をしにここに来たのだ?その恰好からするにこの学園の生徒ではないようだが、箱庭学園に何の用だ?生徒会長として何か用件があるのなら聞いてやるぞ。それに先ほど気になることを言っていたな。数百年前に死んだ真庭忍軍とは、どういう意味だ?」
「ああ、それはよお」
と、冥途の蝙蝠がその軽い口を開こうとしたところで止められる。
「真庭忍軍。通称・まにわに。尾張時代に滅んだ所謂忍者の一族だ。伊賀、甲賀と並べられりゃ名前じゃ劣る知る人ぞ知るって感じの忍だが、実態は伊賀と甲賀よりずっとえげつなかったらしいぜ。なにしろ忍の中じゃ異常も異常。暗殺専門の忍集団だったらしいからな」
机に腰を掛け、腕を組んで年不相応の笑みを浮かべるモンスターチャイルド雲仙冥利の言葉にさえぎられて、止められた。
「おいおい、随分と詳しいなお坊ちゃん。まさか日陰者だった俺たちが数百年後の世界でようやく日の目を見ることになるとは、まさしく冥途の置き土産じゃねーの。キャハキャハ」
「調子に乗んなボケ。名前じゃ劣るって言ったじゃねーか。俺がまにわにについて詳しいのは友達にテメエらについて詳しいとかそういうんじゃねえ奴がいるからだよ」
「詳しいとかじゃない・・・おいおい、もしかしてそりゃ噂に聞くふぁんって奴か!キャハキャハ。いーねいーね。そいつを今すぐ連れてこいよ、この真庭蝙蝠様が直々にさいんってやつを書いてやるからよぉ」
「ケケケ。そりゃ、あのバァカが泣いて喜びそうだ」
そんな会話に花を咲かせる二人をしり目に、生徒会庶務人吉善吉は隣に立つ鬼瀬風紀委員に呟いた。
「おい、鬼瀬。まにわにって、確かお前の先輩のあだ名じゃなかったか。その名前がどうして暗殺専門の忍者集団の通り名になってんだ?」
「その答えはひどく簡単です。まにわにというあだ名を普及させたのは呼子先輩ですが、元々まにわにという言葉は私の先輩一個人を表すではなかったそうです。真庭忍者。略してまにわに。だったそうです」
だからと、鬼瀬風紀委員は思う。おそらくこの男は自分の先輩である彼と、浅くない関係を持っているのだろうと。だからこそ疑問にも思う。何故この男が自分たちを、この学園の風紀を敵に回してきたのだろうと。そして不安に思う。まさかまさかありえないことではあるが、噂に聞くあの争いがまた再燃してしまうのかと。
そう、あの風紀委員会の間ではもはや伝説となった。前風紀委員長が職を辞し、空いた風紀委員長の座を巡って起きたモンスターチャイルド雲仙冥利と最後の血脈真庭朱雀の最初にして最大にして最悪の大喧嘩。
あの戦争が再び。なんてことになれば、きっと鬼瀬針音は生きていられないだろうとそう思う。
いや、あの二人が争うということはつまり風紀委員が真っ二つに割れるということだ。つまりは考えうる最悪の結果、風紀委員という組織自体が壊滅するかもしれないと、鬼瀬風紀委員は冷や汗を流しながらそうなりません様にと祈りながら手を合わせた。
その間、隣に立つ生徒会庶務人吉善吉がなにやらいろいろなことを訪ねてきていたが聞こえなかった。というより無視をした。
「真庭忍者ってなんだよ。忍者の末裔って、そんな漫画みたいな奴が本当にいたのか・・・」
誰も答えてくれない生徒会庶務人吉善吉の疑問が呟かれる中、そっちはそっちで話は進む。
自分の話に割り込むように入ってきたモンスターチャイルド雲仙冥利に対して不満を隠さず顔に出している生徒会長黒神めだかは不愉快そうに眉を顰めながら言う。
「おい、雲仙二年生。私はまだメイドの蝙蝠に対して聞きたいことの半分も聞いていない。勝手に雑談を始めるな。そして私の出番をとるんじゃない」
「けっ、いやいや、わかっているよ。なあ、冥途の蝙蝠さんよぉ。テメエが何者かはわかった。じゃあ、次はどうして俺達を殺そうとしたのか、その理由を答えてもらおうか」
(なにもわかっていないじゃないか)――と、騒ぐ生徒会長黒神めだかを無視してモンスターチャイルド雲仙冥利は話を進める。
「おれがお前たちを殺す?ああ、そういやそんなこともいったっけか。いやいや、悪いな。元々おれたちは殺し専門の忍者だからなあ。ついつい思ってもねえ物騒なことを言っちまうんだ。おれにお前たちを殺す気はなかった。一流の忍者って奴はよぉ、利益の無いことはやらねえもんだからなあ」
「俺達を殺す気はなかったねぇ。じゃあ、ここに何しに来たんだよ」
「実はおれ、人探しをしてんだよ。けどここ無駄に人が多いだろ。むやみやたらに探しても仕方がねえし、手がかりってやつを探してたんだ。そこにたまたまお前たちが時代に合わない剣呑な空気でいたから、ちょーっとした興味本位ってやつだ。キャハキャハ」
そういう冥途の蝙蝠に対してモンスターチャイルド雲仙冥利はため息をついて、生徒会長黒神めだかに視線を向けた。
