■ゲネシスファクトリー 日本支部
選考委員会 監視部モニタールーム
世界各地に幾つかある支部の中でも、日本支部が担う責任は特に重大であり、全ての支部を統括する【総統本部】は、ここ日本支部に併設する形で設置されている。ゲネシスファクトリーの歴史を紐解けば自然と理解しえる話しであるが、それはまた別の物語である。
ゲームチェンジャー候補者選考会が行われている期間中、この部屋では24時間体制の過酷な任務が行われている。
その部屋には無数のモニターが設置されており、交代制ではあるが常時8名の女性監視員が配置されている。選考会参加者達は、個人に限定されるプライベート空間を除き、ありとあらゆる場所でこの部屋からの監視を受けている。
右から数えて6人目の監視員が、監視している部屋の異変に気づき上司に報告した。
「監視部長、第6班なのですが……」
監視部長と呼ばれた男は、女性監視員の後ろに立ってモニターを覗き込み、モニターの中で行われている会話に表情を硬くした。
「看破される……かもしれんな」
別モニターを監視していた監視員もそのやり取りに注目しはじめている。監視部長は、腕組みをして少し考えると指示を出した。
「守秘レベル2までの漏洩に関しては目をつぶれ、今回のサポート選出には執行部からの推薦が絡んでいる」
「執行部が!?」
女性監視員は目を丸くして驚いてみせた。
「ああそうだ、我々にはよくわからん、まずは顧客に迷惑をかけない事だけを考えろ、それが仕事だ」
女性監視員は頷き、無言で監視に戻った。
彼等の仕事はゲネシスファクトリーにとって「不利益」になりかねない情報の漏洩を防ぐ事にある。仮に漏洩が発生した場合、その拡散を防ぐ手段はお世辞にも人道的とは言えない手法がとられる事もあった。
「あ、監視部長、この場面なのですが、この部分も通訳部に依頼しますか?」
何かに気付き、監視部長に確認を求める。
監視部長は少しばかり、面倒だとでも言いたげな表情をしながらも、再び6番のモニターに見入った。
「少し戻しますね、この場面です」
戻して再生した場面では、金髪の男がなにやら叫んでいる場面だった。
「――なんと言った?もう一度再生を……」
監視部長は女性監視員に対し、もう一度再生を促す。
「音も上げてくれ」
女性監視員は映像の音量を上げた。
『惚れてまうやろぉぉぉ!』
監視室の空気が一瞬固まった。
「こ、これを通訳するかどうか……」
女は悩んでいる様子だが、監視部長に迷いはない。
「しろ、しなければ【この金髪は何と叫んでいたのだ】と問い合わせが殺到する……」
「はい、了解しました」
了解した女性監視員も、指示した監視部長も、通訳部が字幕になんと記載するべきか大いに頭を悩ませる事になろうとは、この時点では考えてもみなかった。