テレポートを体験するというのは人生で一度でもある方が珍しい。
それが命を救いでもしたら奇跡だと思うけれど、それが自身にとって都合が良い形で起きたならばそれはただの不幸な事故だ。
ボクの場合は後者だっただけという話。
しかし、これは見ようによってはとてもオイシイ状況なのかもしれない。まぁ、その手の好色家にとってはの話だが。
場所は崖下、周りは樹海、目の前には整った顔立ちの、弱り切った様子の幼い少女。完全に事案である。
さて、ここでボクが取れる行動は大きく見て3つ。
少女に声をかける、何も見なかった事にして去る、夢である事を信じ取り敢えず時間が過ぎるのを待つ。
「あ、なたは……誰?」
舌が上手く回らないのか、少女は途切れ途切れに言葉を発する。
左腕は怪我をしているのか布で首に吊ってある。もしかしたら骨折しているのかもしれない。
続けて言うと、少々臭う。鼻を押し付けて臭いを嗅いだ訳でもないのだが、汗とは違う、梅雨の雨に濡れた犬のような臭いだ。
状況は未だに飲み込めないが、取り敢えず遭難しているのは間違いないと思う。困っている女の子がいるのに無視というのは冷たい現代社会に生きる者であったとしても忍びない。
飲みかけで悪かったがポーチからミネラルウォーターを取り出し、ペットボトルのキャップを開けてから少女にくれてやった。
少女は一言だけ礼を言って中身を全て飲み干してしまう。
「極限状態における幻覚、という訳ではなさそうね。あなたは夜更けに密林に入る特殊な趣味でも持っているの? 事のついでに簡単に森を抜けられる道があったのなら教えて欲しいのだけれど」
喉が潤い、弱弱しいながらも少し落ち着いたようで少女は饒舌に語りだす。
「残念ながらボクも遭難中だよ。つい5分前からね」
「それは残念ね。私は17日前からだから先輩になるのかしら」
日数が多ければベテラン遭難者という事にはならないと思うが、それを指摘するような事をしていては話が進まない。
「じゃ、そんな遭難18日目の先輩に質問だ、ここからさっさと抜け出す方法は?」
「残念だけれど、確実な方法は無いわ。せめて」
「ああ、成程」
ボクは端末を取り出して地図を立ちあげる。
うん、地図を見た感じではそこまで広い森では無いらしい。アマゾンの密林に比べたら可愛いものだろう。
「じゃ、ボクはこれで。君もさっさと家に……」
待てよ、帰り方が解っている筈なのに衰弱する程ここに留まっているということは、家に帰れない理由があるのかもしれない。
遭難系家出ヒロインはちょっとボクの預かり知る属性ではないので、対応の仕方も分からない。
ここは、さっさと森を出よう。
「ちょっと待って。あなたはさっき道をしらないと言ったわよね?」
「知らないも何も、この森に道はないと思うけれど」
「そう、あなたは随分と面倒な性格をしているのね。質問を変えるわ、その手に持っている機械は何?」
「何って、携帯電話だけど……」
少女は黙って何かを考え込む。
「つまり、あなたの携帯電話は地形を把握し地図に表せる機能を持っている。ということかしら?」
この子はアレか、地図機能を知らないと。今時どの携帯電話でもついているというのに……。
もしかして、ネットもテレビも無い貧しい家庭で学校にも通えず、遂には身売りされて逃げていたのかもしれない。このご時世ではあり得ない話だけれど。
「……その哀れむような視線は何?」
「いや、苦労してきたんだろうなぁーって。親が恐くても警察に行った方が良いよ。保護して貰えば、もしかしたら孤児院にいけるかもしれないし、養子にしたいって人もいるんざゃないかな」
「何か盛大に勘違いをしていないかしら」
あれ? 話が噛み合っていない。どういう事だろう。
「えっと、状況が解ってないみたい。もしよければ、どうしてこんな森の中で遭難しているのか教えてくれないかな?」
「先にあなたの事を話してくれる? 正直、口を開くのも億劫なのよ」
至極落ち着いた様子で言ってのける少女に、思わず溜め息を吐きそうになった。いや、声も出せない位に弱り切っている証拠か。
