はたして彼らは学園の平和を守りきることができるのか!!
―不平伏(ひれふさず)―
「平伏せ」
暴君王土はたった一言そう呟いた。その一言がただ重い。文字通りに重いのだ。
暴君王土のただ一人の友にして忠臣。『狭き門(ラビットラビランス)』行橋未造はその攻撃を、口撃を都城王土の真骨頂①言葉の重みと名付けていた。
王の言葉にはだれも逆らうことができない。
しかし、その絶対を覆すことの出来る存在が今此処にいないでもない。
たとえばそう、王よりも姫に仕えた。騎士の如き男ならば――
「不平伏(ひれふさず)」
と、不忍の男はそう言った。
「平伏すわけにはいかないな。なぜなら私は左右田右衛門左衛門。ただ一人の女のために生き、女のために死ぬことを悔い死んでいった男。らしい。そのような伝説と共に私の名が語られているというのなら、その価値を下げるような真似をするわけにはいかない。私の誉れはすべて姫様のものであるからだ。無論、そのようなことをあの御方は笑って否定されるだろうがな」
たんたんと表情は仮面に隠され窺えないがおそらくは変えることなくそういう男。
王を前にしての不遜な態度。
そんな不忍の態度を受けての暴君王土対応は、ほう、と感心したように息を漏らすことだった。
こんなことで怒るほどに王の懐は狭くはない。
「王(おれ)の言葉に表立って逆らえるものなどこの学園に8人といないのだがな、その気概はなかなかのものだ。褒めてつかわす」
目の前に居る敵すらも王(じぶん)に褒められれば嬉しいとそう信じて疑わないほどに自分を愛し。
誰もを見下すほどのエゴの塊。
生まれながらの絶対王者。
都城王土。
彼は不遜に過ぎていて、だからこそ誰よりも強大だ。
今この瞬間、ここ箱庭学園で起きている歴史が交わる大事件。
その全容を知りながら、なおも放置できるほどに強大で。
たまたま出会ってしまったからという理由で戦えるほどに強大だ。
『暴君』都城王土。彼の前では地球すらも小さすぎる。
「・・・不取合(とりあわず)。悪いが私はこう見えて忙しい身だ。漫才ならば余所でやってくれ」
「忙しいというのならば王(おれ)とて同じだ。なにしろ俺はこの学園(おうこく)を統べる王なのだからな。本来ならばこんな遊びをせずにあくせくと学業に励んでいなければならない身だ。しかし――そんな王(おれ)の責務をお前は阻害した」
――なぜお前は王(おれ)の学園(おうこく)を王(おれ)より高みから見下ろしている。
「その罪――万死に値するものと知れ」
『暴君』王土。この学園を統べる者。そんな男が重い腰を上げ挑もうとしていた。
かつて『神』とすら渡り合った一人の『騎士』と。
「やめておけ。お前では私には勝てない。無意味な戦い。そして無意味な死だ」
「王(おれ)に命令をするな。王(おれ)は俺の為にしか動かんし、王(おれ)は俺のやりたいようにやるだけだ。それにな、王たる俺がお前には敵わないだと?舐めてくれるなよ。王たる俺が勝てぬのはせいぜい神ぐらい――いや、王(おれ)はいずれ神すらも超える存在だぞ」
「不笑(わらえず)。笑う気にもなれないな。『神』を超えるとは、随分と簡単に大口をたたいてくれたものだ。あの時代、虚刀流を殺すことが出来た者が私だけであったように、全力であるあの男を殺すことの出来る存在はいつの時代も私一人だけだ」
かつて『神』と語らい。『神』と笑い。『神』に挑み。神殺しの剣士に殺された騎士は一人、笑うことなく君臨する。
この時代、既に彼を縛り続けていた姫はいない。彼女の命令がなくとも、彼はいつだって全力を出せる。
『神』の鳳凰。『日本最強』鑢七花。その二人と並べられた戦国三強の力。
その力の一角を左右田右衛門左衛門は彼個人の意思を持って、振るうことが出来る。
忍ばない忍。死んだはずの忍。この世界の誰よりも、忍びらしい忍。
『不忍』左右田右衛門左衛門。
『暴君』たる王土にとっても、相手として不足などあるはずがない。
君臨する『暴君』都城王土 対 自重して忍ばない忍『不忍』の左右田右衛門左衛門。
これから行われる三連戦。その初戦の火ぶたが今、切って落とさる。
いざ、尋常に、勝負。
―これがフラスコ計画だ―
勝負開始。と、高らかに宣言したところで言っていかなければならないことがある。
