化学力で襲う敵が実はたくさんいるので。
4話 迫る昆虫軍団
翌日、彼は司令部に訪れた。執務室。腰掛けている提督の前で頭を下げた。
男なのに対し、愛らしい顔立ちをしているから本当に天才なのか半信半疑だった。
加賀が突如倒れ、病院へ搬送された。その詫びに葵博士が提督の前で頭を下げた。
必死に頭を何回も下げ上げ繰り返す。
「俺じゃなくて加賀に謝れよ」
優秀な艦娘を病院送りした。戦力を妨害してしまったから提督に謝りに来たのだろう。
「それに加賀から聞いたけど、謝るのは姉の方だろう。なんでいないんだよ」
「それは・・・」
姉から無理矢理頼まれただけ。
提督はため息を吐いた。
「大変だなあ」
だが葵博士はそれで良かった。幼なじみからずっと変わりもなく、性格を維持していたから博士は嬉しく感じた。
戦いのない時は部屋でのんびりと過ごす。畳の上で寝転ぶ闇風の寝顔は今身体をすり寄せて寝ている黒猫と似ていた。黒猫の親子が一緒に寝ているようだと何気に感じてしまう島風。
「黒猫親子ぉー」
呟く島風。初めて顔を合わせた時、島風は彼の前で舌を出した。自分よりもスピードが遥かに劣っていたから。その嫉妬心が心の底から湧き上がった。唇を噛み締め、手掌に力を込め、彼の気づかない所から睨んでいた。
いつか超えてやる、と決めても戦闘機以上の速度にいくら鍛錬を励んでも無理そうだった。
だから・・・諦めた。
その後から増悪感が消え
「兄ちゃん起きてー」
親しく兄ちゃんと呼び、暇な時に遊びに来る。声をかけても目は開いたりはしない。
横腹を撫で回して、闇風を起こす。揺さぶったたら、彼の目はゆっくりと開いた。
小さな唸り声を上げて、身体を垂直に立てた。脚は交互にして座る闇風。
思考が定まらず、目が半開き状態だった。
「暇だから遊ぼー」
頭を撫でて寝ぐせを直す闇風。
「遊ぶと言っても人間の遊び方なんか知らない」
宿舎に入る前から人間逹の行動をずっと眺めてきたが何をしているのか理解できなかった。
普段自分なりの生活で暮らしてきた為、人間の生活には慣れるのに困難だった。
まだ一般常識が馴染み薄いから加賀から教えてもらっているが今入院している。
だから今日は一日中のんびりしようと昼寝をしていた。
座っていた島風が一瞬にして立ち上がる。
「しょうがない人。いるじゃないのほら」
「誰がだよ」
島風が彼の右手を掴んだ。
「馬鹿ね。私よ」
強く引っ張ることに闇風の身体まで動かしてしまう。
「せっかく仲が良いんだから一緒になったていいじゃない」
納得いく言葉だろうか、と何気なく不思議に感じてしまう。俺は以前から艦娘逹を見てこう思っていた。
いつも戦っているから皆好戦的な者だと推し量っていた。だが近くで見ると仲間思いという印象が頭の中で沸いてきた。愛情やら友情とやら。それが艦娘にとって唯一の宝物。多分、ここは俺にとっては・・・
何かを学ぶべき場所・・・。まだ分からないけど自分はできそう・・・でもやはり・・・。
回想に耽っている場合ではなかった。島風が消えた。
(あいつ置いてきやがった)
既に玄関先から飛び出していた。悪戯のつもりで置いてきた。
「アハハッおっそーい」
だが今は
「お前がな」
島風の速度は闇風に劣る。だから島風に先導させ、同じ速度に合わせ、走る。最中で声をかける闇風。
「お前。いつもより速くなってないか?」
だが島風は
「気のせいじゃない?」
と真っ直ぐ向いたまま、短い言葉で返事をした。
一緒に過ごす度に彼女の様子も少し変化していく。近頃では自ら特訓をし始めていた。
いつも1人で。俺と同じように1人で。
広場に着いた時だった。住民、艦娘逹の悲鳴が上がる。
四散する人々の真ん中に立つ3体の影。
影は虫に酷似していた。あるクワガタ型、カマキリ型、シミ型の怪人。
「我らは昆虫族!」
中心となって声を上げるクワガタ型の怪人。
「我々に居住地を明け渡せ!さもなくばグエッ!!」
闇風の前蹴りが頭部に炸裂。割るような音の同時に骨格が砕かれる。
倒れた後、背後からカマキリ怪人が腕を広げ、闇風に襲う。突如後ろ頭から攻撃で頭が揺れる。後ろに振り向いた先。カマキリ怪人の頭よりも少し高さから島風が構えていた。
拳を握りしめたこの姿はまるでボクシングで構えているような戦闘態勢だった。
“ラビット・サブマシンガン”!