世のラブコメ主人公達の精神力は、尊敬に値するものだったのだな。この状況にどうしても面倒だ、見ないふりをしていれば良かったと感じるボクはきっと友人その1がお似合いなのだ。
そもそも、ボク自身が自分の身に何が起きたのか把握できていない。
気づいたら宙に浮いていて、地面へボディプレスを仕掛けていたのだ。周りを見渡せば崖と樹海と、目を丸くした少女。
補足すると、テントがいくつか張ってある。サバイバルまでして家に帰らないのか……。
人間、本当に意味の解らない事態に陥ると深い所まで考えられなくなってしまうらしい。
「……現実から目を背けている所悪いんだけれど、方法があるなら森を抜けるのが賢明よ」
「へ? あ、分かったよ」
ボクは少女に右手を差し出す。少女は気怠そうだった目を僅かに開く。
「何をしているの?」
「人命救助。君さ、こう言うのも難だけど今にも死にそうって感じだよね。自覚はどれくらいある?」
「そうね……、今日が最後かもしれないと感じるくらいには感覚が麻痺しているわ」
見た所、少女はボクより年上では無い。そして、服装も山籠もりをしに来たという訳ではなさそうだ。それが、18日間も遭難生活を続けている。
早く病院に運ぶのが最善だ。関わった以上は最低限の行動はしよう。
「それより、さっさと助けさせてくれないかな」
「残念だけれど、私はもう助かる見込みは無いわ」
「それは困る。目の前で死なれたらボクは明日からどう生きていけばいいのか分からなくなる」
「では一緒に死にましょうか」
「随分とユーモアのある遭難者だね」
「そうだ、あなた名前は?」
「話に脈絡が無さ過ぎるよ。……ボクは桂木竜馬、君は?」
「よろしく、竜馬。私は――――
ボクは目覚まし時計のアラーム音で目を覚ます。
どうやら、あの日の夢を見ていたらしい。6年前だというのに、よくも鮮明に思い出せるものだ。
あの日のキチガイ女との出会いはボクの人生で最大の転機であり、不運な事故だった。
さて、現在時刻は2011年4月4日の午前11時、私立美浜学園の学生寮1階の一室。
「うん、今日も良いサボり日和だなー」
さて、2度目で通学2年目なのに1年生の学園生活の始まりだ。
.....
私立美浜学園。現在の全校生徒数がボクを含め6人、しかもボク以外は皆女の子という理想的で据え膳状態かと勘違いせざるを得ない学園だ。
まぁ、そんな学園に通う女の子に普通な子がいる筈もない。見てる分には飽きないけれど、深く関わるのは御遠慮したい。
聞いた所では、うち2人は訳ありお嬢様。精神的な問題を抱えている子が2人、世間体な事情がある子が1人。
色々と頭のネジが飛んでいると言われたボクが言うのも何だけど、コイツらはマトモではない。
それと、現在5月で後半の23日なのだがその内もう1人増えるらしい。男、イケメン、顔以外のステータスもかなり高いとか。
この時点でボクの学園生活は灰色になる事が決定しているのだが、通わなければいけないので仕方無い。
あわよくば1人くらいお近付きになれないものだろうかとも考えたが、恋愛がしたいだけならゲームをしよう。ギャルゲーだ。
入学2年目で1年生な理由は、ゲームに時間を割いていることによる出席日数の問題だけれど、もう必要無い勉強はやる気になれないのだ。
学園長がマジ泣きしたら顔を出そう、それまでボクはこの自堕落な生活を続けたい。
「りょーまー、いるー?」
不意のノックと呼び掛けにボクの肩が思わずビクリと震える。
声の主は見なくても分かる。こんなアホさが滲み出ている声でこの部屋を訪ねてくる奴はこの学園には1人しかいない。
「はいるわよー、って。アンタまたゲームやってんの?」
「むしろ、ボクがゲーム以外をしている所の方が少ないんじゃないかな」
「へ? あ、そう言えばそうよね。じゃあこれが普通?」
「至って正常だね」
金髪ツインテールのちょっと……いや、かなり頭の弱いこの子は松嶋みちる。昨年の同級生だ。