ありていに一言で簡単に言ってしまうと、暴君王土は戦う人種の人間ではない。
彼はあくまで支配者で、人を虐げる人間だ。
無論、人並み以上の暴政(ぼうりょく)を持たないというわけではないが、人どころか神にすら届く暴力を擁する不忍にはいうまでもなく敵わない。
都城王土。
彼は確かに強大だが強力ではない。
故にこの戦い。そんな事実を悟られず、戦いきることが出来るかどうかが鍵だ。
普通(ノーマル)ならば。
「実を言うと、王たる俺はそこまで強くはない」
普通ではない。異常(アブノーマル)の王である都城王土は当たり前のようにそう言った。
「弱くはないが、一目見れば解るお前の強さに届くほどには強くはない」
「不解答(わからず)。わからないな。なぜそのようなことを私に漏らす。そういうことは隠し悟られずに戦うことが定石ではないのか」
「定石などと、そのような普通(ノーマル)なことに異常(アブノーマル)の王たる俺が捕らわれていて、一体どうする。それにな、王(おれ)はお前より弱い王(おれ)を恥じてはいない。むしろ愛している。王(おれ)はどんな俺であれ愛しつくしている」
「・・・自己を肯定し続ける力。姫様よりも奇策士殿側の思考というわけか。しかしそんなものがこの局面でいったいどう役に立つ」
「役に立つ必要などない。王(おれ)自身が役立たずでもいいんだ。人を支配する王(おれ)は常日頃から、周りの人(もの)を使い潰していればよいのだ。――このようにな」
途端、大地が胎動する。
「なっ、これは、一体」
詳しく言えば二人が立つ時計塔が、だ。勝負を始めるにあたり空中という受け身のとれない場所から足の着く屋上へと降りていた左右田右衛門左衛門は身の震えを持ってその異常事態を感じることが出来た。
時計塔が揺れ。狂い。軋んでいる。
今にも倒壊してしまいそうなほどに。
「偉大なる俺の前では校舎ですら跪く」
そう言って『暴君』都城王土は周りの建物(もの)を使い潰した。
「平伏せ」
轟音という轟音。爆音という爆音を立て箱庭学園に聳え立つ異常(アブノーマル)達の城、時計塔の地上部分。つまりは半分が倒壊した。
左右田右衛門左衛門は倒壊に巻き込まれ、すでに暴君王土の視界には入らない。
そんな瓦礫の城の上に暴君王土は変わらぬ位置で君臨する。
宙に浮かぶ彼の身体は無論、忍ばない忍である左右田右衛門左衛門がしていたように摩訶不思議な忍法によって浮いているのではなく。小学生でも理解できる電磁コイルを利用した磁石の作用で浮いていた。
彼は彼の王国を見下ろしながら呟くのだ。
「あっちゃあ、しまったこりゃあ地下(した)にまで被害が及んだかもしれんな。十三組の十三人(サーティーン・パーティー)の幾人かは既に登校していたはずだが、まあ、いいか」
≪いいわけあるもんか。左だ王土≫
彼以外視界には映らない状況で聞こえてきたそんな声。しかし、それは彼には聞きなれた声だったため疑うまでもなく体を動かし左から飛んできた手裏剣を電磁波で弾き返す。
みれば、遥か下には満身創痍になりながらも手裏剣を構えたつ不忍の姿。
「王(おれ)を暗殺から守るとはまったくもってお前は家臣の鏡だ。褒めてつかわすぞ。行橋」
≪へへへ。それだけのことはあるんだからね。それから周りを探しても無駄だよ王の敵。僕はある後輩から変装と隠密の術はこれでもかというくらいに叩き込まれている。それと僕の異常(アブノーマル)を合わせればそうそう簡単には見つけられない。というより、そんなことをしている暇はないはずだね≫
十三組十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『狭き門((ラビットラビランス)。行橋未造
能力・『電波を読んで心を読む』
とつぜん現れた正体不明の行橋未造の言葉に反応するよりも早く、左右田右衛門左衛門は腹部を殴打される。
「っっ」
『神』や『日本最強』と真っ向から渡り合える左右田右衛門左衛門の格闘技術は言うまでもなく彼ら二人と同等だ。そんな男が不意打ちとはいえ、一方的に殴られた。
つまりそれは今、殴ってきた目の前の男の実力が格闘戦という一点においては戦国最強の三人をも上回っているということ。