短機関銃如く発射速度の速い連続パンチ。怪人の身体全体に物理的な攻撃を与える。特訓の成果。その影響でてきさを翻弄する事ができた。
最後の一撃。闇風から教わり、自ら使いこなした技
自慢のスピードをいかし、より効率的に発揮する肉弾戦。島風の目が鋭く光る。
身体ごと回転させる回し蹴り。怪人の横腹に直撃。柔らかい身体により、体型が曲げた状態と変化していた。
地面に横たわるカマキリ怪人。
戦闘を行わずただ傍観していたシミ怪人。腰を落とし、後ずさりをする。
「ひええっ!カマキュラス先輩とクワタガー隊長が殺られた!」
「おい虫」
怪人の前で見下ろす闇風の姿。彼の肉声から殺気を感じる。その場で停止する怪人。
怪人の勝利に誇らしげに跳ねる島風。
「勝ったぴょ~ん」
勝利をつい闇風に報告するが、誉めてもらえなかった。
それは攻撃時の仕留め方。
「連打が甘い」
短い言語で腕を組んで結果を口にする。
念力で怪人の身体を宙に浮かばせ、垂直に立てる。動きが封じられ、もがく事ができないシミ怪人。
「俺は殴り合いの専門ではないが、これだけは教える」
腰を低く。構えのポーズに入る闇風。
「連打とは」
一発一発、目標を外さす全て打つもの。
「こんな感じに」
“黒拳集弾”
島風の発射速度を凌ぐ連打。彼の教えのとおり、一発も外さす、集中している。
この戦法によってダメージの効率が更に上がる。特に顔とかいった急所だ。
「肉弾戦を主力に使う者が必ず身につける戦法だ。以後使用するように」
倒れ込むシミ怪人。後、危機から逃れた者たちの歓声が上がった。
歓声の波に浴びる2人。だがそれでも喜びを感じなかった。所詮、こいつら雑魚だから。
外出に再開する2人。ある施設へ向かう途中であった。
悲鳴は彼らの聞こえない距離からまだ上がっていた。
場所はスポーツジムの付近であった。
今度の敵は身長3メートルに達する巨体で雑魚感をという雰囲気を漂っていない個体だった。
コーカサスオオカブトに酷似した昆虫族。不気味な笑みが顔に表している。巨大な腕を高速に振るパンチ、エルボーによる打撃で車や建物を次々と破壊していく。
ただそれだけは物足りなかった。
「人間も潰す!」
民間人にも破壊目標として襲う。その時だった。
「待て悪党!」
突然のかけ声の方向へ怪人は睨みつけた。闇風逹以外に刃向かう者がいた。
半分の黒い仮面と黒いグローブを装着した姿。
現れた時、人々は安心することができた。
数多の怪人を倒してきた
「正義の艦娘!ウイングブラック仮面参上!」
怪人の前で構えを見せる。
このピンチの時にかけつけ、立ち向かうという事は
「人間のヒーローか・・・フン、くだらん」
ウイングブラック仮面。怪人に目掛けて進んでいく。
「とうっ!」
5秒後。
ボグッ!
「はっ、早くタンカを運べぇええ!」
ある屋上からその光景を眺めていた葵博士と提督だった。
双眼鏡の視界に人が倒れている所に注目する。
「羽黒の奴・・・何やってんだ」
同じく双眼鏡で覗く葵博士。早くも一旦中止する。
「数体の怪人に勝利した彼女。でもあの強大ではね・・・」
時に噂で聞く昆虫族。精人の他にも知能を持った種族が存在する事は無論承知。
彼らは大陸を渡って人間を土地でも構わず支配しようとしてるのか。
彼らは悪事のつもりやってる訳じゃない。生きる為に手段を選ばない。生存競争の為か。
黒海精人の生き残りが姿を現して以降、人類以外の知的生命の動きが活発になった。相手は精人より下回る存在。
いると分かって刃向かうなんて哀れな部族だ。
何か策でもあるのか。
突然提督が叫ぶ。
「また戦闘が始まったぞ」
「そうですか・・・なら姉の迎えに行きます」
と言った後、背を向けて、入り口へ向かって歩きだした。
「おいっ、今呑気でやってる場合か」
葵博士は提督に顔を向ける。
「大丈夫ですよ。姉がスポーツジムにいますから」
少し焦りの気どりを彼の前で見せる。
「いやそうじゃなくて、今は迎えに行ける状況か?てというかジムの前に怪人がいるんだぞ」
「そんな事は分かっています」
それはどうしてかって?