ツンデレを目指しているらしいのだけれど、ボクから見たら全てのツンデレに今すぐ詫びて来いというレベルの雑さなので、彼女にはアホの子という称号をひっそりと認定した。
「そんなことより、はいコレ。終わったから返すねー」
「参考になった?」
「うーん……たぶん」
松嶋さんからギャルゲーを回収し、適当に棚に突っ込む。そろそろ入れ替え時かもしれない。
「そうだ。学園長からプリント貰って来たんだった。……あ! べ、別にアンタの為に持って来たんじゃないんだからね! 学園長の頼みだったから、仕方なくよ、仕方なく」
「へー、何のプリント?」
「分かんない。はい、プリント」
松嶋さんが鮫を模したポーチから雑に折った紙を取り出してボクへ差し出してくる。
それを受け取って確認してみたら、足りていない単位がある授業とその日程。ついでに、ボールペンで「余り休むと退学になっちゃいますよ?」と書かれている。
……週1はやり過ぎたかな。うん、気をつけよう。
ちなみに、週1とは週に1日ではなく1回であり、1時間未満しか授業に出ていなかった。
テストは受けているし、文句をつけられるような成績は出していないので、完全に対人恐怖症と勘違いされているけれど、学園長にどう思われようと知った事ではない。年齢が守備範囲外だし。
「何難しい顔してんの?」
「ん? ああ、そろそろ真面目に登校しないと退学になるからどの程度サボったものかなーってのを考えていたんだよ」
「え、アンタそんなに成績悪かったの?」
「出席日数の問題だよ。サボり過ぎだってさ」
「ふーん」
松嶋さんはゲームソフトの並ぶ棚を物色し始める。
許可も得ずに部屋に入り、人のギャルゲーを物色し始める辺りは異常としか言えないのだけれど壊されたり捨てられたりしないだけマシだとおもってしまう。
「ツンデレの子が出るのってどれー?」
結局分からないのか、ボクにゲームを選ばせるのはいつもの事なのだけれと一応恥ずかしいので止めて欲しい。
しかし選ばないと二次被害が発生するので、無難な所を選んで渡す。
間違えて18歳未満プレイ禁止のゲームを持っていった時はディスクがお亡くなりになった。しかも、内容が頭から飛んでいるというのだから質が悪い。無駄死にだ。
それから態々、棚を二重にして鍵をつけそっちのゲームは取り出せないようにしたのだがこの女の事なので棚を壊して持って行ってしまう可能性が捨て切れない。
「……これでいいか」
バッドエンドとグッドエンドの比率が9:1のマゾゲーだけれど、長いし、しばらくは返しに来なくなると思う。救いはない。
「ツンデレの子はどれ?」
「この子」
パッケージに映るヒロインの1人を指さす。
「えー、金髪ツインテールじゃないじゃないの。ツンデレは金髪ツインテールって決まりでしょー?」
「金髪ツインテールが多いのは認めるけれど全員がそうだったら個性じゃなくなるから仕方無いよ。文句を言うなら自分で探して買えば」
「え、それは……その。恥ずかしいし……。アンタなら普通に買って人前でやってても気にしないかもしれないけど。ね?」
ひょっとしてコイツはボクの事を厚顔無恥な野郎とでも勘違いしているのではないだろうか。
流石に公共の場ではやらないし、ネットで買えれば文句はないのだが寮住まい故の弊害というものがあるから仕方なく買いに出てるのだ。
他にも色々と支障があるので、ネットは諦めた。
「ところで松嶋さん、今まで気にしてなかったけどハードはどうしてるの? いつもソフトだけ借りて行くけど」
「ちょ、ちょっと! 何いきないハードとか言い出してるのよ! 別に興味なんかないんだから!」
……何言ってんだコイツ。
仮にもボクは親戚には及ばないが多数のギャルゲーをこなしてきた。そんな経験から松嶋さんがどういう思考で答えを出しているのかは大体想像がつく。
実際に見ると、何とも残念なものだ。
「一応言っておくけど、ハードってのはゲーム機の事ね。決して内容がハードとか、そういう事ではないんだよ」
「し、知ってるわよ!」
顔を真っ赤にして唸っておいて、どの口が言うのか。
「で、どうしてるの?」