「トレビアン。状況は掴めないが俺の地下一階(フロア)がしっちゃかめっちゃかになっちまったのはお前の所為ってことでいいんだな?いや、やったのは都城かもしれねーけど責任はあんたにもあるんだろう?なら、残念だな。悲劇的だぜ。お前は悲しくもこの俺、十三組の十三人(サーティーン・パーティー)最強の男を敵に回すことになる」
地上から最も近い地下一階にいた彼は、その類稀なる反射神経を持って天井が落ちてくるというありえない大惨事から奇跡の生還を遂げ左右田右衛門左衛門の前にたつ。
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『棘毛布(ハードラッピング)』。高千穂仕種。
能力・『自動操縦(オートパイロット)な反射神経』
そんな男を前にしながら左右田右衛門左衛門の戸惑いは一瞬だった。
だてに戦国の世を生き、数多の修羅場を潜ってきてはいない。
「なるほどな。これが本当のお前の実力。塔を倒壊させた能力(ちから)など些末なものに過ぎず。お前が持つ本当の戦力(ちから)というわけか。人を使うことこそ王の本懐。三対一。確かに、苦戦はしそうだ」
平静を取り戻しそういう左右田右衛門左衛門の台詞に被さるように、王の新たな戦力(ちから)が現れる。
「三対一だなんて油断していて殺しやすそうだね。そんな君に僕は同情せずにはいられない。高千穂は勘違いしているようだけど僕たちの時計塔がこんな有様になったのは全部都城のやり過ぎが原因なんだろう。君はきっと何も悪くないんだ。だから殺す」
「うわーん(棒読み)。怖かったよー(棒読み)。宗像さんは助けてくれなきゃ死んじゃってた(棒読み)。これで宗像さんは二回も私の命の恩人だよ。この恩は必ず返すからね(棒読み)。だから殺す(棒読み)」
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『枯れた樹海(ラストカーペット)』。宗像形。
能力・『殺人衝動』
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『宙ぶらりん(フリーワールド)』。湯前音目。
能力・『液状化』
次々と、現れる。
「都城。私の階まで被害が及ぶことがなかったからいいものを。いくら貴方とはいえ私のコレクションを傷つけていれば敵対関係が変わっていたということを理解しておきなさい」
「・・・」
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『初恋(ラヴ)』。百町破魔矢。
能力・『迂闊に動いたら死ぬ』
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『髪々の黄昏(トリックオアトリートメント)』。筑前優鳥。
能力・『髪々(かみがみ)を操る』
ことここに至り、左右田右衛門左衛門は理解する。
時計塔を倒壊させるという、行き過ぎた行為が彼、都城王土の破壊的なまでの人間性だけを持って行われたものではなかったのだということを。
あの行為自体が合図だったのだ。
あの轟音。爆音。そして振動が彼の軍勢を呼び寄せるための、開戦の銅鑼だった。
今更に遅い、そんな気付き。
「呼び出されたりせずとも私は駆除をしに行くつもりだったぞ。誰とも知らぬ普通(カス)がこの学園にいるというだけで不快だった」
「同感です。敵は差別せずに皆殺しましょう」
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『占領役者(スターマスター)』。鶴見崎山海。
能力・『鋼鉄男子(サイボーグ)』
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『食虫食物(デンタルシューズ)。上峰書子。
能力・『暴飲暴食』
「無論、最後はこの私。仲間のピンチは見逃せないこの私の登場だ!」
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『死番虫(デスウォッチ)』。糸島軍規。
能力・『先に動いたら死ぬ』
瓦礫の城に立ち並ぶ9人の精鋭。
普通(ノーマル)じゃない特別(スペシャル)を超えた異常(アブノーマル)な彼らを指して人々はこう呼んだ。