姉ちゃんがいるから、どうぞ安心を。
頬に殴られた損傷を残す。殴打によって腹を大地に突く怪人。
突如として出現した女。怪人の前に接近し、見下ろす。怪人を黒と塗り分けるようなこの表情。
長い黒ズボンとタンクトップを着用。露出した腕は強靭な肉体で少し膨張している。
そして振った拳。それは血管が人間以上に膨れ上がっていた。
「てめぇ・・・!人間か・・・!?」
「ええ、正真正銘のね・・・」
葵博士の姉!見参!
横たわっているウイングブラック仮面に見つめる。
(よくやったよ。ナイスヒーロー)
近頃艦娘までこんなことしちゃって。私の2人の舎弟も仮面が到着する前に負傷している。
だから
「世話になった分、返すからね」
怪人の手甲。彼女の後ろ頭から襲いかかる。
「・・・遅えぇ」
素手で受け止めた。
怪人に視線を向いた時、目が光らす。
「トレーニングの途中だから早く終わらせたいの」
だから
腕をX字に組んで姿勢を構える。
「速攻でぶっ倒す・・・!」
“シスタックル”!
腕を相手の身体にぶつける突進攻撃。この体当たりは船底に風穴が開く!
化け物並みの怪力。提督は言葉を失ってしまった。
これが博士の英知によって力を得た実験の成果。今頭の中に思った言葉を博士に口にしてしまう。
しかし博士は首を振った。
提督の場所へ一旦戻る。
「薬とか改造とか一切使用していません」
姉ちゃんが強くなってから1年経ちました。その時にその強さの秘訣を教えてくれました。
もはや僕の頭脳では解明が不可能という程驚きました。
倒れ込む怪人。だが奴は予想以上のタフだった。
「俺はコカサス伝・・・!」
残りの力で振り絞って立ち上がった時、身体全体を見せつけるように、両腕、両脚を広げる。
「俺の名はコカサス伝!アジア大陸の出身であの“大陸の覇王”影虎に次いで強いってことを知ってのことか!?」
怪人の顔の前で腕を曲げた彼女の姿。拳を握りしめる。
「知らんな」
昆虫族なんて。今日で知ったよ
怪人。回転しながら、空へ吹っ飛んでいく。
(“大陸の覇王”だけは聞いたことはあるな)
強くなるというきっかけを生んだのはある日のことであった。
数年前、姉ちゃんは高校でテニス部をしていました。当時はまだ力を得ていない普通の人間でした。ベッドで漫画を読んでいた時、突然“鍛錬したら最強になれるかも!”と意味不明な言葉を発し、それ以降、テニス部を辞めて学校からすぐ帰宅し、スポーツジムへ通うようになりました。
恐らく漫画に書いてあった内容。死に物狂いで鍛えこむという文に動揺されたのでしょう。
ジム以外でも、鍛錬を断行していました。家族皆は不審に思ったものの、一時は応援することもありました。そして・・・
博士の説明。10分以上もかかりました。
「説明を簡潔にまとめろ」
「えーとつまりですね」
化学を一切使わず、1年鍛錬続けた結果・・・化け物並みの力を得ることができたのです。
「そんなの・・・ありえん」
「僕も正直信じられませんでした」
知った余命の少ない父親が死にました。
死ぬ直線にこう言っていました。
“人生で一番変な事でしたー!”
叫んでショック死したのです。
「ショック死!?」
戦いを終わらせ後の彼女。突然明るい顔へと戻り果てていた。体液が頬に付着していても、まるで彼女に何もなかったような表情ぶりだった。
平和の時は親しい。しかし敵が眼中に入ると・・・好戦的変貌のスイッチを押してしまう。
姉ちゃんは正義のヒーローのつもりで戦っている。だが見た目ではずれているような気がする。
こういうのをなんと言えばいいのか思いつかない。
でも大好き。
パワーを身につけてもなんだか変わっていないように見えてきたんです。
互いに抱きついても以前のまんまみたいだ。姉弟との愛の影響かな。
「愛という力。それが一番解明できない問題なんです」
博士の頬が赤く染まっていた。
その時、博士の姉が人間離れ程の跳躍で屋上で着地した。怪人の首を掴んでいる。
「蚕みたいなのがいたから飼育して稼ごうよ」
「管理に手間取るから却下」
超能力なんかよりも肉弾戦。特に殴り合いがカッコ良い。 ので戦闘シーンではパンチを主流として書きます。
今気づきましたが、艦娘の活躍がなんか地味っぽい。