「ゲーム機はサチに用意して貰ってるけど」
「了解、小嶺さんがハードだけ借りてく理由がよく分かったよ。前に、壊してしまったから弁償するって言われた理由も納得がいった」
惜しむらくは、小嶺さんがムッツリ属性ではなかった点だろうか。
「え、サチも何かゲームやってるの? それってあたしもやれる?」
面倒になってきたので、お引き取り願おう。
「ちょっと何ー!? 何で部屋から追い出すのよー!」
「ここがボクの部屋だからだよ」
松嶋さんを廊下に押し出してドアを閉める。残念ながら鍵は壊されたままなので施錠はできない。
それはそれで、夜這いイベント的なものが今後ないかなーと淡い期待をしているのだが生憎とそういうことはないらしい。
プリントという形で警告も来たし、留年する理由も既に無いし、真っ白な履歴書を埋める為に授業には出よう。
松島さんが部屋を出て、数秒。戻ってくる気配が無い事を確かめてボクは机の上のPCを起動させる。予定通り、メールが1通届いているようだ。
「風見、雄二君ね……。身長178って、168センチのボクに対する当て付けかな? そんな情報は欲しくもないんだよ」
送られて来たのはやってくる転校生の情報。直接の面識は無いが、風見雄二について話だけは聞いていた。
正直なところ、関わったらボクなんか死んじゃうんじゃないかなーという気がする。写真も掲載されていたけれど、イケメン指数が高い。ボクを4とするならコイツは8だ。性格を加味したらボクは1程度まで落ちる事を考えてもこれは嫉妬に値する。
ディスっていても何か変わる訳ではないだろうし、別に何か言うつもりはないのだけれど。
身体的プロフィールからざっくりとした経歴。ついでに趣味嗜好。そんなものを送られてもボクはホモ野郎ではないのでどうでもいい。
だけど、最後に1文だけ「友人に恵まれていなかったから、仲よくしてあげてね」とこれ見よがしに書き込むのは卑怯だ。
だから、ボクは相手が見る保証がない返信をする。
“そうだね、風見雄二がホモ野郎じゃなかったら親友程度のポジションはかっさらてやるよ”
対人コミュニケーションなど、これまで熟してきたギャルゲーで経験は十分だ。
「今日転校してきた風見雄二だ、よろしく頼む」
「ボクは桂木竜馬。この学園にボク達の他に男はいなくてね、まぁ仲良くしようか」
書類上で見たけど、悔しいまでのイケメンだった。振った女に後ろから刺されてしまえ。
時刻は既に夕方。雄二君はメイド服を着た少女――名前は小嶺幸というのだが、またこの小嶺さんについては少々説明に時間を要するのでこの際は省略する――に連れられてボクの部屋へ来ていた。挨拶をして回っているらしい。
「桂木、オマエの事は何と呼べば良い?」
「好きにどうぞ。桂木でも、竜馬でも適当な愛称を付けて貰ってもいい。不快にならない程度でね。雄二」
「では竜馬と呼ばせて貰おう」
「……小嶺さん、ボクは何か変な事を言ったかな」
雄二の後ろで、小峰さんが何か驚く事でもあったのか目を丸くしていた。
「いえ、桂木さんは何方でも苗字に“さん”を付けて呼んでいたので。ああ、コイツはやっぱりホモ野郎だったのか、という見解に走ったものの、普段の行いを鑑みると“女性に耐性がまるでないヘタレ男子”の方がしっくり来てしまい、マキちゃんの予想は当たっていたのだという事に気づいてしまいまして……」
「……そうなのか、竜馬?」
確かに他の子は苗字だし“さん”を付けて呼んでいるが、それはボクにとっては普通の事だ。
しかし風見さん、と呼んだ事のある相手は既にいるし同性の下の名前に“さん”をつけて呼ぶのは背筋に来るものがあるというだけであって、深い意味は無い。
「好きに捉えて貰って構わないよ……」
説明は、面倒だ。
こうして風見雄二と知り合い、交友を深めていこうと思っていたのだが深刻な問題が一つ。共通の話題がまるで無かった。
片やインドアで半分ニート生活、片やアウトドアで朝からランニングをする健康な生活。2人とも読書はするが、ボクは偏りが激しすぎるし、雄二君は図書館で借りてきては何でも読む。勿論、ボクが読んでいる本は図書室に置いてあるようなジャンルの本ではない。
