麗子がいなくなって5人になった1班だがそのことを不思議に思う奴は誰もいない。
「それじゃあお前ら~気を付けていけよ~!」
太陽王こと遠藤先生に見送られて俺たち一班のメンバーの夏季キャンプが始まった。
今回のキャンプは八町標の外で行われる。
なので移動手段は川を使った移動となる。
もちろん全員が呪力を使えるのでボートを呪力で動かして移動している。
このボートは2人乗りなのだが、今の俺たちの人数は5人だから必然的に誰かが一人で動かさなくてはならない。
今は覚と早季のペア、俺と真理亜のペア、そして瞬という組み合わせになっている。
「瞬、大丈夫?」
早季が心配して声をかけた。
早季が心配するのも無理はなく、呪力を使えるようになったといってもすぐに強力な呪力を使えるようになるわけではない。
実際、この中で俺を除けば瞬以外に一人でボートを動かせない。
まぁ動くは動くがスピードがまったくでない。
「うん、何とか大丈夫だよ」
瞬は笑って早季に返事した。
前々から思っていたが、やはり瞬はなかなか才能がある。
強い呪力を扱えることもそうだが冷静な判断力なども早季たちの中で一番だろう。
「まぁ、瞬も疲れた言えよ?いつでも変わるから」
流石の瞬でもキャンプ中ずっと一人で動かし続けるのは難しいだろう。
だから最初に俺と瞬で交代で一人になると決めておいたのだ。
「あぁ、わかってるよ」
「あぁ~何で俺たちの班は
覚の言葉に俺は特に何も動じなかった。
記憶から消されていることに何も驚きはしない。ただ、早季が一瞬だけ覚の言葉に違和感を覚えたように一瞬早季の体が硬直したのが俺には少し辛かった。
少し漕いだら目の前に八町標が見えた。
「あ、八町標...」
「何だ早季?怖いのか~?」
「そんなわけないでしょ!」
「二人ともあまり興奮しるぎないようにね」
「覚!早季をからかわないの!」
「まぁ何でもいいけど、やるからには楽しもうぜ?」
「「「「おぉ!!」」」」
「それで、お前ら本気で行く気なの?」
俺は目の前の場所を目視しながら、1班の面々にため息をつきながら尋ねる。
「もちろん!さぁいくわよ!」
「おぉ!」
「はぁ~とりあえず形だけは言っておくが、俺たちが向ってるのは
「松も固いこと言わない!ここまで来たなら諦めなさい!」
何でこんな場所に来ることになるかな~。
まぁいつかは知ることになるから構わないのか?
いや、少しばかり知るのも早い気もするが、とりあえずこいつらに目を光らせておきますか。
「とりあえず今日はあそこらへんでキャンプにしない?」
瞬が前方に見えた岩場を指さした。
「うん、いいよ」
「よっしゃ!それじゃあ決定!」
俺たちは一先ず今日のキャンプ地を決定しその岩場に降りた。
まず降りて俺たち男のほうがテントの組み立てやボートが流れていかないように陸にあげたりなどをして、早季や真理亜は夕食に使う野菜などの準備をすることにした。
「だいぶ準備できたね。僕も何か手伝おうか?」
「だ、大丈夫だよ?結構家でもやってるし」
「あ、じゃあ瞬、私と少し変わってくれない?」
真理亜は切っていた野菜と包丁を瞬に渡して林の方に歩き出した。
「真理亜どうしたの?」
「ふふ、早季と一緒に入れる丸太風呂を作りにいくの!」
「あ、ははは」
早季も真理亜の提案に苦笑いしかできていなかった。
「んじゃあ、俺はあっちで魚でも「で、出た~!!!」帰ってくるの早いな」
「ま、真理亜、何が出たの?」
「あっちでバケネズミがおぼれてるの!」
その真理亜の発言に早季や瞬は驚いて真理亜が来た方向に向かって走り出した。
「ほら!あそこ!」
真理亜が指さした先に川の真ん中らへんでおぼれかけているバケネズミが一匹いた。
「大変、早く助けてあげないと!」
「お、おい待てって早季!」
「何よ覚!、早く助けてあげないと死んじゃうじゃない!」
「確かにそうだけど、忘れたのか?俺たちはバケネズミに近づくことさえ禁じられているんだぜ?」
「い、今は関係ないでしょ!?」
確かに村の決まりで子供たちはバケネズミにむやみに近づいてはならないとされている。
禁じられている理由として彼らの姿や形が子供に悪い影響を与えるというのが大人たちの考えだが、だが真実を知っている者にとって、その理由はただの一側面にすぎない。
早季や瞬たちもいつかは真実を知る日が来るのだろう。
「助けよう」
俺がそういうと早季は笑顔でうなずき、覚はお前も?という顔をした。
「覚の言い分もよくわかるんだ、確かに決まりがある。それは守るべきものだ。」
俺は話ながら呪力を使ってバケネズミを空中に拾い上げた。
「だが、目の前で助けられる命を見捨てることは、俺は決して間違っているとは思わないぜ?」
俺は拾い上げたバケネズミを陸のほうまで移動させた。
早季は急いでバケネズミの所まで走っていった。
俺たちも早季の後を追うと引き上げられたバケネズミは俺たちの方に向かって土下座をしていた。
「た、確か額のところにコロニー名と番号が書いてあるんだよね?」
早季は俺たちに確認してから、バケネズミのフードをめくり上げた。
「あ、よかった。ちゃんと書いて...ひ!」
早季はフードをめくると咄嗟に後ろに飛んだ。
初めてバケネズミを見たのだから、そんな反応になるのも仕方がないのかもしれない。
「こ、これがバケネズミ?」
流石の瞬も動揺しているのが見て取れた。
「気持ちわる」
「もっと可愛いの想像してた」
確かに覚や真理亜の言い分ももっともだ。
だが俺は、俺だけはそう思ったとしてもそんなことは決して言える立場ではないのだ。
早季たちは先に戻るといってキャンプ場のほうに戻っていった。
その時、バケネズミが何かを話した。
バケネズミが話す言葉は聞き取りづらいのでその言葉を理解できたのはこの中で俺だけだった。
バケネズミは言った。
『 神様
逃げてください 』
俺はこの時、とある奴に連絡を取ろうとしていた。
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