ゲームチェンジャー   作:のなもちとちみ

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【GF】 ゲネシスファクトリー4

■ゲネシスファクトリー 日本支部

   技術推進室 応接間

 

 

「いやいや、今回は見事でした」

 

 そう声を発した男の左胸には、技術推進室の責任者である事を示すエンブレムが輝いている。

 

「ふん!」

 

 テーブルを挟んで向かい側に座る管制室の副官は、不満を隠そうともしていない様子だ。

 

 

「で、委員会の反応は」

 管制室副官の横に座っている阿武室長が問いかけた。

 

 

 技術推進室責任者は、ニヤリとしながら答える。

 

「まったく疑っていない、疑っていない所か、支援まで申し出て来たよ、いやいや、まったくいい人選でした! ハッハッハ」

 

 

 技術推進室責任者の言葉に、管制室副官が怒気を発した。

 

〈ドンッ〉

 

 軽くテーブルに拳を振り下ろす。

 

「落ち着け栗原」

 

 阿武室長の静止を無視するように立ち上がると、栗原副官が罵声を発した。

 

 

「貴様らの要望に娘を差し出す形になったのだぞ! かける言葉はその程度か!?」

 

 

 その罵声に対し、技術推進室の室長は冷徹な笑みを浮かべた。

 

「管制室から阿武室長と栗原副官のご息女、執行部からは平岡執行部長のご息女、さらにゲームチェンジャーの忘れ形見、これだけ豪華なメンバーを切り離したのだ、委員会が疑いの目を向けるわけがない」

 

 一度言葉を区切ると、紅茶を一口すする。

 

「ゆえに【いい人選】だと言ったまでだ、栗原副官、まさかご自分だけが苦しい思いをしているとでも?」

 

 

「ぐ……」

 

 栗原副官は握った拳を震わせながら、どうにか腰を下ろす。

 

 

 阿武室長は姿勢を変える事なく、技術推進室責任者に問いかける。

 

「我々は旧来の手法で再接続を試みる、かまわんな」

 

 その眼光は鋭く、硬い決意に満ちていた。技術推進室責任者は、わざとらしく肩をすくめて見せた。

 

「正直に言えば待ってもらいたいのですが、少し待ってくれと言っても聞いて頂けないでしょう?」

 

「無論だ」

 

 阿武室長の即答に、技術推進室の責任者は軽くため息を付くと、栗原副官に向きなおった。

 

「せめてご子息に少しばかりの休暇を出してください」

 

 栗原副官の右眉がピクリと上がる。技術推進室責任者は言葉を続けた。

 

「候補者リストの発表からヒストリーポイントのキャッチまで、過去最短ですよ、それもずば抜けた速度だ、僅か8日とは恐れ入りました」

 

 技術推進室の責任者は「ククッ」と笑うと「おかげで執行部は準備に追われて大騒ぎでしたよ」と言葉を締めくくった。

 

 

「何日待てばいい」

 

 阿武室長の問に、技術推進室責任者は少し考えてから回答した。

 

 

「止めても無駄なようでですから、すぐに開始して頂いて結構です。ただし、栗原圭一には7日間の休暇を出す事、これが捜索開始の条件です」

 

 数秒の間を置いて言葉を付け足す。

 

「もちろん、ご子息への休暇は極秘事項で頼みますよ?」

 

 

 栗原副官の目は怒りに燃えている。

 

「ふざけるな……探すなと言う事か!」

 

 

 そんな栗原副官の怒りは、技術推進室責任者にしてみればそよ風に近い物だ。気にする素振りも無く言葉を返す。

 

「いやいや、たった今「捜索を開始して下さい」と申し上げたでしょう。ただ、ご子息は少々優秀すぎる、流石にすぐに再接続とはいかないだろうが、こちらの研究データを回収しきる前に再接続されてはかないません、多くの人間が背負ったリスクが全て無駄になる」

 

 

 阿武室長のは一度目を閉じ、思案を巡らせて口を開いた。

 

「いいだろう、そちらの条件は飲む、しかし研究データ回収にかかる時間については保障できん、それがこちらの条件だ」

 

 技術推進室責任者はニヤリと笑った。

 

「いいでしょう、交渉成立ですな」

 

 

 無表情のまま席を立ち、背後の扉へ向かって歩き出す阿武室長に続き、少し遅れて不満げな表情の栗原副官が席を立つ。

 

 阿武室長の背中に、技術推進室責任者が声をかけた。

 

「そうそう、阿武室長、あなたとご息女のやり取りは評判になりましたよ、涙を流した顧客までいたそうだ、お蔭で捜索のための新技術開発に寄付まで集まりましてな、総統本部長も感謝しておられましたよ……ククッ」

 

 その言葉を受け振り返った阿武室長の目から、恐ろしいほどの眼光が発せられる。

 

「速見室長、我々は確かに一蓮托生だ。とは言え……」

 

 そこまで言うと再び扉に向きなおり、技術推進室責任者に対して背中越しに言葉をかけた。

 

 

「我慢にも限度があるという事を覚えておけ」

 

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