「で、これでいいんだろ生徒会長さんよ。聞きたいことが聞き終ったんなら、もう今日は戦うとかそういう感じじゃなくなっちまったし、帰ってくんねえか。こう見えても俺たちは結構忙しいんだよ」
「何がいいものか。聞きたいことなどまだやまほどある。第一に貴様は一番聞かなければならないことを聞いていないではないか」
生徒会長黒神めだかは聞かなければならないことを、おそらく万人が気になって仕方ないことを聞く。
ある程度の覚悟をもって。あるいはある程度の覚悟も持たずに。尋ねた。
「なぜ、数百年前に死んだはずの人間が生きているのだ」
数百年前。大乱の英雄が余生を過ごした忘れ去られた孤島で、英雄の息子に殺された冥途の蝙蝠を前に黒神めだかはなぜ生きているのかと聞いた。
そしてその問いに答えたのは冥途の蝙蝠ではなく、モンスターチャイルド雲仙冥利だった。
「生きちゃいねえ。黒神めだか、俺たちの前でこうしているこいつは決して生きちゃいねえんだ。そうだろ。冥途の蝙蝠さんよ。テメエはきっちりかっちり、数百年前に死んだんだろ」
「ああ、その通りだ。おれは死んでるよ。あの日にあの島で虚刀流のガキに殺されて死んでいる。まっ、悔いがなかったって言えば嘘になるけどよお、一応仲間に未来は託して死んだんだ。化けて出るほどの未練はなかったはずだぜ。いや、本当によ。だから、結構今の状態はおれとしても不本意でよお。だからおれはおれを殺してくれるやつを探してたんだ。幸い、一人はだけ心当たりがあったからよ。キャハキャハ。けどまあ、こういう結果も悪くはねえな」
キャハキャハと、キャハキャハと、キャハキャハと、そう笑いながら冥途の蝙蝠は消えていく。
奇抜な忍び装束で包んだその身を解れさせて、文字通りに消えていた。消え続けていた。
「これは、いったいなんだというのだ」
「これが答えさ、黒神めだか。生きちゃいねえんだ。死んだ奴は生き返らねえ。だから、こいつの体は幻で、こいつの意思は仮初で、こいつ自身が記憶なんだよ。人間の記憶に記録された人間を幻視させる異常(アブノーマル)。俺と朱雀がよーく知ってる、先輩が持っている異常性だ」
モンスターチャイルド雲仙冥利はかつて一人の先輩が浮かべていたその笑顔の思いだしながら、やりきれないと言いたげな目で冥途の蝙蝠を見ていた。
人間の脳に記憶として刻まれた記録を抽出し実態のある幻にまで押し上げる。
こういってしまえばありえもしないことのように聞こえるが、実際はそうではない。
要は思い出すことに特化した異常性(アブノーマル)。心に焼付いた思い出を、まるで昨日のことのように思い出したことは誰にでもあることだろう。
つまりはそういうことなのだ。
この異常(アブノーマル)はその思い出しを強力にし、他者の思い出までを思い堕せるようにしたものに過ぎない。
と、様々な理由付けをすれば説明のような何かになるのかもしれないが、こんなことは普通(ノーマル)じゃできないし特例(スペシャル)でも無理だ。異常(アブノーマル)であることに変わりはない。
だから、一言で簡潔にこの能力について解説を入れることにする。
思いは強い力を持っている。
その異常(アブノーマル)の名を『走馬塔(ドラマチックレコード)』という。
「ともかくだ、こうなっちまったらもう生徒会の役目はねえ。さっさと帰んな」
「こんなものを見せられて。こんなことを起こされて。ずこずこと引く私だとでも思っているのか」
「先輩の忠告くらい聞いたらどうだよ、黒神。あの人が出て来たってことは、ことはもうお前ら如きじゃ手に追えねー事態にまでなってんだ。それになあこの件は俺たち内輪の問題だ。部外者が出る幕はねえ」
そういって、モンスターチャイルド雲仙冥利は完全に生徒会のメンバーを意識から外した。
制服改造の校則違反の件もこの件が片付くまでは容認せざる負えないだろうと、モンスターチャイルド雲仙冥利はため息をつく。
全ての神経を向けなければならない。あの先輩と戦うということはそういうことなのだ。
「ところでよお。お坊ちゃん。ずっと聞きたかったんだが、ひょっとするとひょっとしちゃってお前もしかしておれの探し人と知り合いだったりしねーかな」
「たぶん、知り合いだぜ。名前は真庭朱雀つーんだが」
「キャハキャハ、そりゃ間違えねえ。真庭。真庭。おれが探してたのはそいつだよ。なあなあ、ちょっとばかし頼みてーんだがそいつに伝言をたのまれちゃくれねえかな?」
「いいぜ。なんだよ」
「まあ、がんばれよって」
そんな当たり前の励ましの言葉を残して、森に隠しても隠れない個性しかない忍者集団。真庭忍軍の中でも最も意外性に富んだ忍者。真庭蝙蝠はその意外性を一切発揮することもなく、表舞台から消えていった。
完全に消えた。
当たり前に。
当然だと。
やはり。
消す。
姿。
を。