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)と。
そして、そんな彼らを見下しながら天高く君臨する暴君。
「見ろ、名も知らぬお前よ。これが全員ではないが、一面に広がる圧巻な光景。これが俺のフラスコ計画(おうこく)だ。勝てるなどとは、口が裂けても言わせんぞ」
十三組の十三人(サーティーン・パーティー)。検体名『創帝(クリエイト)』。都城王土。
能力・『電磁波を用い全てを支配する』
満身創痍の左右田右衛門左衛門。いくら彼が強くてもこの状況での勝利は厳しい。
もし彼に戦国時代(あのころ)と同じように守るべき彼女がいたのなら、百分の一、千分の一という確率ではあるが勝機はあった。
しかし、この時代にすでに彼女はいない。騎士が愛した姫はいない。
だから男は、最後にいつものように薄く笑って。
死んでいく。
「姫様。貴方が救おうとしたこの国の危機から数世紀。もはやこの時代は、彼らに任せてみてもよいのかもしれません」
君臨する『暴君』都城王土 対 自重して忍ばない忍『不忍』の左右田右衛門左衛門。
自身の持つ戦力(ちから)をいかんなく発揮し、勝者、『暴君』。
―最強―
今この学園で巻き起こっている後に始まりの大戦と呼ばれる戦いの最後の三連戦。
その第二試合。日之影空洞対鑢七花。
この二人の戦いを語る前に、語っておかなければならないことがある。
それは最強とは何かということ。
最強。読んで字のごとく、最も強い者。最高の強者。
そんなことは稚児であろうと知っている。掻き毟るほど求めもする。
最強という二文字はその文字の意味する通り、えもいえぬ魅力に満ちた輝きだ。
ただ一人に贈られるべき王冠だ。選ばれたものしかその二つ名を語ることは許されない。
しかし、巷には最強が溢れていた。
探せば見つかってしまうほどに最強はいた。
例えば此処、箱庭学園で起こるこの戦争譚の中でもすでに二人。最強の登場人物がいる。
十三組の十三人最強の男。高千穂仕種。
箱庭学園最強の男。日之影空洞。
学園を離れ外の世界に出てしまえばなおさら多くの最強がいる。
世界の大半が彼女こそが真の最強だと認める存在。『最強の赤』『赤き征服』『請負人』哀川純。
哀川純を超える逸材。最悪によって創られた最終。『橙なる種』『人類最終』想影真心。
最近売り出し中の駆け出し請負人。最弱ゆえ最強。『戯言遣い』『欠陥製品』 。
現在のインターネット社会の基盤を作った最強頭脳。『死線の蒼』玖渚友。
日本探偵倶楽部を敵に回しながら盗みを働き続けるしがない怪盗。『三重殺し(トリプルプレイ)』のスケアクロウ。
歴史を振りかえっていいのならばさらに増えよう。
最強最悪の殺人一族における最高の殺人鬼。『首狩り役人』『自殺志願』『二十人目の地獄』零崎双識。
一人で二人、二人で一人。殺戮奇術匂宮雑技団最強の殺し屋。『人食い(カーニバル)』匂宮理夢『人食い(マンイーター)』匂宮出夢。
旧将軍、最高の刀鍛冶と共に戦国の世を治めた剣士。『開祖』鑢一根。
新将軍に仕え大乱を治めし六代目。『大乱の英雄』鑢六枝。
真庭忍軍十二頭領が一人。最強の忍者。『神の鳳凰』真庭鳳凰。
戦国最強の流派虚刀流七代目当主。新日本最強『完了形変態刀』鑢七花。
戦国最強の流派全刀流継承者。日本最強。『堕剣士』錆白兵。
戦国最強の流派虚刀流継承、鑢家七代目家長。前日本最強。鑢七実
実在が疑われるものも含めればこんなにも。
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼。『怪異殺し』『怪異の王』『始祖の吸血鬼』キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。
どこにでもいない少年。地球を救う新たなヒーロー。『ヒーロー・グロテスク』空々空。
最強最悪の殺人一族。零崎一賊の申し子。『殺人鬼』『人間失格』零崎人識。
最強は存在した。
最強。最も強い存在がこれほどまでに存在した。
たった一人の筈なのに。一つしかない選ばれし王冠をかんむりする彼ら。
彼らの存在は矛盾する。最強の二つ名に矛盾する。
