ゲームチェンジャー   作:のなもちとちみ

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【GF】 ゲネシスファクトリー2

■ゲネシスファクトリー 日本支部

   時空域最高管制室

 

 

「ジャパンゲート第719号、検体候補者15名並びに臨時検体8名の転送を完了」

 

「転送完了を確認、監視モードに移行」

 

 監視モードへ移行した事を知らせるパネルが点灯する。

 

 

「監視モードへの移行を確認、指示を待って特別隔離モードへ移行します」

 

「了解、特別隔離モードへの移行準備開始」

 

 複数の管制官が復唱する中、モード移行を表示するパネルが異常を知らせる点滅を開始する。

 

 

 

「すまんな、佐川……」

 どこか遠くを見るようにして呟いたのは、時空域最高管制室の責任者である。

 

 

「自らの娘よりも、古き友の忘れ形見の心配ですか、美しい話だ」

 そう声をかけた副官は、責任者よりも多少年嵩で、初老に差し掛かっている男だ。

 

 

「貴様はいいのか」

 責任者は副官を見ることなく、言葉だけを返した。

 

 

 副官はニヤリと笑って答える。

「技推からの要請にある検体の必要数は最低6体、候補者の数を考えれば臨時検体が選択される可能性は低いですからな」

 

(自分の娘の性格を分かっていないな、哀れな男だ)

 

 責任者の傍らに立つ副官には、自分の言葉に応えない上司を気にする素振りは無い。

 

「それにしても技推の力も弱くなりましたな、レベル3の超極秘ミッションすら、選考委員会に非公開で行えないとは・・・」

 

 技推とは、技術推進室を指している。

 

 

「予算が無いのだろうよ、とにかく選考委員会に悟られるなよ」

 責任者はそれだけ言うと、再び口を閉じる。

 

 副官の言葉は続いた。

 

「技推も我々も運が悪い、今回は選考委員会がかなり注目しておりますからな」

 

 責任者は管制室のメインモニターを睨んだまま微動だにしない。

 

「初参加で439票とは……もっと別の使い道もあるというものだ、コヤツ、検体にはもったいない」

 

 

(よく喋る男だ)

 

 

「伊藤修一といいましたかな、コヤツが戻らなかったら顧客が大騒ぎしますな、委員会が黙っていませんぞ」

 

 

 責任者は、この饒舌な副官の事を心底気に食わないと思っている。副官も同様に、無口で本心の知れない責任者を快く思っておらず、無意識のうちにその言葉に嫌味が混ざり込んだ。

 

 

「今からでも延期に出来ますが」

 

 少しの間を置くと。

 

「それでは室長のお立場が危うくなりますね」

 

 副官はククッと嫌らしい笑いを漏らす。

 

 

(貴様のほうがよほど危うい)

 

 責任者は感情を出さず、無言を貫いている。

 

 

「では、予定通りに」

 

 副官の催促に対し、責任者は返事の代わりに右手を軽く上げて合図する。副官はその合図に小さく頷くと、管制室に響き渡る声で指示を飛ばした。

 

「1018(ひとまるひとはち)時、現時点を持って極秘ミッション第61号のプロテクトを解除。特別隔離モードに移行、ミッションの速やかな遂行に移れ!」

 

 管制官の各モニターに、「LevelⅢ」の表示と共に極秘ミッションの概要が公開される。

 

 

「レベル3……!? りょ、了解、ミッションの速やかな遂行に移ります」

 女性の管制官が一瞬、苦虫を噛んだような表示を見せる。

 

「そんな顔をするな、これも発展のためだ、くれぐれも悟られないようにな」

 管制官を諭す副官は、怪しい笑みを浮かべていた。

 

 

「室長、本当に、よろしいんですか?」

 管制官の中では、一番若い男が責任者に問いかける。

 

 責任者は沈黙を破り、若い管制官に聞き返した。

「お前はどうなんだ」

 

「嫌ですよ、当たり前じゃないですか」

 若い管制官の語尾には、震えが混じっていた。

 

「すまんな、だが私情は抜きだ、お前達も、俺もな」

 責任者の言葉に、若い管制官は小さく頷いて目の前の操作パネルに手を伸ばす。

 

「分かっていますよ、それに、俺は信じてますから」

 

 そう言って、決意を込める様にパネルの操作を開始した。

 

「室長を、父さんを、美紀を、それと……自分の腕も!」

 その若い管制官の言葉に、副官はまたニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

《ピュイピュイピュイピュイピュイ》

 

 

 最高管制室に甲高い警報が鳴り響く。

 

 誰にも慌てた様子はない、故意に起こしている事態なのだ。

 

「特別隔離モードに移行します! 移行完了まで1200秒!」

 

 メインモニターに表示された「1200」は、1秒毎にその数を減らしていく。

 警報が鳴り響く中、若い管制官は誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「例え検体に志願したとしても……俺が必ず見つけ出してやる」

 

 

「残り1100秒!」

 女性の管制官が特別隔離モードまでの残り時間を叫ぶ。

 

 

 その時、責任者が立ち上がった。

 

「ようし、お前ら! 一芝居打つぞ! 悟られるなよ!」

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