生徒数が増えたとはいえ7人。学食も動いていないので「昼食を一緒に取ろうか」と誘うにも。というか、あのイケメン、転校2日目には既に女生徒を1人落としていた。
その女生徒は周防天音という子なのだが、元々世話好きな性格だなーと感じてはいたし、ボク自身もその恩恵に預かる所があった。
自称ビッチというのも重々承知していたが、他の生徒もいる中で「抱いてー」という発言をしている辺り、彼女はもう駄目なのかもしれない。
時折ボクの所へ来て「ゆーじってば、おっぱいが好きって公言してるくせに未だに手を出してくれないんだけど同じ男としてゆーじが何考えてるか分かる?」等と聞いてくる。
なんか、ボクが学園に来た時の反応と随分違うね。そう話したら、さりげなく身長の話を持ち出して来やがった。周防さんの身長は169センチらしい。
髪をワックスで盛っている分、辛うじてボクの方が大きく見えるのだが。これはもうどうにもならないのだ。
さて、話が逸れたけれど、つまり雄二君とは上手くやっていける気がしない。
彼が転校して来て1週間も経っていないが、随分と男としての差を見せつけられてしまった。
別にハーレムを作りたいとか、そういった思惑は無いのだが見ていて楽しいものでもない。ボクにそこまでの甲斐性や性欲はないんだ。
あぁ、ゲームは別だ。ハーレムルートって嫌いじゃないよ。終わった後に主人公モゲないかなって思うけれどね。
さて、時間を跨いで6月中旬。雄二は順調に女の子達と仲良くなっている。モゲないかな。
ボクが半年を掛けた結果の成果を一ヶ月に満たない内に追越してしまうとは驚きだ。ボクがあまり周りと関わろうとしなかったのも原因なのだろうけれど。
榊由美子という生徒がいる。この子が結構問題で、男子生徒の存在を認めない点があった。だからボクはなるようになれと、当り障りない接触だけに留めていた。
が、雄二は榊さんの怨みでも買ったのか教室内でカッターナイフで切り掛かられる事態になる。雄二は軽くいなして怪我を負う事も無かったし、榊さんもそれが解っているから遠慮なく襲いかかっていたのだろう。多分。
しかし、ある日ピタリと榊さんの襲撃は止み素っ気なくも挨拶くらいはする仲になっていた。
入巣蒔菜という生徒がいる。人懐っこい性格で幼い容姿もあって猫を連想させる少女なのだが、過去の事情によって滅多に本性を見せない。
昨年予備学生として入学した当初も誰にも懐く事をせず、切っ掛けとなる事があるまで誰にも本性を見せる事は無かった。
ボクは別だ。本能的にコイツは自分より下だなと感じ取ったのだろう。それはそれで美味しい思いが出来るかと思ったのだが、周防さんと和解した後にボクは用済みになった。
で、雄二はというと気付けば入巣さんを娘の様に扱っていた。何があったし。
小嶺さんは基本的に誰の言う事も聞いて完遂してしまうので良く分からないが、それでも雑談に花を咲かせているのを良く見かけるようになった。
松嶋さんはちょろいから判断基準にならない。
「雄二、夏休みだけどタイかモロッコに旅行にいかないかい? 君の男根を切除したいんだ」
「待て、お前はいきなり何を言っている」
「君の女性に対するアプローチは同性から見て羨望すると共に呪詛を捧げたくなるものなんだよ」
「そうなのか。俺としては普通にしているつもりなのだが」
「もげるがよい。イケメン死すべし」
とはいえ、ボクも本気で嫉妬している訳ではない。彼に敵対した場合、どんな目に遭うのかは想像したくもない。
この前、こっそり彼の部屋に忍び込んだらいきなり物陰から現れて足祓いからの踏みつけコンボを頂いた。死ぬかと思った。
ボクは強者には従順に生きるのだ、無闇に敵を作ってはいけない。
「そんな訳で、貴女様の弟君は大変充実した日々を送っていますよ一姫さん」
「態度が気に入らないわ、もう1度言い直して」
目の前に座るキチガイ女、一姫との縁は簡単には切れてくれなかった。
.....