しかし、ならば彼らの誰か一人だけが最強でその他は最強を語る偽物なのだろうかといえば、そうではない。
そんな筈がない。彼らは確かに最強で、彼らは確かに強かった。
誰一人として最強の二つ名にふさわしくない者などいやしない。
並び立つ最強。
この矛盾に満ちた言葉に対する回答を、かつてどこかの会話の中で戯言使いと殺人鬼は出していた。
『弱さには際限がないが、強さには限度がある』
こんなことを言っていた。このようなことを言っていた。
それが答えだった。
限界値がある以上。並び立つことは十分にあり得る。
無論、全ての事がそううまく運ぶこともないだろう。差異はある。
限界点であるものと限界値であるもの。限界に届きそうなものと限界ギリギリなもの。
そこに差異はあり序列はある。
しかしそのランキングは永遠に埋まることはないだろう。
なぜなら滅多なことがない限り、最強同士は争わないからだ。
戦うことでこそ自身の持つ優位性を誇示できる彼等だが、戦わない。
不戦だ。
戦わないのだ。
強さが行き過ぎれば区別はない。さまざまな種類の原子力を使い造られる別々の兵器が全て『核』の一括りにされてしまうように、全て同じように見えてしまう。
行き過ぎた暴力に。やり過ぎの破壊に。限度なき殺戮に。無差別な死に。
暗く黒いものにしか、見えなくなってしまうのだ。
だからこそ彼らは、自ら進んで最強なんて二つ名を語らない。
たいていは第三者が名づけるか。戦いを回避するための手段としてあえてそう語るかだ。
彼らはよりよく理解している自分たちが戦えばどうなるかを。
最強と最強がぶつかり合えば、どうなるかを、その身を持って知っているのだ。
だからこそ始まりの大戦における最後の三連戦。その第二回戦。
箱庭学園最強『知られざる英雄(ミスターアンノウン)』日之影空洞
対
戦国時代における日本最強『刀を持たない剣士』鑢七花
後に最も苛烈を極めたと言われるこの二人の戦いは他のどの戦いよりも危険で、あまりにも激しく、果てしなくあっさりと決着を付けることとなる。
「じゃん」
「けん」
「ぽん」
フィフティーフィフティー。
完全なる五分の戦い。
どちらが勝ってもおかしくなかった名勝負を制したのは日之影空洞だった。
あちゃあ、とそう言って日本最強鑢七花は消えていく。
最後まで彼らしくのんきに手を振ってこの世界で二度目の死を笑いながら受け入れたのだった。
その貫禄はまさしく最強。彼は笑いながら死ねるほどに強かった。
勝者である日之影空洞は一人、名も知らない剣士の強さに敬礼をする。
そして、窓の外から彼の愛する学園を眺めながら一人静かにその場を後にした。
結局、この物語において知られざる英雄が口を開いたのは後輩に助けてくださいと頼まれたその時、ただ一度だけだった。
前箱庭学園生徒会長『知られざる英雄』日之影空洞。
彼は一切の被害を出すこともなく、全校生徒が一人もその戦いを認識できないほどさりげなく、助力を頼んだ真庭朱雀ですらその勝利を記録できないほどに何気なく、さながら空気のように当たり前に箱庭学園の平和を守りきった。
いつものように一人きりで戦って。
箱庭学園最強『知られざる英雄(ミスターアンノウン)』日之影空洞 対 日本最強『刀を持たない剣士』鑢七花。
勝者、『知られざる英雄(ミスターアンノウン)』日之影空洞。
現在二戦二勝。残り一試合。この時点で箱庭学園の勝利は揺るぎなきものとなり。
たとえ真庭朱雀が負けようとも、既に『不忍』と『日本最強』が消えた今、大勢に影響はない。
故にあとは消化試合。
箱庭学園で巻き起こるこの戦争の物語。
そのエンディングは既に読み調べるまでもなく、解りきったものとなる。
記憶とは歴史。記録された歴史。そして歴史が生んだ争い。
真庭朱雀が挑むのは真庭忍軍最強の忍。鳳凰。
かなわない敵。越えられない歴史。目指すべき神との戦いの中で明かされる真庭朱雀の真実とは!?
そして生徒会長黒神めだかと風紀委員長雲仙冥利の前に現れた前風紀委員長時宮天使!!
誰のせいでもない戦い。誰のためでもないこの戦いはついに終わりを迎える。
次回、めだかなボックス風紀委員会活動記録―始まりのエピローグ編― ENDING。
―なければ―
―◆◆◆◆―
―優しい正義―
―■ ■ ■ ■―
ご期待ください。
とか言ってみたり。