命の恩人である筈のボクが何故一姫の言いなりになっているのかはボクの出自を明確にする必要がある。
まず、ボクがテレポートに巻き込まれた原因。あれは、そういう装置を‘ボクが開発していたとき’に誤作動を起こしたためだ。
結果、空間異動ではなく時空異動になってしまいボクは存在しないはずの人間に。ギャルゲーと研究にのめり込んでいたボクに住民登録だとか戸籍だとかをどうこうする知識はない。
結果、一姫に全て押し付けた。そして気付いたら数え切れない程の弱みを握られて隷属させられていた。ボクも何を言ってるのかわからないけど、そうなっているのだからしかたない。
ボクの最終目標であった2次元への旅は遂に儚い夢に終わった。一姫が研究を許してくれないのだ。
「それで一姫、君の最愛の弟は未だに君が行方不明だと思っているらしいけど、そこの所はどうしていくおつもりで?」
「あら、私は行方不明で合っているわよ? 6年前に事故にあった風見一姫は何処かの組織に回収されて地下で缶に詰められ遺体も見つかっていないのだから」
「その話やめない? もしもボク等のやった事を観測出来る警察組織があったらお尋ね者もいいところだよ」
「貴方の研究が穴だらけのポンコツなのがいけないのよ」
「なら世間の認める天才の一姫さんは完成させられるんですかね……」
ボクは不満そうに言ってやるが、目の前のコイツは時空を超える機械を簡単に組み上げてしまいそうで怖い。ボクの半分フィーリングな理論で完璧な理論を導き出す怪物だ。
「今の私には無理よ。身を隠している現状では設計図を書くところまでしか出来ないもの。部品やエネルギーが用意出来ないわ」
「あ、もうそんな段階ですか。そうですか」
ボクも周りから(残念な)天才と持て囃されたものだが、世の中には本物がいるらしい。
ボクが拗ね出すと一姫の白く小さな手が頭に乗せられる。子供扱いされているようで不満が強くなる。
「そんな顔をしないの。風見一姫の1番は風見雄二だけれど、私の1番は竜馬、貴方なのよ?」
「……不意打ちはズルい。好感度が振り切るかもしれないじゃないか」
「私の方は振り切っているから安心しなさい」
悔しいが嬉しい。とはいえ、ボク達には当面やらなければならない事がある。
「で、ボクは死にたがってる君の弟を止めなければいけないらしいけど……、彼ホントにそんな事思ってるの?」
「間違いないわ。だから、貴方には楔を打ってもらう」
一姫の赤い瞳がボクの目を真っ直ぐに見る。
「もし全て済んだら、宝くじでも当てて2人で隠居しましょうか。ずっと2人切りよ。どう? やる気は出るかしら」
「……了解、喜んで」
設定的なもの。態と読みづらくしてあるのは気のせい。
オリ主の作ったタイマシンもどきは一方通行。一姫を助けた後、例のアレに見つかって一緒に捕まる。「ボク実はタイムマシン作れるんですよ」とアレのお金を使って作成。左手をマジックアームもどきで隠した一姫とタイムマシンで逃亡。一姫つれて2週目←イマココ
続かない。